森林破壊|驚異的なスピードで進む森林伐採の原因と影響、私たちにできる対策とは?
2000年から2010年の10年間で、世界から年間平均約521万haの森林面積が消失しました。言い換えれば、1時間に東京ドーム127個分、1分間に東京ドーム2個分に相当する森林が減少しているということです(※1)。
※1
林野庁:国際的な取組の推進
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/22hakusho/pdf/h22hakusyo_3-3.pdf
大規模な森林破壊(森林伐採)は、途上国に多く見られますが、そのほとんどに先進国の産業が関わっています。過剰な木材利用だけではなく、畜産などの食生活とも深く絡み合っているのが森林破壊の問題です。
今回は、森林破壊の現状を世界と日本の規模に分けてご説明したあとに、森林が減少する原因と森林破壊が引き起こす影響、様々な団体や企業による対策までご紹介します。
最後には、これ以上の森林破壊を防ぐために、1人ひとりができるアクションについても触れているので、最後まで読んでみてください。
森林破壊(森林伐採)とは
森林破壊(英訳:Deforestation)とは、自然界での回復スピードを過度に上回るスピードで、森林伐採や消失が進み、森林面積が減少している現象のこと。
現在、世界の陸地の約3分の1を森林が占めていますが、その中でも特に森林破壊の現状が深刻なのは、東南アジアとアマゾン川流域です。
では、なぜ森林破壊は発生するのでしょうか。
森林破壊の原因
森林が破壊されている主な原因は、自然界における人間の活動です。その中でも、大きな影響を与えるとされている原因が下記の4つ。
- プランテーションによる開発
- 焼畑農業
- 木材の過剰伐採
- 森林火災
- 畜産による農地開拓
1つずつ紐解いていきます。
プランテーションによる開発
森林破壊の原因の1つは、パーム油のプランテーションによるもの。
需要が高く、市場に多く出回るパーム油を生産するために、大規模に森林が開拓されています。パーム油の原料であるアブラヤシの主な生産地は東南アジアです。
パーム油について、わかりやすく説明した記事はこちらです。
非伝統的な焼畑農業
先住民などが、古来より自然と結びついた方法で行う焼畑農業ではなく、国の政策などで移民した人々が行う非伝統的な焼畑農業は、森林破壊を進める1つの原因です。
木材の過剰伐採
大量消費・大量生産が主流の現代社会では、木材の需要が増加し、過剰に伐採される現状があります。
途上国で伐採された木材が、先進国に安く輸入されているため、途上国における森林破壊の現状が深刻化しています。
森林火災(地球温暖化)
地球温暖化により、空気が乾燥し、気温が上昇することで、森林が乾ききった状態になり、森林火災を引き起こしてしまいます。
アマゾン火災や、2020年の大規模なオーストラリア火災が代表的な例です。
畜産による農地開拓
畜産による農園開拓が進行することも、森林が破壊の要因です。
ファストフードをはじめとする食産業の拡大により、畜産の需要が上がり、農地を切り拓く需要も高まっています。
森林破壊による影響
ここまで森林破壊は何で、なぜ起こるのかをみてきました。
では、森林破壊はどのような影響を及ぼすのでしょうか。
森林破壊は生態系の破壊などの影響もありますが、実は、私たちの生活へ影響する可能性もあります。森林破壊の影響を1つずつ見ていきましょう。
個体数の減少
森林破壊で生息地が減少することによって、生き物の個体数が減少しています。その証拠に、絶滅危惧種が急速に増加している現状があります。
生態系の消失することで人間の暮らしへ影響
人間の暮らしのベースである生態系が消失することで、私たちの暮らしへ支障が出てしまいます。
例えば、ミツバチが消失すれば、リンゴ、アーモンド、キュウリなどの食べ物、コットンやコーヒーがなくなると言われており、それだけ生物多様性がもたらす恩恵は甚大です。
森林破壊によって生物多様性が消失すれば、これまで自然から受けていた恩恵が無くなってしまうのです。
気候変動の助長
二酸化炭素を吸収する森林が減少すると、空気中の二酸化炭素量が増加し、気候変動が助長されてしまいます。
新たな感染症のおそれ
森林が破壊されることで、生息地を失った野生種と、人や家畜が触れる機会が増え、さまざまな病原体を取り込むリスクも高くなります。
世界の森林破壊の現状
世界では、過剰な木材の供給や、畜産の拡大などにより森林破壊が急速なスピードで進んでいます。
世界の天然林は、2015年以降、毎年10万平方キロメートルもの規模で消失。この値は、1週間で東京都の総面積に相当する森林が無くなっているということに相当します。
また、森林破壊の80%以上は、熱帯雨林で起こっているとされ、WWF(世界自然保護基金)は、2010年から2030年までには以下の地域で森林破壊がさらに深刻化すると予想。
- メコン川流域
- ボルネオ
- ニューギニア
- スマトラ
- 東オーストラリア
- 東アフリカ
- コンゴ盆地
- アマゾン
予想されている地域の中でも、特に被害が目立つのが東南アジアとアマゾン川流域です。これら2つの地域に着目し、ひとつずつご説明します。
東南アジアの現状
まず、東南アジアにおける熱帯雨林消失の現状をお話しします。
過去半世紀で、インドネシア、マレーシア、ブルネイの3か国がまたがるボルネオ島では、50%もの森林が消失。地球上の生物種の5%以上が生息するボルネオ島で、野生種の生息地が奪われてしまいました。
ボルネオ島でしか見ることができない固有種も多く存在するため、早急な保全が求められています。
アマゾンの現状
現状として、アマゾンの総面積の15%がすでに減少。
ブラジル国立宇宙研究所の報告によると、1988年に観測が始まって以降、日本の国土面積に相当する森林がアマゾンから消失しています。
また、2020年はアマゾン全域で、急速な乾燥化が進んだことで、史上最悪のペースで森林破壊が発生。
2019年から2020年までの1年間で、秋田県に匹敵する面積の森林が失われています。この数値は、1日当たり東京ドーム約650個分の森が消えたことに匹敵します。
このように、世界各地で深刻化している森林破壊。では、豊かな自然があると言われる日本の状況はどうなっているのでしょうか?
日本の森林破壊の現状
割り箸やコピー用紙など、木材由来の製品が身の回りに溢れているために、日本も木材を過剰に伐採しているイメージがあるかもしれません。
しかし、国内産の木材の値段は高いことから、海外産木材に依存しているのが現状です。こちらでは、日本の森林破壊の現状を説明します。
日本の森林面積はほぼ増減なし
国土の67%を森林が占める日本。自然豊かであることが魅力の1つであるこの国では、過去40年間、森林面積の増減はほぼなく、横ばいが続いています。
その代わり、近年の日本で増加しているのは森林蓄積。つまり、日本は使うべき木材が増えてきている状況だと言えます。
森林蓄積が増加している理由は、日本が木材輸入に依存しているためです。
日本は海外からの木材輸入に頼っている
国内では、国産の木材を使用することは滅多にありません。それは、国内産の木材は価格が高く、海外産は安いから、という理由があるからです。
現状、日本は国で森林を伐採された木材ではなく、輸入した木材を使用しています。
そのため、日本だけを見ると森林破壊の進行はありませんが、国内の消費は、途上国などの森林破壊に関係しているのです。
森林破壊を止める国際社会の対策
国際社会では、これ以上の森林破壊を防ぐために、様々な取り組みが行われています。こちらでは、SDGs(持続可能な開発目標)をはじめとし、国際社会で共通目標として取り決められているものを紹介します。
SDGsゴール15「陸の豊かさを守ろう」
SDGs(持続可能な開発目標)のゴール15では、「陸の豊かさを守ろう」という目標が掲げられています。
ゴール15の目的は、森林管理を持続可能なものにし、無計画に開拓され劣化した土地を回復、そして砂漠化を食い止めるというものです。
2030年までにSDGsのゴール15を達成することで、陸の環境を保護し、人間の生活のベースにある生態系を守ることが求められています。
持続可能なパーム油のための円卓会議
持続可能なパーム油のための円卓会議(通称:RSOP)は、パーム油の製造や販売に関わる機関が集まった組織です。
森林破壊の1つの理由となっている、パーム油の原料であるアブラヤシの実を持続可能な形で栽培すること、持続可能なパーム油を市場の基準とすることを目標としています。
森林破壊を食い止めるために、対策を行うのは国際社会の団体だけでなく、さまざまな企業やサービスも、森林保護に貢献できるものが増えています。
森林認証制度FSC®
FSC認証は、認証マークの1つで、持続可能な森林の利用と保護を図ろうとする制度です。
FSCの森林管理の審査基準である「10の原則と70の基準」に基づき、適正に管理された森林からの木材を使用していることを証明するため、信頼度が高い認証だと言えるでしょう。
日常の製品にもラベルがついている商品が多くあるので、ぜひ確認してみてください。
森林破壊を防ぐ企業の取り組み
森林破壊を防ぐために、政府や国際団体だけでなく、企業も協力をし始めています。画期的なアイディアを活用して、環境保護のために動いている企業をいくつかご紹介します。
TreeCard
世界初の木製デビットカードであるTreeCard(ツリーカード)。ネット検索をするだけで、植林活動に貢献できるエコな検索エンジン、ECOSIA(エコシア)が支援しているカードです。
TreeCardを通してお支払いをすると、カード会社の利益の80%相当が植林に寄付される仕組みになっており、利用することが森林保護に繋がります。自分の支払いがどの植樹に貢献したのかをアプリで追跡できることもTreeCardの特徴です。
植樹という貢献を、気軽に日常でできる形にしたサービスであるTreeCardは2021年からの普及を目指しています。
スターバックス
大手コーヒーチェーンのスターバックスは、アメリカのNGO団体CI(Conservation International)と協力し、コーヒー豆の生産地の森林を守るプロジェクトを行っています。
具体的には、コーヒー豆生産地の人々が、生活のために無計画に森林を開拓している現状を改善する取り組みです。CI(Conservation International)の職員が、現地を訪れ、適切なコーヒー豆の栽培を教える活動を、スターバックスは支援するという形を取っています。
コーヒーを商材として扱う企業ならではの森林保護活動です。
IKEA
比較的安価な値段で家具を提供する企業、IKEAは森林を保護するさまざまな活動を行っています。
例えば、IKEAが使用する木材は、50%以上がFSC®認証マークがついたもの。また、中国の森林管理者への教育や、マレーシアの熱帯雨林の復元を支援しています。
ここまでご紹介したような、環境を配慮した企業から消費をすることも、私たちができることのひとつですが、他にも気軽にできる貢献はあります。
森林破壊を防ぐために私たちにできること
森林破壊を防ぐために私たち1人ひとりができるアクションがあります。
最後に3つのアクションを紹介します。
FSC®認証マークがついた製品を消費する
森を守るマーク、FSC®認証がついている商品を積極的に選ぶようにすることが、私たちにできるアクションのひとつです。例えば、FSC®認証マークは、コピー用紙や紙コップなど、木材由来の商品についています。
地球温暖化を改善させるライフスタイルに移行する
地球温暖化を防ぎ、気候変動を改善する取り組みも、森林火災のリスクを低下させることにつながります。そのため、地球温暖化の対策になるような、エコなライフスタイルを導入することも、1つの方法です。
エコの意味は?環境のために私たちができる12の取り組みを紹介
例えば、自家用車ではなく公共交通機関を使ったり、必要ではないものは消費しないようにしたりすることが挙げられます。
植林を行う
植林プロジェクトなどに、実際に参加することも森林破壊への取り組みです。
しかし、日本国内では、森林の面積が増加傾向にあるため、海外での植樹活動へ寄付をして間接的に植林に協力するなどという方法をおすすめします。
さいごに。森林を守ることは、人を守ること
当記事では、森林破壊の現状や原因、進行することによる影響などをご説明しましたが、いかがだったでしょうか?
森林破壊は環境や地球を傷つけるだけではなく、人間の生活へも影響を及ぼす可能性があることへの気づくきっかけになっていれば嬉しいです。
森林の存続を気にかけ、保護することは、人を守ることでもあります。少しずつ、森林や環境に優しいエコな生活を始めてみてはいかがでしょうか?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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