2022.01.31

“会いたい人に会えない”を解決するーーーー駐車場のシェアリングサービス「akippa(アキッパ)」が実現する、シェアリングエコノミーの未来の当たり前とは?




「ただいまパーキングは、“満車”です」

クルマを運転した経験がある方なら、この憎き「満車」という二文字に苦しめられた経験があるのではないだろうか?

一人で近所のスーパーに買い物に行くだけならまだしも、これがドライブデートや友人たちとのドライブ旅行ともなれば死活問題だ。シェアリングエコノミーの追い風もあり、クルマは所有ではなく、シェアするという考え方が世間でも浸透した。

しかし肝心のクルマを駐車できる場所がなければ、元も子もないーーーー クルマが利用しやすい世の中になったとはいえ、『行きたい場所に行けない』『会いたい人に会えない』という歯痒さは今なお多くの人を苦しめている。

そんな中、駐車に関するお悩みを解決するのが、akippa株式会社」が運営する駐車場予約サービス「akippa(アキッパ)だ。

「足が不自由なご老人が、『akippaのおかげで孫の運動会をやっと見に行けた』というお声をいただいた時は、本当に嬉かったですね」と語る取締役・経営企画室長の小林寛之氏。

今回はそんな小林氏に駐車スペースに特化したシェアリングサービスakippaの可能性から駐車スペースを取り囲む環境についてお話を伺ってきた。



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インタビューイー
小林寛之氏
akippa(アキッパ)株式会社
取締役 経営企画室長
大学院在学中に公認会計士試験に合格。修士課程を修了後、大手監査法人にて監査業務に従事。2014年に株式会社トリドール(現、株式会社トリドールホールディングス。
以下、「トリドール」という)へ入社し、執行役員、取締役、常務取締役 兼 CFOなどを歴任。2016年にはトリドールの子会社であるTDインベストメントの投資責任者としてakippaへの出資を実施。
2020年7月1日よりakippa株式会社に入社し、執行役員 経営企画室長に就任。現在は取締役兼経営企画室長。





誰かにとってのただの空き地が、ドライバーにとって価値ある場所にーーーー


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────まずは「akippa(アキッパ)」のサービスについて教えてください。
「akippa(アキッパ)」は、個人宅や商業施設の空きスペースなどを利用した駐車場のシェアリングサービスです。いわゆるCtoCの業態ですね。

利用者はWebサイトまたは専用アプリを使って、契約されていない月極駐車場や個人宅の倉庫・空き地、商業施設などのakippaで貸し出しを行っている空きスペースをすぐに調べられます。ネットで空きスペースの事前予約もできるので、誰でも簡単に駐車場をシェアして利用することが可能です。



────クルマのシェアサービスは、知っていましたが駐車場のシェアサービスははじめて知りました。akippaならではの特徴は何かありますか?

akippaの特徴は、駐車場を借りる側(ドライバー)と場所を貸す側(個人宅や商業施設)のどちらも簡単に利用できる点です。

駐車場を借りるドライバーの方は、アプリを利用して全国の駐車場として利用できる空きスペースを見つけられます。目的地の近くの駐車場を簡単に検索できるので、目的地までのアクセスが容易になるんですよね。また料金も場所にもよりますが、基本的には周辺のコインパーキングよりも安い料金設定となっています。

例えば東京都では1時間の駐車料金が、600円~1,200円程度が相場と言われています。ですが、akippaなら15分30円程度で利用可能な駐車場もあります。

また駐車場の事前予約ができるのも特徴です。30日前から15分単位~1日単位で駐車場をインターネット上で予約できます。オンラインで予約から支払いまで、一気通貫で対応できるのでスムーズなドライバー体験が可能です。駐車場を事前に予約できるので、パーキングまでクルマで向かった後に満車で駐車できないという問題を解決できるのがポイントですね。

────空きスペースのオーナーさまは、akippaを利用することでどのような利点があるのでしょうか?

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オーナーさまは、バイク1台分の空きスペースさえあれば簡単にakippaの駐車場として登録することができる点です。駐車場の貸し出しには、初期投資が必要ありません。通常のパーキングに必要な精算機やバー、車止めなどの設置が不要なので、初期コストを抑えて駐車場の運用ができ、収益を生むことが可能です。

土地の持ち主からすれば“ただの空き地”のはずが、必要な誰かにとっては価値のある場所になり、そこで利益を生むことができます。akippaとして空きスペースを登録してもらうことで、一攫千金とまではいきませんが、「土地の無駄遣い」や「ただのもったいない場所」から価値のある資産に変えることができるんですよね。



-akippaの特徴-

利用者(ドライバー)
・駐車場を利用するドライバーは、豊富な駐車場を利用用途に応じて検索することが可能
・現地で駐車場を探す時間を短縮できるので、スムーズなドライバー体験ができる
・通常のコインパーキングよりも、安い料金でクルマを駐車できる
・最大30日前から1日単位や15分単位での駐車場を事前予約できる
・事前予約時に、アプリ上で事前に決済するので、現金での支払いが不要
・Webサイトまたは専用アプリで駐車場の検索から予約・支払いまで一気通貫で完結できる

利用者(ドライバー)
・オーナーは、設備投資の初期費用が必要ないので、空きスペースだけあれば駐車場として貸し出すことが可能
・万が一のトラブルに対応できるように、専用保険や24時間対応可能なサポート窓口を開設しサポート体制も万全
・土地という資産を活用して、収益を生むことが可能





200個の困りごとの中から、誕生したサービス


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────シェアリングエコノミーの市場のなかで、新しいサービスを誕生させた印象があるのですが、akippaが誕生した背景について教えてください。

弊社は、もともと携帯電話の回線などを法人向けに販売する営業会社だったんですよね。また弊社の代表取締役社長 CEO・金谷がとある日に自宅の電気代を支払うのを忘れていて、電気が使えず不便な思いをしたそうなんです。

この経験がきっかけで『電気のように、生活に”なくてはならぬ”必要不可欠なサービスを作りたい』と思いアイディアをブレストしていったそうです。世の中に”なくてはならぬ”サービスとは困りごとを解決することだと考え、当時の従業員全員で生活する中での困りごとを200個模造紙に書いて、洗い出したそうなんです。

「犬の散歩代行のサービス」「高校生のジャージに広告を入れられるサービス」「個人間の食事デリバリーサービス」など色々とアイディアが出てきたなかで、「駐車場は現地に行ってはじめて満車だとわかるから困る」という困りごとに注目しサービスの原型をつくったんです。


────200個の困りごとの中で、研磨されたのが「駐車場の課題」だったんですね。サービスがローンチするまでにはどのような苦労がありましたか?

苦労した部分は大きく分けると2点ありました。1つ目は営業会社だったので、サービスを作るためのエンジニアがいなくて、作り方がわからなかった点です。2つ目はサービスの売上がすぐには付いてこないので、社内から賛同を得られなかったという点です。

エンジニアがいないという問題は、シェアオフィスで働いていたフリーのエンジニアに業務委託で協力してもらうことで解決できました。その後、別のエンジニアを社員として採用する時には、『自分たちが持っていないスキルがある人を採用する』という基準を設けていたんですよね。

その結果、入社後も営業チームとエンジニアチームは、衝突することもなくお互いリスペクトしながら事業を作っていくことができました。
しかし課題だったのが、「社内から賛同を得られなかった」という点です。営業会社は、動いて案件を受注できれば、すぐに売上として収益化できます。しかし新規のサービスは、そうはいきませんよね….. 営業チームが作った利益が、いつ収益化できるか不透明なサービスに使われていくので、賛同を得られないのも当然だったんです(汗)


────なるほど……そこから賛同を得たきっかけは何かあるんですか?

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2014 年に「Infinity Ventures Summit(インフィニティベンチャーズサミット/略:IVS)」で優勝したのがきっかけですね。このイベントは、投資家やVC、スタートアップ企業が一堂に会するイベントなのですが、数ある新規サービスのなかで優勝を獲得しました。

この優勝をきっかけにakippaが、“価値のあるサービス”ということを世間に認めてもらえたんですよね。そこからは社内からも賛同を得られて 『自分たちがユーザーとして利用した時に、本当に便利なサービス』ということを核に、サービスの品質向上にさらに注力していきました。


「駐車場シェア専用保険」や24時間のサポート体制を採用し、安心・安全なシェアリングサービスにーーーー


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────シェアリングエコノミーの市場価値は、2030年で14兆1,526億円に拡大すると予測されていますが、シェアリングエコノミーならではの課題は何かありますか?

シェアリングエコノミーの市場規模が拡大し、シェアリングサービスも普及したのは確かですね。ただ大切な資産を他人とシェアするのは、漠然とした不安を抱いている方も多いと思います。

akippaの場合は、このような不安を解消するために「駐車場シェア専用保険」の導入と24時間対応のサポート窓口を用意しています。

「駐車場シェア専用保険」は、2020年6月から導入した保険ですね。基本的にはドライバーの自動車保険でカバーしていただいていますが、保険が適用できなかった場合などにも物損害補償、障害補償、賠償責任補償の3つが補償範囲となっています。このように利用者様とオーナー様が、安心・安全に利用できる体制をどのように作っていくかがシェアリングサービスの重要な課題ですね。



駐車場の貸し出しに関してはこちら




ドライバーもオーナーも、ニュートラルにシェアリングエコノミーの市場に参入できる


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────「100年に一度の変革期」と呼ばれる自動車産業ですが、駐車場に関連したサービスを取り囲む環境は、どのように変わっていくと思いますか?

昨今の自動車産業の動向を見ていると注目すべきは、「電気自動車(略:EV)」と「自動運転技術」ですね。自動運転のインフラは、まだ整っていないですし、電気自動車も日本ではまだ普及しきれていません。それに電気自動車の充電設備は、金額も高いので普及に時間がかかっています。

そのため、将来的には既存の「駐車場」という概念を変える必要もあると考えています。5年後、10年後先の未来には、電気自動車と自動運転技術は日本でも浸透する可能性が高いです。

このように将来的には、“ただの駐車場”ではなく、充電設備を設置した“充電ステーション”という役割を付随させる必要もあります。一般住宅の場合は、コンセントがあるので充電設備の設置をすれば駐車中に充電が可能になります。また、広大な土地がある商業施設に充電器を設置したakippaの駐車場もあるので活用していきたいと考えています。

また未来の話にはなりますが、自動運転で迎えに来たクルマが乗車した人を目的地にまで送り届けた後に、近くのakippaの駐車場でクルマを充電するーーーその後にまた、乗車する人を迎えに行くといった未来もやってくるのではないかと考察していますね。また未来の話にはなりますが、自動運転で迎えに来たクルマが乗車した人を目的地にまで送り届けた後に、近くのakippaの駐車場でクルマを充電するーーーその後にまた、乗車する人を迎えに行くといった未来もやってくるのではないかと考察していますね。

まだ電気自動車の充電ステーションや自動運転のインフラは、整備されきってはいませんが、脱炭素への注目度が高まっている近い将来には一気にメジャーな交通手段となるのではないでしょうか。まだ電気自動車の充電ステーションや自動運転のインフラは、整備されきってはいませんが、脱炭素への注目度が高まっている近い将来には一気にメジャーな交通手段となるのではないでしょうか。



────なるほど…..安心・安全の取り組みと電気自動車や自動運転技術を見越して、ユーザーのニーズを満たす必要があるということですね。実際にコロナで外出が減った方が増えたと思うのですが、利用ニーズにも変化はあったのでしょうか?

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実際にコロナウィルスの流行で、移動が制限された時は売上にも影響が出ました。これまでは、スポーツ観戦で多くの人が訪れるスタジアムやイベント会場となるアリーナ周辺や観光地周辺の駐車場は、ユーザーの利用も多かったです。しかしコロナ禍以降、遠方からのドライバーの利用頻度は、観光地・イベント会場近辺で低くなりました。

しかし通勤や通学、家族・知人宅訪問などで日常利用している人が増えていることがわかったんです。特に東京の都心部や大阪の中心部ではこれまでのイベント利用から、通勤利用に変わった場所もありました。

外部から来た方にとっては、非日常の場所ですが、地元の人やその場所に通勤する人にとっては日常の場所ですよね。ーーーー そしてオーナーの方たちは、場所をシェアするだけで完結するーーーー 初期投資がかからないため外部の環境に影響を受けることなく、ドライバーさまもオーナーさまもニュートラルにシェアリングエコノミーの市場に参入できるというのが、土地をシェアする最大のポイントなのかもしれませんね。




“優秀な黒子”に徹するーーーー


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────これから挑戦したいことは何かありますか?

サービスの利用者様とオーナー様が、より便利に使えるための仕組みづくりにより注力していきたいですね。別の言い方をすると“優秀な黒子”に徹していきたいと考えています。

序盤でもお話しましたが、akippaはCtoCが中心のサービスです。我々は、あくまでも裏方に徹してオーナー様が前に出て、より安心・安全に且つ自立的に運営できる仕組みづくりを作っていきたいですね。

利用者様とオーナー様の二者で完結できて、両者が今まで以上にウィンウィンになってくれるプラットフォームサービスとして作り込みたいと考えています。そうすれば、そこに人の交流も生まれると思うんですよね。実際に利用したドライバーさんが、オーナーの方と会話されていることもあるようです。



────なるほど、そうすれば会いたい人に会えたり、行きたい場所に行くのが容易になりますね。

そうですね!我々の事業のビジョンは、「あなたの“あいたい”をつなぐ」です。最近ではメタバースの技術も進化していますし、将来的に仮想空間のなかで人と会うのが容易な時代になると思います。
一方でメタバースが伸びれば、リアルで人と会うという価値も高まります。『人に会いたい』というのは、人の本質的な欲求の一つだと思いますし、価値のある体験だと思うんですよね。

実際に弊社へ届いた利用者様の声では、足が悪いご高齢者の方が、近くに駐車場がないのが原因でお孫さんの運動会に行くことができなかったそうです…… その後akippaを利用したことで、念願だったお孫さんの運動会を見に行けたという反響をいただきました。




akippaは、色々な人の“会いたいに関する困りごと”を解決するサービス


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────小林さんとってakippaとは何でしょうか?

『色々な人の“あいたい”に関する困りごとを解決するサービス』ですね
akippaはインフラでもあるので、大切な人に会いに行きたいけどクルマを駐車できる場所がないから諦めるという人を一人でも減らしたいですね。そして、100年、200年先にも続くサービスにしていきたいと思っています。




akippaの詳細を見る

<編集後記>

今回の取材を通して感じたことは、人と出会う価値の重要性だ。考えてみると、人が誰かと会うという行為には、「移動」が不可欠ーーーー メタバースの発達によって、デジタル上で人と会える時代になっても、リアル(現実)で人と会いたいと思う欲求は、当然の感情なのかもしれない。

クルマを所有し移動ができたとしても、駐車できる場所がなければ、行きたい場所に行けず、会いたい人とも会えなくなるーーーーそんな当たり前すぎて気がつかない課題に対して、安心・安全を軸にサービスの品質向上に取り組むakippaは、間違いなく未来の当たり前をつくるプロダクトになるだろう。これからもシェアリングエコノミーと自動車産業の動向には、目を光らせていきたい。



新井那知
ライター
So-gúd編集部
新井 那知
埼玉県・熊谷市出身。渋谷の某ITベンチャーに就職後、2016年にフリーランスライターとして独立。独立後は、アパレル、音楽媒体、求人媒体、専門誌での取材やコラム作成を担当する。海外で実績を積むために訪れたニューヨークで、なぜかカレー屋を開店することに—- 帰国後は、ライターとして日々取材や編集、執筆を担当する。料理と犬、カポエイラが好き。
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