ポケトーク:『言葉の壁をなくす』未来のコミュニケーション
2024.07.19

ポケトーク:『言葉の壁をなくす』未来のコミュニケーション


言語の壁は、長い間人類が直面してきた課題だった。

しかし、AI通訳機「ポケトーク」の登場によってその壁は揺らぎ始めている。

「ポケトーク」は、AI技術を活用し、精度の高い音声認識と多言語翻訳を組み合わせることで、リアルタイムで様々な言語間の通訳を可能にする製品だ。

会議や旅行、さらには動画視聴にも対応し、言葉の違いを気にすることなく自由にコミュニケーションが取れるようになりつつある。

しかし、ポケトーク株式会社の目指すところはそれだけに止まらない。

AIの進化に伴い、翻訳精度はさらに向上し、やがては言語間の完全な融合を実現するかもしれない。

人類が長年の夢見てきた「言語の自由」は、一体どのようなものなのか?

最新の翻訳技術とポケトーク株式会社の挑戦を通じて、その未来像に迫る。

若山 幹晴
インタビュイー
若山 幹晴氏
ポケトーク株式会社
代表取締役社長 兼 COO


「言葉の壁をなくす」というミッションのもと、プロダクトを展開


ポケトーク株式会社 取材用写真
―――まずは、ポケトーク株式会社の会社概要や展開しているサービス、提供しているソリューションを教えてください。

ポケトーク株式会社(以下、ポケトーク社)は、2022年に分社化という形で誕生しました。
それ以前は、ソースネクスト社の製品としてAI通訳機「ポケトーク」が2017年から販売されていたのです。

分社化の目的は、「ポケトーク」というプロダクトをさらに進化させ、世界へ広げていくことでした。

現在、ポケトーク社のサービスは、日本国内だけでなく、米国やヨーロッパにも展開しています。製品もAI通訳機だけでなく、スマートフォン向けアプリやパソコン用ソフトウェアを始め、様々な製品を提供しています。

全ての製品は同じ基盤技術を使用していますが、言語の壁に直面するさまざまなシーンに合わせて、最適なサービスを提供できるようになりました。

特に、この1〜2年で、リモート会議などでも使用できるライブ通訳(同時通訳)サービスの提供を開始しました。
国際イベントなどで活用されるカンファレンス翻訳サービスでは、発表者の言語に関係なく、参加者がそれぞれの母語で通訳を受けられます。

さらに、動画の字幕翻訳サービスも提供し、「言葉の壁をなくす」というミッションのもと、さまざまな言語の障壁に対応した最適なプロダクトを展開し続けています。

―――ポケトーク社の技術的な独自性はどこにありますか?またどのような特徴が強みとなり、現在の「ポケトーク」の優位性を確立できたのでしょうか?


引用:POCKETALK公式チャンネル「POCKETALK(ポケトーク) S 製品紹介ムービー」

AI通訳機「ポケトーク」の強みは、大きく分類して、3つあると思っています。

1つ目は、翻訳・通訳の精度の高さです。

世界にはさまざまな翻訳技術がありますが、実は言語ごとに得意不得意があるのです。
例えば、Googleの翻訳エンジンは一般的に優れていますが、アジア言語は得意ではありません。
そのような得意でない言語の場合、いわゆるブリッジ翻訳と呼ばれる手法が採用されることがあります。これは、日本語を一度英語に翻訳し、その後英語から目的の言語(例えば中国語)に翻訳するという2段階の翻訳を行うものです。

しかし、ブリッジ翻訳を経ると、段階を経るごとに精度が下がってしまう恐れがあるため、日本語と中国語に得意な翻訳エンジンを直接使った方が、精度は高くなります。

「ポケトーク」は、世界中のあらゆる翻訳エンジンから、言語ごとに最適なものを採用しているのが特徴です。
弊社では、現在74言語に対応しており、言語の組み合わせすべてに対して最適な翻訳エンジンを使用することで、高い翻訳精度を実現しています。

そして、翻訳・通訳には、音声認識、翻訳、音声合成の3ステップをそれぞれ最適化し、特許技術も活用することでさらに翻訳精度を高めるのです。

例えば、日本語から英語への翻訳の場合、まず音声認識エンジンで日本語の音声を文字に起こします。次に翻訳エンジンでその日本語の文字を英語に翻訳し、最後に、英語の文字を音声合成エンジンで音声出力し、英語を聞く側に届けます。

ポケトーク株式会社 取材用写真
2つ目は、使いやすさです。

近年、生成AIが大きな話題となっていますが、AIそのものは以前から存在していました。
しかし、生成AIが今ほど注目を集めるようになった理由は、一般のユーザーでも生成AIを簡単に使えるようになったことにあると感じています。
GPTなどの多言語対応AIモデルがチャット形式で利用できるようになり、AIが一般に普及しました。

ポケトーク社もまさにこの「一般の方々が気軽に使える」という方向性を目指しています。音声認識、翻訳、音声合成という基盤技術は既に存在していますが、重要なのはそれらをいかに使いやすい製品として提供できるかという点です。

ポケトーク社では、ITリテラシーの有無に関わらず、誰もが簡単に利用できるようなユーザーフレンドリーな製品作りを心がけています。

使いやすいUI/UXデザインにより、初心者からプロまであらゆるユーザーが手軽に操作できることが、「ポケトーク」の大きな優位性になっています。

最後に3つ目が、セキュリティと機密性の確保です。

企業においては情報の機密性が非常に重要視されますので、弊社ではアメリカの医療個人情報保護法であるHIPAA法や ヨーロッパの有名なGDPR、ISO認証など、各国の法規制を順守し、強固なセキュリティ対策を施しているのが強みとなっています。

この3つの強みを組み合わせた製品は世界的に見ても希少なので、弊社のサービスが世界中で広がっていく要因になっていると考えています。

言語の壁を解消することで、心のハードルを下げる


ポケトーク株式会社 取材用写真
―――iPhone、Google翻訳など、翻訳技術が着実に進化を遂げている中で、ポケトーク社が独自の価値を確立していることは素晴らしいことだと感じています。さらなる挑戦の中で、どのような点に重点を置き、どのような課題に取り組んでいくのか、お聞かせいただけますか?

ポケトーク社が挑戦していきたい点としては、二つの大きな課題があります。

一つ目の課題は、ポケトーク社のサービスをさらに日常生活や企業活動のあらゆる場面で活用できるようにすることです。

弊社では、IoTデバイスやウェアラブル機器が普及する中で、それらの端末でも翻訳サービスが提供できるよう進化させていく必要があると感じています。
あらゆるシーンで言語の壁を取り除けるよう、サービスのラインナップを広げていきたいです。

もう一つの課題は、翻訳データの活用により、企業活動をサポートすることです。
例えば、訪日外国人観光客のどの言語が多く使われているか、質問の内容は何かといったデータを分析することで、マーケティングや商品開発、接客サービスの改善に役立てられます。
翻訳データから得られる洞察は、企業の売上げや収益向上に大きく寄与できる可能性があるんです。そうしたデータを国や自治体にフィードバックすることも出来ると考えています。

中長期的なビジョンとしては、言語データを活用したビジネス分野が今後大きく広がっていくと感じています。

―――国や自治体、また観光地などで「ポケトーク」が導入されている事例が多いと思います。実際に現場で「ポケトーク」を活用している人々の声を聞くと、外国人観光客が多い観光地や施設において、言語に堪能なスタッフが不足しているという課題感から、「ポケトーク」が導入されているケースが多いのでしょうか?

観光地では特に多用されているようです。

コロナ禍により、元々外国語に堪能な多くのスタッフが自国に帰国してしまう状況が生じました。その上、インバウンド需要の高まりによりスタッフが手薄になる状況も見られたんです。

そうした中、「ポケトーク」の導入により、外国語が話せなくとも安心感があり、スタッフの心のハードルが低くなったことで、外国人客へ積極的に対応できるようになりました。
その結果、売上げが大幅に伸びる例も多く、「ポケトーク」導入コストをすぐに回収できたようです。

昨今では、インバウンド需要への対応だけでなく、国内の労働人口減少を見据え、優秀な外国人材を社員として受け入れる「企業の多国籍化」を図る動きが加速しています。

言語の壁を「ポケトーク」などで解消することで、外国人社員のパフォーマンス向上や活用を円滑化できるという期待が企業からも高まっています。

観光地だけでなく、エンジニアなど専門分野での外国人材の活用が進む中、言語の壁を「ポケトーク」のような通訳ツールで解消する動きも出てきているんです。

例えば、エンジニアなど外国人社員を積極的に採用する企業では、ライブ通訳サービスを導入したり、日本人社員が「ポケトーク」を持参して海外出張先で現地スタッフと直接コミュニケーションを取れるようにしたりしています。

また、コロナ禍が落ち着きを取り戻し、海外出張が再開されるにつれ、日本人社員が「ポケトーク」を活用して、現地での会議や打ち合わせで円滑なコミュニケーションを図る事例も増えてきました。

「ポケトーク」は外国人社員が日本で働く場合だけでなく、日本人社員が海外で業務を行う際にも言語の障壁を取り除き、スムーズなコミュニケーションを実現する有効なツールとなっています。

不要な語学学習の時間をより創造的で生産的な活動の時間に


ポケ
―――翻訳技術が発達している昨今、ポケトーク社が目指している、5年後や10年後の将来的な展望をお聞かせください。

「ポケトーク」の将来的なビジョンは、何か革新的な新機能の追加よりも、基本である翻訳精度の向上と利便性の追求に注力することにあります。

外国語が苦手な方が、外国の会議でジョークを言われても理解できず置いていかれてしまったり、通訳があってもワンテンポ遅れてしまい笑えなかったりする経験は多いでしょう。
しかし、「ポケトーク」のさらなる進化により、そうした言語の壁や心理的なハードルがどんどん低くなっていけば、5年後、10年後にはタイムラグもほとんどなく、母語同士でも本当にリアルな会話やジョークが言い合えるようになるかもしれません。

言語の壁が解消されれば、語学学習の必要性が薄れ、その時間を趣味や好きなことに費やせるようになるでしょう。

語学学習自体は決して悪いことではありませんが、それが昇進や業務上においてマストの要件とされることは防ぎたいと感じています。

語学習得は一部の仕事で必要不可欠ですが、そうでない場面で語学力が過度に求められたり、昇進や入試の条件とされたりすることには疑問を感じているんです。

本来の能力やポテンシャルを発揮する上で、不要な語学習得が妨げとなるのは望ましくありません。
ポケトーク社の使命は、そうした不当な語学習得の要求をなくし、人々が本来のスキルを最大限に活かせる環境を作ることにあります。

今後も基本に立ち返り、翻訳の質と使いやすさを高めていくことで、将来的には言語の壁そのものがなくなり、母語でリアルなコミュニケーションができる世界を実現したいという願望があります。

言語の壁がなくなれば、人々はコミュニケーションを阻害されることなく、より創造的で生産的な活動に時間を使えるようになると信じています。

―――このインタビューをご覧になって、読者の方も「ポケトーク」を使ってみたいと感じていると思います。御社が提供している製品のそれぞれの特徴を教えてください。

ポケトーク株式会社 取材用写真 引用:POCKETALK公式サイト

「ポケトーク」は専用の端末を採用したAI通訳機です。
操作性が簡単で、ノイズキャンセリング機能を搭載しているため、騒音下でも音声をきちんと認識できます。
また、大音量出力に対応しているので、通訳内容が相手に聞こえやすくなっています。

一方で「ポケトーク アプリ」は、スマホでの利用が可能です。
専用端末を持ち歩く必要がないため、2台持ちを避けられます。また、企業から社用スマホを支給されている場合はそちらにインストールして利用できます。

ライブ通訳サービスは、同時通訳モードで話し手の発言に追随した即時翻訳が行え、会議や動画視聴での利用に適しており、双方向の自動言語認識と翻訳が可能です。

カンファレンス翻訳サービスは、国際イベントの同時通訳をAIで簡易化したサービスです。参加者はQRコードさえ読み取れば、言語設定は不要で参加できます。

「ポケトーク」や「ポケトーク アプリ」はプライベート利用、ライブ通訳、カンファレンス翻訳はビジネスシーンでの利用に分かれており、用途に合わせて使い分けられるラインナップを展開しています。

―――ポケトーク社が展開するサービスを実際に導入された企業の反響で、印象的なエピソードはありましたか?

「ポケトーク」に寄せられるお客様の声は、大きく二つのパターンに分かれています。

一つ目は、これまで予算の関係などで人間による同時通訳や翻訳サービスを利用できなかった方々からの声です。
そういった方々にとって、「ポケトーク」シリーズは安価に多言語のニーズに応えてくれる画期的なサービスとなりました。「このようなことができるんだと分かった」「ポケトークがあったから新しい機会に恵まれた」など、感動の声が数多く寄せられています。

二つ目は、これまで人間の同時通訳者をアサインするなどコストをかけてきた人々からの声です。

「ポケトーク」シリーズの導入により、準備の手間やコストが大幅に削減できたことに対する感謝の言葉が多数よせられています。
さらに、人間には難しい文字起こしまでできるため、会議録作成などの付加価値も得られると高い評価を受けています。

このように、従来のサービスが手に入らなかった人々には新しい可能性を開き、一方で従来のサービス利用者には大きなコストカットとプラスアルファを提供している、という双方向からの高い満足度を実感しています。

加えて、ポケトーク社には通訳者の方からも助けられているという声が寄せられているんです。

同時通訳は非常に高い集中力と頭脳労働が求められる作業です。「ポケトーク」はそうした同時通訳の支援ツールとしても活用されており、通訳者の負担を和らげる役割を果たしています。

また、カンファレンスなどのイベントでは、本来ゲストに呼びたかった第一人者の海外の講師を招聘できずに国内の講師に落ち着かざるを得ないケースが多かったそうです。
通訳や翻訳のコストがネックになっていたことが原因でした。

しかし「ポケトーク」を活用することで、そうした機会損失をなくすことができるようになったそうです。本当に招聘したかった海外の一流講師を呼べるようになり、機会の幅が大きく広がったというお声をいただいています。

「ポケトーク」は通訳者への支援ツールとしての役割を果たすだけでなく、イベントの質を大きく向上させる効果をもたらしているとも実感しています。

言語の壁を越えた、自由で新しい可能性を切り開く存在


ポケトーク株式会社 取材イメージ画像
―――最後に、読者の皆様にメッセージをお願いします。

まずは「ポケトーク」を手にとり、言語の壁がなくなることで新たに開かれる機会を実感していただきたいです。
海外のニュースや大学の授業を視聴したり、海外の友人を作ったりと、これまでは言語の壁があってできなかったことにチャレンジできるようになると思います。

「ポケトーク」に一度触れることで、「こんな使い方もできるんだ」と気付き、想像もしていなかった可能性が見えてくるかもしれません。今抱えている課題の解決策を見つけるだけでなく、新たな挑戦のきっかけにもなり得るのです。

「ポケトーク」は単なる翻訳ツールではなく、言語の壁を越えた、自由で新しい可能性を切り開く存在なのだと実感していただきたい、そうした思いを込めてサービスを展開しています。

「ポケトーク」は専用端末のイメージが強いかもしれませんが、実はさまざまなサービスが広がっています。一度ポケトーク社が提供するサービスに触れ、新たな可能性を発見していただければ幸いです。

新井那知
ライター
So-gúd編集部
新井 那知
埼玉県・熊谷市出身。渋谷の某ITベンチャーに就職後、2016年にフリーランスライターとして独立。独立後は、アパレル、音楽媒体、求人媒体、専門誌での取材やコラム作成を担当する。海外で実績を積むために訪れたニューヨークで、なぜかカレー屋を開店することに—-帰国後は、クライアントワークを通してライターとして日々取材や編集、執筆を担当する。料理と犬、最近目覚めたカポエイラが好き(足技の特訓中)。
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