山口県の城下町・萩市がワーケーションで熱い!? 伝統と最先端を大切にするまちが、ワーケーションに取り組むわけとは?


最近、山口県・萩市のワーケーションが熱いらしいーーーー

萩市は、日本海に注ぐ阿武川下流の三角州を中心に発達した城下町だ。高杉晋作(たかすぎしんさく)や吉田松陰(よしだしょういん)の生家があり、明治維新胎動の地とも呼ばれている。

歴史的に重要な偉人たちが誕生した歴史の街が、なぜワーケーションで注目を集めているのだろう? 一見歴史に重きを置いたまちのように感じる萩市だが、IT誘致やワーケーションに力を入れるトラディショナルと最先端をかけ合わせた側面を有しているのだ。

そこで今回は、山口県萩市・企業誘致推進課の村田氏を取材。「わたしにとって萩市は、“家族”のような場所です!ワーケーションを通して、ゆっくりとした時間を過ごしながら、萩市の魅力を堪能してほしいですね」と語る村田氏ーーーー 今回は萩市の魅力やワーケーションのニューノーマルについてお話をお伺いした。



山口県,萩市,ワーケーション
インタビューイー
山口県萩市・企業誘致推進課
村田氏



江戸の地図がそのまま使える、萩のまちの魅力




─────まずは山口県・萩市について教えてください。

萩市は山口県の北部に位置する街で、幕末・明治頃に活躍した偉人たちの出身地として認知されています。高杉晋作の生家がそのまま残っていたり、吉田松陰先生が主宰した私塾「*松下村塾(しょうかそんじゅく)」があったりと、歴史的に重要な建築物が数多くそのまま残されています。「江戸の地図がそのまま使えるまち」とも言われていて、城下町や町割りなどが今も当時のまま残っているんです。



────確かに、昔のまま時間が止まっている印象を受けました。江戸や昭和の風景が、そのまま残っているようですね。



そうなんです。実は萩市は、「萩市景観条例」という都市計画の条例に基づいて、都市設計をしています。歴史的な風情、情緒やたたずまいを守るため、建造物の色や高さを規制したり、過度な都市開発をしないようにしているんです。

このような取り組みもあり、 2015年ユネスコ世界遺産委員会では、「*明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録が決定されました。萩市からは、萩反射炉(はぎはんしゃろ)、萩城下町、松下村塾などが世界文化遺産として認定されたんです。

昔ながらの景観が残っているので、ワーケーションで訪れた皆さんからは、『はじめて萩市に来たけど、はじめてとは思えない懐かしい感じがする』とよく言われますね!



────なるほど! 街並みの風情がありますし、山や海も近いので食文化も活発そうですね。

実は萩市は、火山活動によって今の大地ができたんです。過去1億年にわたって大小様々な火山が噴火しました。溶岩の上は野菜や果物が良く育ち、麓は湧水が豊富で稲作が盛んで、多種多様な作物が収穫されます。それに火山が海岸や海底にも複雑な地形をつくったことで、魚介類が良く育つ天然の漁礁が近海にいくつもあって、新鮮な海の幸も味わえるんですよね。



特に萩市須佐で捕れるケンサキイカの「須佐男命いか」は、梅雨明けから秋が旬なのでぜひ召し上がって欲しいですね!それに山口県には、「獺祭(だっさい)」や「東洋美人」などの酒蔵も多くあるので、グルメな旅行者の方たちからは喜ばれています。

食べるのが好きな方もお酒が好きな方も、「食」に関しては両者のニーズをしっかりと満たせるまちだと思います!



*1- 世界文化遺産に認定された施設-

・萩反射炉
・恵美須ヶ鼻造船所跡
・大板山たたら製鉄遺跡
・萩城下町
・松下村塾



山口県・萩市の世界文化遺産について詳しく見る

ワーケーションは、今までにない知見との出会いーーーー




────────萩市でのワーケーションの推奨や企業誘致など幅広い領域のお仕事をされている印象ですが、村田様のお仕事についても教えてください。

私は山口県・萩市・企業誘致推進課に所属しています。主な仕事は、萩市に事業拡大のため進出する企業様の支援を担当しています。2015年からIT企業様のサテライトオフィス設立のサポートを兼任していたんです。

このような取り組みの背景には、若い世代の働き方や仕事の創出の幅を広げる目的がありました。



────なるほど、IT系の企業に特化した理由は何かあるんですか?



IT企業は、テレワークの浸透もそうですが距離や時間の制限が少ないのが特徴ですよね。ネット環境さえあれば、本社が山口県以外でも、萩市内で希望の企業で仕事ができます。実際にこの取り組みをはじめてから6社が萩市に進出していただき、現在25名以上の地元の雇用も生まれました。



────ワーケーションに力を入れはじめたのも、ここまでの流れがあって、スタートしたんですか?

そうですね!実は、2018年に「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」の平田理事長が、萩市に来ていただいたことがあったんです。その際に萩市とフリーランス協会様で何か一緒にできないかーーー という話で盛り上がったんです。

後日、フリーランス協会様と連携して、フリーランスの方が地元の経営課題をヒアリングして、翌朝に解決案をプレゼンするという企画をワーケーションも込みで実施しました。

10名の現役フリーランスの方たちに萩市に来ていただき、地元企業の経営課題を1時間でヒアリングして、翌朝1時間でプレゼンするワーケーションを3泊4日の合宿でおこなったんです。



実際にフリーランスの方たちが、地元企業様の経営課題に真剣に向き合ってくれた結果、課題に対して的確な提案をしてくれたんです。最初は半信半疑だった企業様側も、とても喜んでくれましたーーーー まだ当時は、ワーケーションという言葉が萩市でも浸透していなかったのですが、その瞬間にワーケーションの可能性を感じたんです!

ワーケーションを通して、県外からの知見を入れることで、今まで解決できなかった問題の解決にもつながると思ったんですよね。



短期滞在から長期滞在まで萩市しっかりサポート




────素晴らしいですね。コロナが流行してから、ワーケーションをしたいけどできない企業様も多いと思うのですが、今後萩市としては、どのようなワーケーションのお取り組みをしていきたいですか?

まずは萩市のファンになってくれる企業様やワーケーションで利用してくれる個人の方を一人でも多く増やしていきたいですね。企業様やフリーランスの方が、定期的に萩市でワーケーションをしていただければ、流動的に地域の企業や個人と絡めて色々なことができると思っています。

そのためには、企業誘致推進課だけではなく、各部署や関係各所が今まで以上に連携した体制構築が必要です。もともと企業様に特化したワーケーションプランも設けていたので、このプランを通して萩市への誘致が決定したら、現地の採用活動も含めてサポートするなど、ワーケーションの先の未来も想定したプランを作っていきたいですね。

企業様に関しては、実際に企業のなかでワーケーションを制度として設けるのは、時間がかかったりハードルが高かったりします。そのため萩市側としては、出張感覚で来ていただけるような、パッケージプランも作りこんでいきたいと思っています。例えば、萩市に来ていただいた企業様が、ビジネス合宿をして、その後で観光だけの日程をつけた連泊してもらうーーーー そうすることで、出張感覚で仕事と観光を両立していただけるのではないかと考えています。

実際に「株式会社アイエスエフネット」様は、萩市内でワーケーショントライアルを実施していただきました。



────なるほど、ワーケーションで萩市を好きになってもらうーーーそして、移住したり萩市に進出したり、実際に仕事を進めるうえでのサポートもするイメージでしょうか?



そうですね。ワーケーションで来ていただいて、実際に定住してくれる企業様や個人のサポートは手厚く対応したいです。実際、萩市には「萩市ビジネスチャレンジサポートセンター(略:はぎビズ)」と呼ばれる施設があります。はぎビズは、萩市内とその周辺地域の事業者・起業希望者のみなさまを伴走型で支援する相談所ですね。



設立してから2年ですが、地元企業様から1,100件以上の相談を受けていて、密な関係が結ばれています。各事業者様が、それぞれ強みがあるので企業様ごとの強みを活かしたマッチングを行う、ビジネスマッチングのような取り組みもしているんです。萩市に定住していただいた企業様が、採用やビジネス面で困らないようにはぎビズを通して支援する体制も完備しているんです。


また移住や二地域居住などを検討している方向けに、「お試し暮らし住宅」の提供もしています。通称「#梅ちゃんち」と呼ばれているのですが、長期滞在を検討している方が利用できる戸建て住宅もあるんです。梅ちゃんちに泊まっていただき、萩の風土や日常生活の状況を体験してもらうことで、実際の萩での生活がイメージしやすくなると思います。



萩のワーケーションで、自分の心を整える




────長期滞在に特化した施設もあるんですね! 実際に萩市に定住された方やワーケーションで来られた方の反響はどうですか?

まず皆様が口をそろえておっしゃることは、「通勤の負担がほんとに減った!」ということです(笑)。それに自分の時間を持てるようになったと良く言われています。実際に萩市に進出された企業様の社員の方は、始業前に海でサーフィンや釣りをしてから出社する方もいますね!都心で生活しているとなかなかできない朝活だと思います。





────ハワイの会社員みたいですね(笑)。実際に萩市のワーケーションでは、どのような過ごし方をしてほしいですか?

萩市のワーケーションに来られた皆さんには、ゆっくりとした時間を楽しんでほしいですね。年齢を重ねれば重ねるほど、仕事に意識が向きがちですが、萩市でワーケーションをする時だけでも、地域の方と触れ合ったり、普段見れない風景を見てもらったり、自分の心を整える時間に使ってほしいですね。

実際にワーケーションに来られた方は、自分を顧みる時間や自分の内側を見つめ直す時間を過ごすのには最適なまちと言っていただけます。





────確かにそうですね…仕事ばかりしていると“人間らしい生活”を忘れてしまう感覚があります(汗)

それに 経営者や幹部層の方たちが、萩市にいらっしゃると、幕末・明治を駆け抜けた偉人たちの足跡や生き様がピンポイントで刺さるみたいなんですよね。

やはり経営者や幹部層の方たちは、ビジネスの荒波を泳ぎ続けているので、新しいことへの挑戦や思うようにいかない苦労など、色々な経験をされていますよね。吉田松陰先生をはじめとした歴史上の人たちの生き様に触れて、「自分もまだまだ頑張ろう!」と気持ちを切り替えて、都心に変えられる方もいらっしゃいます。



伝統を守って繋ぐ、それが萩の魅力




────ワーケーションは、これから更に盛り上がっていくと思うのですが、これから先ワーケーションはどのようになっていくのでしょうか?

ワーケーションという言葉は、徐々に世の中的にも浸透してきたと思います。しかしワーケーションの定義は、まだ少し明確には定まっていない気もしていますね。 だからこそ、ここ数年間で様々な種類のワーケーションが、生まれると思っているんです。ワーケーションをする人たちも様々なワーケーションプランが、選べる時代になっていくと想定しています。



このワーケーションプランの多様化などは、スピード感を持って変わっていくと思うのですが、一方で萩(地方都市)は、“変わらない良さ”を大切にしていきたいと思っています。

萩は「伝統を守って繋ぐ」というのが得意なまちなので、伝統や歴史的な街並、風情は大切にしていきたいですね。

萩にもどって来てくれた方が良い意味で「萩っていつ来ても変わってないよね!」と言っていただけるまちにしたいんです。

一方で少し矛盾しているようですが、「伝統を守りつつワーケーションをはじめとした新しい物事には直ぐに取り入れる」というスタンスを大切にしていきたいですね。

新しい物事をすぐに取り入れるといういうと少しミーハーな印象を持たれてしまうかもしれませんね(汗)ですが、ネガティブな意味ではなく、“変化を恐れずに新しいことに挑戦する”ということです。



高杉晋作は、身分制度にとらわれずに、騎兵隊を組織したり、吉田松陰先生も身分や階級にとらわれずに誰でも学ぶことができる松下村塾を作ったり、木戸孝允(きどたかよし)は、倒幕への舵取りをおこない、近代国家の樹立に貢献したりーーーー 萩市の先人たちは、常に時代を変えるような新しいことに挑戦して来たと思うんですよね。このような萩の偉大な先輩方も挑戦してきたなら、私たちも臆さずに新しいことに挑戦しようと思っているんです。



私にとって萩のまちは、「家族」




────伝統と最先端を融合させたまちは、素敵ですね。最後に村田さんにとって「萩市」とは、どのようなまちですか?

私にとって萩は、「家族」ですね。実は私も山口県に移住してきた人間の一人なんです。毎日の生活を過ごすなかで、少しずつ愛着が湧いてきて、萩が大好きになりました。毎日の生活や仕事を通して、徐々に萩に溶け込むことができて、周りの人も家族のように接してくれていたんですーーーー いつも家族と一緒にいて、そしてともに成長する感覚ですかね。

こんなことを言うと『俺の家もお前の家族に入っとんかい!』っとツッコまれるかもしれませんね(笑)。だからこそ、まちをもっと盛り上げていかないといけませんし、できることがあれば何でも挑戦したいんです。



時々私も仕事でうまくいかないことがあると、職場からの帰路に萩市内が一望できる山があるんですけど、そこで夕日を眺める時があるんです。山から夕日を見ていると『高杉晋作も同じ夕日を見てたのかなー』『吉田松陰先生も色々な壁を乗り越えてきたんだよなー』と考えさせられるんですよねーーーー そんなことを考えているうちに、先人たちから背中を押してもらえる気がするんです。

『お前、自分たちと同じ土地で仕事をしているんだから、そんなことでへこたれるな!』って肩を叩かれている感覚ですね(笑)。





────良い意味で先人たちからのプレッシャーがありますね(笑)

そうですね!吉田松陰先生も『宜しく先ず一事より一日より始むべし』という名言を残しています。これは大事を成し遂げないなら、まずは1日の小さな一歩を大切にしろということなんです。

萩は世界文化遺産にも登録されているので、世界に通じるポテンシャルがあるまちだと思っています。だからこそ、私たちで萩の魅力を日本国内はもちろん、世界中に伝えていきたいんです。その結果、コロナウィルスが落ち着いたら、世界中の人が萩に足を運んでくれるような施策を積極的に取り組んでいきたいと考えています。

吉田松陰先生のお言葉の通り、一日1歩ずつ、世界に誇れる萩にするために歩を止めないように精進していきます。





山口県萩市のワーケーションの詳細を見る

<編集後記>

昨今「これからのビジネスは、地方が盛り上がる」と言われることが多い。今回の取材を通してその理由を知ることができた気がする。今回訪れた山口県・萩市は、伝統を守りつつ、新しい物事に常に挑戦するというスタンスは、正しく地方都市が盛り上がるうえで必要不可欠なことなのではないだろうか。

またその行動動機は、萩市出身の歴史上の偉人たちの背中を追ってのことだったーーーーワーケーションとしてはもちろん、観光でぜひ一度山口県・萩市へ足を運んでほしい。歴史情緒溢れる街並みと自然に触れて、萩のまちを堪能してみてはどうだろうか?



新井那知
ライター
So-gúd編集部
新井 那知
埼玉県・熊谷市出身。渋谷の某ITベンチャーに就職後、2016年にフリーランスライターとして独立。独立後は、アパレル、音楽媒体、求人媒体、専門誌での取材やコラム作成を担当する。海外で実績を積むために訪れたニューヨークで、なぜかカレー屋を開店することに—-帰国後は、クライアントワークを通してライターとして日々取材や編集、執筆を担当する。料理と犬、最近目覚めたカポエイラが好き(足技の特訓中)。
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