「リジェネレーション」と「サステナブル」の違い

公開日:2021年8月12日 / 最終更新日:2026年9月8日

サステナブル

環境や社会の課題に向き合う場面で、「リジェネレーション」「リジェネラティブ」という言葉を聞く機会が増えています。傷ついた自然や地域の力を回復させることに目を向ける考え方です。

ただし、「サステナブルは古く、リジェネレーションに置き換わった」という意味ではありません。この記事では両者の違いと重なり、農業などでの取り組みを、2025~2026年の企業公表情報も交えて紹介します。

リジェネレーション(Regeneration)とは?

植物と自然の再生を考える

リジェネレーションは「再生」などを意味し、環境分野では、生態系の回復や土壌の健全性、地域社会の力を育て直す取り組みを説明する際に使われます。「リジェネラティブ」は「再生的な」という意味の形容詞です。

企業や分野によって、具体的な取り組みや評価方法は異なります。言葉の印象だけで判断せず、何をどのように回復させるのか、その結果をどう確かめるのかを見ることが大切です。

サステナブルとの違い:現状維持だけを意味するわけではない

国連が示す持続可能な開発の考え方は、将来世代が自分たちの必要を満たす力を損なわず、現在の世代の必要を満たすことです。環境だけでなく、社会や経済も含めた長期的なあり方を扱います。

したがって、サステナブルを「最低限の現状維持」「必ずプラスマイナスゼロ」とだけ説明するのは適切ではありません。リジェネレーションは、回復や再生に焦点を当てることで、持続可能性を目指す取り組みを具体化する視点のひとつと捉えられます。

出典:国連「持続可能な開発とは」

考え方 着目する点 確認したいこと
サステナビリティ 環境・社会・経済を将来にわたり成り立たせる 長期的な影響、資源の使い方、世代間の公平性
リジェネレーション 生態系や地域社会の回復・再生を促す 回復させる対象、地域の条件、実際の成果

この比較は理解のための整理であり、両者を厳密に分ける国際共通の等級表ではありません。自然の保全や回復は、どちらの考え方にも含まれ得ます。

再生の取り組みで大切な、全体を見る視点

自然環境を全体として捉える

土壌を改善する場合でも、土の状態だけでなく、水、生物多様性、収穫量、農業者の収入や働く環境を合わせて考える必要があります。ある指標の改善が、別の指標にも自動的によい結果をもたらすとは限りません。

また、気候変動を抑える排出削減と、生態系を回復させる取り組みは補い合うものです。IPCCは、温暖化を安定させるには世界全体でCO₂の排出実質ゼロが必要としています。農地などへの炭素の貯留だけを理由に、排出削減が不要になるわけではありません。

出典:IPCC第6次評価報告書 第3作業部会 第3章

土壌の炭素と、大気のCO₂を混同しない

農業での炭素貯留は、植物を通じて取り込まれた炭素を土壌の有機物などとして蓄えることを指します。「土や有機物に含まれる二酸化炭素を減らす」という説明とは異なります。

どれだけ蓄えられるか、どの程度維持できるかは、地域や管理方法によって変わります。気候変動のすべての影響がすぐに元へ戻るわけでもありません。

出典:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会 第5章:炭素循環と炭素除去

リジェネラティブな取り組みの事例

農業と自然の回復に関わる取り組み

以下は企業・団体が公表している取り組みです。企業による自己報告、認証の取得、自然の回復が実測された結果は、それぞれ区別して読む必要があります。

パタゴニア:リジェネラティブ・オーガニック農業

パタゴニアは、食品やコットンなどでリジェネラティブ・オーガニックの取り組みを紹介しています。日本では水田稲作にも注目し、生物多様性や炭素循環とともに、水田からのメタン排出という課題も取り上げています。

単に「自然に近い農法だから排出がゼロ」と判断するのではなく、地域ごとの農法と効果を確かめる視点が必要です。

出典:パタゴニア「リジェネラティブ・オーガニック」

出典:パタゴニア「リジェネラティブ・オーガニック 水田稲作」

Regenerative Organic Certified®は3つの柱で評価

Regenerative Organic Allianceが運営するRegenerative Organic Certified®は、有機認証を基礎とし、土壌の健全性、動物福祉、農業者・労働者の公平性を扱う認証です。パタゴニアだけが独自にすべてを認証する制度ではありません。

「認証取得を目指す」段階の商品や農場と、実際に認証を取得したものは区別しましょう。認証があることと、あらゆる環境影響がゼロであることも同じではありません。

出典:Regenerative Organic Alliance「認証取得について」

ユニリーバ:2025年実績と2030年目標

ユニリーバの2025年年次報告書では、2030年までに100万ヘクタールの農地でリジェネラティブ農業を実施する目標に対し、2025年実績は約25万ヘクタールと報告しています。この値はアイスクリーム事業を除く範囲です。

また、2026年には関連プログラムを40万ヘクタール超へ拡大する計画を示しています。これは計画であり、2026年の達成実績ではありません。

森林破壊に関する報告も、指定原料の調達量や同社の確認基準を対象としています。「2023年までにサプライチェーン全体で一切の森林破壊がなくなった」とは言い換えられません。

出典:ユニリーバ「Annual Report and Accounts 2025」

ウォルマート:2026年度の自然関連報告

ウォルマートは2026年7月29日公表のESG報告で、2026会計年度に、供給業者や助成先が約7,620万エーカーの土地と368万平方マイルの海域で、より持続可能な管理・保護・回復に関わる活動を報告したとしています。

ここでの面積は、管理・保護・回復を含む活動範囲です。すべてが新しく再生された面積、あるいはウォルマートが単独で回復させた面積という意味ではありません。暦年ではなく会計年度の報告である点にも注意が必要です。

出典:ウォルマート「FY2026 ESG Report」公表資料(2026年7月29日)

「リジェネラティブ」という表示を読むポイント

  • 対象:土壌、水、生物多様性、地域の暮らしなど、何を回復させようとしているか。
  • 範囲:一部の商品・農場の取り組みか、企業全体の取り組みか。
  • 指標:参加農場数や実施面積だけでなく、状態の変化をどう測るか。
  • 時期:将来目標、実施済みの活動、確認済みの成果が分けられているか。
  • 継続性:維持管理や、生産者・地域住民との協力が続く仕組みがあるか。

私たちにできること

暮らしの中で自然に関心を持つ

まず、商品や活動の説明を読み、何を目指し、どこまで進んでいるかを確かめてみましょう。食品ロスを減らす、持ち物を長く使うといった日常の行動も引き続き大切です。

地域の農業や自然保全に関心がある場合は、主催者の案内に沿った学習会や保全活動に参加する方法もあります。サステナブルかリジェネラティブかという言葉の順位より、具体的にどんな改善につながるかを見ていきましょう。

               
ライター:Ethical Choice編集部
Ethical Choice編集部です。エシカルな生活を送る知恵、サスティナビリティに関する取り組み、環境問題に対するソリューションを発信いたします。

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