金融リテラシー革命:FPサテライトが描く金融教育の未来
2024.07.24

金融リテラシー革命:FPサテライトが描く金融教育の未来


先進国のなかでも、金融リテラシーの水準が低いといわれる日本。これは、個人の生活の豊さや社会全体の経済的な成長に直結する重要な課題だ。
この課題解決に取り組むのが、「FPサテライト株式会社」の町田萌氏。

中立的なファイナンシャルプランニングサービスによって、個人から法人までお金に関する幅広い相談事の解決を目指している。

本記事では、町田氏が考える日本の金融リテラシーの現状と課題、解決策について詳しくご紹介する。「将来が不安」「お金についてもっと知りたい」と感じている人は、ぜひ参考にしてみてほしい。

町田 萌
インタビュイー
町田 萌氏
FPサテライト株式会社
代表取締役


ファイナンシャルプランニングの専門家集団が、中立的な立場でサービスを提供


FPサテライト株式会社 公式ホームページ 引用:FPサテライト株式会社 公式ホームページ

―――まずは、御社の企業概要をお伺いできますか。

改めまして、FPサテライト株式会社と申します。弊社はファイナンシャルプランナー(以下、FP)の会社として、金融商品の販売を行わないスタンスで、ファイナンシャルプランニングに関する事業を展開しています。

具体的には、お客さまからの「お金の相談」をお受けすること。それから、マネー記事などのコンテンツの執筆・監修を行うこと。さらに、マネーセミナーや講師研修で金融の情報を伝える講師事業を行っています。独立系FPの方々がよく行っている、相談・執筆・講師の3つの事業ですね。

あともう一つ、法人向けの財務コンサルティングや実行支援を事業の4つ目の柱として行っています。

弊社は中小企業庁から経営革新等支援機関として認定を受けているのですが、認定支援機関を通さないと申請できない補助金ですとか、融資商品というものがあるんですね。そういったことを事業者向けにサポートできるところも、弊社の特徴の一つです。

―――御社の強みや差別化のポイントを教えてください。

FPサテライト株式会社 取材解説用写真 引用:FPサテライト株式会社 公式ホームページ

弊社は、中立的な立場でサービスを提供することをモットーとしております。たとえば、執筆やセミナーのようなBtoBの仕事においても、読者やセミナーに参加する聴講者といったエンドユーザーに対し、ポジショントークではない、バイアスのかかっていない情報を提供するようにしています。

その一環として、商品を取り扱うと中立性が保てなくなってしまうので、商品は取り扱っていません。また、クライアントからの「投資不動産を勧める内容にしてください」とか「うちの保険に加入してもらえる内容にしてください」といった依頼も受けないようにしています。弊社のポリシーにご納得いただいた方のみにサービスを提供することで、クライアントの信頼性向上に寄与できるところが弊社の強みとして挙げられるかなと思います。

それから、独立系FPは個人で活動するケースや一人社長のような形態が多いです。ですが弊社はFPが所属して活動するというスタンスをとっており、現在20名を超えるFPが在籍しています。

FPの相談や業務は非常に幅広いのですが、それぞれのメンバーが得意分野を持っているので、業界やジャンル、お客さまのニーズに合わせてFPをアサインできるところも強みの一つです。

―――どのような経緯で会社を起業されたのですか?

まずは、私が高校時代にFPになりたいと思ったことが始まりです。高校時代は商業科で、簿記など商業関連の勉強をしていました。高校3年生のときにその知識を生かせる職業を調べていて、たまたまFPについて知ったのがきっかけです。それでFPを目指してみようと思い、大学進学の際に商学部を選択し、学習を重ねてきました。

ただ、実際に大学で学び資格を取得したあと、新卒で就職活動をするにあたって進路選択を考えたときに、FPとして働ける求人がまったくありませんでした。就職するにしても、銀行、保険会社、証券会社といった選択肢しかないという現実に直面しました。

FPは保険とか証券も学べば、不動産、相続など幅広い分野を学びますが、保険会社に就職したら保険のみ、証券会社に行ったら証券しか扱えません。それでは6つの分野を学んだ意味があまりないのではないかという思いがあり、日本で6分野を生かしてコンサルティングを行うには独立するしかないと考え、ちょうど20歳のころに独立を決意しました。

日本の金融リテラシーを上げるために必要なこととは


FPサテライト株式会社 取材用写真
―――日本の金融リテラシーの現状について、どのようにお考えでしょうか?

日本国内でも認識されている通り、日本人の金融リテラシーが低いというのは事実だと思いますし、同業者や金融機関関係者の多くの人が問題視しています。しかし、その解決策や根本的な問題を認識している人が少ないように感じます。

具体的に言うと、問題意識を持っている人たちは、学生に向けて授業を行うとか金融のミクロ的な知識を補完していくことで、金融リテラシーが上がっていくだろうと考えています。

もちろん、やらないよりはやったほうがいいと思いますが、根本的な原因はそこではないんじゃないか、というのが私の持論です。

じゃあ何かっていうと、「自分で調べて考える」「自分で決める」など、進む道や人生を自分で選択するという行動が欠けているのではないかと思います。

日本人は金融リテラシーだけでなく、ビジネスリテラシーも高くないとか言われていますが、それらすべての根本原因は、自分で考えて決めている人が少ないところにあるのではないかと思うんですね。

私たち大人がやるべきことは、ただ知識を提供することではなく、自分で考えて選択する力を身につけさせることです。そういう社会になることが、根本的な解決策なのではないでしょうか。

日本人の幸福度はすごく低いと言われていますが、それも自分で決めていないから不満が生じたりするのであって、自分でしっかり決めて自分の人生を生きることで、幸福度も上がっていくのではないかと思います。

―――自分の頭で考え、決断する意識が大事ですね。

結局、基礎がない段階で金融知識をただ教えるだけでは、金融機関の言いなりになったり、バイアスのかかった情報をもとに選択したりしてしまい、ミスリードにつながる可能性があります。むしろ、金融知識だけを先に身につけるのは、内容や状況によっては逆効果になりかねないんじゃないかなとさえ感じます。

今は情報そのものが多いので、情報をどう取捨選択していくのかも大事ですし、自分の指標を持って決める力が非常に重要なんじゃないかと思います。金融知識を学ぶ前に、まずは自分が何を目指し、どういう人生を送りたいのか考えること。お金だけ持っていても幸せになれるとは限りませんので、どう使うのかも考える必要があると思います。

ファイナンシャル・ウェルビーイングって、日本ではまだあまり浸透してないんですけど、「お金は悪だ」みたいな価値観が年配の方々を中心に依然として残っていて、その影響が払拭しきれていない。「お金はあくまで道具であって、それをどう使うかが大事」という観点が、まだ少し弱い感じがしますね。

―――資産形成を効果的に行うために、必要な考え方やスタンスを教えてください。

根本的な部分で言えば、「自分がどうしたいのか」が一番重要だと思います。とはいえ、知識をどのような方法で習得するか、自分なりの物差しをどう作っていくかについては、非常に難しい問題です。

一つの判断基準として、情報発信をしている人に目を向けることが、重要かつすぐに実行できることだと思います。たとえば、メディアや金融機関がお金に関する情報を発信するケースは多いですし、監修者がどういう立ち位置で発信しているのか捉えるようにしてみてください。

どれだけ善良に情報を発信したとしても、100%中立な情報発信というのは物理的に難しいものです。それは、中立的なサービス提供を謳う弊社であっても例外ではありません。

なので、どういう人がどういうスタンスで発信しているのかを見て、自分なりにその人の意見や価値観に賛同できるのか判断していくことが大切です。そうすることで、最終的に自分の軸が見えてきます。

―――SNSでも資産運用の情報を発信している人が多いですよね。情報が玉石混交な気がしていますが…

そうですね。SNSは本当に玉石混交の情報が多く、その人の主観やアフィリエイトなど広告の影響もあるので、情報の真偽を見極めるのが難しいですね。

弊社のサービスはSEOも関わるのですが、Googleができるだけ正確な情報を提供しようとしていても、間違った言葉が世の中に広まり、結果的にその間違った言葉でキーワードが検索で上がってくることがあります。

そうすると、本来は違う意味の言葉でも、SEOのためにその言葉を含めざるを得ない状況が生じることがあるんです。

弊社ではキーワードを組み込みつつも、「正しくはこうです」みたいな正確な情報を加えるようにしてはいるのですが、どうしても間違っている言葉が広がってしまうことがあって。

メディアの運営会社であっても、プロではない人が構成案を作成すると間違った情報で組まれてしまうことがあり、それを弊社で調整したりしてコンテンツを制作しています。しかし、ひとたび間違った情報が広がると、必要以上に拡散される可能性があるところがネットの怖いところですね。そういった意味でも、本当にプロの人がコンテンツを制作しているのかっていう観点は非常に重要だと感じています。

ただ、専門家はもちろん正しい知識を持っていますが、文章が読みにくければそもそも読者に読んでもらえません。知識だけではなく、発信するノウハウなども必要になります。弊社はコンテンツ制作会社やウェブ媒体を運営する会社と組むことが多いのですが、お互いの得意なところや苦手なところを補完し合いながら業務を行なっています。

―――自分で考え、決めることが大切だ、というお話がありましたが、具体的にどのようなアクションを取るべきでしょうか。

「どういう人生を生きていきたいのか」を考えることが一番良い手段だと思います。そこから逆算して人生を考えられるようになるので、その軸を決められればベストですね。

ただ、すべての人が「自分はこういう人生を送るんだ」と明確にできるわけではないでしょうし、無理に目標を作るのも少し違うように思います。たとえば、自己啓発の話でありがちな「高級マンションに住む」とか「高級車を買うぞ」とか、本当は求めていない目標を設定しても、幸せな人生になるとは限りません。

もし今の段階で目標や軸、自分がやりたいことが見つからない場合は、現状をもとにライフプランニングをしてみるのもいいかもしれないですね。

最近は無料のシミュレーションツールもあるので、ちょっと利用してみて「今のままいったら、今後どうなるんだろう」というのをシミュレーションしてみるとか。あるいは家計簿をつけてみるなど、ファーストステップとして少し行動することが、将来を見通すきっかけになると思います。

漠然とした不安を抱えている人は結局、先が見えないからなんとなく不安っていう人が多いので、シミュレーションしたり、現状を明確にしたりするだけで、不安が解消されるケースはよくあります。弊社にご相談に来る方でも、収入が高くてもなんか不安という方が結構多いのですが、ライフプランを作って「今後も大丈夫です。赤字にならないですよ」みたいなシミュレーションを見て安心されるんです。
ライフプランシミュレーションは将来の黒字が保証されるものではありません。ただ、理論上今のままの生活で家計がどうなる可能性があるのかが見えるだけでも安心感は変わってきますね。

―――今まで事業を行ってきたなかで、特に印象に残っているお客さまのエピソードはありますか?

BtoCでいうと、なんとなく不安を抱えていたお客さまと話すなかで、先ほどのようなシミュレーションを作らなくても不安が取れた、という一件が印象的でしたね。その方は自分の心配というよりもご両親を心配されていたので、ご両親の状況を話しながら整理していただき、対策や手段などを話していたら、すっかり安心されて帰られた、ということがありました。

これも現状を冷静に見ることで、不安を解消できた例だと思います。こちらもいくつかアドバイスはしましたけれど、ほとんどご自身で考えて不安を解消されました。やはり一人で考え込むと、堂々巡りになったり、頭の中が整理できなかったりすることがありますよね。

一緒に話すことによって解消できたというのは、専門家としての意義を非常に感じました。

BtoBでいうと、弊社に所属するFPがクライアントから評価されたことですね。創業当初は私もBtoBの案件をやっており、クライアントから感謝の言葉をもらうこともありましたが、自分が指導や育成したFPが同じように感謝されたときのほうが100倍嬉しかったんです。

それが、私自身がマネジメントのほうに大きく舵を切るきっかけになりました。

FPの認知度アップと異業種との事業展開が目標


FPサテライト株式会社 取材用写真
―――今後、挑戦していきたいことや会社のビジョンを教えてください。

企業理念として、日本の金融リテラシーを向上させること、FPの認知度と社会的地位を高めることを掲げているのですが、この理念に基づき事業運営していくことです。

結局、FPの認知度向上とレベルアップが、日本の金融リテラシーを上げることにつながると考えております。そのためには、金融商品を扱わず、中立的にサービスを提供するFPがいるのだということを、日本中で広く認知してもらうことが重要だと考えています。

東京では少しずつFPの認知度が上がってきていますが、まだ地方には「ファイナンシャルプランナー」という横文字を聞いただけで、何をする人なのかがわからない、という反応が返ってきます。今後は日本全国に支店を広げ、FPの認知度をどんどん高めていくというのが会社のビジョンです。

FPはお金に関する専門家ですが、世の中でお金に関わらないものはないので、さまざまな分野に紐付けて事業展開できるのではないかと思っています。

たとえば、既存の案件では医療保険から派生して医療の内容に踏み込んだり、ペット保険に絡めてペットのコンテンツを制作したりしています。今後もさらに異業種と連携した事業を広げていきたいというのがビジョンとしてあります。

―――適切なサポートができるFPが増えることで、日本の金融リテラシーが向上していきそうですね。

FPの資格自体は2級とかまでであれば比較的取りやすいので、参入障壁はそんなに高くないんです。ただ先ほど申し上げたように、SEOで上位表示されているからと、間違った情報を駆け出しのFPが執筆してしまい、間違った情報をさらに広めてしまう、という状況になることを危惧しています。

FP業界では資格ビジネスとか協会ビジネスが乱立しており、資格自体も玉石混交なので、見かけは専門家っぽいけど資格の内容はたいしたことないっていうケースはたくさんあります。ただ、ニーズがあるからこそこうした協会ができているという事実もあるので、そういう意味でもFPを志す人のリテラシーが上がることが重要だと思います。

一人でも、二人でも、正しい情報を発信できる人が増えることで、間違った情報も減っていくはずです。もう、世の中に出ているお金の情報は全部弊社が執筆・監修するぞ! くらいの気持ちでやっています。

―――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

今まで話してきたことの総括になるのですが、記事を参考に、ぜひなにか一つ行動してみてください。

2022年7月に『よくばりに気分よく生きたい私たちに都合のいい お金の教科書』(クロスメディア・パブリッシング)という女性向けの書籍を出版したのですが、この本のなかでもまったく同じことを書いています。

世の中にはさまざまな情報があり、正しいことも間違ったことももちろんあります。そのなかでどの情報を取り入れ行動していくが重要なのですが、まずは情報を取りに行くことが必要です。それも含め、なにかしらアクションを起こしてみてください。モヤモヤと悩む前に行動することで、「やっぱり自分はこう生きたいんだ」という軸が見えてくるはずです。

新井那知
ライター
So-gúd編集部
新井 那知
埼玉県・熊谷市出身。渋谷の某ITベンチャーに就職後、2016年にフリーランスライターとして独立。独立後は、アパレル、音楽媒体、求人媒体、専門誌での取材やコラム作成を担当する。海外で実績を積むために訪れたニューヨークで、なぜかカレー屋を開店することに—-帰国後は、クライアントワークを通してライターとして日々取材や編集、執筆を担当する。料理と犬、最近目覚めたカポエイラが好き(足技の特訓中)。
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