地球温暖化対策推進法の改正案が成立!2050年のカーボンニュートラル実現へ
2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指す『地球温暖化対策推進法の改正案』が、2021年5月26日、参院本会議で可決しました。
2030年までに、温室効果ガスの排出量を現在より46%削減する目標は発表されていましたが、今回の改正案ではカーボンニュートラル実現に向かうことが明確になりました。
当記事では、地球温暖化対策推進法とは何で、今回の改正によって具体的に何が変わるのか、2050年にカーボンニュートラルを実現するためにはどのような取り組みが必要なのか、そして気温上昇の現状をご説明いたします。
地球温暖化対策推進法とは?
地球温暖化対策推進法(以下温対法)とは、私たち国民や、自治体、企業、そして国全体が取り組むべき気候変動対策を定めた法律。
1998年、温室効果ガスの排出量を削減することを目標に、温対法が施行されました。
そして、参院本会議にて『地球温暖化対策推進法の改正案』が可決します。
温対法の改正で何が変わる?
温対法の改正案には、「2050年までの脱炭素社会の実現」が明記されています。
そのため、今回の改正で、政府が2050年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロにすることを法的に決定したことがわかります。
改正を受け、2050年に脱炭素社会を実現するために、国、地域、企業、そして国民が一体となって取り組むことが必要に。改正された温対法は、2022年の4月から施行されます。
具体的に、温対法改正案の特徴は以下の3つ。
- パリ協定・2050年までのカーボンニュートラルの実現が法律に明記
- 地方自治体の脱炭素を促進
- 企業の脱炭素経営のためのデジタル化・オープンデータ化の推進
それぞれを見ていきましょう。
パリ協定・2050年までのカーボンニュートラルの実現が法律に明記
温対法の改正案では、基本理念の条文でカーボンニュートラルを2050年までに実現すると明記してあります。
また、政権が代わっても実現目標が引き継がれることを、国内外に約束をするもの。これは、短期的ではなく、継続的なESG投資に期待するからだと言えます。
このように、年単位で明確な期限を決め、脱炭素目標を法律に明記するのは国内で初の試み。世界的に見てもイギリスが行っているだけと、珍しい対応です。
地方自治体の脱炭素を促進
2つ目の特徴は、温対法の改正案によって、自治体へ再生可能エネルギーの導入目標を開示することを義務化する点です。
再エネの導入や目標を見える化するのは、脱炭素社会への取り組みに実行性を持たせたいから。また、自治体は再エネを促す「促進区域」を設置し、環境影響評価などのさまざまな手続きを進める予定です。
さらに、再エネ導入のため、自治体は地域住民や事業者向けに地域協議会を開催する予定で、住民への理解を図る努力も行われます。その過程で、安全で経済的利益も見込める再エネ発電所の設置地域を自治体が絞り込む予定です。
企業の脱炭素経営のためのデジタル化・オープンデータ化の推進
3つ目の特徴は、企業へ脱炭素経営を促すための取り組み。温対法の改正で、企業が脱炭素経営を実現できるよう、デジタル化・オープンデータ化の推進が進みます。
具体的には、企業の温室効果ガス排出量を、事業所ごとに開示し、ESG投資の判断指標とするものです。ESG投資が全世界の投資額全体の26.3%を占める(1)現状で、脱炭素を進めてESG投資を受けることを企業も期待をしているところ。
そこで、温室効果ガス排出量を減らす努力を『見える化』し、ESG投資を受けるゴールまで繋げるサイクルを明確にすることで、企業経営として脱炭素化を取り組みやすくなると考えられています。
上記3つの特徴のように、温対法の改正は脱炭素社会実現に向け、企業のESG投資を促し、気候変動対策に本気で取り組む日本の姿勢を世界に見せる狙いがあるのです。
(1)ESG投資とは?
2050年カーボンニュートラルに向けて
2050年にカーボンニュートラルの実現を目指し、菅政権は『2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略』を策定しています。
グリーン成長戦略とは、脱炭素社会への挑戦を環境と経済両方の好循環に繋げるために決められた産業政策です。
グリーン成長戦略とは?
グリーン成長戦略とは、経済産業省や環境省による企業の成長を支える産業政策のこと。
具体的に説明すると、グリーン成長戦略は進行する気候変動や温暖化に対応することが企業にとってリスクではなく、『成長の機会』であることを広めて企業を支える政策です。
グリーン成長戦略では、14の重要分野ごとに予算、税、規制改革・標準化、国際連携など、幅広い政策を取り入れた実行計画を策定します(2)。
(2)カーボンニュートラルに向けた産業政策“グリーン成長戦略”とは?
14の分野のそれぞれの取り組み
下記のように、経済面や環境問題を解決する点で、重要視される14の分野が選ばれています。
これら14の分野で、カーボンニュートラルに向けた取り組みや段取りも異なります。そのため、2050年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにするゴールまでの道のりを示す『工程表』をそれぞれに作成する対応が取られている現状です。
2040年までに気温1.5度上昇か。予想が10年早まるとIPCCが報告
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2021年から2040年の間に、産業革命前と比べた世界の気温上昇が「1.5度」になると発表しました。
2018年の報告書では、2052年までの間と発表されていましたが、今回の新たな報告書では10年早い予想に変更されています。
気温1.5度上昇の予想が10年早まり2021~40年に
気温上昇を抑えることは、地球温暖化による被害を低減させることに繋がります。温暖化対策の「パリ協定」では、気温上昇を2度未満が目標、そして1.5度以内が努力目標と決められていました。
パリ協定に基づいて、各国の首脳が二酸化炭素排出量の削減目標を宣言しましたが、9日、IPCCは世界の気温が1.5度上昇する見込みが10年早まったと発表。
2018年度の報告書では、2030年から52年の間に気温が1.5度上昇すると予想されていたため、地球温暖化が加速していると言えます。
IPCCとは、国連の気候変動に関する政府間パネルのこと。国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)によって設立された、気候変動を評価する機関です。
努力次第で変わる気温上昇5つのシナリオ
Photo by Claudio Testa on Unsplash
今回の報告書では、人間活動が温暖化へ影響していることは疑う余地がない、と断言されています。人間が産業を発展させ、資源を使い、CO2を排出するから、気温上昇が起こる。
逆に言えば、私たちの努力次第で気温上昇のシナリオは変えられるということです。
IPCCは、人類の努力次第で変えられるとして、気温上昇のシナリオを5つ提示しています。
- 化石燃料に依存し、最も温室効果ガスの排出が多いシナリオ
- 次に温室効果ガスの排出が多いシナリオ
- 温室効果ガスの排出量が中間的なシナリオ
- 温室効果ガスの排出量が少ないシナリオ
- 持続可能な開発にシフトし、温室効果ガスの排出量が非常に少ないシナリオ
上記のシナリオによると、2050年ごろに温室効果ガスの排出を実質ゼロとする「非常に低い排出シナリオ」でさえも、2081年から2100年の間に気温が1.4度上昇すると予想。
さらに、化石燃料に依存した活動を人類が続け、2050年に温室効果ガスの排出量が倍となる「非常に高い排出シナリオ」では、4.4度気温が上昇すると予想されています。
しかし、「非常に低い排出シナリオ」を実現できれば、気温上昇が1.5度を超えることがあるもしれませんが、今世紀末には1.5度未満に抑えられる可能性があるという希望も。
21世紀が終わるころに、気温上昇を抑えられているかどうかは、私たちにかかっているのです。
「極端な」自然災害を抑えるにはCO2排出量をゼロに
気温上昇を抑えることは、「極端な」自然災害が発生するリスクを低減させることにも繋がります。そのためには、CO2排出量を実質ゼロにすることが重要に。
IPCCの報告書によると、世界の平均気温が上昇するごとに、熱波などの極端な高温、極端な大雨、農業に被害を与える干ばつ、そして海面上昇の発生、進行リスクが高くなることがわかっています。
カナダで異常な熱波が発生し、気温が49.6度まで上昇したニュースが記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。熱波が影響し、突然死してしまうケースも数多く報告されており、気温上昇は人間にとって命の危機でもあります。
このような自然災害による被害を抑えるためにも、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする取り組みが不可欠となっているのです。
最後に。
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日本政府は、2030年までに現在の温室効果ガス排出量を46%削減することを表明していましたが、今回はさらに2050年までに排出量実質ゼロを目指すことが決定されました。
これまでも、気候変動に対して策を取る企業や団体はあったかと思いますが、今後は国と協力しながら脱炭素社会を目指せるでしょう。
また、日本は世界でも優れた技術力を持っている国なので、脱炭素社会に向けて技術力で世界を導くべきだという声もあります。
2050年まで、まだ時間的な余裕があるように思えるかもしれませんが、皆さんもできる範囲で温室効果ガスの排出量を減らす取り組みをしてみてはいかがでしょうか?
さらに、カーボンニュートラルについて気になった方は、下記の記事をご参照くださいませ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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