ウォーターサーバーの導入でSDGsに取り組んでいる大学10選
持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みは、教育機関においても重要なテーマとなっています。特に、プラスチックごみの削減に向けた取り組みとして注目されるのが、ウォーターサーバーの導入です。
本記事では、ウォーターサーバーを活用し、SDGs達成に貢献している日本の大学10校を紹介します。
これらの大学は、環境への影響を軽減するための施策としてウォーターサーバーを導入し、学生や教職員の意識向上を図りながら、持続可能なキャンパス環境の実現に取り組む先進的な大学です。
プラスチックボトルの使用削減からSDGs達成に貢献するこれらの大学の取り組みを紹介し、その効果と今後の展望について探ります。
目次
プラスチックごみが環境に与える影響
日常生活のさまざまな場面で使用するプラスチックですが、このプラスチックごみが環境に大きな影響を与えています。現在深刻化しているのが、海洋プラスチックごみ問題。世界中の海に存在しているプラスチックごみは、合計で1億5,000万トン(※)あると言われています。(※出典:McKinsey & Company and Ocean Conservancy)
50年後には魚よりプラスチックごみの方が多くなると言われ、生態系に悪影響を及ぼしているのが現状です。
例えば、海洋生物が誤ってプラスチックごみを食べてしまったり、水質汚染によって、サンゴの成長を妨げたりすることで、生態系のバランスを崩す原因となります。
海洋ごみの約7割は街で排出されたものと言われているため、プラスチックごみ問題は私たちが責任を持って解決しなくてはいけない問題なのです。
ウォーターサーバーの導入はSDGsにどう貢献するのか
プラスチックごみ問題を解決する方法の1つが、ペットボトルの削減です。ウォーターサーバーを導入することで、ペットボトルの購入頻度が減るため、プラスチックごみの削減に貢献できます。それでは、ウォーターサーバーの導入がSDGsにどう貢献するのか、解説していきます。
安全で清潔な飲料水を提供する
ウォーターサーバーは、安全で清潔な飲料水を提供し、これは目標6「清潔な水と衛生」に貢献します。これにより、水質問題に直面している地域の人々に健康的な生活環境を提供し、公衆衛生の向上に貢献します。日本はすでに清潔で安全な水が供給されている国の1つですが、日本は地震や台風などの自然災害が頻発する国です。災害時には水の供給が途絶えることがあるため、非常時における清潔な水の確保は、公衆衛生の維持に貢献します。
ペットボトルの生産や輸送エネルギーの削減
SDGsの目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」は、全ての人々に手頃な価格で信頼性の高い、持続可能で現代的なエネルギーサービスを提供することを目指しています。ペットボトルの生産、輸送、冷却に必要なエネルギーは意外に大きく、ウォーターサーバーによる代替は全体的なエネルギー消費を減少させます。
環境省によると、500mlのペットボトルを購入した場合と、マイボトル(5年間で700回利用と仮定)を使用した場合の1回あたりのCO2の排出量を比べたところ、ペットボトルと比べてマイボトルは約1/4の排出量(※)であることがわかりました。(※出典:リユース可能な飲料容器およびマイカップ・マイボトルの使用に係る環境負荷分析について)
地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量を減らせるため、ウォーターサーバーの導入は、目標13「気候変動に具体的な対策を」にも貢献できます。
プラスチック廃棄物の削減
ウォーターサーバーは、ペットボトルの使用を減少させることでプラスチック廃棄物を削減し、持続可能な消費パターンを促進します。この取り組みは、資源の有効利用と環境保護に直接貢献し、目標12「責任ある消費と生産」の実現に向けた重要なステップです。清潔な水の確保、エネルギー効率の向上、そしてペットボトルの使用減少は、持続可能な未来への重要な一歩です。大学のような規模の大きな施設が、ウォーターサーバーの導入に取り組むことで、より広範な持続可能性への意識改革に繋がることでしょう。
ウォーターサーバーの導入でSDGsに取り組む大学10選
ここからは、ウォーターサーバーの導入により、SDGsに貢献している先進的な大学を紹介します。京都大学
出典:https://www.kyoto-u.ac.jp/ja
京都大学は、持続可能なキャンパス(サステイナブルキャンパス)の実現を目指し、学生と教職員の有志が「エコ~るど京大」を発足。京都大学のSDGsに関する取り組みについて、インタビューを実施しました。
ウォーターサーバー導入は、キャンパス内のペットボトルのごみを減らしたいという思いがきっかけとのこと。2022年までに9台のウォーターサーバーが設置され、構内の学生の利用頻度が多い場所や研究室などに設置されました。
この取り組みにより、学内全体で見ると毎月6,000本分(500ml換算)のペットボトル削減が達成され、SDGsに大いに貢献しています。学生からの反応は非常に良く、一方で管理側は費用や衛生面の管理に一定の課題を抱えているようです。
さらに京都大学では、大学生や教員だけでなく、地域住民や企業も巻き込みながらSDGsについてのさまざまな企画を行っています。
例えば、マイボトルの普及活動やSDGs弁当の販売、YouTubeでのマイボトルダンスの配信を通じ、学内外にサステナビリティのメッセージを広めることに注力しています。
京都大学のこの取り組みは、他の大学にも影響を与え、京都薬科大学などがウォーターサーバーの導入を行うきっかけとなりました。これらの活動は、教育機関がSDGsにどのように貢献できるかの素晴らしい例です。
大学コメント
京都大学
エコ~るど京大
ウォーターサーバーはペットボトルの削減などでSDGsに貢献できる反面、設置や管理の手間が生じます。そのため、「ウォーターサーバーを設置したい」という学生からの強い声が重要になってきます。ウォーターサーバーの導入を検討している大学は、施設との調整や安全面の管理を徹底的に行うことが大切です。
上智大学
出典:https://www.sophia.ac.jp/jpn/
上智大学はSDGsに関しての情報発信や企画実施などの取り組みを行う「サステナビリティ推進本部」を設置し、SDGsへの積極的な貢献を示しています。
ウォーターサーバーの導入も取り組みの一部で、学生、教職員が一丸となって活躍中。上智大学のSDGsに関する取り組みについて、インタビューを実施しました。
ウォーターサーバー導入当初は、コロナ禍で多くの学生が登校していなかった影響もあり、なかなか存在を認知されずに悩んでいたそうです。
そこで、学生のアクセスが多い場所へサーバーを設置することや、少数色覚者にも見やすいようなマップを作成するなど、ウォーターサーバーを多くの学生に利用されるようなさまざまな工夫を凝らしました。
その結果、今では多くの学生に認知され、授業の合間にはウォーターサーバーを利用するための行列ができるほどに。マイボトルの持参率も増え、ペットボトルの削減に大きく貢献しているため、企画に参加した学生職員もやりがいを感じているとのことです。
上智大学は、ウォーターサーバーの導入に留まらず、マイ容器の持参を促すキッチンカーでの食事サービスや、ごみの分別を促進するためのごみ箱デザインの改善など、学生がSDGsに貢献するための具体的な取り組みを実施しています。
これらの取り組みは、SDGsに関心がない学生でも参加しやすいように設計されており、誰でもSDGsに貢献できるような画期的なアイデアです。
このような取り組みは、学生目線で考えられた実践的なアプローチにより、持続可能な未来への貢献だけでなく、学生コミュニティ内での環境意識の向上にも大きく寄与しています。
大学コメント
上智大学
サステナビリティ推進本部
ウォーターサーバーの導入に限らず、何か学生のアイデアで革新を起こしたい場合、残念ながらその声はなかなか教職員まで届きません。そのため、私たちサステナビリティ推進本部のような、学生の声を拾い上げ、議題にあげることができる機関を設置することが重要です。学生職員を採用することで、学生と教職員の橋渡しとなる存在ができ、より良い大学作りに貢献してくれています。
立命館大学
出典:https://www.ritsumei.ac.jp/
立命館大学は2019年4月に「立命館SDGs推進本部」を設置し、持続可能な未来に向けて、教育研究機関として幅広い取り組みを学生とともに進めています。
立命館大学では、今までも冷水器を設置していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、不特定多数が利用する冷水器の代替機を検討していました。
そこで、ウォーターサーバーを設置することで、感染拡大を防止するだけでなく、マイボトルの普及でプラスチックごみの削減を目指しています。
学園として、各キャンパスにおいて毎年前年比3%のゴミ削減の実施が決定したことがきっかけで、びわこ・くさつキャンパス(BKC)では2022年9月にウォーターサーバを導入。キャンパス内には合計18台のウォーターサーバが設置されています。
学生の満足度も上がり、多い月で80,000L~90,000Lの水を使用しているそうです。学生からの要望もあり、次年度に向けて2台程度の増設を検討中とのこと。
立命館大学では、その他にもゴミの排出抑制策として、業務のDX化推進による紙の消費抑制、食品ロスの削減に向けた啓発活動、食品廃棄物の分解処理を実施。地球環境委員会やSDGs推進本部の立ち上げなど、SDGsへの取り組みとして様々な取り組みを行っています。
日本大学
出典:https://www.nihon-u.ac.jp/
日本大学では、学生が主体となって行動し、各ゼミでの活動やワークショップ型授業、プロジェクトを通して、SDGsの実現に取り組んでいます。
コロナ禍を乗り越えキャンパス回帰した学生達へ、熱中症対策という目的と、綺麗で美味しい水をオールシーズンキャンパス内各所でお届けしたいという保護者組織の後援会からのアイデアと支援もあり、2023年7月にウォーターサーバを設置しました。
学内5ヶ所にウォーターサーバが設置されており、学生・教職員共に好評でスムーズに利用されているとのこと。日本大学 文理学部ではスポーツ系の学問領域も盛んであることから、特に猛暑時の体育授業や課外活動時に需要が高まっています。
学生の中にはマイプロテインをシェイカーで用意し、体作りに励む方もいらっしゃるそうです。
慶應義塾大学
出典:https://www.keio.ac.jp/ja/
慶應義塾大学は、教職員・学生・生徒・児童が、互いの人格を尊重し多様な価値観を認め協力して生きるための環境を構築し、多様性の受容に関する課題に迅速に対処するため、2018年4月1日に「協生環境推進室」を設置しました。
「地球環境との”協生”」をテーマに、「2030年までに、ウォーターサーバーをキャンパス内の全ての施設に設置する」ことを目標に掲げています。
目標を達成するために、スタンプラリーの企画を実施。ウォーターサーバーの設置後も、全校生徒にマイボトルの推進活動を積極的に行っています。
東北大学
出典:https://www.tohoku.ac.jp/japanese/
東北大学は、2019年3月に「プラスチック・スマート」(※)の推進を宣言しました。(※出典:プラスチック・スマート公式ページ)
プラスチック・スマートとは、環境省が実施している、海洋プラスチックごみの削減に向けたキャンペーンの名称のこと。
東北大学では、主要会議室にウォーターサーバーを設置し、マイボトルの持参を推進することで、ペットボトルごみの削減に貢献しています。
明治大学
出典:https://www.meiji.ac.jp/
明治大学は教育と社会貢献のカテゴリーにおいて、英語のクラスで「アイデアから行動へ」プロジェクトを実施し、その一環としてウォーターサーバーの利用を奨励するプロジェクトが進行しています。
このプロジェクトでは、生徒たちが泉キャンパスにウォーターサーバーを使用するよう他の生徒を促すためのポスターを作成し、キャンパス内の5か所に設置しました。
立教大学
出典:https://www.rikkyo.ac.jp/
立教大学は2022年2月にカーボンニュートラル宣言を公表し、「キャンパスのカーボンニュートラル化」を目指しています。その取り組みの一環として、同年11月に、池袋・新座両キャンパスに1台、ウォーターサーバーを設置しました。
立教大学は、「トップグローバル大学プロジェクト」の一環として、環境汚染、難民危機、経済的不平等などの深刻なグローバルな課題に取り組む能力を持つ、自由教養知識とスキルを備えたグローバル志向の個人を育成することを目指しています。
青山学院大学
出典:https://www.aoyama.ac.jp/
青山学院大学は、2023年4月より、学生サービス向上と安全衛生面の観点及び本学におけるSDGs推進活動の一環として、学内のペットボトル削減と学生生活をより快適に整えることを目的に、学内にマイボトル利用式ウォーターサーバーを設置しました。
青山学院大学は、教育を通じての取り組みが顕著で、大学全体の教育目標に「愛と奉仕の精神を持って、すべての人と社会に対する責任を果たす人間の形成」を掲げています。
この目標は、SDGsの「誰一人取り残さない」という理念と一致しています。大学は、キリスト教の信仰に基づいた教育を提供し、より良い世界の実現を目指しています。
青山学院大学は「青山学院グローバルウィーク(AGGW)」というイベントを通じて、SDGsに関連する活動やプロジェクトを紹介し、学生、教職員、卒業生を含めたコミュニティ全体でSDGsの達成に向けた取り組みを促進しています。
このイベントでは、多様な活動やセミナーが実施され、参加者に持続可能性についての理解を深める機会を提供しています。
東京農工大学
出典:https://www.tuat.ac.jp/
東京農工大学は、2019年8月に「農工大プラスチック削減5Rキャンパス」活動を宣言し、2050年石油ベースプラスチックゼロに向けて、使い捨てプラスチックの削減と、課題解決のための新素材の創生等を含めた研究の推進に取り組んでいます。
活動宣言に基づいて、マイボトル用のウォーターサーバーをキャンパス内に設置し、プラスチック削減対策を行っています。
以上、ウォーターサーバーの導入でSDGsに取り組んでいる大学を紹介しました。ウォーターサーバーについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご参考下さい。