Nota株式会社が手掛ける「Helpfeel」は快感の追求から生まれた!? CS業界全体に変革をもたらすFAQツールの秘密
「『よくある質問』を見ても明確な回答が見つからなくて、イライラした…」
「カスタマーセンターへ電話したけれど、電話がつながらない…」
誰もが、このような歯痒い経験をしたことがあるのではないだろうか?
「よくある質問」を見ても知りたい内容が記載されていなかったり、電話がつながっても待機させられる時間が長かったりーーーー緊急度が高ければ高いほど、“待つ”ことが大きなストレスになる。
しかしそんな“問い合わせ問題”をまるっと解決するのが、「Nota株式会社(英文表記 Nota, Inc.)」が提供する「Helpfeel(ヘルプフィール)」だ。
Helpfeelは一言で説明するとユーザーの質問に回答する「FAQシステム」だ。しかし、ただのFAQシステムではない。実用性はもちろん、どこか“人間味”を感じる設計となっているーーーー
今回はそんなHelpfeelを開発・提供しているNota株式会社の代表取締役CEOである洛西一周(らくさい いっしゅう)氏を取材。12歳からプログラミングをはじめた洛西氏は、Helpfeelをはじめとした全てのプロダクトに関して「使っている時の“快感”と“気持ちよさ”を追求した」とコメントするーーー 今回はそんなHelpfeel誕生秘話から未来の当たり前について語ってもらった。
「Helpfeel(ヘルプフィール)」は、どんな質問にも答えられる“本当に役に立つFAQシステム”だ。このシステムは、曖昧な言葉の表現、言い換え、入力ミス(スペルミス)にも対応し、キーワードを入力したユーザーの検索意図をくんで、最適な回答を提示することが可能だ。
またHelpfeelは、<2021年度 GOOD DESIGN AWARD(グッドデザイン賞)>や<X-Tech Innovation 2020 優秀賞>などを受賞している。そんな注目を集めるHelpfeelについて、まずは洛西氏にHelpfeel誕生のきっかけについて話を伺った。
誰が使っても明確な回答に辿り着く
────まずは、Helpfeelについて教えてください。
Helpfeelは、FAQに特化したSaaS型のBtoBサービスです。FAQサイトを簡単に構築できるので、ユーザーが知りたい情報を正確に表示させることができます。「PayPayフリマ」「ラクスル」「カラオケ パセラ」などのECサイト、金融サービス、医療など幅広い業界で導入いただいています。
もともと弊社は、ナレッジの編集をする「Scrapbox(スクラップボックス)」を運用していました。全世界で20万人の利用者がいるツールで、ナレッジを管理するというノウハウが既にあったんです。
────もともとナレッジを管理するツールがあったんですね。この文脈でいう「ナレッジ」とは何なのでしょうか?
ナレッジとは、読むことで新しい概念や方法が理解できる、なるべく端的で分かりやすく書かれた文章のことです。
ただ、端的に分かりやすくするために何でも文章を短くすればいいというわけではありません。読み手によって読む前に知ってる事前知識が違いますから、短すぎる文章は不親切で理解できないことも多いです。Scrapboxは、この問題を解決しています。短い文章のページをリンクによってネットワーク化することで様々な情報を整理できるため、色々なページを閲覧しているうちに知識として全体を理解できる状態を作ることができたんです。
────カスタマーサポートの方が特に利用されていたのはなぜでしょうか?
「お客様からの質問に応えるのが大変難しい」という現場の課題がありました。お客様からイレギュラーな質問を受けた場合、CS担当の方は上席に確認する必要があります。まとまった知識を一瞬で確認できないと、即答するのが難しいですよね…
CSの方がまとまった知識(ナレッジ)をすぐに見れるシステムさえあれば、質問に対して即答できるようになります。その蓄積されてまとまった知識に「予測検索」という機能を加えることで、一般の利用者の方でも必要な情報を瞬時に検索できるようにしたんです。
このような背景があり、Helpfeelの開発に至りました。
Helpfeelは、質問者の意図を予測して、明確な回答を提示する
ーーーーなるほど、このようなツールは昨今注目を集めているサービスだと思いますが、Helpfeeならではの特徴は?
Helpfeelの最大の特徴は何といっても「意図予測検索」です。
意図予測検索は、言葉の言い換え、類義語、タイプミスなどにも対応して、ユーザーが検索している“意図”を予測します。その結果をシステム上で回答として表示します。iPhoneのフリック機能や予測変換などに似ていますね。
例えば印刷会社様のケースでは、あるユーザー様が検索欄に「再入稿」と入力します。一方別のユーザーは、「やり直し」や「差し戻し」、「データ変更」など似た言葉や別の言葉で入力したとしますよね。
この場合、ユーザーの検索意図は、どれも入稿データのやり直しをしたいですよね。このような方の検索意図を予測したうえで、一つの回答をご案内できるのが魅力です。
一つの言葉でも、人によって様々な言い方をします。専門職ならではの言葉の使い方も存在しますが、様々なパターンの質問がきても、すべて同じ回答に誘導して問題を解決できるように設計しています。
────なるほど!言葉の言い換えやミスタイプなどから、「検索意図」を予測して回答を提示するということですね。導入企業様やユーザーの両者にメリットがあるサービスですね。
Helpfeelは、「分からないものをわかるようにできる」 「困っている人が困らなくなる」という目的のもと開発しました。実際にHelpfeelを導入していただいた「カラオケ パセラ」様は、各店舗への問い合わせが6割減少したんですよね。
Helpfeelを導入することで、質問者は短時間で明確な回答を受け取ることができ、企業様側はコストカットや人材リソースを最適化できます。
属人化するCS体制から脱却し、顧客満足度の向上へ
────明確な回答が返ってこなかったり、回答までに時間がかかったりする根本的な要因は何でしょうか?
コールセンターやCS部門は、人力での問い合わせ対応に依存しているのが課題です。
人力で対応している以上は、事業成長に合わせて人材を拡充し続ける必要があります。しかし、限られたコストのなかで採用コストと育成コストを捻出しながら運用していくのは難しいのが実情です…
例えば、カラオケ店のケースで言うと新人のアルバイトが、お客様から難易度の高い質問が来たときに即答するのは難しいと思います。
また各店舗で設備が違ったり、プランが異なったりした場合、他店舗のことは把握しきれないケースが多いです。こういった店舗間での情報や知識が集約できていないため、お客様への最適な対応ができないケースが様々な業態で発生します。
Helpfeelなら検索窓に知りたい情報を入力すれば適切な回答が提示されるので、お客様の問い合わせを減らすことが可能です。問い合わせを減らすことで、人的リソースをより最適化できます。
────なるほど…問い合わせの回答の質は、ブランディングにも影響しますよね。
そうですね、クレーム対応をしたり、お客様の問題を解決したりするのは、企業のブランディングにも影響します。弊社では、CSの役割を 「攻めのCS、守りのCS」に区別しています。
「守りのCS」は、ユーザー様からのクレームや簡単な問い合わせを減らすことです。上述したように簡単な問い合わせを減らすことで、人材リソースを最適化して成果や目標にコミットできるようになります。
一方「攻めのCS」は、CS担当の方が対応できる仕事の領域を広げることを指します。より専門性の高い質問に回答できるようになったり、クロスセル・アップセルといった商品の提案ができたり、高いレベルでのCS対応が可能です。その結果、ブランディングや顧客満足度の向上にもつながってきます。
Helpfeelの秘密は、マジック!? 意図予測検索の秘密とは?
────膨大な質問と回答を用意する必要があると思うのですが、意図予測検索の仕組みはどのようになっているのでしょうか?
「意図予測検索」は、簡単に説明すると2つの仕組みの組み合わせで成り立っています。1つ目は専任のテクニカルライターが、ユーザーの想定質問パターンを考察し、辞書化しながらテキストで作成します。そして2つ目は弊社独自のアルゴリズムが、単語や類義語を認識して自動で拡張してくれるんです。
ユーザーが、1つの単語や調べたい質問の頭文字を打つと、その言葉をシステムが自動で拡張してくれます。そして文字を打つたびに、絞り込みを行っていき、最終的にユーザーが選ぶことで回答に到達します。裏側では、1つの回答に対して膨大な予測パターンが生成されます。これによってユーザーがそれぞれ異なる表現の言葉を入力しても、回答まで到達できるという仕組みになっているんです。
────かなり使いやすいサービスだと思いますが、裏側ではシンプルかつ地道な作業がシステムを支えているんですね。
弊社は「マジシャン」という考えを大切にしているんです。
マジシャンがするマジックと我々のHelpfeelも仕組みとして似ていますね。簡単な操作でユーザーを驚かせるけど、裏では結構泥臭い方法でシステムを作っているーーーーこういったテクニカルなナレッジを作る人力の部分とシステムのアルゴリズムをうまく組み合わせているので、自然な日本語の回答が違和感なく表示できるんです。
“実用的”にフォーカスしすぎず、“気持ち良さ”を追求する
────御社のサービスはHelpfeelはもちろん、Gyazo(ギャゾー)なども『すごいシステムだけど、人間味がある』印象があります。この絶妙な匙加減は、どのように設計しているんですか?
実は弊社がリリースしているサービスは、 「使っている時の「気持ち良さ」「快感」を追求しているんです。実はCTOの増井は、日本語の予測入力の発明者で、アメリカのApple社でiPhoneの日本語入力機能を開発していたんです。今ではお馴染みのフリック入力機能ですね。
Helpfeelの“何かを入力したら、瞬時にリアクションがある”という気持ち良さや、一文字だけ入力すれば予測が出るという機能はiPhoneのフリック入力にも通底しています。
────フリック入力機能がベースになっているんですか!? 確かに使っていて気持ち良いですよね。Gyazoのスクリーンショット時の音も気持ち良いですし、そこも気持ち良さを追求したんですか?
実はGyazoのスクリーンショットの「カシャ」という音だけ作るのに3ヶ月以上かかったんです(笑)実用的でなおかつ使っていて気持ちが良いUI設計を目指しているので、音にもかなりこだわりましたね。
実用的すぎると人間味がなくて、使っていても面白くないんですよね ……目的にフォーカスし過ぎずに「使っていて気持ちが良いかどうか」ということにフォーカスしてUIに落とし込むーーーー ちなみにApple製品もテクノロジーとリベラルアーツの融合という製品開発の哲学があります。だからこそ、商品の美しさや使用中の快感が高いんだと思うんですよね。
────なるほど…高校生の頃からサービスを開発していたそうですが、こういったモノ作りの原体験はあるんですか?
もともと子どもの頃からモノ作りが好きで、不便なことがあると道具で解決できないか考えていたんです。
履きづらい靴があったら、気持ち良い靴を作るために草鞋の研究をしてその草鞋で通学してみたり、図工の時間に自分で考えたオリジナルの縦笛を作ったりしてましたね(笑)
見た目はもちろん、デザイン性と実用性をマッチさせる感覚は何となく子どもの頃から自然に学んでいたのかもしれません。
CS業界を一気通貫でサポートできる未来を作るーーーー
───Helpfeelでこれから実現したいことは何ですか?
Helpfeelによってカスタマーサポート業界全体をよくしていきたいですね。
現在は、コールセンターの中でもFAQなどのナレッジの編集に力をいれている現場が少ないです。これは費用対効果が立証されていないことが原因です。Helpfeelを導入することで、お客様の自己解決率が可視化され、FAQやナレッジ編集の費用対効果が明らかになるため、これに従事するスタッフや専門職の方にもっと光があたるようになると思います。
弊社がもっているHelpfeelのFAQ改善フレームワークを活用することで、それが可能になります。またオペレーターの方もHelpfeelで習得可能になる場当たり的ではない、豊富で深いナレッジを使ってより高度な対応ができるようになり、労働市場での評価もあがっていくと思います。このような全体的な取り組みによって業界を活性化していきたいと思います。
───未来のCSセンターは、簡単な質問はシステムがおこない、より難しい質問には人が回答するイメージでしょうか?
まさしく、そういった未来がすぐにやってくると思います。ただし、 その回答は、人間からしか生まれません。そもそも人が欲しいと思うサービスや商品を作っているのは人間なので、望ましい回答はそれを作っている会社の知恵からしかでてきません。
我々は、その回答群をナレッジとしてまとめあげて、消費者が探せるようにすることをツールを通してお手伝いします。
Helpfeelは、ナレッジを通して人を幸せにする
───最後に洛西様にとってHelpfeelとは?
ナレッジを通して、人々を幸せにするーーーーそして人の「困った」を無くすツールだと思っています。さきほども言いましたが、ナレッジは人の経験からしか生まれません。そのナレッジを公開することで顧客にも新たな付加価値を提供できる。Helpfeelを通して一人でも多くの人の「困った」をなくしていければと思います。
Helpfeelの詳細を見る
今回の取材を通して感じたことは、ナレッジ(知識)の重要性だ。考えてみれば、我々の技術や生活は先人からの知識が脈々と受け継がれた結果だと感じた。そのナレッジとテクノロジーをかけ合わせることで、新しい価値が誕生し仕事のボトルネックを解消することができるのだーーーー
またサービス誕生の裏には、人の努力が集結しており、最先端だがどこか“人間らしさ”を感じるNota株式会社ならではのサービスは、この“人”が作る手触り感な気がした—— その核には、利便性を重要視しつつも「気持ち良さ」を追求するという、ロジックの先にある感覚を大切にしていることに驚いた。雇用や職場での課題が残るCS業界は、Helpfeelでどのように変わっていくのか、今後の動向に期待していきたい。
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