実印を紛失したら?悪用されるリスクや対処法、変更の手続きを解説
市町村役場に登録を行い、法的に大きな効力を持つ実印。それだけに、紛失してしまった場合、大変なことになります。
実印は頻繁に使うものではないので、いざ使うとなった時に見つからないという方も多くいらっしゃいます。
ここでは、実印を紛失してしまった場合の対処方法や紛失しないための適切な管理方法などについて解説をしていきます。
目次
実印を悪用された場合のリスク
紛失した実印が悪意のある人の手に渡った場合、例えば下記のようなリスクがあります。- 勝手に借金の連帯保証人にされる
- ローンを組まれる
- 車や不動産の取引を行われてしまう
実印は印鑑証明書や各種身分証明書と合わせることで効果を発揮する印鑑です。
そのため、実印と共に印鑑証明書や身分証明書を紛失してしまった場合には上記の悪用のリスクが高まります。
それだけ重要な実印。紛失しないように適切に管理することはもちろん、紛失してしまった場合には迅速に対応することが大切になってきます。
紛失してしまったらすぐに廃止(廃印)手続き
実印を紛失したときに早くすべきことは、はんこを登録した市町村役場に紛失を届け出て、廃印手続きを済ませること。市町村役場に紛失の届け出を出すことにより、紛失した印鑑では印鑑証明の交付が受けられなくなります。
登録した実印を使用できなくした後に、新しく印鑑を再登録すればひと通りの手続きは完了です。
ハンコをなくすより危険!印鑑証明の交付を止めることでリスクを減らす
実印だけを紛失しても、それを不正使用することは難しいと考えられます。なぜなら、実印は印鑑証明とセットで効力を発揮する場合がほとんどだからです。そのため、印鑑証明の交付を止めることで不正使用される危険性を下げることが可能となります。
印鑑証明を発行するためには、実印に加えて実印の登録カードと免許証やパスポートなどの本人確認書類が必要です。
とはいえ、絶対に実印を複製をされない保証はありません。紛失に気がついたら早急に先の手順で廃印手続きを済ませることが大切です。
警察への紛失届け・盗難届けの提出
実印を登録した市町村役場に紛失の連絡を行い、廃印届けを提出したら、警察にも紛失届けを提出しましょう。紛失届を提出し、紛失届提出証明書を発行して貰って下さい。また、紛失ではなく盗難の可能性がある場合には、警察には盗難届を提出するようにしましょう。
廃印届けの手続きは紛失でも盗難でも同様ですが、盗難の場合は盗難届出証明書を発行して貰い、捜査依頼をすることが重要です。
関係各所への連絡
警察への届け出が終了したら、以前に実印を使用して契約を結んだ関係各所や取引先などに連絡をしておきましょう。前の実印が使用できなくなったからといって、過去に結んだ契約の効果が無くなる訳ではないので安心して下さい。
実印紛失時の対応まとめ
それではここで、実印を紛失した時の対応をまとめておきましょう。大きな流れは以下の3ステップです。- 市町村役場への紛失届けと廃印届けの手続き
- 警察への紛失届けの提出
- 関係各所への連絡
上記の流れを済ませば実印を紛失した時の対応は万全です。余程のことがない限り不正利用される心配はありません。
慌てずに新しく実印登録を行うための印鑑を作成して、満足のできる新しい実印を購入して下さい。
印鑑を再登録して実印を変更・再発行
紛失はもちろん、実印の盗難や破損などで登録してある実印が使用できなくなった場合には印鑑の再登録が必要になります。実印を紛失した場合、まずは紛失届けを提出し、廃印手続きを済ませましょう。
変更・再登録の大まかな流れは?
廃院届けを済ませた後に行うべき再登録の流れは、大まかに以下の通りです。なお、この内容は実印の所有者本人が再登録を行うケースを想定しています。それでは、それぞれの内容について簡単に見ていきましょう。
- 申請書(改印届)に記入
- 再登録する印鑑と共に申請書(改印届)を提出
再登録時に提出する書類は「印鑑登録申請書」です。自治体によって呼び名に違いがある可能性がありますが、内容はほとんど同じです。
申請書は窓口にあるので、わからない場合は職人の方に聞いて受け取り、正しい内容を記入して下さい。
再登録とはいえ、紛失届けを済ませた後の大まかな流れも、最初に印鑑登録を行なったときとあまり大差はありません。
申請書に記入する内容などもそこまで変わらないので、スムーズに再登録を進められます。
変更・再登録に必要な持ち物や身分証明書について
実印の再登録時に必要な持ち物は、下記の通りです。- 新しく登録するはんこ
- 申請書
- 本人確認書類
また、実印は紛失しても印鑑登録カードは手元にあるという場合は、カードも合わせて持参するようにしましょう。
再登録の申請書は窓口で貰えるほか、自治体によってはホームページでPDFファイルを公開している場合もあります。もちろんプリントアウトした申請書でも申請は可能。
事前に申請書を取りに行くのが面倒な人や当日役所で記入を行うのが面倒な人はあらかじめ自宅で申請書をプリントアウトして必要事項を記入しておくのがおすすめです。
また、有効期限内の免許証やパスポートなど顔写真付きの身分証明書を持っている場合には、本人確認書類もそれらを用いれば問題ありません。
顔写真付きの身分証明書を持っていない場合には、文章照会方式と呼ばれる方法や印鑑登録を済ませている第三者が保証人となる保証人方式などを用いることで本人確認が行われます。
顔写真付きの身分証明書以外を用いる場合には、事前に必要な書類などを窓口の担当者に確認しておきましょう。
このように実印の紛失による再登録は非常に手間がかかります。上記では紛失した実印の所有者が手続きを行う方法を紹介してますが、実印の再登録は各自治体の役場で手続きします。
そのため、仕事などで実印登録をする時間を取れない方もいらっしゃるかと思います。どうしても実印の所有者が手続きに行かれない場合は、代理人に登録を委任することが可能です。
下記で代理人について説明しているので見ていきましょう。
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はんこの再登録は代理人でもできるの?
実印の再登録は代理人でも可能です。印鑑登録を行う自治体によって多少の仕組みの違いはあるかもしれませんが、大抵の自治体が同様の方法を採用しているでしょう。代理人による実印の再登録には、下記の2つが必要です。
- 委任状の作成
- 保証人の有無
それぞれ順番に確認していきましょう。
委任状の作成
代理人による実印登録を行うためには、委任状が必要となります。委任状といっても専用の用紙がある訳ではなく、ワープロで作成した用紙をプリントアウトして自ら記入しても良いですし、便箋などに直筆で全て記載しても問題ありません。
インターネットで検索すれば委任状のサンプルはすぐに見つかります。自治体によってはホームページ上で委任状のサンプルを公開している場合もあります。
まずは、自分が実印登録を行う自治体のホームページを確認してみましょう。そこで公開されているサンプル通りに作成するのが、最も手続きがスムーズに進む方法です。
ホームページで公開されていないようであれば、事前に電話等で担当者に確認するのがおすすめです。
保証人の有無
代理人による実印登録を行うためには、第三者が本人の意志に基づく申請であることを証明する必要があります。これには一般的に2つの方法があります。
- 保証人を立てて本人の意志を証明する保証人方式
- 転送不可郵便で本人宛てに照会書を郵送する文書照会方式
なお、ここで注意すべき点は印鑑登録を行う代理人は保証人を兼ねることができないということです。また、保証人は既に実印の登録を済ませている人物である必要もあります。
文章照会方式は保証人を立てる必要が無いことがメリット。しかし、転送不可郵便で郵送されてきた照会書に同封されている回答書に署名を行い、申請から30日以内に再度役所に持参する必要があります。
2度目に役所へ行く人も本人ではなく代理人でも問題はありませんが、何度も役所へ足を運ぶ必要があるため単純に手間がかかってしまうというデメリットがあります。
その点、代理人のほかに保証人が立てられる場合、保証人方式であれば、代理人による登録であったとしても一度の訪問で全ての手続を済ませ、即日登録を行うことが可能です。
自ら足を運んで再登録をすることが出来ない状況の人であれば、代理人による申請は仕方のないことです。手伝って貰える家族やご友人などと相談の上で最も良い方法を選択すると良いでしょう。
大切な印鑑を紛失しないために管理方法を紹介
実印は不動産売買や遺産の相続、保険の契約など重要な取引において使用される印鑑。法的な効果も非常に強いため、日常的に使う認印などと比べると圧倒的に紛失したときのリスクが高いはんこだということを理解しておくことが大切です。
実印を紛失したまま放置していると他人に悪用され、勝手に重要な契約などを結ばれていた、ということもありえます。
したがって、実印には必然的に紛失しない管理方法、つまり不正に使用されないための適切な管理方法が求められるといえます。
適切な管理方法には多少の労力やコストはかかりますが、悪用されたときのリスクを考えれば十分な対策を取るべきです。
実印と印鑑証明をセットで保管するのは危険!
まず、実印は印鑑証明とセットになることで法的な効果を発揮するケースが多いことを理解しておくことが必要。印鑑証明のほかにも、免許証やパスポートなども同様です。したがって、一番避けるべき管理方法は実印と印鑑証明などを一緒に保管しておく方法です。
便利だからといって、同じ場所で管理しておくと盗難などで悪用される危険性が最も高くなります。絶対に避けて下さい。
管理している本人が安全だと思っていても、保管場所を知っているほかの家族が紛失したり騙されて悪用されたりする可能性も否定することはできません。
実印と印鑑証明は別々の場所に保管しておくことが重要です。
実印は金庫に保管するのが理想的!銀行の貸金庫もおすすめ
一番安全な方法は実印を金庫に保管しておく方法です。金庫での保管は単純にセキュリティ性が高く、紛失を防ぐという点に加え、保管場所を忘れにくいという点でもおすすめです。実印は、認印や銀行印などと比べて使用頻度が高い訳でもありませんから、金庫で厳重に保管していたとしても不便に思うことはないでしょう。
また、金庫の中でも最も理想的なのは銀行の貸金庫。管理が行き届いた銀行の貸金庫であれば、自宅の金庫よりも安全だと考えられます。
ただし、金庫を持っていない人や家に置くスペースの無い人も大勢いることでしょう。こういった人にも銀行の貸金庫はおすすめです。
貸金庫の料金は銀行のホームページを見れば分かります。小さな金庫程値段は安くなりますから、実印程の大きさのものであれば大きな金額にはなりません。
重要な実印の紛失を防ぐために万全に万全を期すことのできる銀行の貸金庫。一度検討してみる価値はあります。
他人に預けない!自分で責任を持ってハンコの管理を
何よりも大切なことは他人に実印や銀行印を預けないということです。「家族だから、両親だから大丈夫」といったことはないので、自分の実印は自分自身で管理するようにしましょう。
これらのポイントをしっかりと抑えていれば、紛失する危険を可能な限り減らし、悪用される心配も無くなります。
以上で実印を紛失したときの対処方法に関する解説を終わります。実際に紛失してしまった場合には、慌てることなく落ち着いて対処をして下さい。
正しい対処を行えば不正利用される危険はありません。そして、常日頃から紛失しないための正しい管理方法を実践して下さいね。
実印は1人1本しか登録することができない重要な印鑑。大きな契約や身分証明にも使用する印鑑ですので、印影が偽造や複製されてしまうと大変です。
実印用の印鑑を作成する際にはいくつか気をつけるポイントがあるので、再登録するために実印を作成し直すという方は以下のページを確認しましょう。
実印作成のポイントを確認する
実印の紛失に関するよくある質問
こちらでは、実印の紛失に関してよく寄せられる質問を紹介します。あわせて参考にしてください。もし紛失した実印が見つかった場合はどうすればいい?
警察に実印の紛失届を出していた場合、紛失した実印が見つかることもあるでしょう。紛失した実印が戻ってきても、使用することは危険なので控えましょう。実印の印影がコピーされ、悪用される可能性もあります。
また、戻ってきた実印を処分する際は、印面をカッターなどで傷つけ、名前を識別不可能にしてから捨てるようにしましょう。
法人(会社)実印を紛失した場合はどうすればいい?
個人の実印ではなく、法人実印を紛失した場合はどうすればいいのでしょうか。法人実印を改印するには、印鑑(改印)届書を管轄法務局へ提出します。印鑑(改印)届書には、下記の3点が必要になります。
- 新しく届け出る会社実印
- 印鑑を届け出る代表者の個人実印
- 印鑑を届け出る代表者の個人印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
※「柘」の取り扱いがないサイトは薩摩本柘の価格を記載
※代理人が提出する場合は、代理人の認印も必要
また、法人実印(代表者印)には作成にあたりルールがあります。ルールを満たすように作成しないと受理されないため、注意が必要です。
下記記事では、法人実印(代表社印)の作成ポイントについても解説しています。法人実印作成の前に、ご一読ください。
法人印鑑の作成ポイントを確認する