デジタルデトックス効果も?エシカルトラベルの魅力を紹介
エシカルトラベルというのは旅行に対する新しい概念で、エシカル(倫理的・道徳的)とトラベル(旅行)を掛け合わせた言葉です。
2015年9月に国連SDGs(持続可能な開発目標)が採択され、環境問題やフェアトレード、歴史・文化など様々な社会問題を解決する事業が増えています。エシカルトラベルは旅行を通じて社会問題を解決する目的のもと生まれました。
今回は沖縄観光コンベンションビューロー(以下、OCVB)とソラシドエアが企画したエシカルトラベルツアーに参加し、エシカルトラベルの魅力をお伝えします。
エシカルトラベルツアーの魅力は環境や社会に良い影響を与えるだけではなく、デジタルデトックスにもなることです。
エシカルトラベルとは
エシカルとは「倫理的・道徳的」を意味しており、エシカルトラベルは旅行でエシカルを意識しようという取り組みです。エシカルトラベルという言葉は、2021年に沖縄県・OCVBにて、持続可能な観光地の形成に向けたプロモーションの一環として生まれた言葉です。
観光を通じて、経済的効果を得るだけではなく、住民が住みやすいこと、環境にも良いことを目指しています。
引用:おきなわ物語(沖縄観光情報WEBサイト)エシカルトラベルオキナワ 事業者のみなさまへ
エシカルトラベルの背景には、オーバーツーリズム*の問題があります。オーバーツーリズムとは、観光によって生じる地域住民や環境への悪影響を懸念する考えです。以下にオーバーツーリズムに関する観光庁の見解を抜粋したものを記載します。
国内外の観光需要は急速に回復し多くの観光地が賑わいを取り戻している一方、観光客が集中する一部の地域や時間帯等によっては、過度の混雑やマナー違反による地域住民の生活への影響や、旅行者の満足度低下への懸念が生じています。
オーバーツーリズムの対策には、①観光客の集中による過度の混雑やマナー違反への対応、②地方部への誘客の推進、③地域住民と協働した観光振興が掲げられております。
エシカルトラベルは堅苦しいものなのでしょうか?Ethical Choiceの編集部員が実際にツアーに参加してみました。
デジタルデトックスを体験したエシカルトラベルツアー3選
今回、編集部が参加したソラシドエアとOCVBのエシカルトラベルツアーは沖縄県の観光客増加で生じる問題を防ごうというものです。
実際にツアーに参加して感じたことは「エシカルトラベルは堅苦しいものではない」ということです。さらに、今回参加したエシカルトラベルツアーは、日常から離れ自然を感じることでデジタルデトックス*を感じました。
そのため、エシカルはハードルが高いけれど、デジタルデトックスを感じたいという方に向けて、今回は特にデジタルデトックスを感じたツアーを3つ紹介します。
デジタルデトックスとは、一定期間スマートフォンやパソコンなどのデジタルデバイスとの距離を置くことでストレスを軽減し、現実世界でのコミュニケーションや、自然とのつながりにフォーカスする取り組みです。
漆黒の森で星空を眺める星空ツアー(解決課題:動植物保護)
国頭村森林公園が実施する「漆黒の森で星空を眺める星空ツアー」は、その名の通り星空を見るツアーです。国頭村森林公園はやんばる国立公園に指定される「やんばるの森」の入り口にあります。やんばるの森には絶滅危惧ⅠA類*に分類されているヤンバルクイナなど、多種多様の動物が生息しています。
環境省では、種毎に絶滅のおそれの程度に応じて、希少な野生動物ごとにカテゴリー分けをして評価しています。
絶滅危惧ⅠA類は、9段階のうち6番目に値し、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いものと言われています。
▲星空ツアーの様子
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解決課題
・動植物保護
・星空保護 -
具体的な取り組み
・動物保全のために屋外照明を設置せず、動物のストレスを最小限に抑える
・星空の保全 -
おすすめポイント
・自然に身を置くことができる
国頭村森林公園は国際ダークスカイ協会(IDA)が認定する「星空保護区」を目指しています。星空保護区の認定には、屋外照明に関する厳格な基準や、地域における光害に関する教育啓発活動などが求められます。
屋外照明に関する厳格な基準には、屋外照明を下方向のみに光が出るタイプに置き換えることが求められています*が、国頭村森林公園は屋外照明そのものを設置していません。
屋外照明を設置しない理由は、やんばるの動物を守るためです。動物のストレスを減らすように、ありのままの森林を保つようにしています。
参考:International Dark Sky Places 星空保護区とは
編集部がツアーに参加した時は、雲一つない満天の星空でした。星空の下に設置されているリクライニングチェアに横たわり、ヤンバルクイナの鳴き声を聞きながら圧巻の星空を眺められるのは、自然そのものを感じる贅沢な時間です。
雨が降った日は、森の探索ツアーに変更されます。自然の中でデジタルデトックスを感じたい方におすすめのエシカルトラベルツアーです。
ツアー名:漆黒の森で星空を眺める星空ツアー
運営会社:国頭村森林公園
価格:大人5,500円~/子ども3,300円~/未就学児無料
所要時間:75分ほど
公式サイト:https://www.kunigami-forest-park.org/stella/
海洋プラスチックアート体験(解決課題:海洋問題)
TRUE BLUE OKINAWAが運営する海洋プラスチックアート体験は、海で採取されたプラスチックごみをアートとしてアップサイクルする取り組みです。アップサイクルとは、元の製品の素材を活かして別の新しい製品にアップグレードして生まれ変わらせることで、リサイクルの原料や材料として再利用することとは若干異なります。
実は、沖縄は海のごみが多い地域と言われています。プラスチックごみは分解されにくく、ビニール袋で1~20年、モノフィラメントの釣り糸で600年という見解もあります。分解されないプラスチックごみは、海洋生物の生態を脅かします。
上記の写真は海洋プラスチックごみが生態系に悪影響を与えた例です。左の写真は、クジラの胃から100キロものごみの塊が見つかったもので、クジラの死因は餓死です。右の写真は、漁網にからまり溺死したアオウミガメです。
海洋プラスチックごみの原因は、海にごみを捨てることだけが原因ではありません。街中で落としたごみが風に吹かれたり、川に流されたりして海にたどり着くケースもあります。
引用:ナショナル ジオグラフィック日本版
クジラの胃に100kgのごみ、なぜプラごみ食べる?
ウミガメの危機:混獲による溺死
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解決課題
・海洋プラスチックごみ -
具体的な取り組み
・プラスチックごみを集めて粉砕しアートにする -
おすすめのポイント
・きれいな海のそばで自然を感じられる
・ものを作ることに集中でき日常を忘れられる
・ごみに対する視点が変わる
沖縄県本島にある古宇利島の美しい海の側で、アクセサリー作りが体験できます。実際に体験すると、夢中になるほど楽しく、アクセサリーはプラスチックごみとは思えないほど綺麗なものになりました。作成したアクセサリーは持ち帰ることができるので、アクセサリーを見るたびに沖縄の綺麗な海を守りたいという気持ちになっています。
TRUE BLUEでは、PEACE BOATと協力して世界中のごみを集めていたり、観光客の方が、海で拾った海洋プラスチックを持ってきてくれたりするそうです。
ツアー名:海洋プラスチックアート体験
運営会社:TRUE BLUE OKINAWA
価格:4,000円(アクセサリー作り リングの場合)
公式サイト:https://wds.world/trueblue
コーヒー豆収穫体験(解決課題:フェアトレード)
「国産コーヒーは希少」と言われるほど、日本はコーヒー豆の輸入に頼っています。しかし、コーヒー豆の生産国は開発途上国が多く、フェアトレード認証製品市場で大きな割合を占めているのが現状です*。
又吉コーヒー(園)では、農薬を使わない農業をめざして、たどり着いたのがコーヒー栽培でした。現在、ネスレ日本株式会社と協働でコーヒーを栽培しつつ、収穫体験を通してコーヒー1杯に込められた生産者の想いを届けています。コーヒー豆の自給率向上の目的で栽培を行っていないことと、ネスレは沖縄の耕作放棄地の課題解決のためにコーヒー栽培に取組んでいます。
参考:フェアトレードジャパン認証事業者一覧
フェアトレードとは直訳すると「公平・公正な貿易」。つまり、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」をいいます。
引用:フェアトレードジャパンフェアトレードミニ講座
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問題
・安価なコーヒーはフェアトレードの対象になっている可能性がある
・日本はコーヒー豆の生産自給率が低い -
解決方法
・コーヒー豆の生産方法を体験しフェアトレードの重要性を学ぶ
・沖縄でコーヒーを栽培する -
おすすめのポイント
・コーヒー農園で自然を感じられる
・コーヒーを作ることに集中し日常を忘れられる
・身近なコーヒーに対する視点が変わる
コーヒー豆収穫体験は所要時間が約150分ですが、生豆として出荷されるまでの工程で、8割以上の労力を使った印象がありました。生産者はコーヒーの果実ではなく、生豆の状態にしてから出荷をするため、出荷までに多大な労力が掛かります。
一方で、2022年の統計データによると、日本のコーヒー生豆の1kgの輸入単価は、輸入量が最も多いブラジルが510円、2位のベトナムは280円、3位のコロンビアは835円*です。労力に対して、決して高級品とは言えない取引金額です。
もう少し分かりやすい例では、缶コーヒーが約100円に対して、又吉コーヒーは1杯3,000円もします。
高いコーヒーを買うべきとまでは言いませんが、コーヒーが飲めるまでの工程を知るだけでもフェアトレードの意識は高まります。
参考:全日本コーヒー協会日本のコーヒー生豆の国別輸入量・単価
ツアー名:コーヒー豆収穫体験
運営会社:又吉コーヒー
価格:8,800円(税込)
所要時間:150分
期間:11月~4月ごろまで
公式サイト:https://www.matayoshicoffee.jp/
さいごに。エシカルトラベルで人にも地球・社会にも良い旅行を
エシカルトラベルとは、旅行するときにエシカルを取り入れるという取り組みです。
リラックスしたい旅行において、エシカルを取り入れるのは気が引けるかもしれません。しかし、実際にエシカルトラベルツアーに参加してみたら、自然豊かな中で非日常を感じることができ、とてもデジタルデトックスになりました。
今回紹介したエシカルトラベルツアーは自然に触れあうものばかりでしたが、エシカルトラベルには歴史・文化を考えるものもあります。
OCVBとソラシドエアの共同企画のエシカルトラベルツアーでは、紅型(びんがた)体験で伝統文化を体験したり、郷土料理を味わったりする企画もありました。
自分たちも楽しみつつ、地球や社会にも良いことができるのがエシカルトラベルの魅力です。旅行を計画するときに、運営団体がどういった思いで事業をしているのかを調べてみてはいかがでしょうか。
編集部が参加した、OCVBとソラシドエアの共同企画のエシカルトラベルツアーについて知りたい方は、以下の公式サイトをご覧ください。
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