一見すると渋い「督促回収テック」は、金融の摩擦を無くし働く人の能力を拡大する!?Lecto株式会社が挑戦するフィンテックの可能性とは?
読者の皆さんは、「*債権管理」「*督促回収」という言葉を聞くと何を連想するだろうか?中には人気マンガの『ナニワ金融道』『闇金ウシジマくん』など、少しだけ背中がヒヤリとするイメージを連想する方もいるのではないだろうか?
また一方でIT業界という領域に目を向けるとテクノロジーの進化・発達により、DX化の勢いは増すばかり。「◯◯Tech(テック)」という言葉は、農業から医療まで幅広く浸透しつつある。
しかし債権管理や督促回収は、フィンテックのSaaS事業が伸びる一方で、DX化が追いついていないのが現状だ。
そんな中、“人間らしさ”と「督促回収テック(Lectoの登録商標)」という新しい領域に挑戦するのが、「Lecto株式会社(レクト)/Lecto, Inc.」の代表取締役・小山氏だ。
Lecto株式会社は、レガシーな体制が残り続けた督促回収の領域に対して、債権管理、督促・回収を支援するプラットフォームを提供している。
「IT技術は確かに進化していますが、その進化に敬意を払いつつ、人だからこそできる仕事にフォーカスする時代になると予想しています。」とコメントする小山氏。
今回は「人らしさ×債権管理、督促・回収」を支援する督促回収テックの可能性についてお話を聞いてきた。
「債権管理」とは、自社で利用したサービスや購入した商品にかかわる代金支払い義務(債務)を管理することです。事業者は、適切な債権管理を行うことで、ユーザーが滞りなく支払いを実行することが可能となります。
期限を過ぎて遅延した債権に関して、債務者(請求先の利用者)にリマインドを行い、支払いを促す行為をさします。利用者の状況に応じて、支払い交渉をおこなったり、分割払いの相談に応じることもある。
代表取締役 社長
その後KDDIグループ等への参画を経て2017年10月、Gardia 株式会社を創業、代表取締役に就任。 2019年12月、GardiaをM&Aによる伊藤忠商事グループ入りへ導く。2020年末にGardiaの代表取締役を退任後、新たにLecto株式会社の事業をスタート。
債権管理・督促回収をDXする新しい挑戦
────まずは御社の概要について教えてください。
弊社は、「Lectoプラットフォーム」という債権管理や督促・回収のプラットフォームソリューションを提供しています。
従来は人がおこなっていた債権管理や督促・回収をテクノロジーで自動効率化することで、職人芸のようになりがちな管理業務を一括管理することが可能になります。
私たちは、債権管理や督促・回収をDX化することを「督促回収Tech」と呼んでいて、“金融の様々な摩擦”を解消することができると考えています。
────債権管理や督促回収のDX化というジャンルに目をつけた理由など何かあるのでしょうか?
結論からお伝えすると債権管理や督促・回収は、戦後から現在まで少なくとも約30年間“何も変わっていない”という現状がありました。
FinTech(以下:フィンテック)自体は、様々なサービスがリリースされていて日々技術的な進化があるのに対して、この債権管理・督促回収は、古い体制のままなんです。
支払いの遅延が発生した人には、オペレーターの方が、電話をかけたり、書面を作成して一枚一枚郵送したり、昭和初期の時代では、テレビドラマで一度は見たような『◯◯さん!るんでしょ!この扉開けてください!』ーーーみたいな(汗)。直接人が来る世界の話しだったりするわけですよね。
このオーセンティックな領域に対して、テクノロジーを組み合わせることで、まだ変革余地があると思いこのプラットフォームを設計しました。
────なるほど…言われてみると、PayPayや後払いサービスが浸透している一方で、手紙や電話での債権管理の領域は、何も変わっていませんね。
そうなんです。フィンテックのサービスの集客を担うUIやUX部分の改善は、注力されるのですが縁の下の力持ち的なポジションの債権管理や督促回収の領域の業務の見直しは、後回しにされがちだったんです。
ですが事業者の目線で考えると 機械化・自動化するテクノロジーを導入することで、コスト削減にも繋がってきます。それに回収率のパフォーマンスも上がっていくんですよね。
────なるほど、ユーザーのタッチポイントが増える部分に企業もコストをかけていたんですね。結果、古い体制が残り続けていたとーーーー
債権管理、督促回収のプラットフォームを提供している人間が、こんなことを言うと誤解をまねくかもしれませんが、債権管理や督促回収って、ポジティブなイメージが湧きづらいと思いませんか?(汗)
オペレータの方が、支払いが遅れている人に電話をかけて、遅れている事実を伝えるわけですよね。また電話をかけられた側は、『たまたま支払いが遅れただけなのに、こんなに電話かけてくるなよ…』て追われているような感情になりますよね。その結果なぜか電話したオペレーターに対して、お客様から指摘が入ったり……
DXすることで、必要な顧客へ電話連絡、メール、SMS、チャットツールといった連絡行為を自動実行することができるんです。その結果、回収率も上がりますし、総合的な管理が可能となっています。
メールを普段見ている人にはメールでリマインド連絡したり、スマホの利用率が高い人には、ショートメールに支払い用のQRコードを添付したり、電話で連絡した方が都合の良い人には電話対応したりーーーー 回収のパフォーマンスを上げるためにもデジタルシフトすることが、重要になると考えています。
────実際に導入された企業様からはどんな反響がありましたか?
実際に私たちのプラットフォームを利用していただいた方からは、ポジティブな意見をいただきました。債権管理、督促・回収業務といっても、業務量が多いため必然的に人件費などのコストが発生していまいます。また債権管理以降の、督促・回収/消込などは、業務も複雑で企業様側も、何から手をつけて良いのかわからなかったり、情報もなかったり…暗中模索の状態が続いていたんです。
弊社のサービスを利用していただければ、請求業務や連絡作業を一括管理できるので、作業手順の改善にもつながり、課題をまとめて解決できます。総合的に管理できるので、結果としてコストと時間の削減につながり、コストが最適化されます。
コストが最適化されれば、本来優先順位を上げて取り組むべき業務やUIやUXの改善にコストを投入することが可能になるんです。
人の想いや感情、人にしかできないクリエイティブを大切にしたい
────確かに債権回収は、お金の話しが関わるので少しデリケートですよね。一方で、御社は「人らしさ」という言葉を大切にしている印象を受けるのですが、債権回収テックと人らしさは、どのように紐づいてくるのでしょうか?
人に光を当てているのは、大切にしたい個人的な想いがあります。「人らしさ」「個性」「人の気持ちや想い」などの人にしかできないクリエイティビティの領域ですね。
弊社は2020年11月に設立したのですが、もともと私は音楽業界にいました。音楽が好きで、アーティストにもリスペクトがあり、かれこれ5~6年ほど音楽業界に身をおいていたんです。その後、2009年に三越伊勢丹グループに入社しました。そこで、三井伊勢丹グループのクレジットカードを取り扱う事業部に配属になり決済やフィンテック領域の仕事をしていました。
特に人に光を当てたいと思っていたのは、音楽業界自体が原体験でした。アーティストが生み出す音楽(作品)は、その人の個性や人生、本質が詰まっていますよね。技術の進化で機械が作れる「サウンド=音」の種類は増えても、人が生み出す領域はAIが発達しても限界があると思っています。
人の個性が輝くことで、ファンが着いたり、唯一無二のものが生み出せたりーーーー“あなただから”というオンリーワンに価値が生まれると思っています。
────なるほど…確かに自分も音楽が好きなので、非常に共感します。一方でDX化にも疑問を持つ時があります。「ロボットですむよね?」という領域が増えて、人としての重要さがなくなってしまうような…
そうなんですよね。特に金融の世界は、個性と対局に位置しているかもしれません。テクノロジーが発展すると人がやらなくても、テクノロジーが解決するシーンは実際にあると思います。それは人としての個性はどっちでも良い世界になりますよねーーーー金融業界や経営全般もそうですが、数字が達成できれば人としての大切な部分は、必要なくなってしまいます。またそれが正解になってしまうんです…
世の中は便利になっていますが、人の個性が埋没しがちな時代になった気もしているんです。とはいえ、テクノロジーの発展は、個人の能力や可能性を拡張しているという捉え方もできますよね。
人間は技術の進化により、100年前とくらべて、生産性が高いのも事実です。しかし、いき過ぎると、「誰でもよい世界」となってしまいますーーーー 思いや感情など、人としての営みと真逆の無機質な世界観になってしまうんです…… 誰でも『あなたの代わりはいくらでもいる』と言われるより『あなたじゃなきゃだめ』と言われる方が嬉しいですよね!
「あなただから素晴らしいことがいっぱいある」という「人(ヒト)」を一番大切にする社会であって欲しいと思い、人間らしさということを大切にしています。
DX化により人の個性が活きる時代にーーーー
────なるほど…DX化は人の個性とは関係ないことを目指しているような気もするのですが、その点はどのようにお考えですか?
確かに私たちが提供しているプラットフォームは、人の個性とは相反する領域かもしれません。また前提としては、先程もお伝えした通り、人が人に連絡をする内容は、支払いが遅延している事実も含めて、お金のデリケートな内容を伝えないといけないんです。
従来の債権回収の領域は、100人が100の成果を出すというのが正とされてきました。しかし私たちは、DX化することで20人で100の成果を達成できる世界感を目指しています。
しかしここで、100人中の残り80人の仕事はどうするのかという問題が生まれるんです。見方によっては80人の仕事が、機械に奪われてしまうという視点があります。 しかし逆を言えば80人は、人が人でしかできない仕事に取り組む機会が広がったという見方もできるかもしれません。
また先程もお伝えした通り、デリケートな内容を電話で直接伝えるのは、オペレーター側もネガティブな気持ちになるケースもあります。DX化することで、テクノロジーを上手に利用し、人らしい仕事だったり、個性を発揮できる仕事だったりに時間を割くことにもつながります。
────「雇用が機械に奪われる」のではなくて、「人の雇用の可能性を広げる」というイメージですか?
そうですね。DX化することで本来人がやらなくても良いことを浮き彫りにできるんです。だからこそ結果として、“あなただからこそできる仕事”に時間を使ったり、個性や想い、感情など人にしかできない領域の何かを発見してほしいと考えています。
それに個人的な考えになってしまうのですが、人がネガティブな気持ちになる仕事は、そもそも人がするべきでない領域の仕事なのかもしれません。なぜなら、人ならではの気持ちや心の部分にダメージを受けてしまう人がいるからです。
テクノロジーを活用することで、人がするべきこと、そうじゃないことが再定義されるーーーー その結果、人は人らしいことをすれば良いと思っているんです。
────なるほど…お話を聞くまで、DX化と人らしさは対比構造だと思っていましたが、人生を別の角度で豊かにするきっかけにもなりますね。
そうですね!どんなに世の中のDX化が進んでも、人の手を加えるからこその良さがあると思うんです。今この取材を受けている時間もそうですが、『取材や原稿作成はAIがやれば良いですよね?』という考えもできるかもしれません。でもそれは寂しいですよね…人の可能性を広げるためにDX化が必要な側面もあると思いますし、その上で人らしさを大切にする世界観にしていきたいと思っています。
支払いのアップデート。面倒な支払いは、Lectoがサポート
────人が人でなければできない仕事に価値が生まれる一方で、DX化の勢いも増していくと思うのですが、5年後10年後、債件・回収テックの領域はどのように進化していくと思いますか?
債権管理や督促回収のDX化は、発展途上の領域だと思います。しかし将来的には、お金の支払い体験の向上やキャッシュ・フローが改善されて、スムーズに送金や債権回収ができる未来がやってくると思います。さらにその先に、金融以外のリテール事業の改善にもつながると思っています。
何かを貸して、それを回収するという一連のフローは、金融事業の話だけではありません。例えば、アパレル業界の洋服のリテール事業ですね。利用者がサブスクで洋服をレンタルしても、洋服が返ってこないというケースが多くあります。
カード会社、アパレルのリテール領域、Paidyなどの後払いサービスなどは、この“貸したけど返ってこない”というケースに頭を抱えています。しかし一方では、先程お話した督促連絡などの古い体制は変わっていないーーーーそれに加えて、ユーザー側の支払いの負担も多く存在します。
────色々な振込先に都度送金したり、公共料金は伝票をコンビニに持っていかないといけなかったり、正直面倒くさいですよね(汗)
おっしゃる通りで、一手間どころかユーザーの負担が大きいんです(汗)。公共料金を払おうと思って、コンビニまで来たけど、仕事前に急いで家を出てきたせいで伝票を忘れてしまって、支払いができずに遅延した… などよくある話しだと思うんです。さらにその後、督促の電話が、かかってきてストレスを感じる…これは負の連鎖の何者でもありません。
────支払い方法が改善されれば、すぐに支払えるのに手間がかかるせいで、支払いのモチベーションが下がりますよね…
そうなんです。ユーザーの支払い体験を改善することは、結果的に事業者とユーザー両者にもメリットが生まれます。ユーザーは、ストレスなく簡単に支払いができる、支払いの遅延が減る、リテール事業側にはしっかりと貸したものが期日に戻ってくるーーーー 両者がウィンウィンの構造ですよね。10年もかかるかわかりませんが、近い将来には、支払い方法が改善されていくと考察しています。
テクノロジーやDXはあくまでも人の個性が輝くための手段
────これから小山様が、挑戦したいことは何でしょうか?
今まで以上にユーザーの支払い体験を改善するための、仕組みを作りこんでいきたいと思っています。利用したユーザー様からは「支払いが楽になった」「支払いの期限が過ぎてしまったけど、スムーズにリマインドしてくれた」など支払いのUXが良くなってきたというポジティブな意見をいただきました。
ですが、まだまだ取り組んでいかなくてはならない課題が多く存在します。支払いをする人の支払い方法は、1つだけではなく、複数存在する時代になったと思います。
クレジットカードや伝票支払いはもちろん、PaidyやLINEPayなどのフィンテック系のサービスでの支払いなどですね。
こういったバラバラになってた支払いも、事前に弊社のサービスに入金しておけば、こっちが後で支払っておくーーー支払いの業務をまるっとLectoが請け負うことで、ユーザーの支払い体験が改善され、その結果人のQOLの向上にもつなげていきたいです。
────小山様にとって督促回収テックとはなんですか?
私にとっては、人の個性を輝かせるための手段だと思っています。
先程もお伝えしましたが、人が人らしく生きることが重要だと思っています。DX化することで、一人ひとりの人生の可能性が広がり、人としてのクリエイティブが発揮できる世界観になると思っています。
人の感情や個性が必要ない仕事は、デジタルの力を借りるーーーーそして、それ以外の人でしかできないソリューションは、個性を活かして可能性を広げるーーーそんな世界観の実現のためにLectoのサービスを今まで以上に質の高いものにしていきたいですね。
Lecto株式会社/Lecto, Inc.の詳細を見る
今回の取材を通して感じたことは、小山氏の人としての温かさと同時に、DX化の可能性だ。今までは、AIなどに人の仕事が奪われるというネガティブな解釈をしていたが、より人としての可能性を広げるためにDX化が必要ということを改めて感じた。
人が人にしかできない役割を果たすことで、より個性や人ならではのオリジナリティが際立っていく気がするーーーー Lectoが提供するサービスは、金融の摩擦を解消し人の可能性を広げる、債権管理・督促回収テックのパイオニアになることは間違いないだろう。今後もLecto株式会社の督促回収テックに注目していきたい。
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