Looopでんきは最悪!? 本当のところはどうなのか、担当者に質問してきた
近年、日本の電力市場では、燃料価格の高騰や需給バランスの変動が原因で、電気代が上昇し続けています。特に2022年には、ウクライナ危機の影響によって多くの電力会社が料金を改定し、大きな社会問題となりました。
この影響は、株式会社Looopが提供する「Looopでんき」にも及び、2022年6月に料金の値上げをやむなく実施。それによってLooopでんきは高いという印象が広がり、インターネット上では「Looopでんき最悪」などの悪い評判が見られるようになりました。
しかし、実際のところLooopでんきのサービスはどうなのか。Looopでんきの担当者にインタビューを行い、同社の強みや独自の取り組みなど、詳しく話を伺いました。取材を通して見えてきたことは、Looopでんきが目指す消費者とエネルギーの新しい関わり方、そして再生可能エネルギーと人類の調和でした。
インタビュイー
小川 朋之氏
株式会社Looop 執行役員 電力本部 本部長
目次
- 1 電力自由化の背景と市場連動型プランの登場について
- 2 Looopでんき(ループでんき)は、本当に最悪!? 担当者に真相を取材!
- 3 30分毎に電気の価格が変わる!? Looopでんきは、基本料金・解約手数料が0円って本当?
- 4 ピークシフトは、アプリで管理! ゲーム感覚で電気代を節約。
- 5 価格高騰(スパイク)が、「でんき 最悪」を生み出した元凶!?
- 6 Looopでんきは最悪どころか、再生可能エネルギーの利用で環境問題と世界平和にアプローチしていた!?
- 7 Looopでんきを利用することで、地球環境や国内経済に改善を促す
- 8 編集者の後書き:結論、Looopでんきは最悪!? 否!素晴らしいサービスだった。
電力自由化の背景と市場連動型プランの登場について
まずは、担当者様への取材に入る前に、電力自由化の背景と市場連動型プランの概要についてお伝えします。
2016年に電力小売全面自由化がされ、新電力会社が増加したことで、電力市場には複数の新規事業者が参入。利用者は、自分のライフスタイルやニーズに合った電気会社を選べるようになりました。従来の規制料金プランのほかに市場連動型プランも登場し、消費者にとって選択肢が広がっています。
この市場連動型プランとは、電力市場の価格変動に応じて料金が決まるプランのことで、市場価格が上がると料金が高くなるというリスクがある一方、市場価格が安いときには安い料金で電気が使えるというメリットがあります。
現在、Looopでんきは市場連動型プランを導入し、再生可能エネルギーの活用の推進や独自サービスの提供を行っています。ですがなぜ、ネット上では「Looopでんき 最悪」というキーワードが上位検索されているのでしょうか?―― ここからは、取材を通して、この真相に迫っていこうと思います。
Looopでんき(ループでんき)は、本当に最悪!? 担当者に真相を取材!
―――今回はLooopでんきの電力本部小川様にお話をお伺いしていきます。「Looopでんき 最悪」というネット上の検索キーワードが、表示されるようになっていますね…企業様としては心苦しい部分かなと…
そうですね…「Looopでんき 最悪」というキーワードが、ネットで検索されはじめたのは電気代の高騰が原因でした…今回の取材を通して、弊社のソリューションや実現したい世界観などが多くのお客様に伝わってくれたら嬉しいです。
―――ありがとうございます。まずはまだLooopでんきを知らない読者の方へ向けて、御社の基本情報やサービス内容についてお伺いしてもよろしいでしょうか?
「株式会社Looop」は、2011年4月に創業した会社で、東日本大震災で被災された地域に太陽光パネルを設置するボランティアからスタートしました。「エネルギーフリー社会の実現」をビジョンに掲げ、人々がエネルギーを自由に使い、多方面でイノベーションが起こり、世界がより豊かになることを目指してビジネスを展開しています。
2016年には電力全面自由化をきっかけにLooopでんきというブランド名で電力小売りの事業を展開しました。
30分毎に電気の価格が変わる!? Looopでんきは、基本料金・解約手数料が0円って本当?
―――「Looopでんき 最悪」などの口コミが見られますが、Looopでんきの強みは何でしょうか?
強みのひとつは、シンプルな料金体系だと思います。弊社が提供する「*スマートタイムONE」は、市場価格に基づいて30分ごとに価格が変わる市場連動型のメニューです。このスマートタイム ONEは、業界初の「基本料金0円」をはじめ「解約手数料0円」「契約期限の縛りなし」などの仕組みを採用しているので、お客様が他の電力会社も試してみたいと思ったときに、気軽に電力会社の切り替えができるようになっています。
*「スマートタイムONE(電灯)」は基本料金0円ですが、「スマートタイムONE(動力)」は基本料金0円ではありません。
また、スマートタイムONEは需要・供給などによって価格が変動するダイナミックプライシングを採用しているので、電力市場の価格が安い時間帯に電気を使えば電力料金を抑えることができます。最近の傾向ですと、晴れて太陽光発電所が多く発電する昼間や、電力需要の少ない休日に自宅にいる方は安くなる可能性があります。
あとは、今の一般的な料金体系は、電気を使えば使うほど高い料金単価になっていく仕組み(3段階料金制度)になっています。また、電気を多く使っているということは基本料金もそれに伴っておそらく高くなります。そのような方には基本料金0円のメリットは大きいと思います。
―――固定単価型と市場連動型があるなかで、なぜ市場連動型に特化したサービスにしたのでしょうか。
まず市場連動型の場合、日本卸電力取引所(JEPX)という電気の市場と連動して電気代が決定されますが、一般的な電気会社も燃料費調整額などを燃料の市場価格に連動させて単価を付け替えているので、そういった意味では大きな違いはありません。
ただ、燃料費調整額などに反映させているのは、市場価格の月平均値です。我々が提供するサービスは30分ごとの数値を見ることができるので、ピークシフトやデマンドレスポンスが可能になります。
例えば、今月は電気代が高いと思っても、その月ずっと使用量を制限するのは難しいですよね。でも、1日の中で高い時間帯と安い時間帯がわかれば、高い時間帯に電気の使用を抑えて、安い時間帯に使うという選択肢が生まれます。そのため利用者様が、電気代を自分でコントロールできるサービス設計にしたいと思ったんです。このような背景が、市場連動型を選んだポイントであり、スマートタイムONEのメリットでもあります。
今後、電力会社から固定単価型の料金プランはなくならないとは思いますが、各事業者のシステムが適応していくのに従い市場連動型プランが増え、全体の15%くらいのシェアになるのではないかと想定しています。
―――30分ごとに変動するプランは、新電力会社ではよくあるんですか?
オンリーワンではないのですが、多くはないと思います。というのも、データ量も計算量もすごいので、それに対応できるシステムを持っていないと難しいです。
弊社は創業当初から自社でほとんどのシステムを組んでいるところも強みの一つなので、それゆえに開発スピードが非常に早いです。
ピークシフトは、アプリで管理! ゲーム感覚で電気代を節約。
―――料金の変動が短期スパンでわかるからこそ、ピークシフトすることで電気代をコントロールできるというのは、大きな魅力ですね。この仕組みを下支えしているのが、Looopでんき公式スマートフォンアプリです。このアプリはピークシフトを実践しやすいUI/UXになっていて、2023年度グッドデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞しています。
▲Looopでんき公式スマートフォンアプリ
市場連動型は、燃料費高騰などによって電気代が高くなるというリスクがあります。その対策として、アプリで料金が高い時間帯を確認し、電気を使用する時間を変える使い方をしていただければと思います。
また、今月どれくらいの金額になるかというのも、直近の電力使用量の傾向をもとにアプリ上で予測額がわかります。
ホームページでは、アプリと同様に時間帯ごとの料金が見られるほか、料金シミュレーションもできます。例えば東京エリアに住む3人家族の場合、大体の使用量が350kWhくらい。一般的にはこの時間帯に使っているよ、というロードカーブをもとに試算し、「今よりも年間で8,300円くらいお得になります」というような*結果がわかります。
*「2024年6月のHP上のシミュレーション結果」 ―――お客様の反響はいかがですか?
一番印象的だったのは、アプリをゲーム感覚で使っていただけているという意見です。「こんな電気の使い方をした結果、こんなに安くなりました」という声を聞くとやはりうれしいですね。
あとはそうですね。いろいろな意見をいただくんですよ、「グラフが見にくい」とか。その声に合わせて、どんどん修正を加えています。その結果、「すごい見やすくなった」という声が殺到しました。電気系のアプリの中で、* No.1の評価を得ているのも特徴ですね。
*2023年5月時点
価格高騰(スパイク)が、「でんき 最悪」を生み出した元凶!?
―――これらのサービスを提供するに至った背景を教えてください。
昨今では、再生可能エネルギーを使って発電できても、主に昼間などで余った分は捨ててしまっている状況です。せっかく再エネの発電所を増やしているのに、結局「今の時間は発電を止めてください」っていうのが全国各地で起こっている。
捨てるくらいなら、供給が余っている時間帯は市場価格が安くなるので、お客様にはその時間帯に使ってもらいwin-winにしましょう、というのが一番大きな設計思想の背景です。
そして、もう一つ。市場連動型の場合、市場価格の影響を直接受けるので電気代が高騰するリスクはありますが、長期的に見た際に市場連動型の方が高くなるのかというと、実はそうでもないのです。金融市場に置き換えて考えてみますと、変動金利と固定金利はどちらのほうが安いかというと、変動金利の方が場合によっては、安い時があります。
なぜかというと、固定金利は金利が上昇すると損をするので、基本的にはある程度リスク分を上乗せして販売しているんですね。この上乗せ分をリスク・プレミアムというのですが、固定の場合はリスク分のお金を払っている、つまり保険を買っているようなイメージです。ですから、原理的には変動金利のほうが安くなります。
また金融市場で言えば、金利が高いときにお金を返せるかと言ったら、やっぱり厳しい――でも電気の場合は使わないという選択ができるわけです。だから、原理的には必ず電気代を安くできるのだという考えが、サービス創出のもとになっています。
―――今抱えている課題はありますか?
価格高騰、いわゆるスパイクが起こったときに解約者が増えてしまうことですね。短期的に料金が上がると、お客様がパニックになってしまわないかと。解約金や契約期間の縛りもないので。
ただ、そのためにさまざまなサービスを画策しています。例えば、昨年電気代が一時的に高くなったときに、我々の利益度外視で夏と冬に料金還元キャンペーンを実施しました。今後は、電気代の単価に上限をつけるなど、保険のような仕組みが提供できないか検討しています。
Looopでんきは最悪どころか、再生可能エネルギーの利用で環境問題と世界平和にアプローチしていた!?
―――今後のサービスの向上も期待されますね。将来の展望についても伺えますか?
再生可能エネルギーの変動を吸収する「調整力」を拡大していくことを目指しています。現在は価格変動を見極めて消費行動を変えるよう促していますが、そのうちお客様が行動を変えることに飽きたり疲れたりしてしまうかもしれません。ですので、次の段階ではこれらの取り組みの自動化を考えています。
具体的には、蓄電池やエアコン、給湯器など、電気消費量の多い機器の充電や使用を自動制御によって最適化すること。これによって手動で調整するよりも効果的に、安い時間に電気を使うことが可能になります。
―――新電力事業者同士の競争や世界的なエネルギー問題の課題など、厳しい状況もあると思いますが、新電力事業者にとって今必要な考え方は何だと思いますか?
間違いなく長期目線だと思います。お客様は契約を結んだあとに他社と比較することが少ないと思いますが、気づかないうちに高い料金を支払っていることがよくあります。
例えば、数万円のキャッシュバックを謳い高額な料金プランに入らせて、3年契約を結ばせるといった手法がありますが、実際に契約してみると非常に高額な料金になっているといったケースが存在するわけです。
このようなプランは、事業者の短期的な収益にはなりますが、お客様のためにはなりません。新電力のプランに契約した結果、自分が損をする体験をした人は、二度とその会社を信用しないはずです。
これは極論ではなく、エネルギー事業者として認識すべき事柄です。情報格差を利用したビジネスは、良いサービスとは言えませんよね… 長期目線を持ち、全体を見据えた行動が必要だと感じています。
―――「Looopでんき 最悪」というキーワードがまさしくそうかと思うのですが、逆に新電力事業者に不安感を持つ人に対して、どのようなことが伝わってほしいとか、どのような視点を持ってほしいと思いますか?
「新電力事業者が怖い」「市場連動が怖い」そして、「Looopでんき 最悪」という検索行動もそうですが、多くの利用者が新電力に不安を抱えているからだと思います。
ですが新電力は不安ではないということが、伝われば利用者が増えるのではないでしょうか。つまりは、新電力に対する安心感ですね。
新電力会社が供給する電力は、地域の大手電力会社から供給している電気と変わりません。また大手電力と同じ電線を使って電気を家庭へ供給しているので、電気の品質が落ちるということもないんです。また停電のお起きやすさや停電時の復旧の早さが、大手電力会社に劣るということもないため、安心して利用いただけます。
―――なるほど、大手電力会社に比べ、漠然と何かが劣ってしまうと考えている方も多いのかもしれませんね…
そうですね。お客様の側でも、電力会社を切り替える際に、どの事業者、プランを選ぶかの場面で、やはり長期的な視点が重要だと思います。弊社のプランでは電気代が安くなるような行動を促していますが、それが自身の財布だけでなく、いずれ世界全体に還元されるということにも気づいていただきたいですね。
需要が少ない時間帯の電力を利用することで電気代が安くなることはもちろんですが、再生可能エネルギーを活用することでCO2が削減され、地球温暖化の抑制や、温暖化に対する防災コスト・税金の軽減に役立ちます。
さらに、再生可能エネルギー利用率が高まれば国内のエネルギー自給率が高まり、燃料価格や為替の影響を受けにくくなる。それによって物価の上昇が抑えられ、日本経済の安定にもつながると考えます。
20世紀に起こった争いの多くはエネルギーを巡るものでした。しかし、再生可能エネルギーの利用が進むことでこれを回避することができ、平和な世界への実現にも近づくと思うのです。
このように多くのメリットが利用者様にあること、そして、一人ひとりの行動が大きな結果を生み出すかもしれないという視点で選択をしていただければと思います。
Looopでんきを利用することで、地球環境や国内経済に改善を促す
―――最後に、新電力事業者を検討中の方にメッセージをお願いします。
市場連動型は理論上、長期的に見ると最も安くなる方法です。それに加えて、ピークシフトをすることでさらに電気代を安くする努力ができる。そんな、電気代を最も安くできる選択肢を弊社では提供しています。
さらに、Looopでんきのサービスを利用することが地球環境や国内経済を良くすることにも繋がっています。これらの点を認識いただいた上で、サービスを選んでいただければと思います。
そして、いずれは弊社がお客様にとって当たり前に選ばれる選択肢の一つになれれば嬉しいですね。
編集者の後書き:
結論、Looopでんきは最悪!? 否!素晴らしいサービスだった。
今回の取材を通して感じたことは、Looopでんきはただの新電力会社ではなく、地球環境、経済、人々の生活を良くするために奮闘する素晴らしい企業ということでした。「Looopでんき 最悪」という検索キーワードは、国際情勢による電気代の高騰が起因していましたが、そのネガティブな言葉の裏には、再生可能エネルギーにより私たちの生活ないしは、地球規模での好循環を生み出そうとする取り組みでもありました。
新電力に不安を感じている方こそ、ぜひLooopでんきを利用してみてほしい―― 読者の行動、そして小さな選択が地球環境を改善し、経済を良くする一手になるはずです。
Looopでんきの公式サイトを見る
ライター
So-gúd編集部
新井 那知
埼玉県・熊谷市出身。渋谷の某ITベンチャーに就職後、2016年にフリーランスライターとして独立。独立後は、アパレル、音楽媒体、求人媒体、専門誌での取材やコラム作成を担当する。海外で実績を積むために訪れたニューヨークで、なぜかカレー屋を開店することに—-帰国後は、クライアントワークを通してライターとして日々取材や編集、執筆を担当する。料理と犬、最近目覚めたカポエイラが好き(足技の特訓中)。