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経済学における“幸福”の深層探訪
“お金と幸福”の関係は、資本主義社会を生きる我々にとって、一つの重要なテーマではないだろうか? お金と幸福を考察する際、従来の経済学は客観的な数値を用いて研究していた。ところが近年、経済学に「幸福」を採り入れた「幸福の経済学」が注目を集めている。幸福という、客観的な数値を持たない主観的な感情を、経済学に取り組むことで、経済と幸福の関係値、そしてお金と幸福に関しての一つの答えが出るのではないだろうか―― そこで今回は、駿河台大学経済経営学部・教授・佐川和彦氏を取材した。幸福の経済学とは?先生のご専門についてお教えください。私の専門は医療経済学です。医療経済学と聞くと、特殊な学問に思う人もいると思います。ですが「経済学」という学問は、基本的にお金が関係する現象すべてを対象としているのです。例えば、医療の場合、お医者様が患者を治すことがメインになりますが、新薬開発や医療保険といった医療に関連するものにはお金が絡んでいます。医療の分野でも、経済学は重要な役割を果たしています。私はその分野の研究を行っています。幸福の経済学という学問領域については、3年生、4年生のゼミで指導しています。ゼミ生には、幸福の経済学の分野で学んだことを中心にして、卒業論文を書いてもらいたいと考えています。幸福の経済学を研究していると、人の幸福にはさまざまな要因が絡んでいることがわかるんです。例えば医療や健康は、幸福感に対して大きな影響を及ぼしています。このような医療や健康と幸福感との関連性についても研究しているところです。実は、私は幸福の経済学という分野の研究をずっと続けてきたわけではありません。むしろ最近になって幸福の経済学の重要性を認識するようになったのです。私の専門である医療経済学分野にも、幸福の経済学の考え方を絡めて考えていくことは非常に重要であると考えています。幸福とGDPとの関係性について昨今、こういった幸福の経済学が注目を集めている背景についてお教えください。幸福の経済学について説明をしなければならないのですが、そもそも経済学の究極の目的は、人間を幸福にすることです。ただ、従来の経済学は、幸福は主観的なものであり、それを定義づけることや人と人との幸福を比較することは難しいという立場をとってきました。従来の経済学は、幸福感というあいまいな指標の代わりに、GDPを使ってきました。1人当たりのGDPが大きくなると、それだけ物質的に豊かになるので、皆が幸せになるという考えです。さて、ここでひとつの問いかけが、「私たちは本当に幸せなのか?」なのです。先進国である日本は1人当たりGDPが発展途上国と比べれば大きいので、物質的に豊かな国であるとは言えるでしょう。そのため従来の経済学では、私たちは幸福である、となります。ですが、幸せに対しての根本的な疑問はぬぐいきれません。これは、『幸せはお金で買えるのか----』、と言い換えることも可能です。場合によっては、お金に執着することで、逆に不幸になることだってあるかもしれません。なるほど...『幸せはお金で買えるのか』『お金があれば幸せなのか』というのは永遠のテーマというか...私自身も常に考えさせられますね。そうですね、実際にOECD加盟国における1人当たりのGDPと生活満足度との関係を国際比較したデータがあります。GDPが上がれば、基本的には生活満足度、いわゆる幸福感みたいなものが上がっていく関係が見られます。国際的に見て、1人当たりGDPが増えると幸福感も比例して上がっていくものの、一定のところで頭打ちになるのが全体的な傾向です。一方、日本での1人当たりGDPと生活満足度の関係について時系列で見てみましょう、ここでは通常経済学で用いる実質GDPでなく、名目GDPを使います。なぜなら、日常私たちが目にする数字、例えば給与の明細の数字は名目値だからです。1960年代から1990年代において、名目GDPは増加しましたが、生活満足度は多少の上がり下がりはあるものの、ほぼ横ばいです。つまり、1人当たりのGDPと生活満足度とはリンクしていないのです。このような現象が起きることは、リチャード・イースタリンという学者が発見しました。所得と幸福感が連動しないことは、「イースタリン・パラドックス」と呼ばれています。所得が増えても、幸福感が伸びない理由として3つあります。1つめは、人間の幸福度はその人の周りの人たちとの比較で決まるという点、2つめは比較対象が変わってしまう点、そして3つめはそもそも慣れてしまう点です。では、所得は大事ではないのか、といえばそうではありません―― 所得は絶対に大事です。物質的な豊かさを享受しているので、所得がもたらす幸福感に対する感覚が鈍くなっている方も多いと思いますが、所得がもしなくなった時のことを考えたら、人は幸福ではいられなくなるということは容易に想像できると思います。経済学と幸福の経済学が交わることで、社会はより良い方向へ――所得が上がったとしても、幸福度は伸びないことがある一方で、所得が絶対に大切というお話をしました。所得以外の要因もありますので、人は自分がおかれた状況の中でどれだけの幸せを感じることができるのかということが重要です。私は、従来の経済学を否定しているわけではありません。実際に大学ではマクロ経済学というオーソドックスな経済の理論を教えています。強調したいのは、これまでの経済学では捉えきれなかった「幸福」という側面を、「幸福の経済学」という視点で考察していく従来の経済学と幸福の経済学が合わさり、より良い方向に社会の歩みを進めるということです。話は変わりますが、日本の健康指標についても興味深いデータがあります。1つは、OECDの加盟国それぞれの平均寿命で、客観的な健康の度合いを表すものとして一番有名です。もう1つは、自己報告による、いわゆる主観的な健康度です。これは実際に病院等で行った健康診断の結果のような客観的なデータではありません。1つめのOECDの加盟国それぞれの2019年の平均寿命データですが、日本はトップです。一方、2つめのデータの自己報告による健康度では、低いところから2番目のところに日本があります。両極端な結果となっています。このような結果についてですが、私は日本人特有の国民性みたいなものの影響もあるのではないかと推察します。日本は、昔から災害が多い国、地震や台風が多い国です。いつどこで大きな災害が起きるかわからないことを、いつも意識しながら生活しています。日本人は、今は普通に暮らしていても、いつ健康を害することがあるかわからないと、控え目に考えるようにしているのではないでしょうか。もちろん、実際にデータとしてはないので分析できないのです一方で、日本についての私の最近の研究では、病床数などの医療資源量の違いが主観的健康度と客観的健康度の乖離につながる可能性があることもわかっています。これからの幸福と経済の関係性における推察先ほど、他者との比較が出てきましたが、昔と比べて結構強く出てきている時代ではないかと思います。幸福の考え方みたいな部分だったりと、他者と比べたときの幸福にならないといけない、というハードルが高まっている気がしますが、いかがでしょうか?他者との比較については、2つの例が挙げられます。1つは、デジタルデバイスが普及したことで、色々な情報が一瞬に自分の中に入ってきてしまう状況です。さらに、スマートフォンやコンピューターを通してみる世界は、自分と対象のコンテンツだけの一人だけの世界に入っています。若い子たちが、SNSを通して誰かの幸せそうな情報を見てしまうことで、対象の情報をじっくりと考察する時間がないまま、ストレートに享受してしまう可能性が高いかもしれませんね。情報過多のネット社会においては、情報をうまく取捨選択していかなければなりません。ですが、若い子たちは、情報の取捨選択を上手にできないのが現状です。そのまま間違った情報を受け入れ、取捨選択を誤り、道に外れた場合はその子の人生が悪い方向に進んでしまう可能性がありますね。そして2つ目ですが、親と子どもの関係です。今に始まった話ではありません。昔の親は世間体を気にしていました。世間体も他者との比較なのです。もっとも昔は兄弟姉妹がたくさんいたので、親も1人の子どもだけに構ってはいられませんでしたが...現在は一人っ子が多くなったため、その1人の子どもに一点豪華主義で期待をかけるので、親がよその子どもと比較して、「もっと勉強して」となってしまいます。とはいえ、親であれば皆そう思うのではないでしょうか。ですが、世間体から子どもに過度な期待をかけ、親が理想とする人生のルートを強制しようとすると子どもの視野は狭くなってしまう可能性があります。以前に比べて情報の取捨選択のハードルは上がっている気がしますし、他者と比べるというのは顕著に現れている気がします...。自分のなかで本質的な価値を追求したり、心の器のような精神的な軸をしっかり持っていないと、流せれてしまいますよね...。そうですね、今後一層このような現状は、顕著になるでしょう。情報の入ってくる速度や量が進化しています。昔なら、自分の周りの情報しかなかったので、ある意味幸せでした。昔だったら、たとえ貧しくとも周りの人たちもみんな貧しい状況だったら、自分だけじゃない、と感じられたのです。日本人ならではの、仲間意識の強さみたいなところが経済的な幸福を感じられない要因になっているのではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか?私は徳島県出身なんですが、子どもの頃に、地域では「お念仏」という行事がありました。近所に住む人たちがグループになって、月に1回お経を唱える内容です。終わった後でみんながお茶を飲みながら雑談するんですよ。いわゆる情報交換ですね。このような地域のグループの中に入って交流を持つという風習が、昔からありました。全部自分のことが筒抜けになるので、今の若い人たちからしたら信じられないかもしれませんが私自身、お念仏のような集まりは悪くなかったと思います。周りの人がどのようなことを考えているかがわかります。つまりコミュニケーションロスがなくなるわけですよね。そしてグループの繋がりもあるので、いざ困ったことがあったら助けてくれます。これから世代が変わることで、価値観も変わってくると思いますが、昔だったらそのグループの中にいたら幸福でした。今は、グループの助け合いみたいなのがなくなってきています。今は、人との繋がりが希薄になってきており、幸福の基準もあいまいになってきています。よくいえば、多様化しているのです。人間が幸福になるというのを誘導していくことはすごく難しいです。だからこそ、我々個人個人がどう考えるか、というところに行き着くんだろうと思います。個人的に、お金の価値観はそれほど幸せにつながっていないように思っています。私は、人とのつながりとか、精神的な安定性っていうところに幸せを感じるので、人それぞれですね。 自分にとっての幸せを考えた時には、趣味を持つことがとても大事だと思います。私は音楽が趣味で、なおかつ研究もある意味趣味なのです。教育や校務を行うことが仕事であり、それによって給料をもらい生活しています。個人的にはすごく満足しています。私の父親は現在92歳ですが、80過ぎても自営で菓子屋をやっていました。朝から晩まで働いてました。父にはこれといった趣味がないのですが、決して不幸ではないと思います。人それぞれといえるのではないでしょうか。何から満足感、幸福感を感じるかというのは、私の親のように生まれた世代ごとの価値観もあるかもしれません。言い方を変えると、働きづめの生活が不幸かといえば、まったく不幸ではありません。もちろん先程お話したように、ある程度の経済的な豊かさや所得は、必要不可欠です。ですがお金に人生を振り回せれないように、自分の心を理性的にコントロールするための、人間性や心の器を持っていることはこれからの時代は、とても大切なのかなと思っています。GDPそのものは維持でき、生活水準も維持できる可能性がある?5年後10年後の幸福と経済の世界観について、何かイメージされていることはありますか?今、日本は確実に人口が減少していっています。これから5年10年とか、あるいはそれ以降、10年20年先には人の数が少なくなり、高齢化率が上がり働く人の数も少なくなっていくでしょう。世界の中での日本のGDPの相対的な地位は、今後下がっていく可能性があると思います。しかし、ベースとなる1人当たりのGDPは維持できると考えています。働き手が少なくなっても、代わりにコンピュータや機械に置き換えていくだけの研究開発を進めれば、1人当たりのGDPそのものは維持でき、生活水準も維持していけるだろうと私は思うのです。あとはいかに経済水準をキープするかですが、5年、10年の間で生活水準が急激に悪化することはないと私は考えています。私は、大学院で研究している留学生たちと研究以外でもよく雑談を交わします。彼ら彼女らは、日本は急進的ではなく、戦争をしない国といった印象を持っているようです。今後も特段変わることはないであろうと思ってくれているようです。個人的には、日本人の多くの学生たちは、大学院で研究する留学生たちのような、いい意味での貪欲さがなくなっていると感じています。高度経済成長期の日本人だったら、もう少し泥臭く自分の夢を叶えるために努力する、生活の水準を上げるために行動するような、ある種のストイックさを持っていたと思うんです。一方で留学生たちは、いい意味で貪欲です、学問に対して。学問だからすぐ就職に直結するわけではないですが、貪欲に吸収しようとするのです。もう少し日本人の若い人にも貪欲さを持ってもらいたいと考えています。趣味を持ち、心に余白を持つ。最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。最大限努力して、一生懸命自分の仕事も頑張っていることを前提で申し上げると、趣味を持っていてほしいですね。幸福感にもつながるのですが、仕事に真面目な人ほど、万が一仕事でうまくいかなかったときに絶望します。いい意味での逃げ場を作るためにも、趣味はとても大事です。趣味があれば、切り替えが可能となります。切り替えるものを持って生活していくと、追い詰められることがなくなります。追い詰められたら駄目です。もちろん、趣味を持つことは、限られた時間の中でそのための時間まで確保する必要があるので、体力も使います。大変なのですが、いざというときのシェルターの役割を果たしてくれるでしょう。その意味でも、社会人になってもやっぱり趣味を持ってやってほしいと思います。 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為替・コモディティの専門家から聞く、分散投資の必要性|岡山大学 経済学部 酒本隆太准教授
近年、NISAやロボアドバイザーなどを活用して投資を始める方が増えています。コロナ渦やウクライナ侵攻を相まって、将来の資産形成をより重要視している方もいらっしゃるでしょう。しかし、投資の方法は人によってさまざまです。株式だけ投資する人もいれば、複数の資産に分散投資する人もいます。自分はどのような投資をしたらいいか、迷っている方もいらっしゃるでしょう。そこで、マネップでは岡山大学経済学で主に国際金融を研究されている、 酒本 隆太(さけもと りゅうた)准教授にインタビューを実施。先生の研究テーマに触れつつ、投資に対する考え方をお聞きします。自分に合った投資方法を見つけたい方、専門家の人から投資の知識を学びたい方は、ぜひ当インタビュー記事をご参照ください。世の中の変化に合わせながら投資を続けられるヒントが得られるでしょう。取材日:2023年10月6日 分散投資先の為替・コモディティとは?株式と為替・コモディティの違い先生は、為替・コモディティに関する研究をおこなっています。まず、株式と為替・コモディティの違いを教えてください。株式は10年20年という長期的目線で見ると、経済成長と共に価格が上がり、配当も増える特徴があります。もちろん、企業によって倒産したりより大きく成長したりしますが、株式市場全体で見ると基本的に右肩上がりと捉えて構いません。一方、為替は2国間の物やサービスの交換レートなので、お互いの経済・政治状況によって上がったり下がったりします。経済成長とともに価格が上がりませんし、配当もありません。原油・ 金などのコモディティも同様の性質を持ちます。このように、為替・コモディティは株式とは異なる値動きをします。そのため、実際に為替・コモディティ投資する際は、その特徴を踏まえた取引をする必要があります。株式と為替・コモディティでは、投資の基本的な取引の考え方が違うんですね。では、為替・コモディティは、一般的にどのような取引をするのでしょうか?為替の代表的な取引方法は2つ挙げられます。1つ目は、低金利の国の通貨を売って高金利の国の通貨に投資し、その金利差で利益を狙う「キャリートレード」です。2000年代はパフォーマンスが良くて人気でしたが、2008年のリーマンショックでパフォーマンスが大きく悪化したことがあります。 【世界株式とキャリートレードの値動き比較】 ※Sakemoto (2018)とByrne, Ibrahim, Sakemoto (2018)より作成 キャリートレードは株式投資と同様に世界経済が好調な時に、収益を上げやすい取引方法です。ファイナンス理論的にはキャリートレードの高収益は、株式との分散効果が働かない高リスクな投資手法なので、その高リスクを反映して収益率が高いと考えることができます。2つ目は、購買力平価を活用した取引方法です。ある国の物価が高くなると今までと同じ金額で買える物の量が減るため、長期的には他国の通貨に対して通貨価値が下落する傾向にあります。この特徴を踏まえて、2国間の物価上昇率から考えた為替レートの理論価値と、実際に取引されている為替レートを比較して、割安になっている通貨を買うことで収益を狙います。別名「バリュー取引」とも言われていて、株式と違う値動きをすることから、2008年のリーマンショック時には良いパフォーマンスが出ていました。そのため、分散投資の1つとして活用されることがあります。コモディティだと、一般的に分散投資先の1つとして取引されます。特に金・銀・プラチナといった貴金属は、株式市場が大きく下落する時に価格が上がる傾向にあるため、貴金属をポートフォリオに入れておくと、ポートフォリオの値動きをある程度滑らかにできるでしょう。したがって、株式とは異なる動きをすることで、分散効果を狙いたい場合は、為替のバリュー取引や原油・ 金などへの投資が有効と考えられます。その中でも、為替のバリュー投資は分散効果だけではなく長期的な収益も狙いたい場合、金への投資は収益よりも株価の大幅な下落に対する分散効果を得たい場合と、目的に合わせて使い分けることが可能です。為替・コモディティの値動き、どう捉えるべき?為替はニュースで日々報道されますが、投資においては難しい存在だと感じます。特に米ドルベースで投資する時は、為替ヘッジも考えないといけません。まず、国際投資する時の為替ヘッジについてです。為替変動は短期的に外国株式のパフォーマンスに影響しますが、過去の100年以上のドルベースのデータを見てみると、自国通貨安になったり自国通貨高になったりする期間が交互にやっていきます。 【円/米ドルの為替変動】 出典:Googleファイナンス「アメリカ合衆国ドル から 円」2023年10月12日確認 つまり、世界経済の成長に合わせて値上がりする株式の場合、長期的には為替の影響はそこまで大きくありません。個人的には、長期的な株式投資においては為替ヘッジは不要かなと思います。次に、日本株式市場に限定します。日経225やTOPIXといったインデックスは、輸出関連の企業の時価総額が大きく、インデックスに与える影響が大きくなっています。みなさんご存知のように、円安になると輸出が有利で、逆に円高だと輸入が有利です。そのため、程度の話はあれど円安の方が円高よりも、輸出関連の企業の業績が上がり、日本のインデックスにはプラスの影響を与えます。そして、インデックスが伸びると言われています。日々の為替の値動きに対しては、どのように捉えたらいいでしょうか?物価の上昇率が高くて金利を上げた国の通貨は短期的に価格が上昇しますが、中長期的には下落しやすい傾向にあります。ここが、世の中の人が混乱しやすい為替の特徴かなと思います。また、個人的にややこしくなっている原因として、ニュース・新聞では短期的な値動きだけを報道して、国際経済学の教科書では中長期的な部分しか解説しないことが挙げられます。為替を全体的に把握できる機会が、そもそも少ないんですよ。なるほど。短期・中長期どちらの視点から見るかで、為替の捉え方が変わると言うことですね。では、債券やコモディティの値動きはどう捉えたらいいでしょうか?債券や金といった値動きが比較的緩やかな資産では、為替の影響が大きくなります。特に世界債券に投資する場合、金利の値動きを把握できても為替の予測をはずせば、パフォーマンスを大きく落とすかもしれません。なので、債券や金に投資したい場合は、為替ヘッジを おこなうか真剣に検討したほうがいいでしょう。個人的には、重要なパラメーターが2つ以上あると予測が難しくなるので、基本的に為替ヘッジをすることをおすすめします。また、金利と金の値動きは綺麗な逆相関の関係になることが多いので、金の価格を把握すると、金利の値動きがよりわかりやすいでしょう。 【米国債10年と金現物の値動き比較】 出典:SBI証券「米国債10年」2023年10月12日確認 ちなみに、日本はエネルギーを輸入に頼っているので、原油を中心としたエネルギー価格の変動は日本の景気に大きな影響を与えます。エネルギーは世界経済の必需品なので、経済の見通しを知りたいなら、エネルギー価格を把握するのがおすすめです。自分に合った投資戦略を作る方法投資のリスクとは、何かを犠牲にしてパフォーマンスを狙うこと自分がどの投資戦略を取ったらいいか判断するには、どうすればいいでしょうか?ご存知のように、投資することは資産関係なく何かしらのリスクを取り、その見返りとしてリターンを得ます。リスクとは、パフォーマンスを狙うために、何かを犠牲にしていることです。なので、気になる投資戦略を見つけたら裏側にある考え方、何を犠牲にしているか考えてみてください。先ほど申し上げたキャリートレードで例えると、株式と同じような値動きをするので分散効果を犠牲にしています。資産価値が減ってほしくない時にパフォーマンスが下がる可能性がある投資手法は、通常時は高いリターンが得られる傾向にあります。「リスクは値動きの幅」と聞いたことがありますが、値動きの仕方まで考えるとわかりやすいですね!では、そもそも投資のリターンは、何が原因で起こるのでしょうか?全て説明できる訳ではないですが、大きく3つ挙げられます。1つ目は、何かを犠牲にしている、何かのリスクを取っている見返りにリターンが生じます。上で説明した以外の例では、買いたい時に買えなくて売りたい時に売れない、流動性のリスクが代表的です。具体例として、不動産が挙げられます。注文と実際に取引するタイミングにズレがあるので、その分平均的なリターンが高くなる傾向にあります。2つ目は、なんらかの心理的バイアスが含まれている場合です。人間なので、どうしても感情的に判断してしまいます。感情に任せて取引する人もいるので、想定していた値動きにならない可能性があり、それがリターンにつながる場合があります。3つ目は、制度的な要因でリターンが生じる場合があります。例えば、銀行は四半期末にバランスシートのリスクを増やせないので、通常であれば 収益機会が残されたままの場合があります。そこに参入できれば、リターンを生み出すことができます。株式の例を参考に気になる金融商品を見つけたら、なぜリターンが生まれているかぜひ確認してください。そもそも分散投資って必要?個人の資産形成において、株式を主体とした分散投資が人気を集めています。株式以外に、なぜ債券や金などに投資した方が良いのでしょうか?資産の分散投資は、ポートフォリオの短期的な値動きの変動を抑えることが目的です。例えば年金基金だと、長期的に資産を増やしつつも毎年残高が引き出されるため、資産額を大きく変動させないことが求められます。そのため、債券や金などに投資して、ポートフォリオの値動きを抑えています。ただ、私たちのように投資の結果を20年30年後に求めている場合は、株式以外に分散投資すべきか一度立ち止まって考えるべきかなと思います。なぜなら、先ほど申し上げたように世界全体の株式市場は、長期的に見れば経済成長に合わせて株価は上昇し続けるからです。時間をかけるなら、株式だけに投資する選択肢も考えられると。では、どのような場合だと分散投資をした方がいいのでしょうか?もし分散投資したいなら、世界株式あるいは米国のインデックスへ投資して世界経済の成長と共に資産を増やしつつ、ポートフォリオの短期的な値動きをどうするか考えてみるといいでしょう。 【世界株式(MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス)の価格推移】 参照:三菱銀行「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)基準価格」2023年10月12日確認 例えば、シンプルに当面の生活費や医療費などを現金で貯蓄しながら、世界株式のインデックスに投資するだけでも十分な分散効果が得られます。まずは、つみたてNISA(2024年から新NISAに変更)やiDeCoで世界経済や米国のインデックスにを積立投資をしていただき、慣れてきたら他の資産に投資するか検討してみてください。分散投資は、あくまで世界株式に投資して世界経済の恩恵を受けることが前提なんですね。日本に住んでいるとあまり実感しにくいですが、1990年代のバブル崩壊の影響が強く、株式市場が成長するイメージが湧かないかもしれません。株価を見る時は、以下のように世界株インデックスや米国株インデックスを参考にすると、株式市場が成長していることをイメージできるでしょう。 【世界株式(MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス)とS&P500の値動き比較】 引用:Yahoo!ファイナンス「インベスコ MSCIコクサイ・インデックス基準価格」2023年10月12日確認 分散投資で起こりうるリスクを考えてみるもし分散投資で資産形成を始める場合、どのようなリスクを考える必要がありますか?世界株式のインデックス投資では、資産がゼロになることは考えにくいです。株価が上がり続けることがないように、下がり続けることもありません。ただ、ある程度投資に慣れていないと、日々の値動きの乖離に戸惑うと思います。ファイナンス理論的には下落している局面こそ期待リターンが高くなり、買うタイミングになることが多いのですが、個人で判断するのは難しいかもしれません。自分自身の投資で日々の値動きに耐えられないなら、ルールに基づいて運用してくれる積み立て投資・ロボアドバイザー・AI投資を考慮してもよいかもしれません。ちなみに、個別株で分散投資をしたい場合、何に注意したらいいですか?個別株だと、人によって投資する銘柄が変わりますよね。投資の仕方によっては、似たような企業にばかり投資してしまうでしょう。企業によって成長するタイミングは異なるため、長期的に考えると成長率が高い状態は永続しません。したがって、個別株ではどこかのタイミングで、投資する企業を入れ替える必要があります。このように、世界株と個別株では、同じ株式投資でも考え方が変わってくることを理解しておきましょう。投資する銘柄の数によって、ポートフォリオの値動きの仕方が変わることを理解しておくといいんですね。情報を客観的に捉えるために大切なこと先生のお話を聞いていて恐縮ですが、経済・金融に関する情報にはいろんな意見があります。情報を鵜呑みにせず情報を集めるには、どうすればいいでしょうか?意見を言っている人の経歴・実績を確認することに加えて、どの立場から言っているか意識することですね。その上で、企業・金融機関・研究者など、立ち位置の違う人の意見を取り入れることが大切です。また、短期的な見通しで意見を言う人もいれば、長期的な目線で話す人もいます。それこそ、為替の値動きは人によって、捉え方が大きく変わります。同じ円安でも、輸出企業と輸入企業で意見は反対になります。立ち位置が違う人の意見を取り入れると、判断が難しくなると思います。ただ、特定の立ち位置の人の意見だけ取り入れると考えが傾いてしまい、本来自分が取りたい判断が下せないかもしれません。極端にいうと、長期運用したいのにデイトレーダーの意見ばかり取り入れるのは、ちょっと違いますね。中立的な意見を言うことを意識していても、どうしてもその人の置かれている場所や経験が大きく影響します。実際、若い時に経験した内容によって、運用に対する考え方が変わることが、研究でも明らかになっています。私はイギリスに留学した経験があるんですが、当時はまだグローバル金融危機、ユーロ圏の債務危機、東日本大震災などの影響が残る時期でした。当然、長期的な経済の見通しにネガティブな印象を持っていましたが、景気が良い新興国から来た留学生はポジティブな見通しを持っていたんですよ。出身国の違いでここまで意見が違うのかと、ギャップを感じたことも今でも覚えています。先生のお話も鵜呑みにせず立場が違う人の意見も取り入れて、自分自身で判断できるようにしたいですね。今回はインタビューを引き受けていただき、ありがとうございました! 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CEOの研究から分かった、成長する企業・不正が起こる企業の違い|一橋大学 経営管理研究科 鈴木 健嗣教授
企業が成長するうえでCEO(Chief Executive Officer/最高経営責任者)の存在が大きいことは、なんとなく理解できるでしょう。ただ、企業を成長させるCEOとそうではないCEOの違いは、どこにあるのでしょうか?今回、一橋大学 経営管理研究科でCEOに関する研究をされている、鈴木 健嗣(すずき かつし )教授に「企業の成長とCEOの関係」についてお聞きしました。先生によると、CEOの性格・考え方が企業の成長にどう影響を与えるか、研究の世界では次々と判明しているとのことです。先生の研究内容を交えつつ、勤務先・取引先・投資先など、ご自身が関わる企業を深く知るためのヒントを探っていきましょう。取材日:2023年8月30日CEO研究の現状CEOの特徴によって企業は大きく変わる先生はCEOに関してさまざまな研究をされていますが、現在どのようなことが判明しているのでしょうか?研究の世界では、企業の収益性の変化に最も影響を与えているのは、CEOであることが判明しています。しかも、会社の名前・業種・規模など、他の要素よりも圧倒的な影響度があるんですよ。わかりやすい例として、年齢が挙げられますね。年齢の違いで投資判断も変わってくるのか、定年に近い人だとどうなのか、さまざまな条件で分析されています。生物学的な性別の違いも研究されており、男性ホルモンのテストステロンの分泌量が比較的多い男性のCEOは、中長期的にリスクを取って冒険する傾向があるんです。一方、女性のCEOは安定志向で、会社を潰さない経営を志向する傾向があることがわかっています。ちなみに、上記の論文が公開された後、海外のCEOはクリニックに行って、テストステロン注射を打ちにクリニックの列に並びに行っていることが、フィナシャルタイムズで公開されました。もはや生物学?!CEO研究は人間を研究することだった インタビュー時の鈴木先生海外CEOが注射を打ちにいくほど、経営においてテストステロンは重要視されているんですね……!年齢とともにテストステロンは減少していくので、結構重要なことなんですよ。何事も合理的に判断するのではなく、「やりたいからやる!」っていう思い切った決断も、CEOには求められます。急成長企業には冒険するCEOが常に存在するのです。例えば、個人投資家のお金を預かって運用するファンドマネージャーのテストステロンを調べてみると、業績が良いファンドマネージャーとテストステロンの多さに相関関係があることも判明しています。ちなみに、男性の手を見るのが好きな女性っているじゃないですか。単純に好きだから見ているんじゃなくて、実は無意識にテストステロンの多さを見ているという話もあります。テストステロンが多いと暴力的になるって言われていますが、実は仲間には優しくなったり女性にモテたりするなど、研究を通じていろんなことが判明しています。経営学のお話を聞きに来たつもりでしたが、ホルモンのお話が出てきてすごく面白いです!経営を研究するというより、もはや人間を研究している学問ですね。おっしゃる通りです。他にも、性格・経験・プライベートでのお金の使い方など、いろいろな角度から検証されています。要は、肉体的なことから心理的なことまで、人間の特徴が経営にどう影響するか、分析して実証することが我々の研究です。実は、経営学における初期の研究にも、どのような宗教・宗派を信じるかで経営方針は変わるのかっていうものもありますよ。CEOを取り巻く人間関係と業績の関係性「しがらみ」があることによる影響経営学って難しいイメージがありましたが、私たちにとても身近なお話ですね。では、先生は現在どのような点に注目して、CEOの研究を進めていらっしゃいますか?現在、しがらみについて研究を進めています。しがらみとは、会社での存在感が大きい人の影響で、本来取るべき経営判断ができないことを言います。やっぱり、良い意味でCEOが自由に経営できないと、会社が成長するのは難しいんです。じゃあ、なんでしがらみが生まれるかっていうと、お世話になった人への恩義があるから。先輩たちが残したものを本当は潰したほうがいいけど、先輩たちのおかげでCEOになれたから手が出せないんですよ。実際、「レシプロシティ(返報性)」という、やってもらったことに対して報いたいという心理があることが、科学雑誌「Science(サイエンス)」で掲載されていました。具体的には、どのようなしがらみを研究されているのでしょうか?私の研究では、自分をCEOに選んでくれた人が顧問や相談役のポジションにいることで、会社の経営にどのような影響を及ぼすか分析・検証しています。例えば、大きな戦略変更が起きやすいかどうか検証した結果、そうしたポジションに恩義のある方がおられると、戦略変更が起きにくいことが判明しています。併せて、経営者の選ばれ方に関しても研究しています。本来、企業の将来性を考えて有能な人を選ぶべきですが、前のCEOのえこひいきで選ばれる場合もあるんですよ。同じ大学出身とか同じ部署で一緒だったとか。自分が院政を引くために、息のかかった人を選ぶということですね。その結果、能力が低い人がCEOになって、会社のパフォーマンスが悪くなってしまう。しかも、えこひいきで選ばれたCEOは、次のCEOを選ぶ際にもえこひいきする可能性が高いこともわかっています。ちなみに、米国でのCEOの選ばれ方はどんな感じですか?日本は先輩後輩の関係を大事にして、米国は合理的に判断するイメージがあります。実は、米国ってめちゃくちゃコネと学歴社会ですよ。MBA持っているだけで給料めちゃくちゃ上がりますし、そもそもコネがないと就職するのも大変。米国ほどコネや学歴がものをいう国はなかなかありません。逆に言えば、人からの評価を重要視している社会と言えます。学歴も言い換えたら教授の評価ですし、信用される関係性を築いたから紹介されるわけです。人を通じた情報のやり取りに、高い価値があると考えられてるかもしれません。やっぱり人って、関係性がないと相手をちゃんと評価できないと思うんです。えこひいきで評価したらよくないけど、人を正しく見るという意味では、すごく大切なことじゃないかな。癒着が起きたりわざと良い取引をしなかったりするのも、人との関係から始まっているわけです。企業の代謝を上げるにはどうしたら、日本の大企業は変われるでしょうか?大企業は変わらなきゃいけないって言われておきながら、変わらない理由の1つとして、能力が高い人というよりはえこひいきで選ばれることが、連鎖的に起こっていることが考えられます。じゃあ、単純に有能な人がCEOになったら大丈夫かというと、そうとは限りません。なぜなら、時代は常に変化していて、その人の経験・知識が陳腐化する可能性があるからです。とはいえ、業績を上げて偉くなったわけだから、会社内でものすごい影響力を持ってしまい、誰も歯向かうことができない。だから、能力が陳腐化し会社の成長を阻害するようになったとしても、実績のあるCEOをやめさせることは非常に難しいんですよ。株主ですら、次のCEOを連れてきにくいと言われています。業績を上げて高いポジションに就いたとしても、常に変化が求められると。具体的な対策はないのでしょうか?一部の企業では、対策として任期制度を導入しています。どれだけ影響力を持っているとしても、任期が過ぎたら次の世代にバトンを必ず渡すことで、企業の代謝を維持できます。いずれ交代することがわかっているから、CEO候補の人は選ばれるために仕事を頑張れるんですよ。新CEOの就任直後は業績が悪くなる傾向にあるんですが、任期制度を導入している企業だと比較的安定することがわかっています。任期制度を導入すると目先の利益を追いかけて、長期的な投資ができないって意見もあるんですが、日本の場合は任期制度は上手く機能しています。じゃあ、なんで日本は任期制度を導入したら上手くいったのか研究すると、相談役・顧問が中長期的な目線で行動を促す役目を果たしていると考えられているからです。最初に相談役・顧問のしがらみが、CEOに悪い影響を及ぼすと言いましたが、ちゃんと役割を果たせたら良い側面もあります。企業の不正を防ぐには企業の不正事件がきっかけでCEOの研究に興味を持ったそもそも先生がCEOの選び方に興味を持たれたのは、どのようなきっかけがあったんですか?2011年に起きた「オリンパス事件」がきっかけですね。オリンパスが長年隠し持っていた不正会計を、当時のCEOであるマイケル・ウッドフォートさんが海外投資家向けに公表しました。 当時のオリンパス社長、ウッドフォード氏 出典:THE WALL STREET JOURNAL「オリンパスに嵐を巻き起こした男-ウッドフォード氏、会社人生を語る」なんで彼じゃないと不正が世に出てこなかったのか、長年不正を隠し続けられたのか気になって調べると、しがらみが影響していたことがわかったんです。もう1つ、きっかけがあります。2015年に起きた東芝の不正会計が発覚した後、CEOに就任した室町正志さんが役割を十分に果たせていないと感じたんです。なぜなのか調べてみると、やっぱり「先輩方が残したものに手を付けられない」っていうしがらみが影響していたんです。 当時の東芝社長、室町正志氏 出典:毎日新聞「東芝不正会計を見逃した超巨大法人の「節穴監査」」元々まったく異なるジャンルの研究をしていましたが、CEOによって企業の業績が大きく変わることに興味を持ち出して、現在の研究を始めました。法的整備が進んでも最後はCEOのモラルが重要企業の不正を防ぐには、どうすればいいのでしょうか?会社の不正はいろんなケースがあるので一概には言えませんが、ニュースでよく取り上げられるのはガバナンスの話ですね。近年、法的観点からガバナンスを改善する動きがあります。多少は改善されると思いますが、根本的な解決にはなりません。例えば、社外取締役はどのように選ばれるか調べると、ほとんどの場合が経営者の友達か名前が売れている人を連れてきます。友達の首はなかなか切れないし、名前が売れているからといって会社の状況を見抜けるとは限らない。特に忙しい人だと見る暇もありません。友達・能力がない・忙しい、この3つが揃っていると会社の意思決定に対して、評価することができません。結果、企業が不正を起こしても見逃してしまう。不正を防ぐための社外取締役も、結局トップのCEOが選んでいるから、根本的な解決にならないと…。テクニックとして、役員のインセンティブとしてストックオプションを渡す方法もありますが、合法的な範囲で利益操作はできるので、正しく機能しない場合もあります。例えば、あえて業績を下げておいて、株式の権利行使権が決まる前に引き上げる方法があります。現在は違法ですが、株価が低い時にストックオプションを渡したことにする価格操作(バックデート操作)が、日本よりもガバナンスが厳しい米国で頻繁におこなわれました。不正を防ぐためにガバナンスの仕組みをどれだけしっかり作っても、やっぱり抜け道は必ずあるんですよ。ガバナンスはあった方がいいけれど、最終的に重要なのは経営者のモラルなんですよ。企業を成長させるにも不正を防ぐにも、トップであるCEOによって左右されるのですね。企業の動きを見るうえで、たくさんヒントをいただきました。今回はインタビューを受けていただき、本当にありがとうございます!