2023.08.23

【後編】在庫分析でイノベーションを生み出す。フルカイテン株式会社の粗利経営の考えから生まれた、在庫分析サービスとは?


前編では、フルカイテン株式会社の事業概要やサービスの強みを紹介した。

後編の記事では、粗利経営や将来の構想、そして現状の在庫分析領域の課題についてお話をお伺いした。

フルカイテン株式会社,代表取締役CEO,瀬川 直寛
インタビューイー
瀬川 直寛氏
フルカイテン株式会社
代表取締役CEO
1976年、奈良県生まれ。慶應義塾大学理工学部機械工学科卒業。新卒入社したコンパックコンピュータ(現ヒューレットパッカード)ではトップセールスを記録。次の転職先では基盤が何もない状態から3年で年商15億円の事業を創り出し、3社目では1人で全社売上の9割を稼ぐなど、抜群の営業成績を残す。2012年にEC事業を手がけるハモンズ(現フルカイテン)を起業。3度にわたり倒産しかけたが、危機を乗り越える過程で在庫問題を解決する『FULL KAITEN』を着想。在庫回転率が17回転を超える。18年にはEC事業を売却して社名をフルカイテンに変更、FULL KAITEN事業に経営を集中させている。


負のスパイラルは、在庫の分析ができていないことから生まれる。



フルカイテン,ソウグウ

ーーーー小売店が抱えている在庫分析の課題について教えてください。

在庫分析における大きな課題は、品番が多すぎて全商品を分析することが難しいことです。ほとんどの企業は、全品番のうち10~15%しか分析できていません。90%近くは、分析ができていない状況となっています。

90%近い商品の分析ができていないため、在庫消化の方法が値引きに頼る形となり、大きな機会損失が発生しています。

FULL KAITEN導入企業の導入当初のデータを使った分析によると、全商品のたった20%で利益の8割を生み出していることが分かりました。ですが、残りの80%の滞留在庫は必要なく、利益を生み出せないとは一概に言えません。

商品に販売力があるかどうかの分析がされないまま、売上を増やそうとすると在庫が増える一方となってしまいます。

粗利経営が、企業成長と国益の向上に繋がる。





ーーーー瀬川様は特に、粗利経営という経営スタイルを大切にしますが、粗利経営についても教えてください。

粗利経営は、人口減少と高齢化が進む日本の経済状況に対応するための持続可能な経営モデルです。

人口動態の現状から、売上の拡大を目指す従来のビジネスモデルは成り立たず、市場規模は縮小していきます。そのため、在庫の効率で勝負し、利益を効率よく生み出す粗利経営が求められているんです。

粗利経営とは、在庫を減らし、効率よく利益を生み出す経営スタイルを指します。在庫を減らすことで値引きも減り、粗利が増え、結果として従業員の給与にも投資ができます。また原価が上がると、商品に付加価値をつけることが可能となり、ブランド価値も際立つようになるんです。

この経営モデルの実現には、粗利経営への変革を決意し、在庫量を勇気を持って減らすことが必要です。その結果として、商品の付加価値が生まれ、値引きが減り、給与が増えるというサイクルが作られ、日本の国益にも貢献することが可能になります。

見出し:在庫分析は、企業経営と一体化する――





ーーーこのまま先を見据えて5年後、10年後の未来を考えた時に、御社のような、在庫分析に特化したソリューションは、どのように進化・発展していくのでしょうか?

私の見解としては、このような在庫分析に特化したソリューションは、経営自体と一体化していくと考えています。経営者が重視するソリューションといえば、従来は会計ソリューションなどが挙げられましたが、これからは在庫分析が経営を直接支えるインフラとして位置づけられるでしょう。

私はこの変化が10年後ではなく、5年後には起こっていると考察しています。

また私たちの経験からも在庫分析が、企業経営において重要な要素であることが判明しました。特にコロナ禍においては、緊急事態宣言により、突然売る場所がなくなり、在庫を抱えることができなくなった結果、不本意ながら在庫を絞ることを余儀なくされました。

しかし、その結果として利益が増え、多くの企業がV字回復を遂げるという事例を見ることとなりました。これは、在庫を持ちすぎないことが、利益に大きな影響を与えるという事実を、全業界が体感した瞬間でもあったんです。

現在、業界全体が在庫のコントロールを通じ、より利益を上げる方向にシフトする機運があります。在庫分析のソリューションの重要性を知ってもらう事業者様が増えることで、業界全体に古くから存在した在庫分析の悪循環を解消することに繋がると考えているんです。

在庫を効率よく利益に変え、サプライチェーン全体の利益効率を目指す。





ーーーーありがとうございます。今後、フルカイテン株式会社として挑戦していきたいことや、さらにチャレンジしていきたいことがあれば、お話しいただけますか?

当社の挑戦として、まずは在庫を効率よく利益に変えるという価値の提供に焦点を当てていきたいですね。

実現のためには、サプライチェーン全体で必要な在庫が必要な量だけ流通することが大切です。しかし、その目標を達成するための十分なデータが足りていません。

現在は、データの蓄積を進めつつ、保有する在庫から利益を効率的に生み出すことを重視しています。その努力の結果として、流通総額の集計を始めた2021年から現在までで約7500億の売上データが蓄積され、月間流通総額は500億円を超えるまでに成長しました。2023年中には1兆円を超える売り上げデータが蓄積される見込みです。

蓄積したデータが、一定量に達すると、業界別の需要予測が可能になります。例えばジーンズ業界であれば、来年はどれくらいの在庫を流通させるのが最適なのかなどの予測が可能になります。

ーーーーなるほど、製造量が最適化されるので、結果在庫のリスクも減るというわけですね。

おっしゃる通りです。そうすることで、作る量を適正化し、売り場で在庫を上手に売り抜くことが可能になります。これにより、サプライチェーン全体が利益効率の良いマーケットに変わっていくのです。

そして、我々が挑戦したいことは、日本の企業が粗利経営への転換を加速することです。具体的には、産業全体の需要予測に進出し、サプライチェーン全体の利益効率を向上させたいと思っています。

ですが、実際に需要予測を行うためには、AIを用いた計算だけでは不十分です。需要予測を実行するための体制が必要で、一つの企業だけの在庫・販売データでは不十分なんですよね。そのため、需要予測を実現するためには、大手企業やベンチャー企業問わず、業界全体のデータを集める必要があります。

我々のFULL KAITENによって、データの蓄積ができれば生産量の需要予測を行うことが可能になります。まだ1~3年程度の月日は掛かるかもしれませんが、この予測が実現できれば、サプライチェーン全体の利益が向上すると考えています。

「FULL KAITEN」を通して、自分の子供や孫の世代により良い地球を残す





ーーーー素晴らしいですね。最後に瀬川様にとってFULL KAITENは、どのような存在ですか。

私にとってFULL KAITENは、自己実現の手段であり、人生の重要な要素です。 そして自分の話になってしまいますが、私の自己実現の目標は、自分の子供や孫の世代により良い地球を残すことなんです。

私がFULL KAITENを通じて提供しているのは、在庫を効率良く利益に変えるという価値です。その結果として、企業が生み出す在庫の量が減少し、これは地球の有限な資源の無駄遣いを防ぎ、大量生産や大量廃棄の問題も抑制します。

それは二酸化炭素の問題やカーボンニュートラルの問題が、解決に向かうことでもあります。

そしてFULL KAITENの発展は、児童労働や強制労働といった、世界中で起こっている人権問題の解決にも繋がっていきます。

このような社会課題はFULL KAITENを発展させていくことで解決できると信じています。そして子どもや孫の世代に、今よりもよい地球を残していくことが可能になると考えているんです。

この自己実現は、もちろん一人では達成できません。フルカイテン株式会社のメンバー全員で、業界の課題を解決し目標達成に向けて精進していきたいと思っています。

【前半の記事を読む】

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