目指すのは、事故のない世界。株式会社スマートドライブが挑戦する、移動の進化とは?
2023.11.20

【後編】目指すのは、事故のない世界。株式会社スマートドライブが挑戦する、移動の進化とは?


今回は、車両管理システムと移動データプラットフォームの開発・提供を行う「株式会社スマートドライブ」代表取締役 (CEO)・北川氏と取締役・元垣内氏を取材した。

前編の記事では、株式会社スマートドライブを起業するまでの背景や事業概要、サービス誕生までの軌跡などについてお話を伺った。後半では、モビリティ産業とビッグデータはどのように進化していくのか、モビリティにおいてのデータ活用の課題、株式会社スマートドライブが目指す未来についてお二人に語ってもらった。

代表取締役(CEO)北川 烈
インタビュイー
北川 烈氏
株式会社スマートドライブ
代表取締役(CEO)
慶応大学在籍時から国内ベンチャーでインターンを経験し、複数の新規事業立ち上げを経験。その後、1年間米国に留学しエンジニアリングを学んだ後、東京大学大学院に進学し移動体のデータ分析を研究。その中で今後自動車のデータ活用、EV、自動運転技術が今後の移動を大きく変えていくことに感銘を受け、在学中にSmartDriveを創業し代表取締役に就任。

取締役 元垣内 広毅
インタビュイー
元垣内 広毅氏
株式会社スマートドライブ
取締役
大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程にて統計解析を専攻。統計的機械学習領域で博士号(工学)取得。有限責任あずさ監査法人にて、公認会計士業務に従事した後、グリー株式会社に入社し、各種データ分析業務を担当。2015年1月にスマートドライブに入社。執行役員を経て、2018年12月より現職。現在は、データプラットフォーム事業を中心に、データ解析領域の技術開発及び事業開発を担当。


車の移動データを可視化し活用できる未来が来る。


取材画像
―――ここまでは、株式会社スマートドライブ様の事業概要や起業の背景についてお話を聞いてきました。モビリティに携わる業界とビッグデータの掛け合わせは、5年後・10年後の未来には、どのように進化していくのでしょうか?

北川さん:“ビッグデータの活用”と聞くと、大量のデータを機械学習で処理して、人間では処理できないスピードで最適な結果を出せる物というイメージがあると思います。

ですが実際のモビリティの領域では、Googleアナリティクスのようなデータを可視化できるツールですら、一般的に普及していない状態です。この現状を踏まえて5年後の技術進化を考えると、データの取得とその基本的な活用方法が普及すると思います。

つまり5年後を見据えると、移動データを中心に多様なデータが、結びついていく世界が広がると考えています。

データの可視化も発達して、自動車のGoogleAnalyticsのようなものが一般車にも整備され、普及する時代も近いと思いますね。

特に私たちの事業を通して感じるのは、自動車の移動データは、車のスピードやルート情報などに留まらず、幅広い活用方法が存在するということです。

例えば車の移動データがあれば、駐車場の空き状況や場所、そしてガソリンスタンドの価格情報、高速道路の混雑予測など、車に関連する様々なデータとリンクさせることが可能になります。

その結果、多様なデータと結びつきエネルギー消費を最小限に抑えた移動方法や電気自動車であれば、効率的に充電する方法にも応用ができます。

――ありがとうございます。自動車の移動データの“データ分析”という視点では、どのような進化が見込まれるのでしょうか?

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元垣内さん:現在、一般の人が日常の中で移動データを用するのは、カーナビや地図データを使うシーンなどですが、特段、利用する本人も移動のデータを活用しているという特段の意識もなく他のサービスを通じて活用がされているような段階です。大多数の一般企業の自動車でも、メンテナンスの観点でどれくらいの距離を移動しているのかを知る程度でしかデータ活用がされていません。

ですが未来を考えると「コネクテッド・カー」のように、インターネットと常時リンクしている自動車の活用によってデータ活用は進化していくと思います。今まで以上にデータが集まるので、活用用途も広がりますね。

その中で、先程も北川が言っていたようなGoogleAnalyticsのようなデータの可視化が、はじめの一歩になると思います。これはモビリティ業界だけではなく、データ活用全般に通じることですね。そしてデータの可視化が普及した先には、データが自動化していきます。

データの自動化とは、収集したデータを自動的に処理することで、解析可能な形式に変換することです。これにより、データノイズや欠損値を自動で排除するデータクレンジングが可能になります。そして、データ統合や変換が自動でおこなわれるようになりますね。 そして蓄積されたデータから、移動データのトレンドやパターンを自動的に抽出して、未来を予測できる技術へと進化していく可能性が高いです。

“データ取得”よりも“データ活用”が重要


取材画像
―――ありがとうございます。ビッグデータを活用することで、モビリティ全般の可能性が広がる印象を受けました。現在のモビリティーやビッグデータ業界が直面している課題は何でしょうか?技術的な課題や社会的な課題などがあれば教えてください。

北川さん:自動車メーカーが中心となる縦割りの業界構造は、データの横断的な連携を難しくしています。そして、この保有データの開放がまだ進んでいない状況も課題ですね。

そしてビッグデータやAIといった技術がもたらす未来のビジョンは、多くの人が理解しています。ですが「ビッグデータとAIをどのように明日から使用するのか」という利用方法に関しての理解は、進んでいない印象を受けます。

つまり技術進化と利用者間にギャップが存在しているんです。

例えば、車のワイパーの動きがリアルタイムに取れるという技術があった場合、この技術を利用することで雨が振り始めたことが瞬時に分かるかもしれません。ですが実際にドライバーの人が知りたいのは、「今、雨が降っているかどうか」ではなく、「1時間後に雨が降るかどうか」を知りたいということです。つまり正しい目的を持たずにデータを取るだけでは、本質的な解決には繋がりません。

そのため、提供できる技術とお客様が直面する課題の間を埋めていく作業は、特にビッグデータやAIの領域では重要だと思います。

―――ありがとうございます。技術的な側面では、現状の課題などはありますか?

元垣内さん:先程も少しお話した通り、データの活用が進んでいないという課題があります。この背景には、データへのアクセスの難易度が高かったり、データを扱う機会がなかったり様々なケースが考えられます。

例えば、車の移動データを分析しようとしても一般の人が、データを解析するのはハードルが高いはずです。また自動車メーカーが、データを一般消費者向けにオープンにする理由も見つからない状態です。他の機器メーカーも同様で、データへのアクセスが難しいという課題が存在します。

ですが、このようなデータを無条件にオープンにするというわけにはいきません。データの活用を促進するためには、データをオープンにしやすい仕組み作りが重要です。

そのため私たちのポジションとしては、私たちがデータのプラットホームになる必要があります。そして機器メーカーが、我々のプラットホームを通じてビジネスを展開できるようにする状態を作りたいと思っています。

またデータ提供者のメリットだけでなく、データ活用者のメリットも考慮に入れる必要も出てくることが予想されます。

“人が自動車を運転しない”世界の実現に向けて―――


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―――ここまで、未来の予想や現状の課題についてお伺いしましたが、これからお二人が挑戦したいことは何かありますか?

北川さん:今まで以上に、モビリティを中心とした社会課題の解決を目指していきたいです。

私の原動力は、“移動が変わると生活が変わる”という考え方なんです。人は1日に約2時間を移動に費やしていると言われています。

通勤・通学、打ち合わせの移動、仕事帰りにスーパーに立ち寄ったり、外食をしたり―― このような行動は、日常的な行動ですよね。1日に約2時間も移動に費やしているにも関わらず、生産的な行動に繋がらないとただの時間の浪費となってしまいます。

仮に自動運転が普及して、次の打ち合わせの場所に移動しながら仕事ができれば、少なくとも1日2時間は人間の生産性が上がります。何千年変わっていなかった移動のパターンが、次の100年で変わる可能性があると思います。

移動パターンが変化する過程で、交通事故や交通渋滞などの問題も解決すると考えています。

―――ありがとうございます。元垣内さんはいかがでしょうか?

元垣内さん:私たちは、移動のデータを活用して具体的なユースケースを見出すことに焦点を当てています。そして実際にデータ活用が、お客様のビジネスのプラスになるかどうかが非常に重要です。

その点には、今後も今まで以上にコミットしていきたいと考えています。ユースケースが、あってもそれがビジネスにならなければ、それ以上の発展は見込めません。そのユースケースとは車両管理や保険など、様々な領域と接触している可能性があります。

ユースケースを発見し、お客様のソリューションへと昇華させる必要があるので、ただデータの活用範囲を拡大させるのではなくて、データの活用を育てることにもフォーカスしていきたいですね。

―――ありがとうございます。お二人のお話を聞いていると、新しい当たり前になるサービスを確実に制作していることが伝わります。

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北川さん:ありがとうございます。企業は会社の目的を達成することで、“新しい当たり前”を作り出すことだと思います。

例えば、30年前や50年前の常識は現代ではすっかり変わっていますよね。それは、過去にその課題を解消した人々がいたからです。私たちが見てきた新しい常識を、30年後に知った人は、古い常識と捉えるかもしれませんよね。

将来的に私の子どもや孫が、車を人が運転するという現状を見て『人が自動車を運転している時代があったって聞いたけど、本当にそうだったの?』と疑問に思う時代が来るかもしれません。

冷静に考えると1.5トンや2トンの鉄の塊を人が、操縦するという行為はかなり危険なことですよね…その結果、交通事故が起きたり、車間距離を間違えてしまい渋滞が発生したりします。

“人が自動車を運転しない”という状態が、新しい当たり前になるとして、スマートドライブがその進化を後押しできるような事業を展開できれば嬉しいです。

このような世界を実現するために、私たちは無数の課題と壁を乗り越えて進んでいかなければいけません。未来からみた現在の非常識を一つ一つ解消していく―― そうすることで、将来的に新しい当たり前が構築されていくと思います。

社会に価値のある仕事を、真っ直ぐな姿勢で取り組めるのが株式会社スマートドライブ


取材画像
―――最後の質問です。お二人にとって株式会社スマートドライブとは、どのような存在ですか?

北川さん:私にとって株式会社スマートドライブは、我が子のような存在ですね。私自身が0から立ち上げたので、会社の可能性を信じ続けていきたいと思っています。

また先程も少しお話しましたがこの企業の目的は、未来から見れば非常識な事故を、数十年後には無くすことです。現実と理想とのギャップを少しずつ埋めていくことが、自分の目指す方向性であり、その一環としてスマートドライブを運営しています。

元垣内さん:社会に価値のある仕事を、真っ直ぐな姿勢で取り組める――― 例えば、事故を減らすというあるべき未来に向けて真っ直ぐな姿勢でビジネスができる場所が、スマートドライブですね。

私たちが提供する法人向けサービスでは、安全運転の管理で事故を減らすサポートをしたり、安全運転をしている企業やドライバーの保険料を安くすることにご活用いただいています。ビッグデータを活用することで、リスクを選別し、安全運転が企業やドライバーにとってもメリットとなるサービスの仕組みを形成しています。

また将来的に自動運転が実現した時の車の動き方、操作方法の参考に私たちのソリューションが活用できれば良いと思っています。そうすることで、すべてのドライバーが安全運転になり、事故のリスクを減らすことに繋がるからです。

世の中の事故を無くすせるかどうかは一例ですが、そういった具体的な社会課題を移動データを通じて解決していけるかに株式会社スマートドライブの存在理由があるので、目的を達成するために、これからも仕事仲間たちと一丸となって課題の解決に向き合いたいですね。


株式会社スマートドライブの詳細を見る

前編を読む

<編集後記>

今回の取材を通して感じたことは、株式会社スマートドライブが提供する移動データを活用したサービスは、未来の新しい当たり前になるということが。

人の移動という行為は、単純に時間の浪費につながるだけではなく、車移動による事故などにも発展しかねない。移動という行為の無駄に気がついているものの、その無駄を解決することを諦めてしまっている人も多いのではないだろうか。

株式会社スマートドライブは、長く人類が課題として抱いている”移動”という行為を根本的に変えるだろう。

株式会社スマートドライブが目指す事故のない世の中は近い将来実現されるだろう。その未来が実現されるまで、今後も株式会社スマートドライブの動向に目を光らせていきたい。

新井那知
ライター
So-gúd編集部
新井 那知
埼玉県・熊谷市出身。渋谷の某ITベンチャーに就職後、2016年にフリーランスライターとして独立。独立後は、アパレル、音楽媒体、求人媒体、専門誌での取材やコラム作成を担当する。海外で実績を積むために訪れたニューヨークで、なぜかカレー屋を開店することに—-帰国後は、クライアントワークを通してライターとして日々取材や編集、執筆を担当する。料理と犬、最近目覚めたカポエイラが好き(足技の特訓中)。
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