役者、声優、芸人らが登録。 「表現者」がつくる売れる現場
営業支援と人材支援という2つの事業を展開する株式会社セレブリックスが2023年11月、実にユニークな人材サービスを開始した。
役者、声優、芸人、歌手、ダンサーといった表現者に特化した人材サービス「プロモーションキャスト」である。
人を楽しませることに長けた表現者たちが、展示会や説明会などのイベント会場を舞台に接客、販売、セールスプロモーションを行っており、多くの依頼先から好評を得ているという。
発案者である同社の人材戦略室・室長代理の有泉友加氏に登場していただき、話を聞いてみよう。
「表現者」と企業のニーズをつなげて夢の実現を支援
―――まずは「プロモーションキャスト」が生まれるきっかけを教えてください。
有泉さん:私たちが行っている人材支援事業では、展示会やキャンペーンイベントを開催されているお客さまが多くいらっしゃるのですが、そうした方々からよく聞くのが「思わず足を止めたくなるほどのPR力を持ったスタッフを確保するのはむずかしい」という声でした。
そこで、そのような期待に応えられるスタッフがどんな属性なのかを分析したところ、舞台俳優や声優、歌手などの表現活動をしている人が高い確率でマッチするということがわかったんです。
実は私も20代のころ、劇団に所属して舞台俳優になることを目指していまして、そのときのことを思い出してピンときました。表現者たちの「人を楽しませる力」も「挑戦し続ける力」を結集すれば、お客さまのニーズに応えられるのではないかと思いました。
夢を追いかけていたころの私は、日々の生活費を飲食店のアルバイトでまかなっていました。ところが、自分の舞台公演をはじめ、先輩の地方公演のお手伝いで裏方の仕事を頼まれた時は長期間休まねばならず、アルバイト先にはいつも心苦しい思いを持っていました。
「演劇活動と両立できるアルバイト先を紹介してくれるサービスがあればいいのに」と思っていた当時の私のニーズに応えられるようなサービスを作れば、きっと多くの表現者から共感を得られるはずだという確信がありました。
―――「プロモーションキャスト」には、半年を待たずに100名以上の表現者が登録したそうですね。どのような方法で集めたのですか?
有泉さん:まずは専任のコーディネーターを常時3~5名置いて、「急なオーディションが入ったので休みたい」とか、「公演が終わったので新しい仕事を紹介してほしい」といった要望に応える体制を作りました。
イベントでの接客や販売、セールスプロモーションの仕事は単発、短期の仕事が多く、高時給です。そのような仕事をマッチングすれば、表現者のみなさんのニーズに応えられます。
また、プロフィール写真の撮影を支援する体制も整えました。声優さんにはボイスサンプルの録音も支援予定です。
おかげさまで「オーディションで目立てました」とか、「さっそくSNSのプロフィールに載せました」といった好評をいただいています。
「表現者」の力を活用すれば研修コストを大幅に節約できる
―――表現者の構成比と、彼らの強みを教えてください。
青木さん:映像俳優と舞台俳優がそれぞれ約30%で、声優が約15%。あとは2~3%の歌手や芸人、ナレーターなどが登録しています。男女比は女性が約60%、男性が40%で、平均年齢は29.1歳です。
表現者の強みは、大きく分けて4点あると思っています。
1点目は、「映える」ということ。
ステージや観客の前に立つことが多い人たちですから、人からどう見られているのかをすぐに理解することができます。実際、お客さまからも「第一印象がよく、さわやかで華のある人が多い」という反響をいただいています。
2点目は、「声が届く」ということ。
イベント会場のザワザワした雰囲気のなかで、思わず注目してしまうような声を出すのは至難のわざです。しかし、日ごろから発声や滑舌の練習をしている表現者は、むしろそうしたことを得意としています。
3点目は、「演じられる」ということ。
人前でパフォーマンスをすることに慣れている表現者は、与えられた役割を理解して、その場に合わせて対応するアドリブ力に長けています。通常、そうしたスキルを持ったスタッフを育てるには膨大な研修コストがかかりますが、表現者の多くはすでにさまざまなスキルを持っているので大幅なコスト削減につながります。
4点目は、「研究熱心」ということ。
人を楽しませるために、表現者は日々、研鑽を積んでいます。演じる役割を徹底的に研究する癖がついているので、仕事にも熱心に取り組む姿勢を持っています。
―――サービスを利用した依頼主からは、どんな声が寄せられていますか?
有泉さん:情報通信サービス会社のお客さまからは「展示会で自社のコンセプトに沿ったキャラクターに扮して、参加者の名刺を集めてほしい」というミッションをいただきました。
名刺の目標獲得枚数は500枚だったのですが、「プロモーションキャスト」から派遣されたスタッフは、2倍以上の1243枚を集めたんです。
みなさん、「演じる」という自分の得意分野を発揮できることを喜んでくれたようで、自分が演じるキャラについて、いろいろなアイデアを自発的に提案したそうです。
「思った以上の仕事をしていただいて、とても満足しています。おかげさまで大きな話題を呼ぶイベントになりました」という声をいただきました。
「プロモーションキャスト」から明日のスターを生みだしたい
―――「プロモーションキャスト」の現状の課題は何でしょう?
有泉さん:登録スタッフは、表現者の間でもその存在がクチコミで伝わって、順調に増えています。年度内には450人くらいになる勢いです。
ただ、今のところは1都3県に在住している方に限られているので、いずれは関西圏でのサービス開始もしたいと思っています。関西でも演劇活動をしている人はたくさんいらっしゃいますし、お笑い芸人を目指している人も多いでしょうからね。
登録スタッフが増えれば、それだけ多くの単発、短期、高時給の仕事をこちらも用意しなければなりません。ただ、現状でも100%の人に満足してもらえるマッチングができているわけではなく、今後はさまざまな企業に働きかけて案件の数を増やしていこうと思っています。
―――イベント関連事業は、コロナショックで大打撃を受けただけに、今後の発展に期待したいですね!
有泉さん:おっしゃる通りで、表現者の活躍の場は今後、ますます増えていくと思っています。
リアルな場でのキャンペーンイベントはもちろんですが、動画配信サービスやSNSなどでのプロモーション動画など、表現の場は多様になっていますよね。
これからも、さまざまな企業様のニーズに応えていきたいですね。
―――今後、やりたいことや目標はありますか?
青木さん:さまざまな表現者の夢の実現を支援するこの事業には、私を含めて携わっているすべてのスタッフが大きなやりがいを感じています。私自身もこのサービスがとても好きですし、表現者の夢をサポートしたいと思っているんです。
「登録スタッフのなかから明日のスターが生まれる日が来るといいね」とは、スタッフの間でよく話し合っていることです。
有泉さん:私自身が役者ではなく別の道を歩むこととなったように、夢を実現できる人はごく一部の人という厳しい現実があるのも事実です。
今後は、そうした人たちのセカンドキャリアを支援する活動も手掛けていきたいと思っています。
実際、「30歳になっても売れなかったらあきらめよう」という話をよく聞きますが、その一方で「30歳を過ぎると仕事探しに苦労する」という話も同時に耳にします。
「プロモーションキャスト」で働いた人のデータ、例えば、こんなイベントに参加して、こんな成果を残したというデータを蓄積しておけば、夢をあきらめた人のキャリア形成に役立てることもできます。
また、最近では本業と副業の二足のわらじで働くライフスタイルも広まっていますよね。「プロモーションキャスト」がそうした多様な働き方を提供できる場になれば、これ以上うれしいことはありません。
―――興味深いお話、ありがとうございました。
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