フェムテックの先駆け「LunaLuna(ルナルナ)」。“生理”のタブーと向き合う20年で見えた変化とは
2020年頃からメディアで取り上げられるようになった「Femtech(フェム テック)」という言葉。「フェムテック」とは、Female(女性)とTechnology(技術)をかけ合わせた造語で、女性の健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービスのことを指す。
実はフェムテックという言葉ができるもっと前から、フェムテックの先駆けとして女性のカラダとココロに向き合ってきた企業がある。それが、一昨年20周年を迎えた「株式会社エムティーアイ」の「LunaLuna(ルナルナ)」だ。
2000年にリリースされた生理日予測管理サービスの「ルナルナ」は、*現在1,700万ダウンロード を超えた。今や生理日予測管理だけでなく、妊活・不妊治療・妊娠中や育児中のママのサポートまで幅広くサービスを拡充し、女性のウェルビーイングを支えている。
*2021年6月時点
ここ数年で「フェムテック」という言葉が誕生したように、「生理」など女性のカラダやココロに関するセンシティブなテーマに対し、世の中の見方は変化してきた。長きにわたり女性のヘルスケアをサポートしてきた「ルナルナ」は、この変化をどう捉えているのだろうか?
今回は、ルナルナ事業部・副事業部長 那須 理紗氏に取材を行った。2020年11月の20周年を機にブランドをアップデートし、新たにスタートした取り組みや、今後のビジョンについてお話を伺う。
ルナルナ事業部 副事業部長
女性の健康情報サービス「ルナルナ」と母子手帳アプリ「母子モ」の企画マーケティングに従事し、生理日管理から妊活・妊娠・育児へと市場ドメイン拡大に貢献。現在も女性だけでなく、医療機関や製薬会社との取り組みを通じた更なる価値提供に尽力している。
「ルナルナ」のフェムテックは“ガラケー時代”から始まった
────では、はじめに「ルナルナ」がどのようなサービスなのか教えていただけますか?
「ルナルナ」は、主に“生理日管理予測”から、女性のヘルスケアや健康管理をサポートするサービスです。2000年のリリース当初は、“生理日予測管理”がメインサービスでしたが、今では「ルナルナ」「ルナルナ 体温ノート」「ルナルナ ベビー」「ルナルナ スポーツ」といったtoC向けサービスを多数展開しています。さまざまなライフステージの女性に寄り添うサービスへ拡充してきました。
そしてtoB向けサービスとしては、「ルナルナ メディコ」「ルナルナ オンライン診療」といったサービスも展開しています。ユーザーの皆さんや、婦人科・産婦人科医の方々の声を反映させてつくったサービスです。
「ルナルナ」に記録頂いた“基礎体温や生理日”など細かなデータを提携先の医師へ提示することで、今までよりスムーズな診療環境の実現と一人ひとりに合わせた診察や健康アドバイスを実施できる環境づくりに注力しています。
────女性のライフステージの変化に合わせた多様なサービスを展開されているんですね!2000年の「ルナルナ」サービス提供当初は、まだ「フェムテック」という言葉も無い時代です。そんな中、“生理日予測管理サービス” を立ち上げるきっかけは何だったのでしょうか?
リリースした2000年当時は、“ガラケー”が一般的に普及した時期でした。1人1台携帯電話を持つことが当たり前になっていき、ガラケー市場が急拡大していたんです。そこで弊社も、当時はさまざまな携帯サービス(着メロ・デコメール・占いなど)をリリースしていました。
このようなコンテンツ事業を拡大する中で、持ち込みの企画に「女性が生理日予測を簡単に管理できたら便利だよね」という意見があり、個人のデータ管理と携帯サービスとの親和性の高さからサービスをつくることが決まりました。
はじめは、各キャリアの公式メニューの1つとして“生理日予測管理サービス”を提案していたんです。しかし、今のアプリケーション申請のように、申請してすぐにサービス提供できるワケではありませんでした……。
各通信キャリアで、サービス提供までの厳しい審査を通過する必要があったんです。中には、審査中に担当者の方から「“生理日を管理する”というのは、性的なコンテンツに入りそうなので……」と、承認が通らないこともありました。「生理」という言葉が、センシティブな扱いであることを実感することも多かったですね。
────今から20年以上前となると、「生理」という言葉はなかなか公共の場で目にすることも、発言する方もいなかったように思います。女性自身も、どこか恥かしい言葉であるような気がしていましたね。
そうなんです。やはり、テレビCMや電車内の中吊り広告など、公共の場として目に入る場所でのPR表現は難しい部分もありますね。「『生理』という直接的な表現は避けて欲しい」と言われることもありますから……。
今でも、言葉の表現にはとても気を使いますね。
────それほどセンシティブなテーマである“生理日管理予測サービス”を提供されて、実際にリリース後の反応はいかがでしたか?
やはり、実際にユーザーの方に使っていただくと“生理日管理予測サービス”の利便性を感じていただき、ポジティブな感想が多く寄せられました!実際に、ユーザー数は右肩上がりで成長していったんです。私たちもサービスを始めてみて、改めて高いニーズがあることを実感しましたね。
また、「ルナルナ」ユーザー様の特徴は、使用期間がとても長く10年15年単位でご利用いただく方がとても多いんですよ。娘さんにご利用をおすすめいただき、親子でご利用されている方もいらっしゃいます!
「女性の一生涯をサポート」多様なライフスタイルに合わせ進化するサービス
────現在「ルナルナ」では、“生理日管理予測”の他にも、さまざまなサービスを展開されているとの事でしたが、詳しくお伺いできますか?
基本となる「ルナルナ」では、今まで同様に“生理日管理”をメインに、排卵日、妊娠しやすい・しにくい時期などが予測できます。そこから、女性のリズムに合わせ太りやすい時期・痩せやすい時期、心理的な変化までご自身で把握できるようになっています。多様なライフスタイルを生きる全ての女性が、自分らしく生きることを応援するサービスなんです。
また、新たに「ピルモード」を追加しました。ピル(OC/LEP)を服用している方にお使いいただけるモードです。ピルというと避妊薬のイメージも強かったですが、今では避妊の効果だけでなく心理的な不安感など「PMS(月経困難症)」に対しても有効であることが広く知られています。このような認知が広がったことで、低用量ピルを利用される方が増えたことを受け、サービス提供をはじめました。
────基本サービスの「ルナルナ」も、進化していたんですね!
他にも、「妊活」に有効な機能もご利用いただけます。「妊娠希望モード」をご登録いただくと、「妊活」に有効な情報が届きます。また通常、排卵日から妊娠しやすいタイミングを予測されると思うのですが、「ルナルナ」が今まで培ってきたデータを活用し、より精度の高い「仲良し日(=妊娠しやすい日)」を割り出すことができるんです。
この「仲良し日」の通知が、ご登録されたパートナーにメールで届くパートナー機能もあるため、パートナーに直接伝える負担も軽減できます。「仲良し日」だけでなく、生理日やホルモンバランスの変化による女性のカラダとココロの変化もお知らせしているんです。
他にも、有料で妊活や不妊治療に活用できるデータ管理サービスとして「ルナルナ 体温ノート」というサービスもあるんですよ。「不妊治療管理サポート」機能もあり、不妊治療の内容や記録の管理が簡単にできるようになっています。
不妊治療は、より専門的な検査が必要になってくるのですが、検査結果のグラフ化や基準値との比較ができるんです。基礎体温の管理など、今までご自身でノート管理している方がほとんどでしたが、その手間を軽減しアプリで簡単に管理できるようにしています。
────冒頭で、「ルナルナ ベビー」のお話がでましたが、妊娠したあとのサポートをするサービスでしょうか?
そうですね!「ルナルナ ベビー」は、妊娠中や育児中のママ向けのアプリです。妊娠週数がひとめでわかるカレンダー機能や、ご自身の妊娠週数に合わせた赤ちゃんの成長の様子などを配信しています。また、同じ悩みを抱えることも多い妊婦さん同士で相談ができるので、不安を少しでも解消できればいいなと思っています。
私たち「ルナルナ」は、“女性の一生涯をサポートする”ことを目指しています。多様化する女性のライフステージやライフスタイルに応えるサービスとして、成長を続けていきたいですね。
────全てのライフステージにいる女性をサポートするサービスを提供されているんですね。このような個人向けサービスの他に、医療機関との連携をしたサービスもあるそうですが、どういった取り組みでしょうか?
医療機関と連携したサービスは、「ルナルナ メディコ」「ルナルナ オンライン診療」の2つです。「ルナルナ メディコ」は、「妊活」での基礎体温の管理データなどを、診療する医師に共有しデータ活用できるサービスです。2017年にスタートしたのですが、リリース当時はあまり反応もなく鳴かず飛ばず……(笑)。
しかし現在は、全国1000件ほどの医療機関と契約を結び、着実に成長しています。
「ルナルナ オンライン診療」は、実はコロナ禍前の2019年10月にリリースしたサービスなんですよ。こちらは、子会社の「株式会社カラダメディカ」と共同で進めているプロジェクトで、「ルナルナ」からオンライン診療を予約することもできます。
こちらのユーザー数も、リリース当初に比べてコロナ禍以降のほうが増加しています。やはり、通院時の感染リスクを軽減するために利用する方も多いですね。不妊治療となると検査結果の確認など、必ずしも通院が必要ではないケースもあります。
一方で、専門医療のため最寄り駅に無くご自宅から遠い場合が多いんです。そのため、移動に不安を持つ方にはご好評いただいています。
────まさに今の時代に求められるサービスですが、コロナ禍前にリリースされている先見の明に驚きました!やはり女性のサポートをずっとされてきたからこそ、求められるニーズがわかるんですね。
私たち「ルナルナ」は、20年以上にわたり女性のカラダとココロをサポートするサービスを提供してきました。だからこそ、蓄積されたビックデータをもとに、独自のアルゴリズムを活用した排卵日予測を提供しています。先ほどお伝えしたような医療機関とのサービス連携の他に、大学や国立の医療機関と共同研究も行っているんですよ。
具体的には、「月経周期と基礎体温の年齢変化」などの研究を行っています。生理日、基礎体温などのデータから、未来の医療へ役立てる新たな知見の広がりや発見に貢献したいと考えています。
「生理」と向き合って見えた社会の変化
────最近では、SNSの普及や「フェムテック」という言葉が生まれたように、「生理」など女性のカラダやココロのセンシティブなテーマについて、自ら情報を発信する方が増えてきたように思います。このような社会的な変化は、どのように捉えていますか?
「ルナルナ」立ち上げ当初は、そもそもサービスを世に出す時点から広告の打ち出し方の問題など、社内の他のサービスなら起きない障壁を感じることが多かったです。やはり社会全体として、「生理」=“隠すもの”として認識されていました。
実際に、先ほどご紹介した「仲良し日や生理日」などを通知する「パートナー機能」を開始したお知らせを流したところ、違和感や不快感を覚えるユーザー様もいました。そのため、当時は一時的にこの機能を実装していない期間があったんです。そして2018年に「パートナー機能」を再度リリースしました。
すると、今度は逆に好意的な意見が多く寄せられたんですよ!この時、時代の変化とともに社会も女性自身も、「生理」などに対する意識の変化を強く感じました。今ではSNSの普及もあり、ご自身の情報をオープンにすることに抵抗が少なくなった女性も多くなってきていると感じます。
著名人の情報発言などをきっかけに、「生理」という言葉をオープンにする女性自身が増えていることが、世の中に大きな変化を生んでいると思います。また、メディアでも「フェムテック」「生理」「PMS」といったテーマの特集が組まれるようになった背景には、女性の社会進出も大きな後押しになっていると感じますね。
「ルナルナ」20周年で始まった「FEMCATION」とは?
────一昨年20周年を迎えスタートした「FEMCATION(フェムケーション)」とは、どのような取り組みなのかお伺いできますか?
「ルナルナ」が20周年を迎えたことをきっかけに、ブランドのアップデートなどを行いました。そして、新しくスタートしたプロジェクトが「FEMCATION」です。「FEMCATION」は、Female(女性)とEducation(教育)を掛け合わせた造語なんですよ。
先ほど社会的な変化をお話しましたが、オープンな発言や情報発信が増えてきたとはいえ、まだまだ女性1人ひとりが抱えるカラダとココロに対する課題は多いと感じています。女性の社会進出が進んでいるからこそ、「老若男女問わず『生理』や『女性のカラダ』に対する認知を深める機会をつくることが必要なのではないか?」と考えプロジェクトを立ち上げました。
「FEMCATION」」は、まず “社会に対して女性のカラダへの理解を深めること” を目的とした活動をしています。今まで、私たち「ルナルナ」は女性に対してのみアプローチをしてきました。一方で「FEMCATION」では、この目的に賛同いただいた企業様や一般向けにセミナーを開催し、女性男性問わず幅広い世代の方へアプローチしています。
具体的なセミナーの内容としては、産婦人科の医師を招き、まずは「生理」のメカニズムを理解し知識を深めることから始めているんです。他には「PMS」についても解説しています。女性自身も毎月生理がくるものの、意外と知らないことが多いものなんです。中には、生理痛を我慢する方が非常に多いため、婦人科の受診を促すこともしています。
────確かに、「生理痛」を我慢している子は多くいますよね。それに、「PMS」は同じ女性でも症状に大きな違いがあるため、職場の女性同士でも理解されないことを悩む方も多いと聞きます。
そのとおりです。まず女性自身が理解を深め、ご自身のカラダを理解すること、そして様々な女性がいることを理解することも重要だと思います。そして、女性はもちろん男性にはもっと理解できない部分や、学ぶ機会が無いため「パートナーにどうしてあげればいいかわからない」という方も多くいらっしゃいました。
実際にセミナーへご参加いただいた方からは、「今までどうしたら良いかわから無かったけど、メカニズムを理解することで、気持ちの変化に気づけるようになった」「生理痛があるのは当たり前だと思っていたけど、受診しようと思った」など男女ともに大きな気付きがあったとご意見いただいています。
様々な異業種の方との提供の場を増やすことで、多くの企業様からもオファーやお声がけいただくことが増えていることはとても嬉しいですね。
「ルナルナ」はフェムテックのリーディングサービスとして女性の課題を解決し続ける
────今、さまざまなサービスを展開する中で「課題」と感じることはありますか?
「FEMCATION」を推進する中で、やはりまだまだ正しい知識を学ぶ機会が少ないこと、それによって正しい理解をしていただくことに対して課題を感じています。性教育についても、大人になって学ぶ機会はありません。同じように、正しい情報に受動的にアクセスすることがとても難しいと感じています。
他には、女性自身が婦人科を受診することにハードルの高さを感じている点です。産婦人科・婦人科というと、“妊娠してから行く場所”というイメージをもつ方も少なくありません。また、内診への不安感や怖さから躊躇してしまう方も多いと思います。結果、生理痛が酷くても市販薬の痛み止めでやり過ごす方が非常に多いんです。
正しく理解することで障壁を減らし、受診することが一般化していって欲しいと思います。受診することで、気づきがあったり、選択肢があることを知ってもらいたいですね。
────では最後に、「ルナルナ」が今後目指していくビジョンをお伺いできますか?
「ルナルナ」は、1,700万ダウンロードしていただいていることもあり、ユーザーアンケートを実施すると数千件から多いときは数万件の回答をいただくことができます。「ルナルナ メディコ」も、アンケートに寄せられたご意見からたくさんの気づきをいただき誕生したサービスなんです。
このように、今後もお客様の声から課題をサポートするよりよいサービスづくりをしていきたいと思います。
また、医療提携サービスもさらに事業を拡大し推進していく予定です。引き続き個人向けサービスにも注力しつつ、さらに医療連携を強化することで、もっと多様な女性の課題解決ができるように成長していきたいと考えています。
「フェムテック」のリーディングカンパニーとして、この盛り上がりを一過性のモノで終わらすことなく、女性1人ひとりが過ごしやすい社会への実現へ貢献していきたいですね。
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