冷蔵で届ける手作りの味—つくりおき.jpが叶える家庭の食のニューノーマル
「毎日の食事づくりに追われる生活から、もっと大切なことへ時間を使ってほしい」
そんな想いから誕生した宅配食サービス「つくりおき.jp」が、いま注目を集めている。
共働き世帯の増加とともに「作りたくても作れない」「あと一品欲しいのに…」という声は切実さを増すばかり。
プロの料理人が手がける本格的な作り置きを、LINEという身近なツールで注文できる。
仕事の合間でも注文できる利便性、栄養バランスへのこだわり、そして何より確かな品質。
日本の食卓の未来を見据えた、その誕生秘話から将来の展望まで、サービスの全貌に迫る。
インタビュイー
鷲頭 史一氏
株式会社Antway
CPO(最高プロダクト責任者)
CPO(最高プロダクト責任者)
大学院卒業後、株式会社mixiに入社。ゲーム事業の新規開発に携わり「ファイトリーグ」他の新規タイトルに参加。ライフスタイル事業部へ異動後は、事業責任者として転職支援SNS「feeli」を立ち上げ。その後、ヘルスケア領域のベンチャーでプロダクトマネージャー担当を経て株式会社Antwayに参画。現在は、CPO職に加え、プロダクト本部にて5部門の本部長を兼任。
目次
環境が変われば、人生が変わる!幼少期の体験が生んだ宅配食サービス
―――つくりおき.jpの開発の背景について教えてください。
つくりおき.jpは、代表の前島の幼少期の経験から事業構想を得て、一人で立ち上げたところからスタートしました。
熊本出身の前島は、小学生時代に集団行動が苦手で不登校を経験しましたが、関東への転居を機に新しい環境で活き活きと過ごせるようになりました。
この経験から、その人自身が変わっていなくても、置かれた環境によって人生が大きく変わり得るという気づきを得たそうです。
事業のもう一つの原点は、前島が子どもの頃に経験した家庭環境です。
父親がうつ病で一時期働けなくなった際、母親が家計と家事の両方を担わねばならない状況を目の当たりにしました。
この体験から、特に女性に偏りがちな家事負担によって、本来なら仕事や家族との時間、趣味などに使えるはずの時間が制限されている社会課題に着目したそうです。
ユーザーリサーチを通じて、家事の中でも特に料理が時間的にも精神的にも大きな負担となっていることが判明し、その解決策としてつくりおき.jpを立ち上げました。
―――つくりおき.jpのサービスの強みや特徴は何でしょうか?
当社のサービスの最大の特徴の一つは、家事における義務的なタスクを徹底的に削減して、とにかく楽であるという点です。
例えば、通常のミールキットの場合、最後の調理や後片付けまで、合わせて20分程度必要でしょう。
また、冷凍弁当でも4人分を温めるとなると同様に20分ほどかかってしまいます。
一方、私たちのサービスは冷蔵配送で、おひたしなどの冷菜は、受け取ってすぐに食べられ、温める必要のある主菜も3〜4分程度で準備できます。
冷菜、温めた主菜、ご飯、味噌汁を組み合わせれば、わずか5分程度で食事の準備が完了します。
さらに、調理器具を使用しないため、洗い物も食器類のみで済み、容器は捨てるだけです。
もう一つの強みは、お客様の精神的な負担を解消する点にあります。
冷凍弁当やコンビニ弁当は一時的な利用であれば問題ありませんが、毎日家族に提供することには少なからず罪悪感や抵抗感が伴うと思います。
特に栄養バランスの面で不安を感じる方もいらっしゃいます。
つくりおき.jpでは、管理栄養士が栄養バランスを考慮してレシピを作成し、プロの料理人が手作りした料理を冷蔵のままお届けします。
自分で作るには少し手間がかかる料理を、大人も子供も一緒に食べられる薄味で、丁寧に手づくりしています。
冷蔵でのお届けなので、出来立てそのままの美味しさで、夕食以外にも朝昼の1品にしたり、アレンジも自由自在です。
さらに、メニューが週替わりで変化するため、日々の食卓に変化をつけることができます。
このような特徴から、長期的な利用を前提としたサービスとして、多くのお客様から支持をいただいています。
―――プロの料理人や管理栄養士と協力して作られたというメニューのこだわりのポイントや、開発過程でのエピソードについて教えてください。
当社は、お客様からのフィードバックを基に、常に迅速な商品開発を行っています。
毎週実施しているアンケートを通じて、お客様からの生の声や満足度、継続率などのデータを即座に分析し、チーム全体で商品改善に活かしています。
他社でもお客様の声を商品開発に反映させる取り組みは行っていると思いますが、当社ほど迅速かつ直接お客様の意見を収集し、開発に活かしている例は少ないでしょう。
顧客起点の開発サイクルの速さが、当社のメニュー開発のこだわりの一つです。
例えば、魚料理は、家庭での調理に手間がかかる一方で、市販の惣菜は揚げ物が中心となっており、焼き魚や煮魚といった日常的な魚料理を手軽に楽しむ選択肢が限られているというお客様からの声がありました。
そこでつくりおき.jpでは、フライなどの一般的な惣菜メニューに加えて、家庭的な焼き魚や煮魚などの料理も提供しています。例えば魚料理は、魚を捌いたり、骨を取ったりする調理工程を考えると調理のハードルが高くなりがちです。
そのため、家庭料理としては浸透しているものの、調理の負担が高かったり、スーパーや市場で入手しづらかったりする魚を使用した魚料理も積極的に開発しています。
メニュー開発の課題の一つは、子供から大人まで、家族全員が同じ食事を楽しめるための幅広い年齢層に対応しているかどうか、ということです。
別々の食事を用意する手間を省くため、幼児向けすぎず、かといって大人向けすぎない、バランスの取れたメニュー作りを追求しています。
例えば、豚骨ラーメンのように大人には美味しくても子供には適さない料理もあり、全年齢層が満足できるメニューの開発には試行錯誤しているんです。
また、一つのメニューを開発する際には、最低3〜4回の試作を重ねています。
これは、テストキッチンと実際の工場では、調理器具のサイズや食材の状態が異なるためです。
家庭での調理以上に大規模な食品工場での生産には独自の課題があり、その都度最適な味と品質を実現するために、何度も試作を続けています。
以前は問題なく提供できていたメニューでも、規模が大きくなることで様々な制約が生まれ、提供が難しくなるケースが発生するんです。
また、お客様の増加に伴って、より多様なニーズへの対応も求められるようになってきました。
メニュー開発においては、事業の拡大とともに日々新たな課題が生まれ、その解決に向けて努力を重ねている状況です。
―――ありがとうございます。その上で、おすすめのメニューを3品あげるとしたら、何でしょうか?
当社の一番の人気メニューは、トマトハンバーグです。
ハンバーグ系のメニューは、子供から大人まで幅広い年代に人気があります。
また出汁を使った煮物系の料理も人気です。
作り置きという形式と相性が良く、時間とともに味が染み込んでより美味しくなる特徴があり、プロの料理人による絶妙な味付けが好評です。
これから冬に向けて提供予定のチーズフォンデュのような、家族で楽しめるメニューも用意しています。
温めて最後にチーズをつけて食べるという、食事の楽しさも演出できるメニューとなり、おすすめの一品ですね。
家事の外注に罪悪感はいらない!時間の余裕が作る心の余裕
―――プランや料金体系でのこだわりを教えてください。
ユーザーリサーチを通じて、共働き世帯や子育て中の家庭が最も苦労しているのは、日々の食事の準備であることが分かりました。
そこで、週の半分以上の食事を賄える量と、継続利用しやすい価格設定を重視しています。
1食あたり700円台という価格は、2,000円近くかかるデリバリーサービスと比べても、かなり手頃な価格設定となっているでしょう。
この価格を実現できている主な理由は、サブスクリプション型のビジネスモデルにあります。
お客様が継続的に利用してくださることで、需要予測が立てやすく、食材の廃棄ロスを最小限に抑えることができているんです。
一般の飲食店では来客数の予測が難しく、食材の廃棄が避けられない面がありますが、当社では大規模な運営にも関わらず、廃棄をほとんど出さない効率的な運営が可能となっています。
このような無駄を省いた運営により、適正価格でのサービス提供を実現しています。
―――忙しい方が使いやすいサービスを提供されているという印象を受けます。特にLINE登録して注文する仕組みを導入したのはなぜでしょうか?
当社では創業当初から、忙しい顧客層の利便性を考慮し、LINEでの注文システムを導入しています。
新たにアプリをダウンロードする手間を省き、日常的に使用しているLINEを活用することで、友達登録だけで簡単にサービスを利用開始できる仕組みを整えました。
また、お客様の都合に合わせて注文でき、休会や解約は無料です。
毎週の注文を義務付けることなく、柔軟に利用期間を調整できる点も、働きながら家事をこなす方々から好評を得ています。
―――お客様の声で特に印象に残っているエピソードはありますか?
以前、お客様へインタビューをした機会がありました。その際、特に印象に残っているエピソードがあります。
ある女性のお客様は、当初、家事の外注に対して罪悪感があり、つくりおき.jpの利用を躊躇していたそうです。
しかし、周囲に当たり前のようにサービスを活用し、時間を有効活用している友人たちがいることに気付き、自分の考えが変わったと言うお客様がいました。
実際にサービスを利用し始めてからは、以前は時間が取れなかった小説執筆の時間が確保できるようになり、生活に余裕が生まれたそうです。
その結果、家族への接し方にも良い変化が現れ、むしろ早く利用を始めておけばよかったと感じたとのことでした。
当社のサービスが目指す理念が、お客様の体験として実現された好例だったので、このお客様のエピソードは特に印象深いものとなりました。
また、私たちのサービスを通じて、食を介した家族の新たな発見や成長の瞬間を共有できたことを、多くのお客様からお喜びの声としていただいています。
例えば、お子様が今まで苦手だと思っていたナスを美味しく食べていたり、普段は避けていた煮物を進んで口にしたりする姿に、保護者の方々も驚きと喜びを感じられるようです。
普段苦手だと思って、食卓に出さなかったものの、つくりおき.jpで届いた料理がきっかけで、お子様にとっては新しい味との出会い、保護者の方にとってはお子様の未知の一面を発見できる機会を提供できたことは、当社としても嬉しい限りです。
楽になる×楽しさ。「日々のゆとりを、つくりおき。」に秘められた思い
―――ここ数年で、人々の食のニーズはどのように変化していますか? また、昨今では特にどのようなニーズが多いのでしょうか?
コロナ禍とその後の変化によって、食生活に関する消費者の意識と行動が変わった部分があります。
在宅勤務中は自炊の時間も確保できていましたが、出社勤務が再開してからは、多くの人が出社し、通勤時間や仕事量の増加など、全体的な忙しさが増えるようになりました。
その過程で、コロナ禍に普及したデリバリーサービスの利便性を実感した人が増え、食事の準備に掛かる時間と手間を省くための選択肢として、こうしたサービスを積極的に活用する傾向が強まっています。
まだ完全な定着とは言えませんが、日常的な食事をデリバリーで賄うという習慣は、少しずつ社会に浸透しつつあるように感じます。
―――「つくりおき.jp」が目指す未来の食生活とは何ですか?
弊社のキャッチコピーである「日々のゆとりを、つくりおき。」には、「楽になる」と「楽しむ」という二つの意味が込められています。
昨今、完璧な栄養バランスを謳う食品が増えていますが、その多くは味わいの面で物足りなさを感じさせます。
一方、弊社が目指すのは、食事の手間を減らすだけでなく、食卓の豊かさも同時に提供することです。
普段目にしないような野菜や魚を使った料理、その食材にまつわるストーリーなどを通じて、家族の会話が弾むような体験を創出したいと考えています。
効率や利便性だけでなく、食事本来の楽しみも大切にした、より豊かな「ゆとり」を提供できるよう、今後もサービスの品質強化に努めていきたいです。
一人一人の「良かった!」が変えていく社会。家事を背負いこむ義務感を手放して。
―――最後に、読者の皆様にメッセージをお願いします!
休日など時間に余裕がある時の料理は、趣味や楽しみとしていいのですが、毎日の食事の支度が義務的な負担になっているのであれば、その時間を家族との時間に使うこともひとつの選択肢ではないでしょうか。
両親が心に余裕を持って穏やかに過ごせることは、子供たちにとっても嬉しいことだと思うのです。
家事を自分で完璧にこなそうとするのではなくて、日常の料理という義務的なタスクを外部に任せることで、新しいライフスタイルが見えてくるかもしれません。
まずは一週間でも、義務のタスクを任せてしまうという暮らし方を試してほしいと思います。
初めての方におすすめのプランは、最も利用しやすい3食プランです。
平日が忙しい方であれば週の前半に、また週末に料理から解放されたい方は木曜日や金曜日に料理を受け取っていただくことで、土日のお昼などにも活用できます。
また、朝昼晩の全ての食事を手軽に済ませたい方にも多く使っていただいているんです。
ライフスタイルに合わせて柔軟な使い方が可能なので、ご自身に合った活用方法を見つけていただければと思います。
共働き世帯の増加や女性の社会進出が進む中、私たちのサービスも日本社会の変化に応じた支援的なサービスとして、メディアでも積極的に取り上げていただけるようになりました。
一方で、「家事は全て自分でやらなければならない」と考えている方はまだ多くいらっしゃいます。
このような状況を変えていくために、サービスを利用して良かったという経験を、SNSや口コミで周りの方々にお伝えいただけると嬉しいです。
一人一人の「良かった!」という声が、社会の意識を少しずつ変えていくきっかけになるのではないでしょうか。
つくりおき.jpの公式サイトを見る
つくりおき.jpの解説記事を読む
インタビュアー
新井 那知
HonNe編集部
埼玉県・熊谷市出身。渋谷の某ITベンチャーに就職後、2016年にフリーランスライターとして独立。独立後は、アパレル、音楽媒体、求人媒体、専門誌での取材やコラム作成を担当する。海外で実績を積み、帰国後はクライアントワークを通してライターとして日々取材や編集、執筆を行う。現在は「未来のあたりまえをインストールするWebマガジンSo-gúd(ソウグウ)」の編集長を務める。