2023.01.16

日本のeスポーツは新しい文化となるのか!?「Riot Games ONE」から考える、世界を熱狂させるeスポーツの可能性。


「*Riot Games(以下:ライアットゲームズ)」が、2022年12月23日(金)24日(土)の2日間にわたり横浜スーパーアリーナにてタクティカルFPS『VALORANT(ヴァロラント)』と『リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends/以下:LoL)』の日本初の統合イベント「Riot Games ONE」を開催した。

DAY1ではヴァロラントのCrazy Raccoon Cup(以下、CRカップ)のファイナルオフライン進出権を得た2チームによるCRカップファイナルやLoLのThe k4senストリーマーチーム同士による対戦。そして有名ストリーマーが、プロ選手による即席チームに挑む「THE DEFIERS」などのコンテンツで会場は盛り上がりをみせた。そしてDAY2では、ストリーマーによるステージ演目や国内外のヴァロラントの5つのプロチームによるエキシビジョンマッチが開催された。

このイベント開催の背景には、eスポーツの世界的な盛り上がりが起因している。

日本でeスポーツが、普及したのは2008年でeスポーツ元年とも呼ばれている。一方で世界の市場規模は2022年の段階で*1,790百万ドル。また日本のeスポーツ市場規模は、2018年は4,831百万円に対して、2022年には12,215百万円、2023年には約3倍の15,334百万円になると予測されているのだ。

つまりゲームという娯楽が、一つの興行として確立する過渡期に立っていると言っても過言ではない。今回は世界のeスポーツを牽引するRiotGamesのライアットゲームズ日本支社・社長/CEO・藤本氏を取材。eスポーツの日本における可能性や未来の姿についてお話を聞いてきた。

「Riot Games(ライアットゲームズ)」とは?

ライアットゲームズは、米国カリフォリニア州で創業したゲーム会社だ。PCオンラインゲーム『リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)』やタクティカルFPS『VALORANT(ヴァロラント)』を筆頭に、月間アクティブプレイヤーが1億人を超えるゲーム会社だ。「2022 VALORANT Champions Tour Stage 1 Masters」では、決勝戦の同時接続数が世界で推定100万人以上を記録。国内でも過去最大となる41万人を達成し、多くのプレイヤーたちを熱狂させた。





「eスポーツ(esports)」とは?

「eスポーツ(esports)」とは、エレクトロニック・スポーツの略語で電子機器を用いておこなう娯楽、競技、スポーツ全般を示す言葉です。コンピューターゲームやビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称で、日本では2018年に一般社団法人eスポーツ連合の摂理により誕生。





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インタビューイー
藤本恭史氏
合同会社ライアットゲームズ
社長/CEO

国内IT企業でのフィールドエンジニアを経て、1998年11月よりマイクロソフト(現 日本マイクロソフト)に入社したのち、業務執行役員 Windows本部長およびセントラルマーケティング本部長、2015年7月からはペイパルにおけるマーケティング統括等を歴任。2018年3月より 合同会社ライアットゲームズにパブリッシング統括ディレクターとして入社。2022年2月21日付けで社長/CEOに就任。



日本のeスポーツ市場規模の現状とは?



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日本のeスポーツのファン層は、2018年から2021年の段階で743.4万人を記録。大会やイベント、オンライン配信などの視聴が定着し、ファン数を着実に増やしてきたと言われている。特に「ストリーミング」によって、選手やチーム、ストリーマーとの交流・イベントを通して拡散。試乗希望項目別割合を見ても、スポンサーは全体の62.7%を占めているのだ。

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▲出典:『2018~2025年eスポーツファン数推移』

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▲出典:『2021年eスポーツ市場規模項目割合

このようにeスポーツは、日本・世界で市場が拡大しているのが現状だ。この世界的な盛り上がりの先に、eスポーツの未来はどのように進化・発展するのか、日本のeスポーツには何が必要か――― 世界のeスポーツをリードするライアットゲームズの藤本氏に、Riot Games ONEから考えられる日本のeスポーツの可能性について聞いてきた。

Riot Games ONEはeスポーツの可能性を凝縮した2日間



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―――Riot Games ONEの最終日になる2日目を迎えましたが、実際に開催してみてどのような感想を持ちでしょうか?

藤本氏

そうですね、一言で言うと“感無量”ですね!イベント開催までのこの 2ヶ月間は、長いようで短く、短いようで長く―――やっと日本のeスポーツが、世界にも認められる地点まで来たと思っています。

―――私自身もはじめて、eスポーツを観戦しましたが、現場の熱量はもちろん、選手たちのプレイのレベルが高すぎて、画面に釘付けになってしまいました!

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ありがとうございます。実は、今回のイベント実現の背景には、“ファンへの恩返し”というテーマがありました。

一言で感無量と言っても、2つの軸でRiot Games ONEの世界観が実現できたと思っています。その2軸は、弊社が手掛けてきたVALORANT(ヴァロラント)やリーグ・オブ・レジェンド(LoL)などのゲームの側面とeスポーツ自体の側面が存在します。

まずゲームの側面では、今まで以上に多くの人にプレイしてもらうことができ、1つのゲームタイトルとして大きく成長できた1年でした。

プレイヤーの皆さんに遊んでもらえたのはもちろん、ストリーマー(ゲーム実況やゲーム配信者)の方、プロプレイヤー・プロ団体、パートナー様、オーガナイザーの企業様など多くの方に支えてもらいながら成長することができました。

そのため、ゲームに関わってくれた皆様やファンの方たちも含めて、イベントという形で恩返しがしたかったんです――その恩返しをするために企画したのがRiot Games ONEになります。

またRiot Games ONEは、日本独自のイベントですが、日本のeスポーツを盛り上げるための重要なイベントとして海外(グローバル)でも説明し、実現したイベントでもあります。

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―――オフラインとオンラインの同時開催でしたが、このような運営方針も“恩返し”のコンセプトに基づいていたのでしょうか?

そうですね。オフラインだけだと時間や距離の成約によって、会場まで足を運ぶのが難しいケースがあります。恩返しというスタンスでイベント運営を進めていたので、2日間無料でオンライン配信をしていました。

そして、eスポーツという観点では、日本で世界大会クラスのイベントを実現できたことがとても嬉しいです。

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もともといつか日本で世界大会規模のイベントを実現したいと思っていたんです。

世界中の競合チームが日本に訪れ、横浜アリーナという大舞台で、日本の代表チームと世界最高峰のチームが戦うというのが夢のようでしたね。ステージに日本と世界の選手たちが、並んだときは私自身もグッとくるものがありました―――



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▲イベントでは、DAY1・DAY2共にスペシャルオープニングショーが開催。アーティストのReolとAK-69が会場を盛り上げた。

―――なるほど…eスポーツが世界で盛り上がっているのはもちろん、日本でも会場の盛り上がりやファンたちの熱量が生まれているのは、個人的にも驚きました!

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ありがとうございます。ここまで盛り上がるイベントになったのは、パブリッシャー、ゲームファン、プレイヤーの綺麗なトライアングルが、実現できたのが大きいですね。

このような大型イベントは、パブリッシャー側が一方的に一海外から選手を呼んで、無理やり成立させることが可能です。ですが、この方法でイベントを開催してもオーディエンスやゲームファンが、追いついてきません。つまり、選手やゲームのファンなどを取り残した形で、パブリッシャー側からの一方的に配信するだけのイベントになってしまいます――― この方法では、今回のようなイベントの盛り上がりにはなりません。

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▲イベントではコスプレイヤー撮影会も開催。プロコスプレイヤー伊藤もえさんも人気キャラクター「ネオン」で登場。

―――ありがとうございます。日本のeスポーツは、海外に比べて後進国と呼ばれているイメージがありましたが、かなりボトムが上がってきているんですね。

そうですね。eスポーツという言葉が、バズワード的に誕生したのは、2018年と言われています。当時の日本は、eスポーツ後進国で、日本は大会でも好成績を納めるのが難しかったんですよね。

ですが、「ZETA DIVISION®」が世界3位になったり、ゲーム配信のストリーマーがゲームや大会の様子を配信してくれたりと、eスポーツと関わるすべての人とファンたちと、一歩一歩を歩いた道があったからこそ、今この地点まで到達したと思っています。

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世界最高峰のスキルを持った選手たちのコンペティション。



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――― 日本のeスポーツを盛り上げるには、これから何が必要になってくるのでしょうか?

結論からお伝えすると、日本と世界のeスポーツのギャップをどのように埋めて、カルチャーとして確立させていくかが重要だと考えています。

日本ではeスポーツという言葉の定義が、定まりきっていなかったり、言葉の受け取り方が違う形で伝わってしまったりしていました。しかし私たちの考えでは、最高の知識、戦略、スキル、プレイ能力をもった世界最高峰のプロのeゲーマーたちが戦うコンペティションをeスポーツと定義しています。

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日本と海外で定義が違う(プロトコルが違う)なかで、eスポーツを比較すると常にギャップが生まれてしまいます。そのため私たちの立場としては、Riot Games ONEのような世界観がeスポーツの定義として、世界的な要素を取り込んでブランド化していきたいですね。

eスポーツの競技性は、日本も世界シーンに合わせる――そのうえで、日本独自のカルチャーを追求していくことも大切になってくると思っています。

例えば、VALORANT(ヴァロラント)で言うとZ世代のファンが多いんです。また女性ファンも多く、ゲームのプレイヤー以外にも、視聴専門の人もいますし、チームファン、ストリーマーの方も存在します。

このようなオーディエンスが、コミュニティーを作り上げているというのはこれまで日本のeスポーツシーンにおいて初めてのことかもしれません。



―――徐々にコミュニティー化され、文化として定着する動きが活発になっている気がしますが、その要因などは何かありますか?

eスポーツの視聴率が、伸びた要因は2つあると思っています。1つは、ZETA DIVISION®をはじめとした、日本のトップチームが世界と戦い成果を出してくれたという点です。

そして2つ目は、彼らの戦いをサポートするストリーマーの存在です。ウォッチパーティーという形で、ミラー配信をしてオーディエンスと一緒に試合を観戦するというイベントをおこないました。実際にアイスランド・レイキャビクで開催された『VALORANT Champions Tour 2022 Stage 1 Masters Reykjavík』では、日本語配信の最大同時視聴者数が、41.2万人を記録しています。

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サッカーや野球が好きな人の中には、競技自体が好きな人やエンターテインメントとして見ている人など、さまざまなファン層が存在します。eスポーツもコミュニティー化されて、先日のサッカーワールドカップのようにナショナリズムを感じるコンペティションが、日本でも浸透しつつある印象を受けます。

eスポーツの“市民権”とコンテンツが重要になる。



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――― ありがとうございます。世界規模でeスポーツは5年後10年後、どのように進化すると思いますか?

eスポーツが盛り上がるには、どれだけ市民権を得られるかが大切です。そして市民権を得るには、eスポーツのコンテンツが重要になってきます。ゲームの競技性や内容、プレイヤーの技がどれ程ハイレベルなスキルなのか、戦略性がどう優れているのか――このようなコンテクストも理解しながら、視聴するのが大事な気がしています。

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そして年齢やライフステージによって、ゲームとの関わり方も変わってきます。LoLはリリースして10年以上経ちますが、当時プレイヤーだった人が今は視聴専門になっているケースも多く存在します。

そのため、IP(知的財産)の側面だったり、ブランドだったり、コンテンツだったり、人生を通して長くゆっくりとeスポーツと付き合っていただくことになると思います。イメージとしては、高校時代サッカー部でバリバリ練習をしていた人が、大人になり仕事と家庭を持ち、プレイはしないが視聴専門になるようなイメージですね。

長く太くeスポーツというコンテンツを楽しむ人が増えれば、プロジェクトができて、民主化につながり、市民権を得る――― このようなサイクルで、eスポーツという産業自体もアップデートし続ける必要があると思っています。そのためには、短期サイクルでeスポーツが世の中に広がっていった先に、長期的にゲームをパブリッシングすることも重要です。

世の中には、認知されるようになったけど、実際に出た商品が驚きや意外性もない普通の商品だと、人は離れて言ってしまいます。なので、常にゲームファンたちを驚かせ、飽きさせないコンテンツを提供していく必要があるのです。

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eスポーツはカルチャー(文化)。グローバルスタンダードに近い形を日本の当たり前に。



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―――これから挑戦していきたいことは、何かありますか?

私たちは、eスポーツをグローバルスタンダードに近い形で日本に根付かせるのが最大のミッションだと思っています。Riot Games ONEは日本独自のイベントでしたが、グローバルサーキットの中に含んで挑戦するというのがとても重要です。

やっぱり、世界のeスポーツは、すごい盛り上がりを見せています。例えば、LoLの世界大会「Worlds」には、スポンサーにマスターカードさんが入っていて、優勝のトロフィーはティファニーさんが制作するなど――― 事業や業界の垣根を超えて、eスポーツを盛り上げる波が来ているわけですよね。

市場規模の問題もありますが、日本ではまだ海外と同じ水準の盛り上がりに至っていいないのが現状です。ですがなぜ海外でこのような現状が起きているのかは、日本でも伝えるべきだと思っています。

―――ありがとうございます。最後に藤本さんにとって、eスポーツとはどのような存在ですか?

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私にとってeスポーツは、カルチャー(文化)ですね。数年前まで、日本で『趣味はゲームです!』というのを伝えるのに抵抗がある人も多かったと思います。

しかし今日会場に訪れているオーディエンスの皆さんは、一般的なアパレルブランドではなく、eスポーツのアパレルブランドの洋服を着て、自分がゲーマーであり、ゲーム好きのコミュニティーに属しているというのを全身で表現している方が多くいらっしゃいます。

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それはコミュニティーの中に所属している安心感があったり、誇りにできるものだったり、意思を持ちeスポーツというカルチャーに触れているからだと思います。この世界的にも注目を集めるeスポーツという“カルチャー”を日本でより多くの人に伝え、eスポーツのボトムを上げるためにこれからも精進していきたいですね!

Riot Games ONEの詳細を見る

<編集後記>

Riot Games ONEのイベントを通して感じたことは、eスポーツの熱狂だ。日本はeスポーツ後進国と言われていたが、イベントのフィナーレでは『VALORANT』世界大会“VCT Masters”の東京開催が告知された。この発表に観客は熱狂し、涙を流すオーディエンスも多数目に入った。また実況キャスターとしてVALORANTの競技シーンを支えてきたOooDaさんは、感極まり涙を流す姿も――― 日本初となるVCT Mastersの開催はもちろん、2023年のeスポーツは何をみせてくれるのか―― 今後もRiot Gamesとeスポーツの動向に目を光らせていきたい。



新井那知
ライター
So-gúd編集部
新井 那知
埼玉県・熊谷市出身。渋谷の某ITベンチャーに就職後、2016年にフリーランスライターとして独立。独立後は、アパレル、音楽媒体、求人媒体、専門誌での取材やコラム作成を担当する。海外で実績を積むために訪れたニューヨークで、なぜかカレー屋を開店することに—-帰国後は、クライアントワークを通してライターとして日々取材や編集、執筆を担当する。料理と犬、最近目覚めたカポエイラが好き(脚技の特訓中)。
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