Relic・チェンジの2社が “クラウドファンディング×地域商社”で地方創生への新たな成功モデル確立へ
日本では、人口減少とともに都市部への一極集中により、地方の過疎化が大きな課題となっている。地方創生を実現するために、期待が高まっているのが「地域商社事業」だ。
「地域商社事業」とは、地域の資源(農産物など)を生産から販売まで一貫してマーケティングし、新たな販路の開拓を行う。そして地域の魅力をブランド化し、域外から収益を呼び込んでいくビジネスモデルが基本となっている。
ここで重要になってくるのが、地方との強固なネットワークを持つ「地方銀行」の存在だ。政府も、「地域商社事業」成功に欠かせない存在として、「地方銀行」の参入を後押ししている。
そんな地方銀行の地域商社事業に対して、SaaS型“クラウドファンディング”プラットフォームとDXで、地域経済の活性化を目指す企業がある。それが、「株式会社Relic(レリック)」・「株式会社チェンジ」の2社だ。
2社は業務提携し、 “クラウドファンディング” で「地域商社事業」の支援をすることを発表。今回は、「株式会社Relic(レリック)」と「株式会社チェンジ」が推進する新たな地方創生へのビジネスモデルについてお話を伺った。
グロースマネジメント事業本部・プラットフォーム事業部 マネージャー
Relicの親会社である株式会社Relicホールディングスと株式会社CAMPFIREが2022年1月に設立した合弁会社「株式会社CAMPFIRE ENjiNE」では取締役を務める。
NEW-ITユニット マネジャー
主に金融機関、中でも地方銀行を担当し、DXを活用した地方創生の推進を行う。
SaaS型クラウドファンディング×地方創生への知見
────それでは“業務提携”のお話を伺う前に、「株式会社Relic」「株式会社チェンジ」それぞれの事業内容についてお伺いできますでしょうか?
株式会社Relic / グロースマネジメント事業本部 マネージャー 安立 剛弘氏(以下、安立氏):
でははじめに、「株式会社Relic」の事業内容からご紹介します。弊社は2015年創業の、新規事業開発やイノベーション創出を支援する「事業共創カンパニー」です。「インキュベーションテック・事業プロデュース・オープンイノベーション」という3つの事業を展開しています。
インキュベーションテックは自社開発の新規事業支援に特化したSaaS型プラットフォームを提供する事業で、事業プロデュースは新規事業の課題解決や伴走支援、オープンイノベーションではスタートアップへの投資や協業を通じて新規事業を共創しています。
今まで大手企業からスタートアップ企業まで、3,000社を超える企業様を支援してきました。
SaaS型プロダクトとしては、2,000社以上が利用するイノベーションマネジメント・プラットフォーム「Throttle」や、クラウドファンディング・プラットフォーム「ENjiNE」、次世代型マーケティングオートメーション/CRMサービス「Booster」を提供しています。
特に「Throttle」と「ENjiNE」は、国内シェアNo.1のSaaS型プラットフォームとして多くの企業様で活用いただいています。
────なるほど、SaaS型プラットフォームに強みを持っているんですね。では、続いて「株式会社チェンジ」の事業内容をお伺いできますでしょうか?
株式会社チェンジ / NEW-ITユニット マネジャー 角皆 和宏氏(以下、角皆氏):
弊社(株式会社チェンジ)は、日本の「人口減少」という大きな課題に対して、日本企業の「生産性革新」が急務と考えています。そのために、「Change People, Change Business, Change Japan」という信念の下、日本がより良い国へ変わり続けるために、人や組織を真に変革する事業を行っています。
主に、「NEW-ITトランスフォーメーション・DX人材育成」2つの事業を展開しており、「NEW-ITユニット」では、お客さまの課題・成長に適したDXサービスを自社のみならず、グループ企業やパートナー企業と連携して提供、伴走支援させていただいています。
例えば、ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を運営する「株式会社トラストバンク」もグループ会社の1つであり、地方経済を域内循環させ、自立した持続可能な地域づくりを目指し、自治体のDX推進もサポートしています。
このように、昨今では、地方に軸足をおいてビジネスを展開しており、現行業務のDX推進サポートや、新しいビジネスを創造するためのコンサルティングにも注力しています。
────では続いて、業務提携のお話を伺いたいと思います。2社の業務提携で、どのような事業を展開していくのか教えていただけますか?またその背景をお伺いいたします。
安立氏:
私たちは、クラウドファンディングを活用した地方銀行における「地域商社事業」の支援を行っています。「Relic」はSaaS型クラウドファンディングプラットフォーム「ENjiNE」を提供し、「チェンジ」が持つDXを活用した地方創生への知見を合わせることで、課題解決をしようと考えています。
この課題とは、先述のとおり人口減少や地方の過疎化によって、地方経済が衰退していることです。これからもっと労働人口が減っていく中で、一時的な消費でなく“持続成長が可能なビジネスモデルを構築する事”が重要になってきます。
そこで注目を集めるのが「地域商社事業」であり、「地域商社事業」を成功させるカギが地域内に強固なネットワークを持つ地方銀行なのです。しかし、現在までに地方銀行の「地域商社事業」における成功モデルが確立されているとは言えません。
成功するためには、“生産性を高めるためのDXの知見”や、“コストやリスクを抑えたスピード感”が必要です。そこでSaaSとDXの知見を掛け合わせ、「地域商社事業」の新しい成功モデルとして確立することを目指し、2社の業務提携に至りました。
────なるほど、SaaS型クラウドファンディングのプラットフォームと地方創生DXへの知見というお互いの強みを活かした業務提携なんですね。
角皆氏:
おっしゃるとおりです。SaaS型クラウドファンディング・プラットフォーム「ENjiNE」を使い、弊社が全体のコーディネートをするイメージです。また弊社は、地方銀行との関係を築いてきた経験があるため、「地域商社事業」を立ち上げる際に、課題が多くあることを知っていました。
私たちは、その経験を活かし、「地域商社事業」の立ち上げから、クラウドファンディング事業の検討・推進、サイトリリース後に対しても伴走支援させていただいています。
────伴走支援までしてもらえると、リスクを抑えて挑戦できますね。それでは、クラウドファンディング・プラットフォームの「ENjiNE」の仕組みや特徴についてお伺いできますか?
安立氏:
SaaS型クラウドファンディングプラットフォーム「ENjiNE」は、自社独自のクラウドファンディングサイトを、“初期費用0円”で立ち上げることができる月額成果報酬型のサービスで、*国内導入社数1位を獲得しています。
*Relic株式会社調べ
そして「ENjiNE」の大きな特徴は、独自集客だけでなく“ネットワークによる相互集客ができる点”です。
これは、「ENjiNE」を導入している150以上の導入企業サイトに、ネットワークを連携し同時掲載ができる仕組みです。例えば、自社でクラウドファンディングサイトを開設しプロジェクトを掲載すると、そのままENjiNEの導入企業である日経新聞社の「未来ショッピング」にも同時掲載することが可能です。(※互いに希望するプロジェクトのみ)
ユーザーからすると、いつも利用するサイトを見るだけで、他のさまざまなクラウドファンディングサイトで掲載されているプロジェクトを同じサイト内で購入することができます。一方で、企業からすると、自分たちでは集客できない層へのアプローチが可能になるため、多くの人にプロジェクトを知ってもらうことができるという集客コスト面でのメリットも大きいですね。
プロジェクト第1弾:ちばぎん商店「C-VALUE」
────サイト立ち上げ当初からプロジェクトの露出が増えれば、支援達成へのスピードアップにも繋がりますね!クラウドファンディング事業の具体的な取り組みは、いつ頃からはじめられる予定なのでしょうか?
角皆氏:
実はプロジェクト第1弾として、昨年2021年10月に「株式会社千葉銀行」の100%子会社である地域商社「ちばぎん商店株式会社」のクラウドファンディングサイト「C-VALUE(シーバリュー)」をリリースしました。
「C-VALUE」は、千葉県の地方創生の起爆剤となる商品やサービスを発掘・創生し、千葉県を代表する商品やサービスを生み出していくための“購入型クラウドファンディング”サイトです。
安立氏:
「ENjiNE」は、“クラウドファンディング”サイトと併設する形でECサイトも立ち上げられる仕組みがあるので、プロジェクト終了後もそのままECサイトで商品を掲載し、販売することができるんですよ。
────なるほど!クラウドファンディングだと一過性のモノになりがちですが、そのままECサイトとして利用できるのはプロジェクトへの参加メリットも大きいので、集客しやすいですね。
安立氏:
そうなんです。このプロジェクトは、持続的な経済成長を進めることが目的です。そのため、プロジェクト終了後も会員を獲得しながら、継続的な支援が「ENjiNE」の中で完結できる仕組みになっています。
────プロジェクトの第1弾に「千葉銀行」が選ばれた理由は何だったのでしょうか?
角皆氏:
弊社が昨年2021年8月に「千葉銀行」とDX推進を目的とした業務提携をしていることもあり、強固な関係を築けていたことも理由の1つです。もちろんそれだけではなく、地方銀行の中でもリードするポジションである「千葉銀行」は、DXに対する強い想いを持っていました。
「変えていきたい」という想いを持つ地方銀行は多いですが、一般的に、経営層トップの意思決定を担当現場で実行に移すまでには、相応の時間がかかるものですよね。しかし「千葉銀行」は、経営層の協力体制が整っており、判断も早い__。
「地域商社事業」を成功させるには、システムだけでもダメですし、伴走支援するだけでもうまくいきません。経営層から担当者までスピード感をもって意思を通せる体制が整っていることが「千葉銀行」の強みでもありました。
────御社が今まで培ってきた地方銀行との関係があったからこそ、「千葉銀行」の熱意と実行力をご存知だったんですね。では、「C-VALUE」でのクラウドファンディングの仕組みを教えていただけますか?
安立氏:
「C-VALUE」では、一般的なクラウドファンディングと同様に2つのプロジェクトの立ち上げ方が採用されています。1つは、「All or Nothing(オールオアナッシング)」と呼ばれる“目標達成型”。2つ目が「All in(オールイン)」と呼ばれる“実行確約型”です。
“目標達成型”は、目標金額を掲げ、目標まで金額が集まった場合にのみ実行するプロジェクトです。目標金額まで集まらなければプロジェクト自体がキャンセルとなり、返金される仕組みです。
“実行確約型”はECサイトに近く、目標金額に到達しなくてもしっかりリターンを提供していくプロジェクトです。クラウドファンディングと言うと、“目標達成型”が多いように思われがちですが、「C-VALUE」でこれまでに掲載されたプロジェクトは全て“実行確約型”で、支援された方には必ずリターンが提供されています。
────「C-VALUE」に参加されている企業やプロジェクトの特徴はありますか?
角皆氏:
もちろん千葉県内で物販や飲食事業を展開する企業様が多く参加されているのですが、現在は飲食のプロジェクトが多いですね。例えば、千葉県産の和梨を使った「梨スパークリング」はとても反響があって、多くの支援金を集められていました。
プロジェクトページも、千葉の魅力はもちろん、生産過程を上手く見せてプロダクトの魅力が存分に伝わる完成度の高いページ作りでしたね。
集客の面で言えば、クラウドファンディングサイトを立ち上げても、支援者を集めることは実は非常に難しいのです。そのため、ここでも地方銀行の地域に根ざしたネットワークが重要になっていきます。
「C-VALUE」が成功した理由の1つとして、「千葉銀行」の地域ネットワークが強固だったため集客力があったことも大きな要因ですね。
地方銀行の地域商社事業で「唯一無二の成功モデル」を目指す
────では、第1弾を推進している中で、課題と感じたことはありましたか?
安立氏:
やはり、「クラウドファンディング」を継続していく中で、もっとも重要なことは「プロジェクトを掲載する起案者の熱量」です。今回の「C-VALUE」成功を支えたもう1つの要因は、“熱量の高さ”も大きいと感じています。
クラウドファンディングの成功には起案者の近しい方やその周りの方からの購入や支援が必要不可欠です。その為に起案者はプロジェクトを自ら発信し、魅力を知ってもらうことが重要です。だからこそ、起案者の熱量を高くすることがクラウドファンディングサイト運営においては重要な課題であり、今後も起案者が高い熱量を継続できるようにサポートしていくことが欠かせません。
────では最後の質問です。この先第2弾、第3弾とクラウドファンディング事業を推進していく中で、今後の目標やビジョンはございますか?
角皆氏:
そうですね、やはり私たちが目指すのは、クラウドファンディングで地方銀行との「地域商社事業」における、唯一無二の成功モデルを確立していくことです。今後も、2社互いの知見やサービスを活用し、より解像度を高めていき、地方における持続可能な社会を支援していきたいと考えています。
現状の手応えとしては、圧倒的に成功しやすい事業モデルを提供している自負があります。だからこそ、しっかりブラッシュアップしていきたいですね。
安立氏:
角皆さんのおっしゃる通りです。千葉銀行さんとのプロジェクトを通じて成功要因や課題の解像度を高め、最適なシステムの提供と、システムを最大限活用する為の仕組みや体制を確立していきたいと考えています。
2022年1月にはRelicの親会社である株式会社Relicホールディングスと株式会社CAMPFIREとの合弁会社設立を発表しました。具体的には今後、「ENjiNE」と国内最大のクラウドファンディング「CAMPFIRE」の同時掲載による相互集客の準備を進めています。
このような取り組みも含めて、「ENjiNE」というシステムをより一層進化させながら、チェンジさんの豊富なDXの知見に裏打ちされたシステム活用の仕組みや体制作りのノウハウを合わせて提供することで、地方銀行における「地域商社事業」の成功モデルを確立し、地方創生を実現していきます。
角皆氏:
消費者のマーケットは、ECサイトはモノ自体を買いますが、購入型クラウドファンディングサイトの良さは、「ストーリーを買うこと」だと思います。なぜこの商品を購入して欲しいのか、この理由の部分に共感することで、消費のカタチが変わると考えています。
商品の良し悪しだけではなく、地方事業者の想いを知ることで、今まで以上に深く地元を知ったり、地域外の方に知ってもらったりすることができるきっかけづくりにもなりますよね。
一方で、地方銀行としては、今まで事業者とはローンや借り入れなど「金融サービス」での接点がほとんどでしたが、このクラウドファンディングを通じて、「事業者のビジネスをどう変えていけるのか」という新しいアプローチで接点を持つことができます。
これは、地方銀行が変わっていくチャンス、きっかけになっていくと確信しています。金融機関が変わることで地域が変わり、地域が変わることで消費者のマインドが変わり、その結果として地方創生に対する大きな推進力になっていきたいと思います。
株式会社Relicの詳細はこちら
株式会社チェンジの詳細はこちら
はい
88%
いいえ
12%
はい
88%
いいえ
12%