スウェットショップとは?その服がどこでどうやって作られているか、ご存知ですか?

エシカル

劣悪な環境で、労働者が働かされるスウェットショップ。

非人道的だという声から、世界中で工場の労働環境が是正される傾向にありますが、いまだにスウェットショップで働いている人がいるのは、現実です。

当記事では、スウェットショップとは何か、そして何が問題なのかを解説した上で、その解決に向けたアイディアを紹介したいと思います。

私たちが普段何気なく生活している中でも、スウェットショップに加担している可能性があり、全人類の問題ですので、ぜひ最後まで読んでいただければと思います。

 

スウェットショップとは?

スウェットショップ(sweatshopもしくはsweat factory)とは、違法なほど低賃金、かつ劣悪な労働条件で労働者を働かせる工場のこと。

スウェットショップでは、パワハラやセクハラも常習化している他、児童労働や強制労働が伴う工場もあります。

また、スウェットショップで働くのは8割以上が女性で、工場は育休や産休のサポートなどを避けるために、避妊と定期的な妊娠検査を強制していたりと、非人道的な労働環境だと言わざるを得ません。

 

スウェットショップが発生する原因とは?

スウェットショップはなぜ生まれるのでしょうか?

原因は複雑に絡み合っているとは思いますが、要因の1つは、消費者が安価な商品を求め、それに企業が要求するためだと考えられます。

コストを抑えるには、生産コストを抑えるしかなく、そのしわ寄せは開発途上国の労働者にくるというわけです。

 

スウェットショップの象徴、ラナプラザ崩落事故。

スウェットショップは、比較的に賃金が安い開発途上国にあることが多いのですが、中でもスウェットショップの悲惨さを世界に知らしめた出来事があります。

ラナプラザ崩落事故。ファッション史上最悪だと知られている事故です。

2013年の4月24日バングラデシュで発生した事故で、工場が入っていたビルが崩壊し、中にいた従業員のうち、1,100名以上が命を落とし、負傷者を2,500人以上も出しました。

多くの若い女性の命が奪われ、中には妊婦の方もいたとのことです。

ビル崩壊の原因は、安全性に問題があると知りながらも、生産量を上げるために法律を無視した違法増築。事故前日に建物に日々が入っているとの連絡があったものの、それも無視して、操業した結果、事故は起きたのでした。

ラナプラザ崩落事故が発生して以来、世界の工場は是正を進めてはいるものの、未だに世界を見渡せばスウェットショップが存在しているのは事実です。

ラナプラザ崩落事故については本記事の後半で詳細を解説します。

 

スウェットショップは先進国にも存在する?

スウェットショップは開発途上国の問題だと思われがちですが、実はアメリカのような先進国にも存在します。

アメリカ合衆国労働省(DOL)の報道によれば、ロサンゼルスやニューヨークとった場所でも、違法な労働をさせている工場もあったりと、スウェットショップは決して開発途上国だけの問題ではありません。

 

スウェットショップの影響

チャイルドレイバーとスウェットショップ
スウェットショップは、人道に反しているのは言うまでもありませんが、その他にも児童労働の温床になっていたり、環境にも大きな負担をかけていると言う側面があります。

 

スウェットショップと児童労働

スウェットショップは児童労働の温床になっていると言われています。

ILO (国際労働機関)によれば、世界では約1億7,000万人の子どもが児童労働しており、そのうちの大半が、衣料のサプライチェーンにいるとのこと。

子どもは従順で、生計を稼ぐために低賃金、重労働もいとわないなど、その素直さを悪用されていて、倫理的によくない側面が指摘されています。

 

環境汚染の原因

スウェットショップは、環境問題の原因になっているという側面があります。

開発途上国のゆるい環境法を悪用され、未処理の廃棄物がそのまま川に流されていたりと、酷く環境を汚しているのです。

実際に、バングラデシュのブリガンガ川は廃棄物による汚染が酷く、魚が住めない環境になっているとのこと。

また、環境汚染によって、人の健康や、生態系にも影響を及ぼしたりと、スウェットショップがもたらす不都合は甚大です。

 

スウェットショップは貧困の根絶に貢献しているのか

これだけ、スウェットショップの負の側面に関して議論してきましたが、世の中には「貧困の根絶に寄与している」として、スウェットショップの存在を擁護する意見があるのも事実です。

実際に、イギリスのシンクタンクであるアダム・スミス研究所は、「スウェットショップがバングラデシュの貧困層を助けていて、貧困が半減した。だから、私たちはスウェットショップで作られた服を積極的に買うべき」との見解を述べています。

主張は一見正当なようにも聞こえますが、よく考察すると矛盾が見えてきます。

バングラデシュの貧困層が減ったのは事実かもしれませんが、それがスウェットショップのおかげだという証拠はありません。このように正当化するのは、何か利権が絡んだポジショントークである可能性が高いと考えます。

 

フェアトレードが問題を緩和する

スウェットショップという非人道的な労働環境に加え、その影響で起こる児童労働や、環境問題の緩和には、フェアトレードの促進がもっとも有効だと考えられます。

フェアトレードとは、公正取引とも呼ばれ、開発途上国で生産された原料や製品を適正な金額で買うこと。フェアトレードによって、生産者に適切な賃金が払われたり、それによって児童労働が減ったりと、世の中をより良い場所にするための1つの取り組みです。

フェアトレードが、本当に生産者の生活水準向上に本当に寄与しているのか?という問題にはあえて触れませんが、それでもフェアトレードの考え方は、スウェットショップを無くし、貧困の根絶にも寄与することは間違い無いでしょう。

 

責任のある消費をするために。

今回、スウェットショップが何で、世界にどういう影響を与えるのかという話をしてきましたが、いかがでしたか?

お伝えしたかったことは、決してスウェットショップを使っているのはどのブランドで、それを避けようとか、そういったことではありません。

この記事でお伝えしたいことは、スウェットショップという実態が世界にもあって、消費者として、そのような問題もあることが認知していることの重要性です。

その上で、自分が消費するもの、身に付けるものが、どこでどうやって作られているのかを知るのは、責任のある消費をする第一歩だと思います。

続いてラナプラザ崩壊事故について解説します。

 

ラナプラザ崩壊事故|ファストファッション産業の裏側で起きた、史上最大の悲劇とは

命のリスクと引き換えに、自分たちは買うことも、着ることもないであろう服を、製造している人々がいます。

この問題が浮き彫りになったきっかけが、バングラデシュで2013年に発生した、ラナプラザ崩壊事故。死者、行方不明者、負傷者の全てを合わせて、4,000人以上の犠牲者を出した、ファッション業界史上最悪の事故です。

この事故は私たちとは無関係ではなく、一度は買ったことがあろうファストファッション界の歪みによるものでした。スタイリッシュで安く、最新のトレンドを、常に取り入れることができ、かつ安価で消費者には都合のいいファストファッションですが、その裏側で残酷で悲しい事故は起きたのです。

今回の記事では、ラナプラザ崩落事故の概要と原因や、ラナプラザ事故後の企業による取り組み、消費者として私たちができることをご紹介いたします。

 

ラナプラザ崩落事故とは

2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカ近郊において発生したラナプラザ崩落事故。

世界的アパレルブランドの、下請け工場が数多く存在するラナプラザビルが、朝のラッシュアワーに崩壊し、死者1,127人、行方不明者500人、負傷者2,500人にものぼる犠牲者を出しました。

ラナプラザ崩落事故は、犠牲者の規模からファストファッション業界史上最悪の事故と呼ばれ、世界でも類を見ないほど悲惨な産業事故です。

このラナプラザの悲劇は、ファストファッションの裏側を描いた『ザ・トゥルーコスト』を手がけた監督らによってドキュメンタリー『ファッションスケープス:ア・リビング・ウェージ』の題材とまでなっています。

 

防げたはずの悲劇はなぜ起きてしまったのか

事故から年月が経過した現在でも、事前に防げる可能性があったと嘆かれています。

当時、ラナプラザの労働者がビル崩壊の危険性について訴え、現地警察も退去を勧告していたのです。

しかし、利益を優先したオーナーが、出勤を拒否した労働者に対して解雇をほのめかすことで脅迫し、従業員を自宅に返さず徹夜で労働させたことにより、大惨事を防ぐことはできませんでした。

この想像もできないほどの労働環境は、ファストファッション業界やバングラデシュの繊維業界が抱える課題の氷山の一角です。

では、どうしてラナプラザ崩落事故のような悲劇は起こされてしまったのか。

ファストファッション業界に隠された裏側をご説明していきます。

 

ラナプラザ事故という悲劇に隠された、ファッション業界の裏側

らなぷらざ、rana plaza

※写真はイメージです

事故当時、ラナプラザに入居していた工場の労働環境はスウェットショップ(訳:搾取工場)と分類される、劣悪なものだったとわかっています。

主な問題点は以下の3点。

  • 作業内容や労働時間に見合わない低賃金
  • 健康状態に悪影響を及ぼす劣悪な労働環境
  • 杜撰な安全対策、かつ管理体制

上記の3点はラナプラザにだけ当てはまるのではなく、大手アパレルブランドの下請け業者をはじめとする、途上国の繊維業界において、たびたび指摘される課題です。

では、問題を1つずつ深堀して見ていきます。

 

労働に見合わない低賃金

まず、1つ目の問題である低賃金について。

事故当時、ラナプラザを含む、バングラデシュの繊維業界における平均月収は、たったの3900円ほどでした。1か月間、早朝から夜中まで、集中力が求められる作業を繰り返しても、収入として手元に残るお金は、日本のアルバイトが4時間で超えてしまう額。(東京都の最低賃金1,013円で計算)

このような低賃金問題は、ファストファッション業界における価格競争が影響しています。なぜなら、競合ブランドより魅力的な価格で、私たち消費者に商品を届けるために、製造の段階における人件費を削減しているからです。

そのため、途上国の工場スタッフがいくら働いても、雀の涙ほどの収入しか得られません。

 

放置される劣悪な労働環境

2つ目に、人権侵害にもつながりかねない、粗悪な労働環境の問題についてです。

長時間労働、肉体的かつ精神的虐待が多発している繊維業界。

冒頭でも述べた通り、女性の雇用が大半をしめるこの業界では、男性マネージャーやオーナーから、女性労働者に対するパワハラやセクハラが存在します。

トイレ休憩なしのプレッシャー、飲食に適さない汚染された水、上司からの暴行。まさに人権が無視されている現場で、女性たちが声をあげることすら恐怖を感じる状況が現実なのです。

 

悲劇を防げない、杜撰な安全対策

3つ目の問題として、安全対策の欠如があげられます。

ラナプラザ事故の元凶ともいえる、ずさんな安全対策。

1つ目の項目でも述べた通り、繊維業界において、コスト削減のために下請け業者が老朽化した建物を使うパターンが多くあります。

また、ラナプラザは、正式な許可なしに建築された建物で、3階以上は全て違法に増設されたフロアでした。さらに、事故の原因となった振動を引き起こした4台の大型発電機もまた、違法に設置してされていたことがわかっています。

利益を重視するばかり、無視されてしまう安全への配慮。ラナプラザ事故以外にも、バングラデシュでは繊維工場での火災など、安全対策の欠如により多くの被害が発生しています。

 

貧困ゆえに劣悪な環境でも働かざるを得ない現実

貧困がすべての原因に

※写真はイメージです

ここで、皆さんに理解していただきたいことは、現地の人々は劣悪な環境でも、働かざるを得ない、という現実。

バングラデシュの繊維業界において、貧しい家庭出身の労働者が大半を占めています。貧困にいる人々が、その日の生活費を稼ぐために、仕方なくスウェットショップ(訳:搾取工場)で働くという負の連鎖を変えない限り、この問題の解決は遠いものになるでしょう。

しかし、貧困には多くの課題があり、すぐに解決できる問題ではないため、少しずつでも労働環境を改善できるような取り組みが鍵となります。

実際に、アパレルブランドもラナプラザ事故を受け、動き始めています。

コラムパンデミックによる生活困窮
新型コロナが世界的に流行した影響で、途上国に位置する下請け業者はアパレルブランドからの受注がストップしている現状があります。実際に、バングラデシュにある工場は稼働停止を余儀なくされ、工場で働く人たちは職を失いました。先進国からの需要変動により、簡単に人々の生活が左右されてしまうことが浮き彫りになりました。

 

ラナプラザ事故後、問われたアパレル業界の在り方

ここからは、アパレルブランドがどのように対応しているのかを見ていきたいと思います。

悲惨な事故から1か月後、日本でも知られる「H&M」や「ZARA」などの親会社である「INDITEX」をはじめとし、ヨーロッパ発祥のアパレルブランドの多くが動きを見せました。これらの企業が、ずさんな安全対策を改善するために、安全監視機関を設けたのです。

バングラデシュの繊維業界において、火災事故や崩落事故の再発を防ぐための協定、「The Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh」(通称アコード)に、200以上企業が署名をしました。

日本からも、ユニクロが世界的企業につづいて、署名をしています。

ただ、それで労働環境が全て改善されたかというと、そうではありません。また、事故から月日が経つにつれて、悲惨な記憶が風化され、以前の劣悪な環境に戻ってしまうリスクもあります。

そのため、企業や政府の対応と同時に、私たち個人のアクションが必要とされます。

 

私たちができること

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ファッションを作る人も、消費者の私たちも、服を通して幸せになるためにはどのようなことができるのでしょうか。

ラナプラザ事故のような悲劇を二度と起こさないように、ファッションを購入する私たちができることを3つほどご紹介します。

 

自分の服がどこで製造されたか考えてみる

自分の服は誰が作って、作り手はどのような労働環境、生活環境にいるのかを考えてみることが1つの方法。

2019年には、ファッションレボリューションウィークという「Who made my clothes” (だれか私の服を作ったの?)」が合言葉のキャンペーンがおこなわれました。

新しい服を買う際に、値段やデザインの魅力だけで判断するのではなく、その服がどのように、そして誰によって作られたのかを想像しながら選択してみることをおすすめします。

 

安いからという理由だけで買わない

次に、服を安いからという理由だけで購入しないことをおすすめします。ファストファッションのお店に行くと、可愛らしい服がリーズナブルなお値段で購入できることが多いですよね。

安いから、いくつも新しい服が買える幸福で自分を満たすのではなく、本当に自分が気に入るデザインで、長く使える想像がつくものを消費してはいかがでしょうか。

 

30回以上着れるのかを考えて買う

最後に、どうしても迷ったときは自分がその服をワンシーズンで30回着ることができるのか、を考えてみましょう。

30回の着用は余裕そうにも思えますが、1週間に1回着用と考えると、7か月以上(30週)同じ服を着ることになります。そう考えると、イメージがつきやすいのではないでしょうか。

また、平均的に服の着用は7回ほどとなっているため、30回はその4倍ほどですね。ぜひ、服の購入を迷った時は30回以上着れるのかを考えみてください。

その他にも、環境に配慮しながらおしゃれを楽しむご提案をこちらの記事でまとめています。気になった方は、ぜひご覧ください。

サスティナブルファッションを詳細に説明した記事

 

さいごに。作り手も幸せにする消費をしよう。

今回は、ラナプラザ事故についてご説明しながら、ファストファッション業界の裏側を紐解きました。当記事に、ラナプラザ事故に関わっていたブランドや、ファストファッション業界を非難しよう、という意図は微塵もありません。

ただ、この記事が、消費者の皆さんにとって、衣服の選択について改めて考えられるきっかけになればと思います。

好みの服を買って、自分が嬉しくなるのと同時に、作り手も幸せになってくれる消費をエシカル消費と言いますが、そんなみんなが幸せになる消費をしてみませんか?

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

               
ライター:Sohshi Yoshitaka
Ethical Choiceの初代編集長。2030年までに地球が持続可能になる土台を、ビジネスを通して作ることがミッション。

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※本記事はエシカルな情報提供を目的としており、本記事内で紹介されている商品・サービス等の契約締結における代理や媒介、斡旋をするものではありません。また、商品・サービス等の成果を保証するものでもございません
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