グロースハックと同じ文脈で出てくることが多いAARRRモデルとはどんなモデルなのか、また、どのようにグロースハックに利用されるのか、このページをご覧のみなさんは気になっているのではないでしょうか。
そこで当ページでは、まずAARRRモデルが何かをご紹介。加えて、AARRRモデルがいかにしてグロースハックに活かせるのかを具体例を交えて解説していきます。
読んでいただければ、ビジネスが成長するために行うべき施策が何か、わかっていただけるでしょう。
それではまずは、AARRRモデルを見ていきます。
目次
AARRRモデルとは?
AARRRモデルとは、5つの英単語、Acquisition、Activation、Retention、Referral、Revenueから成るフレームワークで、グロースハックの成長戦略として知られています。ベンチャーキャピタルの500 Startupsを創業したDave McClure(デイブ・マクルーア)によって考案されました。
海賊の叫び声(アー)に似ていることから、海賊指標(Pirate Metrics)とも呼ばれます。
それぞれの英単語の意味は以下です。
Acquisition | 新規ユーザー獲得 |
---|---|
Activation | 利用開始 |
Retention | 継続利用 |
Referral | 紹介 |
Revenue | 収益化 |
ユーザーを獲得し、サービス・プロダクトを実際に使ってもらい、使ってもらったユーザーにリピーターになってもらい、紹介によってより多くのユーザーを引き付け、それぞれのユーザーから利益を最大化する。
これが、AARRRモデルによるビジネス成長の一連の流れです。
また、下記がグロースハックの生みの親であるショーン・エリス氏が定義するグロースハックの流れです。
グロースハックが目指すのは新規顧客の獲得だけではない。顧客を引き付け、利用を促し、魅力を伝えてリピーターにすることが重視される。変化し続けるニーズと願望に柔軟に対応して顧客を収入源に変え、更にはブランドやプロダクトの口コミを積極的に広めることが重要だ。
*引用元:グロースハック 完全読本
AARRRモデルとグロースハックは同じような流れで行われることがお分かり頂けたかと思います。
それでは続いては、AARRRモデルを更に深掘りしていきます。実際に行われたグロースハック事例も交えてご紹介致しますので、ぜひ最後までご覧になってください。
AARRRモデルの徹底解説とビジネスの成長事例
Acquisition:複数のチャネルからユーザーを獲得する
Acquisitionの段階では、ユーザー獲得のために、以下の2つを達成することが重要だと言います。
ランゲージ・マーケット・フィット | プロダクトの利点がユーザーにうまく刺さっていること |
---|---|
チャネル・プロダクト・フィット | マーケティング・チャネル(バイラルマーケティングやペイド検索広告など)が想定顧客に効果的であること |
どういうことか、詳しく見ていきましょう。
ランゲージ・マーケット・フィット
引用元:wikipedia
プロダクトの利点をうまくユーザーに伝えるには、そのプロダクトのコアバリューを簡潔にユーザーに伝え、ユーザーが「このプロダクトを使ってどのように幸せになるのか」を提示する必要があります。
ユーザーに、プロダクトの特徴ではなく、利点を伝えることです。
簡単そうで、意外と難しく、多くの企業はプロダクトの利点をユーザーに伝えることに失敗しています。
このランゲージ・マーケット・フィットを最大限に達成した例として、初代iPodを紹介したスティーブ・ジョブズの伝説的なキャッチコピーを見てみましょう。
スティーブ・ジョブズは、初代iPodのことを次のように紹介しました。
「1000曲をポケットに」
当時、MP3プレイヤーは既に市場にいくつかありましたが、スティーブ・ジョブズがこのセンセーショナルな言葉を使った結果、初代iPodは爆発的な売上を上げたのは誰もが知るところです。
これは、ランゲージ・マーケット・フィットが大成功した例でしたが、もし、iPodのキャッチコピーが以下だったらどうでしょうか。
「5GBの容量を誇る最新音楽プレイヤー」
これではiPodの伝説的な人気は創れなかったでしょう。しかし、多くの企業では、ユーザーのベネフィットよりも自分たちが伝えたいことを優先してしまいがちです。
キャッチコピーなどの売り込み文言を考える際には、機能ではなく、ユーザー目線での利点を伝えましょう。
また、一度考えたコピーが最適なものとは限りません。時には、思ってもみなかったコピーがユーザーに刺さる場合もあります。
キャッチコピーを考える際には、ABテストをし、最適なコピーはユーザーに決めてもらうことも念頭においておくと良いでしょう。
チャネル・プロダクト・フィット
プロダクトをユーザーに届けるには、適切なマーケティング・チャネルを利用する必要があります。
例えば、認知の低いプロダクトはSEM(検索エンジンマーケティング)には向いていません。その場合は、そもそもの認知を高めるために、インフルエンサーを使ったPRやバイラルマーケティングを行う必要があるでしょう。
また、それぞれのチャネルの費用対効果も考えなければいけません。SEOは無料で行なえますが、効果が出るのに時間がかかります。
一方で、有料の広告は即効性がありますが、お金がかかります。
求めている効果と市場の状況を総合的に考えて、最適なマーケティング・チャネルを構築しましょう。
Activation:ユーザーを活性化する
ユーザーを引きつけることに成功したら、プロダクトやサービスを使ってもらう必要があります。その段階がActivation(活性化する)です。
Activationに最も必要なことは、ユーザーにそのプロダクトやサービスの『*アハモーメント』に辿り着いてもらうこと。
*アハモーメント:そのプロダクトの価値を最大限に感じる瞬間のこと。
つまり、Activationにおいてはユーザーがアハモーメントに辿り着くまでに存在する障壁を取り除くことが重要です。
例えば、FacebookやGoogleアカウントでの認証を取り入れ、サービス利用開始までの手数を少なくするといったことが考えられます。
また、KISSmetricsなどのアクセス解析ツールを利用して、ファネルレポートを作成してみるのもいいでしょう。
そうすることで、どの段階(配車アプリの例:アプリのインストール、登録、配車の予約、体験の評価)で、どれくらいのユーザーがコンバージョン(または離脱)しているのかが一目瞭然となり、改善に取り組むべく指標が見えてきます。
例えば、アプリのインストール数は多いが、登録に至らないユーザーが多いのであれば、上記のようなシンプルなユーザー登録を取り入れるといった施策が考えられます。
Retention:ユーザーのエンゲージメントを高め、継続利用を促す
Retentionは一度引き付けたユーザーを逃さないこと。これは、経営において非常に重要です。ベイン・アンド・カンパニーの調査によれば、顧客維持率が5%上昇すれば、利益は25~95%上がるといいます。
Retentionをハックするのに有効なのがコホート分析です。
コホート分析は、ユーザー獲得日から特定の期間におけるユーザーの行動を数値化し、分析するものです。下記のような表になります。
コホート分析を利用することで、継続利用率と相関関係や因果関係にある要因を探ることが可能です。
コホート分析を利用してretentionのグロースハックに成功した事例にTwitterが挙げられます。
初期のTwitterでは、獲得したユーザーを維持することに苦労していました。アプリのインストールはしても、Twitterを継続して利用してくれるユーザーにならない人が多かったのです。
そこで、Twitterのグロースチームは大掛かりなデータ分析を行い、『30人以上フォローしているユーザーはアプリの利用継続率が高いこと』を突き止めました。
また、別の調査では30人以上をフォローすることで得られる、友人や有名人の情報を『自分の世界』で追いかけられることがTwitterのアハモーメントであると気づきます。
この発見によって、Twitterはアプリをインストールした後の、フォローレコメンド機能を洗練させていき、30人以上をフォローしやすくする仕組みを作りあげました。
そのことで、ユーザーの利用継続率が大幅に伸びました。継続利用率を上げる改善施策を行い続けた結果、今ではTwitterは、世界で3億1900万人の月間のアクティブユーザー数(MAU)を誇るサービスとなっているのです。
Referral:紹介マーケティングでユーザー数を伸ばす
口コミによる紹介は、非常に強力な拡散効果を持っています。Nielsen社が行った調査によると、友人や家族に紹介されたサービスやプロダクトを広告よりも信用すると92%もの人が答えたそうです。
この口コミの力を使って大きな成長を遂げたのがDropbox。その事例を見ていきましょう。
Dropboxは2018年時点で5億人のユーザーを抱える巨大サービスですが、創業初期の頃は新規ユーザーを獲得するのに苦労していました。
アンケート調査を行ったところ、Dropboxのサービス自体に対する評価は抜群です。
また、別の調査を行ったところ、ユーザーの3人に1人は友人や家族の紹介によってDropboxを利用し始めたことが判明します。
そこで、Dropboxは成長するために口コミによるマーケティングを実施します。行ったのは、紹介したユーザーと紹介を受けてDropboxの利用を始めたユーザーの双方に、Dropboxのストレージをプレゼントするというものでした。
1名の紹介につき500MBの容量をプレゼント。1ユーザーあたり、最大で32人の招待で、16GBまでの無料追加容量を獲得できたのです。(当時は大きい容量でした。)
そうすることで、ユーザーはDropboxの体験を支える容量を無料で増やすことができ、Dropboxはほとんど費用を掛けず、新規ユーザーの登録数を60%も増やすことに成功しました。
このように、口コミによる紹介マーケティングは非常に強力な効果を発揮するのです。これは業種によらず、すべてのプロダクトに当てはまります。
また、口コミの紹介マーケティングによるAirbnbなどのグロースハッキング成功事例はこちらをご覧ください。
Revenue:収益を最大化する
株式会社であれば、どの企業も収益を最大化するために営業をしているかと思います。
グロースハックにおいても、最終的な目的は収益の最大化です。顧客生涯価値を高めることとも言えます。
「収益の最大化なんて当たり前ではないか」と思うかもしれません。しかし、顧客獲得(Acquisition)や維持(Retention)には力を入れていても、実は、収益の最大化(Revenue)ができている企業やグロースチームは、非常に少ないと言われています。
ここで使えるのは、Retentionの時と同じくコホート分析です。高収益のコホートと低収益のコホートに分けることで、高収益をもたらす要因が判明します。
コホート分析を利用して収益化のハックに成功した事例として、アメリカ・サンフランシスコ発の企業、『Hotel Tonight』を見てみましょう。
Hotel Tonightは、宿泊直前に割引価格でホテルを予約できるサービスです。Hotel Tonightのグロースチームは、サービスを利用する際の電波(携帯回線とWiFi)でユーザーをグループ分けしました。
WiFi回線利用者の予約率が高いとHotel Tonightのチームは予想していましたが、データを分析した結果、携帯回線で利用しているユーザーの方が、予約率が高いことが判明したのです。
Hotel Tonightのグロースチームは、WiFi利用のユーザーは、ネット環境が快適であるがゆえに、ユーザーは複数の選択肢(他サイトなど)を検討するため、予約率が低いのでは?と考え、携帯回線を利用しているユーザーに向けたターゲティング広告を行いました。
その結果、多くの新規ユーザーからの予約があったと言います。
このように、収益の最大化においても適切なターゲティング戦略を取るために、データ分析を行うことは非常に重要で、その中でもコホート分析は特に有用です。
収益のポテンシャルを最大限に活かすためにも、獲得や顧客維持と同様に、収益のグロースハックも行っていきましょう。
まとめ:AARRRモデルを活用してグロースハックをしよう!
AARRRモデルはグロースハックに活かせる非常に有用なフレームワークです。
Acquisition、Activation、Retention、Referral、Revenueの5段階に分けて分析することで、ビジネスが行き詰まっている要因、成長の可能性を秘めている段階が明確になるのではないでしょうか。
これから更にビジネスを成長させたいと考えている企業にとってAARRRモデルは必ず抑えておきたいマーケティングのフレームワークだと言っても過言ではないでしょう。
それでは、最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。