アメリカン・エキスプレス(アメックス)の革新と挑戦
クレジットカードで高いブランド力を誇り、「アメックス」という愛称でも知られるアメリカン・エキスプレス。
1850年にニューヨークで創業して以来、いまや世界190カ国以上の国と地域で、カード発行枚数は1億3,300万にも上る。
日本での歴史も100年以上となり、クレジットカードやデジタルペイメントといった決済サービスだけでなく、旅行事業、 保険業など、多岐にわたる事業を展開している。
「日々、世界最高の顧客体験を提供する。」というビジョンを掲げ、日々躍進を続けるアメリカン・エキスプレスが取り組む、日本でのBtoBビジネス の未来とは?
常に顧客と伴走するアメリカン・エキスプレスから、クレジットカードを活用して、より効率的に、より広い世界に翔けるBtoBビジネスの可能性についてお話を伺った。
参照:「AMERICAN EXPRESS 会社案内」
自社でカード発行し、自社のネットワークを活用するアメックスならではのビジネスモデル
―――本日はよろしくお願いいたします。実は私が人生で作ったクレジットカードがアメックス様だったので、お話できるのを楽しみにしていました!さっそくですが、まずは、御社のビジネスモデルやお仕事内容について教えてください。
ビジネスモデルからご説明すると、当社は国際ブランドと言われるクレジットカード会社の中でも、少し異なるビジネスモデルを展開しています。
具体的に言うと、「イシュア」といわれるカードの発行をするカード事業部門と「アクワイアラ」といわれるカードが使える加盟店を管理・開拓する加盟店事業部門、またパートナー様へアメックスのネットワークを提供しビジネスを行うネットワーク事業部門が、一つの会社の中に存在しています。*
アメリカン・エキスプレスのカードは、自社で発行して、加盟店を開拓する、「クローズドループ」というビジネスモデルを、グローバルで展開しています。
次に、カードの発行事業に関しては、個人向けカードと、法人向けカードを展開しています。
私が担当するBtoB事業、法人向けカードでは、個人事業主や中小企業の経営者のお客様向けのビジネスカードと、中堅・大企業、またグローバル企業向けのコーポレートカードがあり、ビジネスとして拡大している所です。法人カードに関しては世界中で、S&P500の約7割の企業にご利用いただいています。
参照:
三菱UFJニコス「クレジットカード会社の発行会社とブランドはどう違う?」
京都大学 増谷博昭・若林靖永「BtoBマーケティングのメカニズムを解明する概念モデルに関する考察」
日本経済新聞「S&P500の意味を3つのポイントで解説!」
―――神嶋さんご自身はどのようなご経歴なのでしょうか?
私はアメックスに2002年に入社し、長年営業として勤務してきたのですが、2010年頃からBtoBビジネス の立ち上げに携わり、特にビジネスカードの普及に力を入れてきました。
キャッシュレス化が遅れていると言われていた医療や建設業界など、様々な業界で、法人カードによる決済インフラの整備のお手伝いを行い、当社はクレジットカード業界全体をリードする企業の1社となりました。
現在はセールス部門副社長として、約400名在籍するチームをマネジメントしています。
私が統括するセールスチームは、中小企業経営者や個人事業主、スタートアップ企業などに直接訪問し、ビジネスカードの利用方法や経営への活用をコンサルティングし、個人から法人まで幅広くサポートしています。
キャッシュレス決済の推進や人材不足、時代と共に変わるニーズ
―――法人、個人のお客様と様々な利用者がいるんですね。クレジット決済の重要性やニーズの変化など、ここ数年で新しい動きや何か変わったことはありますか?
特にBtoB決済(企業間決済)の場で、キャッシュレス決済の利用が大きく増加しました。
政府がキャッシュレス推進政策を掲げ、キャッシュレス決済の普及を推進していることも追い風になっていると思います。*
それだけでなく、主に中小企業のお客様の経費管理などで、カード利用のニーズが高まっていることを実感しています。
背景には高齢化社会におけるバックオフィスの人材不足から、支払い・支出といった面で、より簡素化・コストカットできないかという理由から、システム化が進んでいると考えられます。
参照:経済産業省「キャッシュレス」
―――人材不足やシステム化が進む昨今で、御社で特に注力していることはありますか?
企業の「仕入れ」の部分に注力しています。仕入れの部分は、企業の経費の支出の中でも特に大きな割合を占めていますから、カードで決済したいというお客様のニーズも高いです。
しかし、クレジットカードで仕入れを決済するためには、支払先がクレジットカードを取り扱う加盟店である必要があり、全ての仕入れをカードでしていただけるような環境になってはいないのが現状です。
ですので、あらゆるところでカード決済ができるようになるように、BtoB向けの加盟店の開拓や拡大を行い、環境を整備することに力を入れています。これは、カード発行と加盟店開拓の両事業部が社内であることの強みだと思います。
当社の大切にしている考え方の一つに、お客様や社員、コミュニティーを「バック=後ろ」から応援していくという意味で、「バッキング」という言葉があります。
人事や経理という仕事は、売上を生み出すことに直結するわけではありません。
中小企業や個人事業主の方は、特にそれらの仕事を簡素化し、より本業に集中したいのではないかと実感しています。
クレジットカードが使える場所と使えない場所があったり、現金支払いや銀行振込だったりと、取引先によって決済方法が変わってしまうと、手間が二倍、三倍に膨れ上がってしまうんです。
その手間を減らすために、カードを持つお客様を増やしていくだけでなく、使える場所、加盟店を増やすことに10年以上注力しています。
本業のビジネスに集中してもらうために、我々にどんなサポートができるのか知っていただき、経費管理や決済の部分でストレスを軽減させたな環境にするのがミッションだと思っています。
ただのバッキングではなくて、今まで以上にお客様をサポートするために「パワフルバッキング」というメッセージを社内で重要視しています。
―――「パワフルバッキング」というメッセージ、とても素敵ですね!実際、コーポレートカードやビジネスカードの利用によって、経費や時間を大きく削減できると思います。
利用者の反響やフィードバックなど、印象に残ったエピソードはありますか?
例えば大企業では、経費の管理などをコーポレートカードで行い、経費の見える化からコスト削減はもちろん、工程を簡素化していくことは、すでに広く浸透して来ています。
そういった従来の利用に加え、昨今ではガバナンスの強化という点で、ニーズが高まっている声を聞きます。
全ての支払いをカードに集約することで、お金の流れが可視化されるので、いつ誰がどこにいくら経費を決済したのか、会社が正確に掌握することができます。
例えば、社員の不正利用という点において、領収書だと、正しい支払いなのかそうでないのかを判断するのが難しいケースもあったのですが、カード決済にまとめるだけで支払いが見えるようになりますから、コンプライアンスやガバナンスの強化に繋がります。それは、会社が社員を守るという事にも繋がります。
また、不正を防ぐという守りの姿勢だけでなく、「今月の社員全員の経費での支出はいくらだったから、来月は経営戦略をこうしよう」など、社員の負担を減らしながらも事業の攻めの対策にも使っていける。
そういった点においても、コーポレートカードを導入して良かったという声を多数いただいています。
―――経営の改善に効果的に紐付けられているのですね!クレジットカードといえば、ポイントを貯めるメリットもあると思うのですが、おすすめの活用方法はありますか?
法人利用で貯めていただいたポイントは、会社の福利厚生として、社員の皆様に還元するなどの活用方法がご好評をいただいています。
また、ポイントを利用して、経費の支払いに充当することで、コストの削減に繋げるような利用方法もあります。
業務の改善とともに、ガバナンスが評価され、結果として多くのメリットが生まれます。
我々はお客様のビジネスに集中できる環境を整えつつ、お客様の社員にリワードを提供する仕組みを提供できるので、そういったものを社員の皆様が喜んで利用してくださるのは、大変嬉しいです。
ポイント利用はもちろん、あらゆる形で、世界最高の顧客体験を提供する
―――競合が激しく、強いビジネスやマーケティング戦略が重要かと思います。御社が最も重視するBtoBビジネスでの魅力、強みは何でしょうか?
まずは、グローバルカンパニーであるということが強みになると思います。
当社は、特にビジネスカードのお客様から「アメリカン・エキスプレスのカードを持っていることによって安心感や周りからの信頼を得られる、持っていて本当に良かった」というフィードバックをいただく事が非常に多いんです。
当社としても嬉しいフィードバックですし、強みとしてさらに伸ばしていきたいです。
当社のビジョンは、世界中で「日々、世界最高の顧客体験を提供する。」ことです。
BtoB向けのサポートでは、既存のお客様に対しても、ビジネスに伴走させていただくチームが無料でコンサルテーションを提供しています。
日々、世界最高の顧客体験を提供することが常に前提ですから、我々が何かをご提案する前にお客様へのヒアリングを行うようにし、お客様お一人お一人のニーズに合わせたビジネスサポートを心がけています。
お客様に寄り添ったサポートにより、お客様の満足度向上や他社では出てこないような、世界最高の顧客体験の実現に向けたアイディアが生まれてくるんだと信じています。
―――BtoBに関して、様々な取り組みをされているとのことですが、その上でさらにキャッシュレス市場において、どのような挑戦をしていきたいですか?
引用:アメリカン・エキスプレス公式「ビジネス・マッチング」
あらゆる支払いを当社のカードで行えるようにし、事業者の皆様が100%ビジネスに集中できる未来を作ることをベースに、新しい取り組みも始めています。
昨年、アメリカン・エキスプレスのカード会員様限定のビジネスマッチング・プラットフォームをローンチしました。
登録者は当社のカード会員様であるという安心感がある中で、オンラインや対面で色々なニーズに応えられるプラットフォームになっています。
例えば、海外に売り出したい商品があるが、売り方が分からないという人と、海外進出ならば任せてという人を繋ぐことができ、昨年ローンチしたばかりですが、すでに多くのお客様にご登録いただいています。
挑戦を応援する存在、持っていて嬉しいと感じるクラブメンバーシップへ
―――今までのクレジットカードとは全く違う領域にも切り込んでいて、革新的な取り組みですね!色々なお話を伺いましたが、改めて御社のビジネスモデルが社会の変化にどう影響していくと思いますか?
クレジットカード会社という認識だけでなく、当社のカードを持っていることが嬉しいと感じる場面を強化していきたいです。
世界最高の顧客体験を日々提供していくというビジョンを通して、このクラブメンバーシップをより特別なものにしていきたいですね。
一部の方だけでなく、幅広く御社のメンバーシップを体験していただきたいとも思っています。
例えば、創業したばかりのスタートアップ企業はクレジットカードを作りにくいと思うのですが、スタートアップこそ手持ちの現金が少なく、カード決済をしたいという要望が強いんです。
ですので、当社はスタートアップのバッキングにも力を入れ、積極的にカードを発行しています。
また、脱プラスチック化の波の中、リサイクル素材の利用に切り替えるなど、常にお客様の需要に対応していきたいと思っています。
―――最後に、神嶋様にとってアメリカン・エキスプレスとは?
「挑戦を応援する存在」です。
お客様に対してはもちろん、当社の社員に対しても「バッキング」というメッセージを伝え、一人一人のキャリアや実現したいことを応援しています。
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