
忙しい生活に寄り添うパルシステム:ミールキットの可能性
「忙しい毎日の中でも、料理の幅を広げつつ栄養バランスにも配慮した食事を手間なく作りたい」。そんな願いを叶えてくれるのが、パルシステムのミールキット。
短時間で本格的な料理が簡単に作れる上、メニューの種類も豊富。厳選された国産野菜や「調味料(アミノ酸等)」不使用の調味料など、食の安全面へのこだわりも徹底しています。
食事を準備する負担を減らし、豊かな食卓を提供してくれるこのミールキットの魅力を、本記事で詳しくご紹介します。

インタビュイー
黒井洋子氏
パルシステム生活協同組合連合会
産直事業本部農産加工課 課長
産直事業本部農産加工課 課長

インタビュイー
高橋きみ代氏
パルシステム生活協同組合連合会
事業本部営業部営業企画推進課 主任
事業本部営業部営業企画推進課 主任
4歳児を育てながら時短勤務中のお料理児セットユーザー
目次
パルシステムならではの食材を詰め込んだミールキット

※引用:パルシステム公式HP
―――まずは、パルシステムのお料理セットとはどのような商品でしょうか。
黒井さん:お料理セットは、簡単に調理ができるミールキットです。世間的には、「ミールキット」と呼ばれることが一般的ですが、パルシステムでは「お料理セット」と呼んでいます。
カット済みの野菜に、肉や魚といった食材、それにプラスして添付調味料とレシピがセットになっています。野菜と肉はすべて国産にこだわり、添付のたれも「調味料(アミノ酸等)」は不使用の商品を取り扱っています。このサービスは2014年にスタートし、2024年で10年目を迎えることができました。
―――サービスを立ち上げた経緯を教えてください。
黒井さん:社会的背景としては、共働きの家庭が増えてきていたことが挙げられます。その後、コロナ禍に入ったこともあり、市場全体を見ても宅配食の需要が高まっていきました。
またレシピと人数分の必要な食材がセットされているミールキットは、現代のニーズにマッチした商品として様々なところで販売が開始されました。 パルシステムの方針の『組合員のくらしの課題解決』という理念から、共働き世帯をサポートする商品として、2014年から3種類のお料理セットでサービスを開始しました。
―――特に大切にしている価値観や、他社との差別化を図っているポイントは何でしょうか。

黒井さん:まず、国産へのこだわりです。肉と野菜は必ず国産のもので、顔が見える生産者(産直)の食材も多く使用しています。2017年には群馬県板倉町に自社工場を建て、子会社の『株式会社パルライン』が運営しています。 自社工場製造分はすべてパルシステムが開発した商品であり、規格外品や余剰となった野菜も積極的に活用しています。パルシステムは生協なので青果の宅配もしていますが、出荷基準があり、産地と作付計画から打ち合わせをする中で、サイズや傷などの理由で規格外品が出てくることがあります。
これらはカットして傷を取り除けば食味に問題はありませんし、生産者が作った食品をなるべく無駄にならないように使用しています。このように、生産者の支援にもつながる取り組みも行っています。
また、PB(プライベートブランド)商品には調味料からお肉やお魚、カットわかめ、豆腐などの副材まで幅広く揃えており、お料理セットにも取り入れています。組合員にとって普段あまりなじみのない調味料は、大容量だと手が出しにくいと思うんです。そこで、お料理セットに小袋タイプの調味料を内包し、味や使い方を知る機会を作っています。
―――食材を調達する際に重視していることは何ですか?
高橋さん:私たちの役割は、全国に広がるネットワークを活用、おいしい食材を安定的に調達することだと考えています。そのため、複数ある産直産地と連携し、それぞれに当会の基準に基づいた方法での栽培をお願いしています。近年、天災などの影響で収穫量が減少することも増えていますが、これまで築いてきた信頼関係をもとに産地の方々と協力しながら供給を維持しています。
また、当会では年間契約を行うことで、食材価格の安定化を図っています。お料理セットの販売価格は変動が少ないので、市場で野菜の価格が高騰すると、より多くの組合員の方々にご利用いただける傾向があります。家庭でさまざまな食材を揃えるのは手間もお金もかかりますので、こうしたお料理セットの需要につながっているのではないかと思います。
単身世帯にも需要が拡大。野菜価格が高騰しても多種多様な野菜を食卓に

―――サービス開始後から顧客ニーズの変化はありましたか? また、その転機となった出来事は何でしょう。
高橋さん:当初は30〜40代の共働きの主婦・主夫を主なターゲットにしていましたが、コロナ禍を機にニーズに大きな変化が見られました。
テレワークの普及に伴い、一人暮らしのランチ需要が増加し、それに対応したメニューが伸びています。また、旅行の制限により、郷土料理や世界各国の料理を自宅で楽しめるメニューの需要も高まり、現在も引き続き人気があります。
最近では、消費者の深層的にバランスの良い食事、野菜をしっかり摂りたいという気持ちをお持ちです。高齢の方をはじめ、「野菜は食べたいけど、さまざまな種類を買うと高いし使いきれない」というような悩みが増えており、このような方々が徐々にミールキットを利用し始めています。
今までは2〜3人前のセットを中心に提供していたのですが、現在は高齢の2人世帯でも食べきれる1.5人前のセットも導入しています。今後も市場動向を見つつ組合員の声を聞きながら、選択肢を増やしていければと考えています。
―――お料理セットの中で特に人気のあるメニューやおすすめは何ですか?
また、一番メジャーな商品トマト風味のドライカレーには、国産トマトを濃縮還元したプライベートブランド商品のトマトジュース『濃いトマト(食塩無添加)』を使用しています。
このトマトジュースは1本100円ほどですが通常は24本セットでの販売のため、個人で購入するには少しハードルが高いかもしれません。しかし、お料理セットに使うことで、飲むだけでなく調理にも活用できることを知るきっかけになればと思います スープ系の料理も人気で、煮込むだけでボリュームがあって栄養価が高い一品を、短時間で用意できるところが高く評価されています。

※引用:パルシステム公式HP 商品図鑑
高橋さん:有機の若芽ひじきの炒め物もおすすめです。若芽ひじきはお浸しが定番ですが、炒めるとシャキシャキとした食感が楽しめます。若芽ひじきを購入したことがない方や調理法がわからないという方にも試してもらいやすいメニューです。 あとは、「水餃子のジェノベーゼソース(ラビオリ風)」も食べてみてほしい一品です。ジェノベーゼソースと生クリームで餃子を煮込み、ラビオリのように食べるセットで、ジェノベーゼソースの新しい使い方が発見でき、料理の幅が広がるはずです。
食材へのこだわりから環境配慮まで、価格以上の価値を提供するパルシステムのお料理セット

―――再生素材を使用したパッケージなど、環境に配慮した取り組みも行われていますよね。
黒井さん:当会では環境への配慮を重視しており、特にプラスチック削減を方針として掲げています。ミールキットを始めた当初から再生原料を55%使用したプラスチック製トレイを採用していましたが、2年前にはこのトレイを紙製に切り替えました。 当時、市場には食品用のモールド系紙製トレイがなかったので、たまご用のモールドパックを製造していただいているメーカーに新たに製作してもらったんです。 メーカーも初挑戦で、大きさや形などを一緒に考え、何度も試作を繰り返し、強度を確認しながら一緒に作り上げました。

▲たまご用のモールドパック
ただ、紙は強度に限界があるので、少量のプラスチックのパルプ繊維を混ぜて強度を上げています。ですので、今は、このパルプ繊維を使用しない、完全にプラスチック使用量ゼロ紙製トレーを目指して頑張っているところです。
また、従来のプラスチックトレイのように、回収後に溶かして再利用する水平リサイクルの仕組みを、紙製トレイにも導入することを目指しました。「紙製だから一般の資源ゴミに出せばいいよね」ではなく、リサイクル可能な仕組みを構築していました。
―――コストと品質とのバランスを取るのが難しいところですね。
黒井さん:そうなんです。ほかの生協やメーカーと比較すると単価は少し高めかもしれませんが、その分、高品質な商品を提供することにこだわり、環境に配慮した取り組みもおこなっています。忙しい毎日を送るお客様に、ミールキットを使うことは手抜きではなく、むしろ手軽に栄養のあるおいしい食事を作ることができる方法ということを伝えたいですね。
―――御会のサービスについて、「消費者に伝えきれていない」「もっと知ってもらいたい」と感じている点はありますか?
高橋さん:学習会などで工場見学をしていただいたり、ムービーで工場の様子をご覧いただくと、食材のカットや袋詰めなどを手作業でおこなっていることに驚かれることがあります。自社工場では、品質や安全性を担保するために機械化はもちろん、人の手で作業する工程も採用することで、より質の高い商品を提供できる体制を構築しています。
こうした一手間を知っていただくことで、「この価格は妥当だよね」と言っていただけています。

黒井さん:肉や卵の生産においても、餌や飼育環境に気を配り、ストレスを少なくできるよう育てています。このような商品の裏側をもっと多くの方に知ってもらいたいです。
―――ご利用された方の反響や、特に印象に残っているエピソードについて教えてください。
黒井さん:お料理セットはリピート率が高い商品であり、利用した組合員から味や使い勝手も含めて、高く評価されています。
学習会などで組合員と話をしていると、「来週のメニューは何にしようか」とお子さんと選んでいるとか、ミールキットを親子で作ったりしているというエピソードをよく耳にします。今まではお母さんがおこなっていた料理に子どもやお父さんも参加するようになったとか、ミールキットを使うことで家事の負担が軽減され、家族で過ごす時間が増えたという喜びの声も寄せられています。
また、普段とは違う味付けが楽しめる点も好評です。食卓では「これ初めて見るけど何ていう食べ物?」「この味付けいいね」といった会話も生まれ、家族のコミュニケーションが増えたという話も非常に印象的でした。
1週間あたり17万食から20万食へ! 今後は冷凍ミールキットの充実化も視野に入れたソリューションを展開

―――10周年を迎えた今、毎週約20万食の注文があるというのは驚異的な数値ですね。
高橋さん:10周年を迎えられたことで、利用者の方々に支持いただいていることを改めて実感しています。忙しい日常の中で便利さを求めている方、食品ロス削減を意識している方、産地支援のために選んでいる方など、さまざまな理由により多くの方に使っていただき、徐々に需要が増加したんです。
注文数は、昨年は1週間あたり約17万食でしたが、10周年を機に一気に20万食という大幅な伸びを見せました。これは、利用者が商品にそれぞれの価値を見出し、魅力を感じていただいている証拠だと思います。
黒井さん:今回、10周年キャンペーンとして、組合員のみなさんが実際にどのように召し上がっているのか、アレンジの仕方などをインスタグラムに投稿していただきました。今まではインスタグラムでキャンペーンを行っても最大100件程度の応募しかなかったのに対し、今回は外部・内部を合わせて500件以上の投稿が集まりました。
みなさん思い思いの投稿をされていて、「夏休みにお子さんがおばあちゃんのために作った」とか、働いているお父さん・お母さんの帰りが遅いときにお子さんが作った食事、息子が文句を言わないお気に入りのメニューなど、それぞれの家庭の工夫が見られました。
生協はもともと共同購入が目的で、みんなで集まり料理などを教え合う場でもありましたが、ミールキットを通してウェブ上でも教え合う場が作れたのではないかと思っています。
―――今後、挑戦していきたいことはありますか?
黒井さん:逆に原点に戻って、一(いち)から丁寧に出汁を取るなど、手作り感を大切にしたメニューの開発を考えています。ミールキットは時短要素が利点ではありますが、時間をかけて煮込む料理やイベント用のローストチキンセットなど、少し手間がかかるけど材料が揃っているから便利、というような商品にチャレンジしてみたいと思っています。
あとは、冷凍商品ですね。ストックできる冷凍商品をもっと増やしてほしいというニーズが高まっています。冷凍でも味わいや食感が変わらない野菜の仕様や、冷蔵商品に引けを取らないおいしさとボリュームを実現したいと考えています。
―――ミールキットの購入を検討されている方たちに向けてメッセージをお願いします。

高橋さん:私自身、子育てをしながら家事や仕事をする中で、短時間で料理ができるというのは本当に助かっています。普段、自分で作る料理はレシピサイトを参考にしても、どうしても似たような味付けになってしまうのですが、このセットを使うとガラリと料理が変わり、外食気分を味わえるのでコストパフォーマンスの面からもお得感があります。
また、ゴミが少なく、トレイの回収サービスがある点も便利だと思います。どんどん共働きの家庭が増えている今、世間的に求められているサービスではないでしょうか。
黒井さん:ミールキットを利用することで、おいしさだけでなく、家族と一緒に過ごす楽しい時間を作り出せます。食事は生活の中で大切な時間であり、子どもにとって楽しい記憶として残ることもあるでしょう。豊かな食生活や楽しい時間をサポートする商品として、ぜひミールキットを活用してみてください。
<編集後記>
今回、定番メニューの「トマト風味のドライカレーセット」の試供品をいただき、編集部員で料理・実食しました。
本当に10分でカレーが作れるんです!1日に余裕ができて、短時間で料理できる魅力を味わうことができました。
味に関しては、野菜のカッティングや味付け方法など、普段の料理と異なっているので、お店のカレーを食べているような気分に。また、私はカレーを作るときにトマトジュースではなくてトマト缶を使うタイプなので、こんな料理の仕方もあるんだなと勉強になりました。
料理の手間を省きたい方だけではなく、料理に拘りがある方にもぜひミールキットを活用していただきたいです。
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インタビュアー
新井 那知
HonNe編集部
埼玉県・熊谷市出身。渋谷の某ITベンチャーに就職後、2016年にフリーランスライターとして独立。独立後は、アパレル、音楽媒体、求人媒体、専門誌での取材やコラム作成を担当する。海外で実績を積み、帰国後はクライアントワークを通してライターとして日々取材や編集、執筆を行う。現在は「未来のあたりまえをインストールするWebマガジンSo-gúd(ソウグウ)」の編集長を務める。