選ぶ服で未来が変わる!最新研究が示す驚きの事実
2024.09.19

選ぶ服で未来が変わる!最新研究が示す驚きの事実


「一枚の服が、運命を変える」

朝、何気なく選んだその服。それは単なるファッションの一部ではない。

健康や未来、そして時に命さえも左右し得る存在なのだ。

日常での熱中症や冷え症から、南海トラフ地震を始め、迫り来る災害時まで―私たちを守る最前線に立つのは、意外にも日々の装い。

神戸女子大学の平田耕造名誉教授が解き明かす衣服と身体の関係は、想像以上に深く、複雑だ。

平田教授の最新研究が示す、驚くべき衣服の力。それは、私たちの健康を守り、生活の質を高める鍵となるだろう。

このインタビュー記事が、私たちの「服」に対する常識を覆し、明日からの生活を変えるだろう。

平田 耕造
インタビュイー
平田 耕造氏
神戸女子大学
名誉教授(現客員研究員)


動物実験から始まった衣服の快適性研究。人間だけの体温調節方法とは?!


神戸女子大学 取材用写真
―――まずは、研究領域について教えてください。

私の専門分野は温熱生理学と環境生理学で、特に衣服の快適性を体温調節の観点から研究しています。 この分野では、人体の皮膚血流、発汗、体温の変化に注目し、異なる衣服を着用した際の快適性を評価するのです。 さらに、不快感を軽減し快適性を向上させるための衣服の改良方法も探求しています。

研究の中心的なテーマは、体の中心部から熱を表面に運び出す役割を持つ「皮膚血流」です。

特に興味深いのは、手足や顔面に存在する「AVAエーブイエー(動静脈吻合)血管」だと思います。AVA血管は拡張時に直径が大きく変化する特殊な血管で、体温調節において重要な役割を果たしているのです。

皮膚血流、特にAVA血管の研究を通じて、人々の生活の質を向上させる新しい衣服設計の可能性を追求しています。

―――衣服の研究に踏み出していったきっかけは何ですか?

私の研究は動物実験から始まりました。

しかし、研究の焦点は、単に動物実験の結果を人間に適用することではありません。 むしろ、人間の体温調節メカニズムを深く理解し、それが日常生活の快適性にどのように影響するかを探求することが目的です。

動物の血流を観察する中で、AVA血管の存在が明らかになりました。 興味深いことに、動物には人間のような発汗機能がほとんどありません。

代わりに、動物はAVA血管を拡張させて体熱を放散します。 また、犬や猫が「はぁはぁはぁ」と「パンティング(口を開けて速い呼吸をする行動)」をしていますが、実は呼吸を通じて体温調節を行っているのです。

一方、人間は進化の過程で異なる体温調節メカニズムを発達させました。

つまり、皮膚からの発汗と汗の蒸発による冷却が主要な体温調節方法となるように発達させ、パンティングのような呼吸による体温調節は失われていったのです。しかし、まだ人間もAVA血管を一部保持しています。

人間の体温調節を研究する際には、発汗に関する話題が大きな注目を集めがちですが、私は人間の手足に存在するAVA血管の役割にも等しく注目しているのです。

衣服の快適性研究とAVA血管の研究が交差する点が、私の研究の独自性だと思っています。

―――ズバリ、先生の考える「衣服の快適性」とは何でしょうか?

衣服の快適性を追求する上で、衣服そのものの素材やデザインは確かに重要な要素です。

しかし、人間が着用するという前提に立つと、単に優れた繊維や素材だけでは十分ではありません。人間の生理機能と衣服の特性とのマッチングが不可欠です。

人間の体温調節機能を最大限に引き出し、快適な状態を維持するためには、衣服がその生理機能と適切に連携する必要があります。

人間の生理機能に不足がある場合は、衣服がその機能を補完し、さらには向上させる役割も期待されるでしょう。

今後の衣服開発においては、人間の生理機能と衣服の特性の両方を深く理解し、それらを統合的に研究することが重要だと考えています。

しかし、この研究アプローチには課題も存在します。 人体生理学と繊維工学、デザイン学といった異なる分野の知識を統合する必要がありますが、専門分野間の溝を埋めることは容易ではありません。

―――日本では現在すでに吸湿発熱機能など、優れた化学繊維を使って体温調整を上手く機能させる衣料品が数多く販売されていると思います。このような衣服の快適性を追求する分野において、日本は国際的にどのような立場にあるのでしょうか?

日本の繊維産業は、世界でもトップクラスの技術力と研究開発能力を誇っています。

一企業の突出した成功というよりも、多くの企業が基礎研究から最終製品の開発まで、幅広い範囲で高い水準の取り組みを行っています。このような繊維開発は、日本の産業界の大きな強みと言えるでしょう。

先述したように、衣服の快適性研究においては、繊維工学と人間の生理機能の両方の知識をマッチングすることが求められます。

日本の繊維産業が非常に強固な基盤を持っているため、新たな製品開発のアイデアが生まれやすく、基礎研究から応用研究まで幅広い取り組みが可能です。

研究者にとっても、日本は恵まれた環境にあると言え、企業との協力関係を築きやすく、最先端の繊維技術を活用した研究を行うことができます。

これは、人間の生理機能と衣服の相互作用を研究する上で、大きな利点です。

このような産学連携の土壌があることで、日本は衣服の快適性研究において他国に比べて優位な立場にあります。

迫り来る災害!命を救う衣服とは?! 私たちが今準備できること


神戸女子大学 取材用写真
―――例えば、登山で遭難した際など、衣服は人命にも関わる大切な存在だと思います。繊維に関する知識と人間の生理機能のマッチングミスで起こり得る大きな課題や私たちが知っておくべき問題があれば、教えてください。

人間の体温調節機能、とりわけ発汗機能は高度に発達しています。

通常、この機能は体を冷やすのに効果的ですが、寒冷環境下では逆効果になることがあるのです。特に衣服を着用した状態で発汗すると、深刻な問題が生じる可能性があります。

衣服内に残った汗は、周囲の環境が冷えても蒸発し続けるのです。この継続的な蒸発プロセスは体温を必要以上に低下させ、時として危険な低体温症を引き起こす可能性があります。

同様の現象は、雨や津波などの外部からの水分によっても引き起こされることがあるのです。

衣服選択においては、快適性と機能性のバランスが重要です。

肌着のような直接肌に触れる衣服では、肌触りの良さが重視されがちですが、汗をかいたり寒さにさらされたりする状況では、素材の機能性が生命を左右する危険性があります。

東日本大震災の津波被害や山岳遭難事故では、衣服が濡れることで低体温症に陥り、最悪の場合命を落とすケースが報告されているのです。

こうした事故の中には、適切な衣服の選択と知識があれば防げたかもしれないものも含まれています。 衣服の素材や特性、適切な使用方法についての知識を広めることが喫緊の課題です。

―――昨今では、南海トラフ地震などに備えた防災対策の重要性が高まり、食料や水、携帯トイレなどの備蓄品の見直しがニュースで頻繁に取り上げられています。しかし、災害時の衣服の重要性については、十分な注目が集まっていないのが現状ですよね。

災害に備えた備蓄品の中で、衣服の重要性は食料や水に比べて軽視されがちです。

日本の現状では、衣服の備蓄は主に個人の責任とされており、公的な備蓄体制は十分に整っていません。

避難所における衣服の備蓄状況は特に課題があります。 季節によって大きく異なる気温に対応できるよう、夏用・冬用の衣服を十分に用意しておく必要があるでしょう。

しかし、実際にはそのような体制が整っている避難所は少数です。 一部の地域や組織では、衣服の備蓄の重要性を認識し、取り組みを始めていますが、食料や飲料水のように広く普及し、標準化されるまでには至っていません。

―――東日本大震災の時にも、身体が濡れてしまったことによって低体温症で亡くなってしまった例もある中で、災害時の備蓄に衣服のことがアナウンスされていない状況は先生の中で違和感があるのでしょうか?

衣服の役割に対する一般的な認識には大きな課題があります。

多くの人々は、衣服を単に乾いた状態で重ね着することで体温を保つものと考えがちです。

しかし、災害時など極端な状況下では、衣服が濡れた状態での保温性能も重要となります。この点についての理解が十分に浸透していないのが現状です。

東日本大震災の経験は、濡れた状態での衣服の重要性を痛感させる出来事でした。この教訓を生かし、災害時に想定される様々な状況下での適切な衣服の選択や使用方法について、より広範な啓発活動が必要です。

具体的には、濡れた状態でも保温性能が高い衣類の開発、速乾性素材の利点、適切な重ね着の方法など、実践的な知識を広めていく必要があります。これらの情報を、一般市民だけでなく、防災に携わる行政機関や関連団体にも積極的に発信していくことが重要です。

最終的には、こうした知識や認識の向上が、行政レベルでの適切な衣服の備蓄体制を構築することにつながると期待されます。

災害対策における衣服の重要性を社会全体で再認識し、食料や水と同様に不可欠な備蓄品として位置づけていく必要があるでしょう。

―――南海トラフ地震のニュースが発表されてから、災害時の備蓄品を準備しようとする方もたくさんいらっしゃると思います。先生の目線から見て、ぜひ用意しておいてほしい具体的な衣服の素材やデザインなどはありますか?

人体が濡れる原因は汗、雨、津波など様々ですが、その影響は基本的に同じです。

汗をかくのは体温を適正なレベルに下げるための自然な反応であり、衣服の本来の役割は、この体温調節機能をサポートすることです。

最近の衣服は、夏や冬の快適さや肌触りの良さを重視して作られていますが、特定の状況下では危険な場合があります。

例えば、衣服が濡れると、人体の体温調節が必要としなくなった後も、蒸発し続けてしまうのです。

この問題に対し、登山用のインナーウェアなどは、汗を効率的に処理し、素早く乾いた状態に戻せる点で優れた性能を発揮します。

また、毎年行われている高校野球の選手たちの装備を例に取ると、彼らは密着型のポリエステル製アンダーウェアを着用しています。

長袖タイプも多く、カラフルな赤や黒の素材が手首まで覆っているチームもあります。このような密着型の衣服は、汗を効果的に処理する設計になっています。

密着型アンダーウェアの特徴は、汗を繊維の中に吸収せず、毛管現象を利用して素早く外側へ移動し、蒸発を促進することです。

体が余分な熱を逃がす必要がなくなれば、自然と汗の拍出も止まります。繊維自体が水分を保持しないため、不必要な蒸発が続くこともありません。

この原理を活かし、災害時の備蓄衣料にもポリエステル製の密着型アンダーウェアを含めることが有効でしょう。

アンダーウェアが乾いた状態であれば、その上に着用する衣服との間に空気層が形成されます。 空気は優れた断熱性を持つため、冬季には複数の衣服を重ね着することで、衣服間や繊維間の空気が体温を保持し、体温低下を防ぐことができるでしょう。

日本の気候は四季の変化に富み、暑さや寒さの極端な時期だけでなく、穏やかな季節もあります。

そのため、災害用の備蓄衣料も春夏秋冬に対応できるよう、季節ごとに異なるものを用意する必要があります。

備蓄の管理においては大変かと思いますが、命を守るためには大切な取り組みです。

例えば、山登りやキャンプ用の衣服や用品は、高い機能性と日常での使いやすさを兼ね備えており、災害時にも非常に役立ちます。

また、速乾性や保温性に優れた衣服を普段から着用していれば、突然の災害時にも適切な装備で避難することが可能です。

普段使いの中に防災の要素を取り入れることで、常に災害に備えた状態を維持しつつ、効率的かつ実用的な生活スタイルを実現できます。

このように、日常と非日常の境界をなくす「フェイズフリー」の考え方を衣服選びに取り入れることは、スムーズな災害対応と、より安心できる生活につながるでしょう。

機能性、デザイン、身体の生理機能。分野を超えたマッチングの難しさ


神戸女子大学 取材用写真
―――先ほど、人間の生理機能と衣服の特性とのマッチングの難しさについて、お話を伺いました。衣服の素材やデザインにおいて、現状どのような課題がありますか? 消費者の意識と行動のギャップについて、具体的な例を教えてください。

機能性重視の衣服開発は、工事現場で使用されるファン付き作業服のような実用的なアイテムから始まります。

空調服は、腰のあたりに扇風機が付いており、暑い環境下で作業する人々の汗の蒸発を促進し、体温調節を助けるのです。

当初は見た目の問題から一般的な街中での使用は想定されていませんでしたが、その高い機能性が評価され、工事現場やアウトドア活動で広く受け入れられるようになりました。

近年、この機能性重視の傾向は、日常生活にも浸透しつつあります。

さらに、消費者のニーズに応えるため、機能性だけでなく、デザインや色彩にも重点が置かれるようになってきました。

特に、アウトドア用品や作業服を製造する企業は、機能性と美しさを両立させた商品開発に力を入れています。

この変化の背景には、商品開発チームに女性デザイナーが多く参加するようになったことがあります。

彼女たちの感性によって、実用的でありながら可愛らしさや美しさを兼ね備えた商品が生み出されるようになったのです。

その結果、機能性の高い衣服やアウトドア用品が、よりファッショナブルで魅力的なデザインで提供されるようになりました。

この傾向は、作業服メーカーが女性向けの専門店を開設するなど、業界全体に広がっています。

カラフルでおしゃれな機能性衣料に対する女性消費者の要求に応えることで、市場は急速に拡大しています。

機能性とデザイン性の融合は、今や一つの大きな流れとなっており、今後さらなる発展が期待されるでしょう。

―――未来の衣服の可能性とそれが5年後、10年後の私たちの生活にどのような影響を与えると思いますか?

人体の温度感覚と衣服のテクノロジーの融合は、快適性を追求する新たな領域を切り開いています。

人の皮膚は畳1枚分ほどの面積を持ち、場所によって温度や触感の感度が異なります。また、体熱の放散効率も部位によって様々です。

これらの人体の特性を活かし、テクノロジーを組み合わせることで、より効果的な体温調節が可能になります。

現在、衣服の内側にヒーターや冷却装置を組み込む試みが進んでおり、ペルチェ効果を利用した冷却システムなども開発されており、実用化も始まっています。

ただし、これらの機器を搭載すると、従来の衣服とは異なるデザインになってしまう課題があるのです。

今後の技術開発の方向性としては、これらの機器をより小型化・軽量化し、柔軟性を高めることで、通常の衣服に近づけていくことでしょう。

同時に、デザイン性や美しさも重視され、機能性と外観の両立が追求されています。

研究段階では、様々なデバイスを搭載した衣服を用いて、異なる環境下での快適性を検証する実験が行われています。

これらの研究成果を基に、AIを活用して個人の快適性を最適化する温度制御システムの開発も進んでいるのです。

衣服内気候(衣服と皮膚の間の空間の温度や湿度)の調整は、まさに「持ち運べるエアコン」の概念に近づいています。

固定式のエアコンと異なり、衣服は人の移動に伴って環境を調整できる利点があるでしょう。

完全なエアコンの機能には及ばないものの、テクノロジーの進化により、極端な温度環境下でも快適に過ごせる衣服の実現が近づいています。

衣服の快適性研究は、多様な分野の専門家が集結する興味深い領域です。

研究者たちは、脳機能、体温調節機能、循環系や呼吸器系などの人体の様々な機能と衣服の関係性を探求しています。

研究の目標は、衣服が人体機能にどのような影響を与えるかを解明し、その知見を活用して優れた衣服を開発することです。

この研究の成果は、人体が本来持つ機能を補完し、極端な環境下でも快適さを維持できる衣服の開発につながります。

例えば、過酷な条件下で人体機能が低下するのを防ぎ、生命を守る衣服や、高度な集中力を要する状況下でパフォーマンスを向上させる衣服などが考えられます。

しかし、この快適性追求には慎重な検討が必要です。常に快適な状態を維持することで、人体本来の機能が衰える可能性があるからです。

例えば、汗をかく能力は、体温上昇時に熱中症を防ぐ重要な機能です。この能力は、暑さや運動、重労働などの刺激によって維持・強化されます。

もし24時間常に快適な環境が続くと、汗をかく必要がなくなり、この重要な体温調節機能が衰える可能性があります。

つまり、過度な快適性の追求は、人体の適応能力や耐性を低下させる恐れがあるのです。

―――なるほど。今のお話を聞くと、現代の子供たちが外的環境に晒されないまま育つと、将来体温調節の上手くいかない身体に育たないか心配になってきますね。

人間の体温調節機能、特に汗腺の発達に関する興味深い研究結果があります。

新生児は全身に約500万個の汗腺を持って生まれますが、これらすべてが大人になっても機能するわけではありません。

重要なのは、生後2歳半までの環境が汗腺の発達に大きな影響を与えるという点です。

この期間に汗をかく機会が多いほど、より多くの汗腺が機能を維持します。

逆に、汗をかく必要のない環境で過ごすと、多くの汗腺が不能汗腺となり、将来的に機能しなくなります。

この現象は、異なる気候帯で育った人々の比較研究によって明らかになりました。

例えば、熱帯地方で育った人は、300万個近くの機能する能動汗腺を持つのに対し、日本人の平均は約228万個です。この差は、成長期の環境の違いによる適応の結果となります。

興味深いのは、2歳半以降に環境が変わっても、汗腺の数は大きく変化しないという点です。

例えば、日本で育った人が後に熱帯地方に移住しても、現地で生まれ育った人と同じ数の汗腺を持つことはありません。

この違いは汗のかき方にも現れます。汗腺の多い熱帯出身者は、体全体から少量ずつ汗をかき、すぐに蒸発させる効率的な体温調節が可能です。

一方、汗腺の少ない日本人は、少ない汗腺に負荷がかかり、汗が流れ落ちやすくなります。

これらの知見は、幼少期の環境が将来の体温調節能力に大きな影響を与えることを示しており、過度に快適な環境で育つと、汗をかく能力が十分に発達しない可能性があります。

したがって、衣服開発においては、快適性を追求しつつも、人体本来の機能を維持・発達させる配慮が必要です。

極端な不快を避けながらも、適度な温度変化を経験できるような衣服設計が重要になります。

熱中症のリスクを避けるため、冷房環境の活用は必要ですが、同時に体の自然な機能を失わないよう注意が必要です。

理想的なアプローチは、現在の世代が持つ体温調節能力を維持しながら、可能な限り快適な時間を増やすことです。

これは衣服の設計だけでなく、生活全体のバランスを考慮する必要があります。

例えば、子供たちの日常生活の中で、適度に発汗する機会を設けることが重要です。

24時間常に暑さに晒される必要はなく、運動やお風呂の時間など、短時間でも体温が上昇し発汗する機会を意識的に作ることで、汗腺の機能を維持できます。

健康的な生活習慣として、適度な運動や適切な入浴習慣を推奨しつつ、衣服を着用している長い時間帯では快適性を追求することが可能です。

つまり、運動で汗をかき、体温調節機能を刺激する時間と、快適な衣服で過ごす時間のバランスを取ることが重要です。

このようなアプローチを採用することで、10年後、20年後も現在と同程度の汗腺機能や体温調節機能を維持することができるでしょう。

シベリアの寒冷地のような、極端な環境で育った人々とは異なる、適度な体温調節能力を持つ生活スタイルを維持できます。

選ぶ服で未来が変わる?!快適性と生理機能の両立を目指す衣服開発の挑戦


神戸女子大学 取材用写真
―――最後に読者の皆様にメッセージをお願いします!

衣服の快適性を追求する際には、生活全体のバランスを考慮することが重要です。

先述した通り、単に快適さだけを追求すると、人間本来の生理機能が衰える危険性があります。

将来世代が現在の私たちと同等の身体機能を失う可能性もありますから、テクノロジーと融合した快適な衣服を受け入れつつも、人体の機能を維持するバランスを取ることが必要です。

衣服による快適性だけに頼るのではなく、日常生活のさまざまな場面で体を適度に使い、生理機能を維持することが大切です。

人間には環境に適応する能力がありますが、これは両刃の剣となり得ます。

例えば、運動をせず、筋肉を使わない生活を続けると、筋肉は萎縮し、最終的には運動器系の機能が著しく低下してしまうでしょう。

これは「ルーの法則」として知られる原理で、筋肉は適度に使えば発達し、使わなければ萎縮し、過度に使えば損傷するというものです。

ルーの法則は、人体と衣服の関係にも適用できると考えられます。衣服の快適性を追求しつつ、人体の機能を適度に刺激し、維持することが重要です。

今後も高い生理機能を維持しながら、日常生活をより快適にする衣服の研究開発が続いて優れた商品が登場して欲しいと思っています。

新井那知
ライター
So-gúd編集部
新井 那知
埼玉県・熊谷市出身。渋谷の某ITベンチャーに就職後、2016年にフリーランスライターとして独立。独立後は、アパレル、音楽媒体、求人媒体、専門誌での取材やコラム作成を担当する。海外で実績を積むために訪れたニューヨークで、なぜかカレー屋を開店することに—-帰国後は、クライアントワークを通してライターとして日々取材や編集、執筆を担当する。料理と犬、最近目覚めたカポエイラが好き(足技の特訓中)。
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