日本初クルマのフリーマーケット「カババ」が提案する、未来のクルマの売り方・買い方とは?


「100年に1度の変革期」と言われている自動車産業ーーーー 2019年に開催された「第46回東京モーターショー2019」では、大手自動車メーカーが「CASE(ケース)」という概念を提唱。自動車産業を取り巻くさまざまな環境が大きく変わろうとしている。

例えば「シェリングエコノミー」の市場拡大の追い風もあり、カーシェアサービスが日本全国へ普及。クルマは“所有するモノ”という考えから、クルマは“シェアするモノ”という新しい価値観を私達の頭のどこかへ根付かせた。

またクルマの購入においても、カーオーナーが支払う初期費用や維持費は、決して安いとはいえない。一方で海外に目を向けると、ディーラーの店舗数を縮小したり、中古自動車の販売サービスを提供したりする企業がユニコーン化している。

そんな自動車産業の変革期と呼ばれる時代のなかで、「子どもの頃は、スーパーカーに憧れたし、青春時代は<ゼロヨンブーム>ということもあって、クルマを通してクルマ好きの仲間ができたり、湾岸をドライブしたりーーーー クルマは僕の青春そのものです(笑)」と少年の様に語る「株式会社アラカン」田中一榮氏。

田中氏は日本初のクルマのフリーマーケット「カババ」の生みの親だ。
今回は当編集部が、自動車産業に長年携わる田中氏にクルマの個人売買(フリーマーケット)の可能性について話を聞いてきた。


株式会社アラカン工藤柊田中一榮プロフィール
インタビューイー
田中一榮
2019年に株式会社アラカンを設立。東証一部上場の自動車販売会社を含め5社の取締役を兼任。クルマのカーシェアサービス(オーナーズ・カーシェア・クラブ)自動車フリマサービス(カババ)を展開。クルマにかかるコストを従来の1/10にすることを目標に、カーライフの実現を目指す。


「クルマのフリーマーケット」とはいえ、“当たりのクルマしかない”サービスを実現したかったーーーー





────まず「カババ」のサービスについて教えてください。

田中さん:
カババは一言で説明するとクルマのフリーマーケット(個人間売買)サービスです。自動車を売りたいヒト・買いたいヒトをつなぐサービスとして、2020年にリリースしました。

カババを誕生させたきっかけは、自動車の売買をするうえで発生する多くの“無駄”に疑問を抱いていたからです。私はカババの運営会社である「株式会社アラカン」を立ち上げる前に、「株式会社ネクステージ」という自動車販売会社の役員でした。

私が長年自動車販売という仕事に関わっていくなかで、自動車を売る側も買う側も様々な課題を感じていることに気がついたんです。



────自動車販売での“無駄”って何ですか?

田中さん:
「無駄」ということを簡単に言うと販売コストと流通コストですね。 『クルマを売る・買う』と一言でいっても、そこには莫大な販売コストと流通コストが発生しています。

販売コストとは、中古車販売店が在庫を持つための仕入コスト、展示場の建築費・維持費、そして営業スタッフなどの人件費ですね。

流通コストとは、売主⇒買取店⇒輸送⇒オークション会場⇒輸送⇒販売店⇒買主という仕入れの流通プレセスで発生しているコストです。2回の輸送費に加えて、買取店の利益、オークション会場の利益が発生するので、買取した価格から、最低でも10万円以上の流通コストが発生します。

そこから、販売コストに販売店の利益を加えた上で、購入者の手元に車が渡っています。

でも、程度のいい車やメンテナンスをしっかり受けてきた整備済みの車に限定していえば、売主と買主を直接マッチングしても何も問題ありません。そうすると、既存の販売コスト、流通コストは必要ないので無駄ではないかと感じていました。

また、既存の自動車販売は、損益分岐型のビジネスではないので、ビジネスが拡大すればするほど、在庫や店舗、ヒトも増えて経営管理が大変になっていきます。そのため、規模を大きくしてもあまり販売コスト、流通コストを下げることができないんです。



────今お話を聞くまで知りませんでした……こんなにコストとプロセスが発生するんですね。

田中さん:
例えば、展示台数300台程度の販売店を出店するのには、約3,000坪の敷地が必要です。そこに総勢50人と毎日数十人の来店に耐えうるショールームを建築する必要があります。運転資金なども合わせると25億円程度は必要です。

これだけのコストがかかっていると、店頭で販売しているクルマの金額は妥当かもしれません。ですが私は、 売主と買主を直接マッチングすれば、無駄なコストが省かれる事で、車の売買に掛かる負担が大幅に減り、もっと気軽に車を買い替えできるサービスを提供したかったんです。

クルマにかかるコストが下がれば、クルマが所有しやすくなりますよね。それにクルマを売りたい人は、愛車を高く売れて、そのお金でまた新しいクルマが購入できるーーーー そうすればカーライフがもっと身近で充実したものとなると考えました。



────なるほど…それで立ち上げたのがカババのサービスなんですね。カババのサービスはどんな特徴がありますか?



田中さん:
カババのサービスは、安心と利便性、そして経済的メリットが特徴ですね。カババのサイトに掲載している中古自動車は、良質なクルマばかりです。出品前にすべての車両を専門の自動車鑑定士が査定して、購入者がそのまま乗れるコンディションの車だけを出品してもらっています。

もともと、日本という国で使われている車は、コンディションの良い車両が多いです。新車販売時にメンテナン スパック付で売られている車も多く、国土の狭いので走行距離も伸びない傾向にあるからです。良質な中古車 がたくさんあるので、質の良い車だけに特化したビジネスモデルでも成り立つんです。

また、出品価格については、「買取価格と小売価格の中間」でお願いしております。そうすることで、出品者は買取価格よりも高く売れて、購入者は、小売価格よりも安く購入することができるんです。



────中古自動車の購入ならではの不安は、ここで解決しているんですね!鑑定士さんの承認がないと出品できないのはとても安心ですね。



田中さん:
また利便性でいえば、出品に必要な掲載情報もカババのスタッフが代行しています。一般的なフリーマーケットサービスやネットオークションは、3~5枚程度の写真と簡単な紹介文だけですね。

しかしクルマの出品時にはそう簡単にはいきません(汗)。中古自動車の出品時には、出品者が40枚近くの写真を撮影して、膨大なスペックや車体の状態などの情報を記入しなければいけません。

その他にもさまざまな情報を記載して、掲載する必要があります…… 出品者の方が、これだけ多くの手間をかけるのは面倒くさいですよね。そのためカババでは、これらの膨大な撮影から出品までのプロセスを無料で代行することで、利用者の負荷を軽減させています。

そして、上述したようにクルマを販売するまでの無駄なコストをカットしています。そのため、手数料は3万円のみで統一しています。無駄を省いたことで経済的メリットを消費者へ還元していますね。

また自動車の価格が、ワンプライスなので個人間での金額交渉などもありません。そのため自動車に詳しくない方でも安心して、売買できる仕組みになっています。

カババのサービスは“クルマのフリーマーケット”と言っていますが、フリーマーケットって本来、玉石混交で、当たりもあればハズレもありますよね? それがフリーマーケットの魅力でもあるのですが、クルマに関しては玉石混交の「石(せき)」が混ざっていたら安全やサービスの信用に関わってきます。

つまり、カーオーナーの安全にも関わるので、クルマにおいて「ハズレ」は必要ないんですよねーーーー カババはフリーマーケットサービスですが「当たりしかない」というサービスの仕組みを作っているんですよね。

筋道を立てて、問題解決をするためにお客様と向き合う





────ユーザーの安心・安全やメリットのために、ここまでサービスを作り込んでいるんですね。とはいえフリーマーケットサービスは、個人間のトラブルも多いイメージがあります。このような課題は、どのように対応しているのでしょうか?

田中さん:
確かにその点は、課題に感じている部分ですね。“何かを売る”というサービスは、クレーム産業でもあるんですよね。これは中古自動車の売買に限らず、新品の電化製品を販売している電気屋さんでも同じことがいえると思います。

そのため個人売買でマッチングする時は、鑑定への抜け漏れがないかをしっかり確認する必要があります。もし鑑定に抜け漏れがあったら、お客様への安心・安全が嘘になりますよね?

例えば、購入前にサイトでは記載が無かったキズがあったとします。そういった場合、一般的な個人間売買のサービスはトラブル時に売り手・買い手で話し合いが必要となってきます。

トラブルが発生した時には当事者同士で話あってもらい、会社は介入しないのが当たり前となっていたサービスジャンルでもあったんですよね…… しかしカババの場合は、出品前に当社の鑑定士が査定しているからこそ、明確な事実確認ができるんです。

鑑定時、車両引き上げ時、車両引き渡し時の3回に分けて第三者がキズのチェックをしているので、責任の所在を明確にできるんです。 それでも納得できないは、私が自分で現場に入って直接当事者の方と対話することもあります。



────田中さんが直接ですか?代表の方が現場の対応をするというのは、はじめて聞きました。

田中さん:
この話をするとよく驚かれますね(笑)しかし、お客様もヒトなので誠実に課題と向き合えば問題は解決できるですよねーーーー 大切なのはどう相手と向き合うかというスタンスが重要だと考えています。

クルマを売る・買うというプロセスの途中に色々な経緯はありますが、 購入者・出品者の方に間に入って、逃げずに向き 合う・話し合うということを大切にしています。このように誠実に対応すると、しっかりと理解してくれて、納得してくれるんですよね。



────なるほど……仕事をするうえで何より大切な考えについて改めて気がつかされた気がします(汗)。日本ではまだまだ普及していませんが、海外ではフリマサービスがメジャー化しつつあります。日本でも自動車のフリマは普及しますでしょうか?

田中さん:
日本でクルマの個人間売買のサービスが普及する可能性はあると思います。一方で安心・安全、便利、経済的なメリットなど、ユーザーへ価値を届けるための課題は多くあると思います。

クルマの個人間売買でもっとも有名なのがオンライン中古車プラットフォームの「Guazi(瓜子)」です。このように海外で成功している個人売買のサービスは、安心・安全、利便性、経済的メリットの3つを兼ね備えた企業がほとんどです。

本来、車の個人売買は、日本が一番向いているんです。海外と比べて走行距離が短いですし、自動車のメンテナンスなどの質も高いので壊れにくい傾向があるんですよね。そのため、車両品質の担保、利便性、経済的なメリット、この3つをカバーしているサービスがあれば、日本でも中古車のフリーマーケットサービスは普及する考えています。



自動運転で家まで無人自動車が、迎えに来る時代へ





────将来的には日本でもクルマのフリーマーケットが普及する可能性は大いにありそうですね! 一方でシェアリングエコノミーの追い風もあり、シェアカーも浸透しています。田中様は未来のクルマや自動車産業、モビリティはどのように変わると考えていますか?

田中さん:
シェアカーサービスが普及しはじめて、クルマを所有しなくなった方が多いという話も聞きますが、この減少は都心部のみのような気がしています。郊外に住んでいる方や40代以上の方は、クルマの購入について大きな変化はないような気がしているんです。もし未来の自動車産業が変わるのであれば、自動運転が普及するかが鍵だと考えます。

イメージとしては、自動運転のクルマが送迎車として自宅の前に到着して、自動で目的地まで送迎してくれる世界観ですね。SF地味た話かもしれませんが、自動運転が普及すれば、カーシェアが普及してクルマの所有者は減ると考えています。

これはインフラがどこまで整うかという問題もありますが、自動運転技術がクルマ・インフラの両方で整えば、このような未来はすぐにやってくると考えています。



全員がハッピーになるビジネスモデルを作りたかった





────自動運転で目的にまで送迎してくれるサービスは、まさしく未来のモビリティですね。最後に未来を考えるうえで、田中様がこれから挑戦したいことや展望はありますか?

田中さん:
カババはまだまだ成長途中のサービスではありますが、将来的にはクルマ以外の高単価商品も展開していきたいですね。バイクやヨット、水上バイクから高級時計や宝石までーーーー『カババならフリマサービスだけど外れがない!』というサービスを横展開していきたいと考えています。

今の買取販売は、高級なものを二束三文で買い取って、高く売っているのが課題のような気がしています。例えば30万の価値がある着物だったら、30万で買い取って30万で売るーーーー 価値があるモノは高く買って、高く売るという循環を作っていきたいですね。



────素晴らしいビジョンですね…適正な価値に適正な価格を付けて販売することで、皆がWinWin(ウィン・ウィン)の関係になりますね。

まさしくその通りです。もともと私がカババを立ち上げた時に想っていたことは、「全員がハッピーになるビジネスモデル」が心の軸にあったんですよね。カババのサービスを利用する出品者、購入者、技術者、弊社のサービスとか関わってくれる事業者、この4方向が、すべて「Win」になるサービスを作りたかったんです。

色々と話してきましたが、ビジネスは誠実さがとても重要です。カババというサービスを利用する一人ひとり に誠実に向き合い、最後に『このクルマを買ってよかった!』『このクルマを売ってよかった!』と言ってく れるために、我々には何ができるかという問や課題とはこれからも真剣に向き合っていきたいですね。

買いたいクルマをカババで買って、売りたくなったらカババで売るーーーーそんな新しいクルマの買い方と売り方が広がって、一人ひとりのカーライフが充実したものになって欲しいと思っています。

<編集後記>

100年に一度の変革期と呼ばれる自動車産業ーーーー田中氏の言葉からは「お客様と真剣に向き合う」という変わってはいけない大切な想いについて、改めて気がつかされた。

現段階の自分は、自動車産業の未来が、どう変わるか一つの仮説を提唱することしができないが、自動車産業の同行、そしてクルマの個人間売買サービスについては今後も市場をチェックしていきたい。



 
新井那智
ライター
So-gúd編集部
新井 那知
埼玉県・熊谷市出身。渋谷の某ITベンチャーに就職後、2016年にフリーランスライターとして独立。独立後は、アパレル、音楽媒体、求人媒体、専門誌での取材やコラム作成を担当する。海外で実績を積むために訪れたニューヨークで、なぜかカレー屋を開店することに—- 帰国後は、ライターとして日々取材や編集、執筆を担当する。料理と犬が好き。
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