海面上昇の解決策はあるのか?原因と現状、未来の予測推移をお伝えします
近年の気候変動の深刻さを語る上で、避けて通れないのが海面上昇。
海面の水位が上がることや、地球温暖化と関連性があることはなんとなく知っていても、実際に何が原因か、今後どれほどの海面上昇が起こるのかを理解している方は少ないのではないでしょうか。
当ページでは、海面上昇の現状と、引き起こしている原因を解説した上で、未来の海面上昇を予想したシミュレーションを見ていきます。
おわりには、海面上昇に対する各国の対策と、私たちにできることもお伝えしますので、ぜひ最後まで読んでいただければと思います。
海面上昇とは?意味を解説
海面上昇とは、地球温暖化によって海水が熱膨張すること、大陸氷床が溶けることで海面が上昇する現象のことです。
海面上昇が起こることで、海抜の低い国や都市が海沈むだけではなく、漁業への影響、地下水位の上昇に伴う地下道の破壊も招くなど、私たちの生活に大きな打撃をもたらす可能性があります。
近年の気候変動によって、海面上昇が起こっていることは科学的にも証明されており、このペースで海面上昇が起こると、深刻な被害が予想されるため、解決が急がれる環境問題の1つとされています。
海面上昇の原因は地球温暖化
海面上昇の原因は、地球温暖化。
地球温暖化によって起こる下記の現象が海面上昇をもたらしています。
- 地球温暖化によって引き起こされる海水の体積が熱で膨張するため
- グリーンランドや南極などの氷河や氷床が溶け、海水の量が増えるため
他の環境問題にも言えますが、それぞれが独立した問題ではなく、関与しあって問題となっているため、包括的な対策が必要だと考えられています。
海面上昇の現状
海面上昇は現在、どのような状況なのでしょうか。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書によれば、1901-2010年の約100年の間に上昇した海面は19cm。
19cmというと小さいように思うかも知れませんが、既にフィジー諸島共和国、ツバル、マーシャル諸島共和国などの海抜が低い国々では、高潮による被害が深刻化しています。
ここでは、現在もっとも海抜上昇の影響を受けている国の1つ、ツバルの現状を見ていければと思います。
沈みゆく楽園ツバル
今、海面上昇によって沈みゆく国として、取り上げられることが多いのがツバル。ツバルはオセアニアに浮かぶ島国で、その美しさから地上の楽園とも呼ばれます。
ツバルでは、海面上昇の影響で、高潮や度重なる洪水などの被害によって、住めなくなりつつあるのが現状。その結果、オーストラリアやニュージーランドといった国に移住せざるを得ない人が発生しています。
このように、海面上昇をはじめとする気候変動によって、自国が住みづらくなり、移住する人のことを環境難民と呼びますが、国連大学の研究によれば、2050年までに水や気候問題、そして紛争などによって、発生する環境難民の数は10億とも予想されています。
日本における海面上昇
ツバルが深刻な被害を受けている一方で、日本はどうなのかと気になる方も多いかと思いますが、気象庁によると、過去約100年間で日本沿岸の 海面水位の明確な上昇傾向は見られないとのこと。
だからといって、日本は海面上昇と無関係ではありません。
逆に、海に囲まれた島国だからこそ、海面上昇が起きた際の影響は大きく、予測によれば、1メートルの海面上昇で、日本の砂浜の約9割が失われると言います。
このままいくとどうなる?未来のシミュレーションを紹介
IPCC第5次評価報告書での最新シミュレーションによれば、2100年までに最悪の場合、82cmの海面上昇が起こると言われています。
仮に、地球温暖化を目標値の2℃以内に抑えられても、最低でも26cmの上昇が起こるとのこと。
また、別の研究では、上記の数字は読みが甘く、実際には1.1メートルの海面上昇が起こるとも言われています。
そのような海面上昇が現実になった場合、世界中で起こる被害は次のようなものだと予想されています。
- モルディブ共和国とマーシャル諸島共和国の全部が海に沈む
- アメリカのホワイトハウス、ロサンゼルスのベニスビーチとサンタモニカ、ベネチアのサンマルコ寺院も海に沈む
- 1000万人が住むインドネシアの首都ジャカルタは2050年に完全に水没
- 数千万単位で気候難民が発生
- アメリカでは、31万1000戸が慢性的な浸水の危険に晒される
上記で挙げたのは、海面上昇によって起こりうる事態のほんの一部。
また、Climate Centralでは、海面上昇のシナリオが上昇温度別にみられるシミュレーションを出していますので、ぜひ見てみてください。
海面上昇によって起こる変化
気候難民の増加
気候変動に起因する自然災害などによって、故郷を追われる人のことを「気候難民」と呼びますが、海面上昇によって気候難民の数が大幅に増えることが予想されています。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、2010年以降に発生した気候難民の数は2150万人に上ると発表。
また、オーストラリアのシンクタンクは、2050年までに少なくとも12億人が居住地を追われる可能性がある(1)としています。
(1)ECOLOGICAL THREAT REGISTER 2020
健康への懸念とコミュニティの分断
世界経済フォーラムによれば、海面上昇によって、住民は住む場所を移すという物質的な変化を迫られるだけではなく、精神面を含む健康への懸念とコミュニティの分断というリスクにも直面するとのこと(2)。
その影響範囲は、メンタルヘルス、ソーシャルネットワーク、食料安全保障、給水、衛生状態、感染症、怪我、医療へのアクセスなど多岐に及ぶと言います。
(2)Here’s how rising sea levels could affect our health
農作物と飲料水
海面上昇によって懸念されるのは、農作物の生産量が減少すること、そして飲み水が減ることも含まれます。
農林水産省によれば、海面上昇により、農地が浸水することで、インドやバングラデシュでコメの生産量が著しく減少する可能性がある(3)と言います。
また、国土交通省によれば、海面上昇により、地下水と河口の塩水化地域が拡大し、飲料水を含む利用できる淡水が減ると予想(4)。
水不足に拍車がかかる可能性を指摘します。
(3)地球温暖化の進展による農業生産等への影響
(4)我が国の水利用の現状と気候変動リスクの認識
海面上昇に対する国家の対策とは?
現実味を帯びて迫ってくる海面上昇ですが、世界ではどのような対策が取られているのでしょうか?世界で講じられている5つの対策を紹介します。
首都移転を計画しているインドネシア
海面上昇によって沈む都市として挙げられるインドネシアのジャカルタですが、インドネシアは首都を移転する計画をしています。
首都の移転は、早ければ2021年より開始するとのこと。移転に伴う費用は、約330億ドル(約3兆6千億円)と試算されています。
シンガポール
シンガポールはほとんどの地域が海抜4メートル以下にあり、海面上昇によって、水没する危険があると指摘されています。
シンガポールでは、海面上昇対策として様々な対策を考案中。
ユニークな案の1つがマングローブが植えられているテトラポットの建設です。14ヶ月で成長したマングローブは複雑に絡み合うことで、土地の浸食を防ぐと同時に、地盤を強化するものとして期待されています。
ドイツ
ドイツのハンブルグには、過去氾濫で多くの犠牲者を出したエルベ川があります。
エルベ川沿いに作られたのは堤防の役割を果たすプロムナード(遊歩道)。
堤防としてのみならず、円形劇場をモチーフにしたエリア、自転車専用のレーン、さらには水辺のカフェやレストラン建つなど、街の活性化に役立っています。
マンハッタン
2012年10月のハリケーンにより、ニューヨークが大規模な浸水と停電が起こったことを受け、マンハッタン島南の海岸線を囲む形で、Uの字に保護する「Big U」を建設する計画が建てられています。
建設費用は5億1千万ドル(約553億円)とも言われていますが、「Big U」は堤防としてのみならず、ビジネスをはじめ、娯楽にも利用できる多目的スペースも備えるとのことです。
ヴェネチア
既に年に数日間は水没している水上都市ヴェネチア。
イタリア政府は2003年から、巨大な水門を建設する「モーゼ計画」を立てているのですが、汚職や経済危機の影響もあり、未だに完成はしておりません。
さいごに。個人でできる取り組みを紹介
当記事では、海面上昇の問題に関して、その現状と、未来のシミュレーションを見た上で、改善のためのアクションプランを見てきましたが、いかがでしたか。
問題が大きく、1人の力ではどうしようもできないと思いがちですが、1人ひとりの選択が未来を作るのは確かです。
- クリーンエネルギーを選ぶこと
- プラスチックフリー生活を送ること
- 植物由来の食事を増やす
- オーガニックプランツを選ぶ
- 環境負荷が少ない製品を選ぶ
上記で紹介したアクションを、少しずつ取り入れてみてください。
また、アクションを取るには、問題を知ることが何よりも重要。他の環境問題に関しては、こちらの記事でまとめておりますので、ぜひ読んでみてください。
【環境問題】人類が直面する地球環境の12の問題をお伝えします
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それでは、最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
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