landdownunderイメージ

衣類の廃棄を減らすサーキュラーファッションへの挑戦「land down under」


環境省の発表によると、日本の家庭から出る衣類の廃棄量は年間およそ75万トン、そのうち50万トンがゴミとして焼却・埋め立て処分されています。この廃棄量は、1日で換算すると大型トラック130台分のゴミを毎日生み出している計算に。
*参照元:環境省https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/

また、ゴミとして出された衣類のうち、再資源化される割合は、わずか3割ほどにとどまっています。

アパレル産業は「生産→消費→廃棄」をシーズン毎に短いスパンで繰り返す直線的な経済モデルになっています。このまま従来のリネア型経済を続ければ、一方通行のため大量生産・大量廃棄を生み続けてしまうのです。

そこで、直線ではなくサークルを描くように循環させる経済モデル「サーキュラーエコノミー(Circular Economy)」に注目が集まっています。

サーキュラーエコノミーとは、すでに生まれてしまった廃棄物をゴミではなく新たな資源として活用し、廃棄物を出さず循環させていく経済モデルです。

今回は、サーキュラーエコノミーで「循環するジーンズ」を作るアパレルブランド「land down under(ランド ダウン アンダー)」代表の池上さんにお話を伺いました!


landdownunder池上さん
インタビューイー
池上 慶行
(いけがみ よしゆき)
land down under
1993年生、東京都出身。 新卒で大手アパレル企業を経て、2018年に地域おこし協力隊として倉敷市児島に赴任。クラウドファンディングにて資金調達を成功させ、2021年サーキュラエコノミーアパレルレーベル「land down under」を立ち上げる。 ブランド名は「地球の真裏=オーストラリア」に由来し、「主流アパレル産業の真裏にある存在になる」という意味が込められている。


環境負荷のない服づくりを目指す

────それではまず「land down under」がどのようなブランドなのか、教えていただけますでしょうか?

ブランドイメージ,landdownunder,so-gud(ソウグウ)
池上さん:
「land down under」は、サーキュラーエコノミーを目指した倉敷発のアパレルブランドです。

私たちは、普通なら廃棄されてしまう規格外の生地を資源として活用しているんです。そして、資源を循環させ廃棄物が出ないジーンズづくりに挑戦しています。

また、”変化を楽しみながら1つのものを長く使っていただく商品づくり”をコンセプトとしており、最終的に環境負荷の少ない「人も、環境も傷つけない服づくり」を目指しています。

そのためには、リサイクルしやすい設計と、再活用できる仕組みを構築し、逆算して製品を作らなければなりません。例えば、リサイクル時に邪魔になってしまうパーツは、はじめから使わずに生産するということです。



小さな円からはじめるサーキュラーエコノミー

────なるほど!設計段階から、リサイクルしやすくしているのですね?

サーキュラーエコノミー説明 池上さん:
そのとおりです。ですが、いきなりリサイクルするわけではありません。「循環するジーンズ」は、まずリペア・リメイクという小さなサークルを描きます。

それでも穿けなくなったものを「回収→リサイクル→綿糸→生産」へ循環させていく仕組みになっているんです。



────環境負荷の少ない小さい円から循環を広げるんですね。では、そもそもなぜサーキュラーアパレルブランドを作ろうと思ったのでしょうか?

池上さん:
少しさかのぼりますが、ブランドをはじめる前に「地域おこし協力隊」として繊維産地である倉敷で活動していました。倉敷は、ジーンズの産地であることは有名ですが、その他にも帆布や学生服など繊維産業が盛んな土地なんです。

もともと繊維産地で働きたいと考えており、倉敷には興味がありました。そして倉敷のジーンズ工場には、何度も見学させていただいてたんです。

その時、B反C反と呼ばれる素人にはわからないほど小さなキズがあるだけで、規格外として製品に使用することができない生地が大量にあることを知りました。

「こんな小さなキズがあるだけで廃棄されてしまうのか」という驚きと同時に、生産側にその責任を負わせる産業構造にも疑問を感じたのがきっかけです。

例えば、大量生産やその背景に隠された雇用問題は、アパレル産業の大きな問題として知られていますよね。でもどこか遠くの発展途上国で起きている出来事だと思っていたんですが、実際日本でも同じような問題が起きていたことに衝撃を受けました。

この時から、モノづくりはしたいけれど「モノが溢れているのに、さらに新たな資源を使ってまでモノを作る必要があるのか」と考えるようになりました。

それなら、既に出てしまった規格外の生地で商品を作り、循環させたらいいのではないかと考えたんです。



────たしかに、アパレル産業の問題は日本ではなく、遠く海外で起きてる問題だと感じている方は多いと思います。

池上さん:
そうなんです。どこか遠くの問題ではなく、日本でも同じような問題があることを目の当たりにしました。

この時、「何かモノづくりをしたいけれど、新しい資源を使いたくない」という想いと、「環境問題に貢献したい」という点と点が自然に繋がり、ブランドの構想がはじまりました。



逆算から考えるこだわりのジーンズ

────では循環するジーンズは、どのようなポイントがあるのかご説明いただけますでしょうか?

ジーンズ織り機,so-gud(ソウグウ)
池上さん:
こだわりは「生地」と「リサイクルしやすい構造」の2つです。倉敷はジーンズの縫製加工の産地ですが、生地の産地は広島の福山と、岡山の井原が有名なんです。「land down under」では、福山の「篠原テキスタイル」に協力していただいています。

「篠原テキスタイル」は、創業110年を超える老舗ながら、新しいことに挑戦している工場です。そこで赤耳セルビッチ・デニムを採用しました。
赤耳デニム
スピードは現行織機の1/6という「TOYOTA製旧式シャトル織機」をあえて使用して作られた生地なんですよ。時間をかけて織る旧式にしか出せない、こだわりのジャパンデニムならではの色落ちや風合いを楽しめます。

2つめは、リサイクルしやすい構造にするため、「縫い糸」「製品表示タグ」は綿100%で作っています。また、通常ジーンズをつくる場合、耐久性を確保するため芯がポリエステルで、表面に綿を使ったコア糸が使用されます。

しかし循環するジーンズは、生地が16枚重なるお尻の部分にだけコア糸を使いますが、それ以外の部分でコア糸は使いません。綿100%から綿100%に生まれ変わらせるためです。

1箇所にだけ使用するコア糸は、黄色に変えることで後から回収したときにも分解しやすくしています。

また、綿100%の糸で縫う事は技術力が必要となるのですが、こちらも創業100年を超える老舗の縫製工場「角南被服」に協力いただき、実現することができました。

次に、ポケット口のリベット(金具)も使用しません。このリベットは、もともと強度のために使用したとされていますが、科学的な根拠はなく飾りの役目が大きいため、糸でしっかり強度を高める始末に変更しました。

このようにリサイクルしやすい生産工程を踏み、最終的に反毛技術を使って綿糸にしていきます。



────なるほど。回収されたその先を考えた作りになっているのですね!通常のつくりとは違うことに、工場の皆さんから反発は無かったのでしょうか?

工場の様子,so-gud(ソウグウ)
池上さん:
ありがたいことに、皆さん協力してくれています!「角南被服」は、ミシンを改造していたりここでしか出せない技術をもつ研究熱心な社長がいらっしゃいます。僕が新聞にのったら工場に張り出してくれたりと、一緒に楽しんでくれていて嬉しいですね!笑

もちろん、コンセプトに共感いただいた部分もありますが、実は僕らの循環は決して新しいことをしているわけではありません。

むしろその逆で、もともとデニムは綿糸で縫われていましたし、反毛技術も明治・大正時代からあるような古い技術です。

しかし、時代とともに新しい資源を使った方が安く仕上げられ、再利用する方がコストが高くなるようになりました。私たちは、コストももちろん大切ですが、それ以上に「環境にも人にも優しいモノづくり」を、正しい金額で循環させることが重要だと考えます。



サーキュラエコノミーで地域を巻き込み活性化

────昔の技術を組み合わせて新しい循環を生んでいるのですね!では、最後に池上さんが目指す未来のビジョンをお伺いできますでしょうか?

池上さん:
ブランドとしては、この先ジーンズ以外のアイテムも綿にこだわって作っていきたいですね。そして規格外の生地やすでにある資材を使って新しい価値を生み出したいと考えています。

企業の代表がこんなことを言うのもおかしいかもしれませんが、私たちはブランドや売上を大きくしたいという気持ちはあまりないんですよね。笑

ただ、生産背景やブランドのコンセプトをもっと皆さんに知ってほしいし、ジーンズがリサイクルできることや、サーキュラーエコノミーということを知ってもらいたいです。

そのために、僕らの「land down under」だけではなく、倉敷全体のブランドが協力しあい環境負荷の少ないサーキュラーエコノミーを実現し、完全なリサイクルが可能となる仕組みを作っていきたいです。

また、最終的にお世話になったデニムや倉敷という大好きな地域に恩返ししたいですね!世界有数のサーキュラーエコノミーを街全体として実行するモデルシティとして、倉敷が世界から注目を集める日が来たらいいなと思います。

結果的に、ジーンズだけではない倉敷という地域をもっと面白く、魅力的な街だと認識してもらい、たくさんの人が遊びに来てくれるためのきっかけができれば嬉しいですね。


land down under の詳細を見る

<編集後記>

「僕らはサーキュラーエコノミーを実行する上で、新しいことは何もしていないんです。」という池上さんの言葉がとても印象的でした!実は昔からある方法を掛け合わせて、新しいリサイクル設計をしている「land down under」の循環するジーンズ。

現在のアパレル産業構造は、利益を追うばかりで環境を長らく無視してきました。その結果、新しい資源を使う方がリサイクルするよりも、早く仕上がりコストも安く作れるようになってしまったのです。

しかし、しっかりと設計すれば環境に負荷をかけることなく、正しいコストでリサイクルが可能だと池上さんは言います。また、「前提として ”リサイクルできるから”という理由で循環するジーンズを買うのも少し違うと思う。」ともおっしゃっていました。

「やはりデザインがかっこいいという気持ちでジーンズと出会ってほしい。その先に、サーキュラーエコノミーで作られている生産背景があり、その先に環境問題が見えたとき、本当に長く大切に使ってもらえるのではないかと思っています。」と池上さんは語ってくれました。

ぜひ、皆さんもワードローブ選ぶとき、欲しいと思う商品に出会ったら、その先の生産背景にも目を向け、1シーズンで捨てることなく、1着を長く愛用できるモノを買うという選択をしてみてはいかがでしょうか?



ライター松中朱李
ライター
So-gúd編集部
松中 朱李
神奈川県・横浜市出身。アパレル企業にて販売からバイイングを経験したのち、流行に流されないプロダクトを学ぶためイタリア・フィレンツェへ留学。現地で2年間を過ごし、気づけば靴職人に。帰国後は、メンズシューズブランドにて広報PR、メディア運営、ECサイトディレクション等に従事し、現在に至る。うさぎの散歩とヨガが日課。
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