目指すのは、事故のない世界。株式会社スマートドライブが挑戦する、移動の進化とは?
2023.11.20

【前編】目指すのは、事故のない世界。株式会社スマートドライブが挑戦する、移動の進化とは?


人類史を振り返ると「移動」という行動は、人間の進化と深く結びついている。

獲物を求めて何日も移動した旧石器時代の狩猟採集社会、ゲルマン民族の移動、大航海時代、フライト兄弟による飛行機の誕生、蒸気自動車の誕生、1969年7月20日の月面着陸―― 歴史を見ると移動の手段は、時代と共に大きく進化し、人類の生活を切り開いてきた。

そして自動車や電車に乗ること、飛行機での海外移動などが、当たり前になった現在、「移動」はIT技術の進化によって、新しいステージを迎えている。

そんな「移動」という行為をビッグデータの活用により進化させているのが、「株式会社スマートドライブ」だ。株式会社スマートドライブは、車両管理システムと移動データプラットフォームの開発・提供をおこなっている。

今回は株式会社スマートドライブ・代表取締役(CEO)・北川烈氏と取締役の元垣内広毅氏にスマートドライブから考える移動の未来の可能性について取材をおこなった。

代表取締役(CEO)北川 烈
インタビュイー
北川 烈氏
株式会社スマートドライブ
代表取締役(CEO)
慶応大学在籍時から国内ベンチャーでインターンを経験し、複数の新規事業立ち上げを経験。その後、1年間米国に留学しエンジニアリングを学んだ後、東京大学大学院に進学し移動体のデータ分析を研究。その中で今後自動車のデータ活用、EV、自動運転技術が今後の移動を大きく変えていくことに感銘を受け、在学中にSmartDriveを創業し代表取締役に就任。

取締役 元垣内 広毅
インタビュイー
元垣内 広毅氏
株式会社スマートドライブ
取締役
大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程にて統計解析を専攻。統計的機械学習領域で博士号(工学)取得。有限責任あずさ監査法人にて、公認会計士業務に従事した後、グリー株式会社に入社し、各種データ分析業務を担当。2015年1月にスマートドライブに入社。執行役員を経て、2018年12月より現職。現在は、データプラットフォーム事業を中心に、データ解析領域の技術開発及び事業開発を担当。


移動データを基軸とした「フリートオペレーター」と「アセットオーナー」サービス。


取材画像
―――まずは、株式会社スマートドライブの事業概要について教えてください。

北川さん:私たちの事業のベースは、移動データが基軸になっています。自動車やバイクなどの移動データをビッグデータを活用した様々な情報と合わせて解析するデータプラットホームが、メインのビジネスとなっています。

そして我々が展開している事業は、「フリートオペレーター(通称FO)」と「アセットオーナー(通称AO)」向けのサービスの2つの事業です。

フリーオペレーターは、自動車を利用したビジネスを展開する企業向けの事業となっています。日本では全国に3,000万台の法人車両が存在しています。法人車両の用途は、事業によってことなっており、タクシーのような営業用途や大型トラックなど商品の運送手段、そして清掃車両のように、建物や道路の清掃・メンテナンスをするための車両だったり様々です。

このような車両の使用状況を我々のデータプラットフォームを使ってリアルタイムに把握したり、事故を減らすためのサービスを提供したりしているんです。お陰様で現在、約1000社を超える企業様が導入してくださいました。

2つ目の「アセットオーナー」は、1000社の車両データを活用して事故予測をはじめとしたアルゴリズムを開発します。それをパートナーである自動車メーカーや保険会社、リース会社などのアセットオーナーと連携し、彼らと共に新しいサービスを作り上げる事業です。

―――モビリティ社会をアップデートする取り組みをされていますね。この事業を立ち上げようと思った背景は何かありますか?

取材画像
北川さん:私が留学時代の友人に会いに行った時の経験が大きいですね。10年以上も前ですが、Googleのキャンパスの中を自動運転車が走っていたり、テスラの電気自動車が街を走っていたりしました。

私はその光景を見て、日本も移動自体が変わると生活も大きく変わると思ったんですよね。 実際に電気自動車が普及しきれていなかったり、自動運転技術が浸透していなかったりする現状を見た時に、新しい車を開発するよりもすでに走っている車のデータを活用するアプローチが重要だと考えました。

その視点で事業を立ち上げ、データ活用に比重を置いたビジネスを構築していきました。

起業時は、事業者に理解してもらうために奮闘する日々


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―――なるほど、ありがとうございます。事業を立ち上げるのに伴い、苦労した点などありましたか?

北川さん:そうですね。私たちの取り組みは、ウェブ上のデータだけではなく、自動車が実際に道を走る際に取得できるリアルなデータの収集が必要でした。

データを集めるためには、ハードウェアを組み合わせた車両に設置できるようなデバイスを使用する必要があったんです。また私たちだけではなく、保険会社やリース会社、そして自動車メーカーといった様々な業種とのアライアンスが必要でもありました。

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そのため私たちの取り組みを事業者様に理解していただき、一緒に事業を進めていくために協力してもらうのが、とても大変でしたね…。それに加えどのように私たちの技術を活用できて、どのような課題が解決されるのかというのを理解してもらうのに苦労しましたね…。

―――ありがとうございます。莫大なデータを収集し活用すると思うのですが、データ収集面での苦労は何かありましたか?

元垣内さん:私自身、データ分析の専門家としてジョインしましたが、はじめはデータ自体がない状態からスタートしました。IoTの機器から作り始めたのですが、デジタル化されていない領域からスタートすることは大変でした。データをデジタル化する過程も、その後分析できる状態に整えるまでが、非常に難しかったですね。

サービスの魅力


取材画像
―――改めて株式会社スマートドライブ様ならではの、サービスの強みは何かありますか?

北川さん:私たちのフリートマネージメントは、ウェブ業界で言うGoogleAnalyticsのような立ち位置にしたいと考えています。 GoogleAnalyticsは、サイト上にユーザーが何人訪れて、どのような経緯でサイトまで到達するかを視覚化しますよね。

私たちの場合は、ウェブではなく現実の世界で、指定の車両はどこにいるのか、安全運転をしているのか、移動ルートなどの移動効率が良いのかなどの情報を可視化していきます。この基礎データを積み重ねて、新しいサービスを展開していきます。

一般的には、車両管理のためのソフトを開発して完結してしまうケースが多いんですよね。ですが我々の場合、安全運転のデータをベースに「テレマティクス保険」という、安全運転をすると保険料が安くなるサービスを蓄積したデータから展開しています。

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そういった拡張性こそが、中長期的に我々が他社と差別化を図る要素となると考えています。単なるパッケージソフトを提供するのではなく、データプラットフォームがあり、その上に一つのアプリケーションとしてフリートマネージメントを作っている構造になっています。最近では、テレマティクス系やドライバー向けのアプリなど、広がりを見せてきています。

―――運転の安全性が担保される素晴らしいサービスですね!

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ありがとうございます。データの活用方法は色々とありますが、ドライバーの方に効果が出やすいのは、自分の安全運転の基準を認識でき、視覚化することで明確に理解できるようになることです。

私たちが、ドライバーの方に提供しているデータは、蓄積された客観的なデータです。その客観的なデータを見ることで、自分自身の運転を見直すきっかけになります。

また運転の安全性に関して点数化されると、点数を上げるために運転が改善され、2~3割近くの事故の減少効果が期待できるんです。

―――実際にサービスを導入した企業様の声や反響はどのようなものがありましたか?

元垣内さん:事故が減少したという声を聞ける機会が、増えたのが嬉しいですね。また配送ルートなどを見直す機会ができ、業務の効率化にも繋がったというフィードバックをいただきます。

ですがそれ以上に、社会問題にもなっているCo2の問題に対してアプローチできているということが、とても嬉しいですね。

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