2023.03.03

リスキリングが求められる時代の成功法は!?ランサーズ「#フリーランスの日2022」から考えるリスキリングの重要性。


昨年2022年12月15日(金)渋谷ヒカリエにて、ランサーズ株式会社(以下:ランサーズ)主催のイベント【#フリーランスの日2022 求められる「リスキング」&「副業」でスキルをシェア】が開催された。

ランサーズは、一般社団法人日本記念日協会より認定を受け、12月16日(土)を「フリーランスの日」として制定。フリーランスを支援する仕事のプラットフォーム「Lancers(ランサーズ)」のサービスを開始した日に由来している。

フリーランスの日の制定を記念し、このイベントでは「*リスキリング」「副業」「スキルトレンド」をテーマにトークセッションがおこなわれた。

本記事では昨今注目を集める、「リスキング」に焦点を当て、イベントの様子を紹介していく。



リスキリングとは

リスキリングとは、「技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、新しい知識やスキルを学ぶこと」です。2020年のダボス会議におきて「リスキング革命(Reskilling Revolution)」が発表され、注目を集めました。また岸田総理の所信表明演説内では5年間で1兆円を投入するという発言があり、新語・流行語にもノミネートされました。





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登壇者プロフィール
飯田智紀氏
株式会社ベネッセコーポレーション
社会人教育事業部 部長(Udemy日本事業責任者)
ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)とソフトバンクグループ株式会社で経営企画、事業再生・国内外投資業務などに従事。2015年9月よりベネッセホールディングス DX人材育成、リスキリングなど)を推進中。



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登壇者プロフィール
野口竜司氏
日本ディープラーニング協会 人材育成委員
ELYZA 取締役CMO / グロースX AI戦略アドバイザー
株式会社ZOZO NEXT 取締役CAIO(Chief AI Officer)やZホールディングス Z AIアカデミア幹事を経て現職。AI活用人材䛾育成や大企業䛾DX推進コンサルティングも実 施。著書に「文系AI人材になる」(東洋経済新報社)など。



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登壇者プロフィール
曽根秀晶氏
ランサーズ株式会社
取締役 執行役員COO
2007年よりマッキンゼー・アンド・カンパニーで、コンサルタントとしてプロジェクトに従事。

2010年より楽天株式会社にて、「楽天市場」の営業・事業戦略を担当後、海外デジタルコンテンツ事業のM&A・PMIを推進。2015年よりランサーズに参画し、現職に至る。著書に「強い組織をつくる オンライン時代の戦略的リモート・マネジメント」がある。



経済産業省も支援するリスキリングの背景と課題は?





トークセッションでは、株式会社ベネッセコーポレーション「Udemy(ユーデミー)」から飯田氏。そして、日本ディープラーニング協人材育成委員、ELYZA取締役CMO、グロースXA戦略アドバイザー・野口氏、そしてランサーズCOOの曽根氏が登壇。

トークセッションは、ランサーズ・曽根氏からリスキングが注目された背景についての解説からスタートした。リスキングが注目された背景は、大きく分けると2点存在する。

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1つは、2030年にIT人材は最大79万人の人材不足になることが推計されている点だ。

若年層の人口減少や高齢化が加速する一方で、IT需要予測に対する人材需要と需給ギャップの差分が広がり、IT領域の人材不足は深刻化すると予想されている。

2つ目は日本が、リスキングに5年で1兆円の投資を発表している点だ。

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この背景には「*デジタル田園都市国家構想」の取り組みが関係している。田園都市国家構想は、「心ゆたかな暮らし」(Well-Being)と「持続可能な環境・社会・経済」(Sustainability)を実現していく構想を指す。そして地域の豊かさをそのままに、都市と同じ又違った利便性と魅力を備えた、魅力溢れる新たな地域を目指している。

しかし国が資金援助などのハード面で支援する体制を整えた一方、日本におけるリスキングは課題も多く欧米諸国に比べると“まだまだ”なのが現状のようだ。トークセッションは、「世界におけるリスキングと日本のリスキングの課題」に移った。



*デジタル田園都市国家構想とは?

デジタル庁では、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局、内閣府地方創生推進室との連携の下、デジタル田園都市国家構想を進めています。デジタル田園都市国家構想とは、「心ゆたかな暮らし」(Well-Being)と「持続可能な環境・社会・経済」(Sustainability)を実現していく構想です。





世界のリスキリングの現状と日本のリスキリングの課題



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「世界におけるリスキングと日本のリスキリングの課題」について、曽根氏から野口氏に質問すると野口氏は「一般的な話では、欧米は人の能力(スキル)を中心に企業とマッチングしていくジョブ型が、企業と個人間で浸透しています。つまり欧米では、個人が率先してスキルを身に着ける、リスキリングの土壌が既にありました。」とコメント。

また野口氏は、「欧米と違い日本では、終身雇用制が一般的でした。日本の終身雇用は、従業員が長期的に働いてくれるメリットもありますが、長期定着雇用が過渡期を迎えようとしています。」とリスキリングが既に浸透しているアメリカと日本の就業スタイルの違いについて言及。

また曽根氏から野口氏へ、DX化やデジタル・技術スキルの発達により、技術的な失業の可能性について質問。

「ここ数年のAI技術の発達が一気に拡大しました。特に英語圏における語学領域の技術進化が加速しています。これまで技術的にできないと思っていた領域にもAIが食い込んできていますね。その上で、AIと人の役割分担が明確に棲み分けられているようになったんです。」「日本においてもAIとの共存における働き方の再設計が必要になってきています。知的生産性のあるAIが、発展していく中で人は何ができるのかが大切になってきていますね。」とAIの専門家としての視点からコメントを残した。

しかし日本のデジタル競争ランキングは、64ヶ国中29位と低迷。またデジタル・技術領域では62位という現状だ。


出典:『IMD世界デジタル競争ランキング2022』

この現状の課題感に対して、曽根氏がグローバルでのリスキリングのトレンドについて飯田氏へ質問。飯田氏は「日本はデジタルトランスフォーメーションが、遅れています。日本では先鋭的に思われるDXもすでに、欧米を中心にすでにデジタル化が完了している事例が多く存在します。」と日本のDX化の遅れについて言及した。



また「スキル面のトレンドでいうとテクニカルスキルでは、AWS、AI、クラウドコンピューターの領域が伸びています。特にクラウド上のデータベースのスキルの需要が、高まっています。その需要を見越して、自己投資(リスキリング)をしている人が多いですね。」

「ビジネススキルでは、プロジェクトを成功させるためのアジャイル、スクラム、コミュニケーション、マネジメントといった組織力を強化するスキルが注目されています。またカスタマーエクスペリエンスを目的とした、デジタル環境における顧客サポートの領域も伸びています。オフラインをただオンラインに変えるだけだはなく、設計自体を変える必要性が出てきていますね。」とリスキリングのトレンドについてコメントを残した。



「リスキリング」は個人・企業・国も強くする!? 三方よしで社会を循環するには何が大切か?





またトークセッションは、リスキリングで個人、企業、国にもポジティブな効果を実現させるには、技術的なスキルとビジネススキルを横断できる人材が重要視されることについて言及された。しかし“企業が求めるスキル”と“個人が学びたいスキル”のギャップがあるのが現状のようだ。

この個人と企業が求めるスキルのねじれに対して、野口氏は「社会と企業が、技術発展に伴いDX、ビジネス人材、デジタル人材を求めています。技術面とビジネス面の中間の領域のブリッジ(架け橋)ができる人の需要が高まると考えています。」とコメント。



また野口氏は「国がリスキリングに投資するようになり、ハード面では国がバックアップしてくれる世の中になりました。しかしハード面だけでは、質の良い学びに繋がりません。ソフト面は、誰が何を学ぶのかという目的やゴールが非常に大切です。」とリスキングするためのスタンスについて語った。

一方、飯田氏は「デジタル田園都市構造は、新しい資本主義を実現することで、人の人生を豊かにするという考えがあります。デジタル田園都市構造や新しい資本主義を実現するためには、人とこれまでの方法を変える必要があると考えています。しかし既存のやり方を変えて、課題を乗り超えるのは大変です。そのためリスキリングするには、デジタル田園都市構造や新しい資本主義が実現した“先の未来”をイメージできているかどうかが大切になってきます」とコメント。

また飯田氏は、「自分がこれまで培ったスキル学びを一度捨てて「アンラーン」してから、新しいスキルを取り込む学びに取り組む必要があります。しかし、自分が一度手放したスキル学びの余白に何を入れたら良いかどうかわからない人も多いはずです。そのためスキル学びを捨てた後に、新しく学ぶべきスキルを紹介するようなガイドラインがあると良いですね」と個人におけるリスキリングのハードルの高さについても言及した。

個人でどんなスキルをリスキリングすれば稼げるのか?





そして最後のトークセッション最後のテーマは、「個人がどのようなスキルをリスキリングすることで、経済的な豊かさを獲得できるのかについて」のトークセッションだ。

「ベネッセの「社会人の学びに関する調査20221年」によると、社会人になった以降、学んだ経験がなく今後学ぶ意思もないと解答した「なんで学ぶの」層と呼ばれる社会人は、全体の41.3%を占めている。



また調査では、「学んでいます」層33.6%、「学ぶの疲れた」層11.5%、「学ぶつもり」層13.5%という結果になっている。

飯田氏は、この調査結果から「学んでいます」層を“自立型人材”と定義しており、金銭的な支援などをおこない「学ぶつもり」層を後押しすることで、個人・企業にポジティブな作用が発生するとコメント。

また「学んだことが実践で活かせる機会が必要です。個人がリスキリングで、得た成功体験づくりだったり、学びから成功までの仕組み化だったりを企業もサポートすることが大切だと思います」と発言を残した。


▲ランサーズデジタルアカデミーでは、 リスキリングで学んだスキルをデジタルバッジという形で視覚化。案件の受注へと繋げる取り組み。

さらに飯田氏は、機会に対しての感度の重要性についても語った。「社会変化のスピードが早いため、機会をいち早く取りにいくことも重要です。チャンスを視覚化(見える化)することで、仕事のチャンスが増えるということを伝えれば、「何で学ぶの」層の背中を押せるはずです。」と、先読みする力を身に着けることが重要と述べた。


▲リスキリングの主流は、DX領域が主流。

また曽根氏から、野口氏へこれから求められるスキルについて質問が投げられた。

野口氏は、AI領域と人と人との従来型のコミュニケーションの必要性を説明。

「AIを使いこなす際には、基本的に母国語がベースとなります。AIを利用した知的生産を言語によって向上できるので、個人・企業はAI技術の活用能力によって今まで以上の生産性を上げることが可能になります。一方で、AI技術が発達して常に移り変わるデジタルスキルに順応し、使えることが必要です。昨今の画像生成AIもそうですが、2年前には最先端だった技術が、2022年にはレガシーなテクノロジーと呼ばれてしまいます。そうなると、AIを使いこなす人と使わない人の生産性に影響が出てきます。」とAI技術による生産性の変化についてコメント。

「今後はAI翻訳の領域も精度が上がってくるので、グローバル基準のスキルがあれば海外企業にリモートでも働ける世界はやってくると思います。実際にエンジニアの方が、英語を勉強しグローバルを視野に入れたリスキリングをしているケースも存在します。またAIを利用する際は、母国語が基準になるんです。文系・理系問わず従来型のコミュニケーションスキルも重要になってきます。」とAI技術の発達によって変化する雇用の可能性についても語りトークイベントの幕が降りた。

<編集後記>

【#フリーランスの日2022 求められる「リスキング」&「副業」でスキルをシェア】のイベントから見えてきたことは、個人事業主(フリーランス)はもちろん、企業に属している組織人もリスキリングはマストになったという時代の移り変わりだ。ChatGPT、画像生成AIなど昨今のAI技術の進化は、恐ろしい速さで加速している。

「AIに仕事を奪われたらどうしよう…」「スキルを新たに学ぶにも時間もコストもかかるから今のまま何とか頑張る…」このような漠然とした不安や恐怖心を抱くのも当然かもしれない(自分はアナログ人間なので、恐怖心を感じている一人なのですが…)。しかし恐れている時間がないほど、世の中の移り変わりのスピードが加速している。

そんな時代の中で、社会人としての毎日を生きなければいけない私たちは、泥臭くても一歩ずつ前に進み、世の中のトレンドや移り変わりに目を光らせ、自分に投資する、そして社会や人に仕事で貢献する―――というシンプルでありながら、難易度の高い社会人生活をサバイブしていかなければいけないことを痛感した。 リスキリングすることで、“不安を感じる生きにくい自分”から“時代を生き抜ける自分”に進化するために、学び続けることの重要性を改めて感じたイベントでもあった



新井那知
ライター
So-gúd編集部
新井 那知
埼玉県・熊谷市出身。渋谷の某ITベンチャーに就職後、2016年にフリーランスライターとして独立。独立後は、アパレル、音楽媒体、求人媒体、専門誌での取材やコラム作成を担当する。海外で実績を積むために訪れたニューヨークで、なぜかカレー屋を開店することに—-帰国後は、クライアントワークを通してライターとして日々取材や編集、執筆を担当する。料理と犬、最近目覚めたカポエイラが好き(足技の特訓中)。
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