デジタル×感性が作り出す未来の姿 ~岩手県立大学の挑戦~
2024.07.11

デジタル×感性が作り出す未来の姿 ~岩手県立大学の挑戦~


触れる、感じる、それを言葉にする。

人間の感性を数値化し、デジタルの世界に落とし込む。

そんな夢のような技術が、いま静かに花開こうとしている。

岩手県立大学の鈴木彰真准教授率いる研究チームは、食感や香りなど、これまで言語化が難しいとされてきた感覚情報に挑んでいる。

ゼリーのぷるぷる感、焼き菓子のサクサク感、布のさらさら感……。
私たちが日常的に感じているそうした触感を、センサーを駆使して数値化し、データベース化する。

そうすることで、感性という曖昧な情報を誰もが共有できる「言葉」に変えようとしているのだ。

果たして、人間の五感を超えた新たな感覚の世界が拓けるのか?

感性のデジタル化は、私たちの生活をどう変えていくのか?

最先端の研究の現場から、次世代のセンシング技術が秘める無限の可能性に迫る!

鈴木 彰真
インタビュイー
鈴木 彰真氏
岩手県立大学 ソフトウェア情報学部
准教授


「グニグニ」と「ブチブチ」の違い?人によって異なる「感性」をデータ化


岩手県立大学 取材イメージ画像
―――まずは、研究領域について教えてください。

研究のテーマは、人間とロボット、コンピューター、そして動物との間で円滑なコミュニケーションを取り、意図したものを伝えるための仕組みを、センサーやアクチュエーターといった機械側の入出力機器を用いて、より使いやすくしていくことです。

この研究の大きな柱は、「感性検索」という呼称で括っています。

感性検索では、言葉では表現しにくかったり、通常のGoogle検索では見つけにくいものを検索で見つけることを目指しているんです。

例えば、柔軟剤の香りからおすすめの柔軟剤を提案したり、グミの食感をオノマトペで表現することでおすすめのグミを紹介したりするシステムがあります。

また、ご当地メニューのようなローカルフードに関しても、現地の人にとっては当たり前の食べ物でも、東京などでは一般的ではないことがあるでしょう。

そこで、『食べログ』をベースに検索し、東京ではあまり出されていないが現地ではよく出されているメニューを見つけ出し、レストランを紹介するシステムも開発しています。

二つ目の柱は、車の運転に関する研究です。

運転中、ドライバーは周囲の情報を見たり聞いたりしなければならないため、伝えるべき情報が非常に多くなります。

メーター、ミラー、カーナビ、コネクテッドカーによる外部情報から正しくかつ素早く情報を伝えるために、視覚と聴覚だけでなく触覚も活用することで、よそ見を防いだり、曲がり忘れや通り過ぎを防止したり、後方からの車の接近を直感的に伝えたりすることを目指しています。

三つ目の柱は、ドローンやロボットを用いた研究です。

将来的にロボットやドローンが人間とやり取りをする場面を想定し、どの程度の位置関係から近づいてくると人間が怖いと感じるのか、どの程度の位置関係から話しかけると気付かないのかといったことを明らかにしようとしています。

これには、距離や高さ、大きさ、接近速度などが影響すると考えられ、それらを詳細に調べることで、より良いコミュニケーションのあり方を探っています。

人間が雰囲気や感覚で感じているものも、最終的にはコンピューター内で具体的な数値や表現に変換する必要があるのです。 それによって、コンピューターにとって処理しやすい形になります。

そのためには、適切なセンサーを用いて情報を取得することが重要です。

センサーには様々な種類があり、それぞれが異なる情報を捉えることができます。また、取得したデータをどのように処理するかも重要な要素です。

センサーから得られたデータを適切に加工し、コンピューターが理解できる形式に変換することで、人間の感覚や雰囲気を機械的に処理することが可能になります。

このようにして、人間とコンピューターの間のコミュニケーションをより円滑にし、意図したものを正確に伝えることができるようになるための研究を行っています。

―――感性検索は現在、どの程度社会実装が進み、私たちの生活に入り込んでいるのでしょうか?

近年、特に5年から10年ほど前から、画像認識技術の発展により、画像内の動物や写っているものを文字に変換するシステムがGoogleなどで実装されるようになりました。

これは、絵を言葉に変えるという点で、絵の雰囲気をどのように感じるかといったことにも関連しています。

また、絵を見せたり音楽を聞かせたりして、それをコンピューターが人間と同じように感じられるようにしようという取り組みもあるんです。

逆に、人間が「こういう感じの曲を作ってほしい」と依頼すると、コンピューターが自動的に曲を作ってくれるといった、雰囲気に合わせた作曲の自動化なども行われています。

これらの取り組みは、近年のAIの進歩とともに徐々に形になってきていると言えるでしょう。

特に絵に関しては、AIで文字に変換するという技術が確立されつつあります。

―――感性検索に関して、具体的にどのようにデータを収集し、データベースの構築が行われているのでしょうか?

グミや柔軟剤、コーヒーなどの感性検索の研究では、それぞれの対象についてアンケートを実施し、人間の感じ方をデータベース化しています。

しかし、感じ方は個人差が大きく、敏感な人もいれば鈍感な人もいるでしょう。また、感覚を表現する言葉の使い方も人によって様々です。

例えば、あるグミを食べたときに、ある人は「グニグニ」と感じ、別の人は「ブチブチ」と感じるかもしれません。
このような個人差を考慮しつつ、多くの人の意見を集約し、最大公約数的な感覚をデータベースに反映させることが重要です。

具体的には、アンケートで得られた回答の中で最も多く選ばれた表現を中心に、順位付けを行います。
そうすることで、「このグミはこんな感じです」といった一般的な評価を導き出すことができるんです。

このように、感性検索の研究では、人間の多様な感覚を集約し、コンピューターが理解可能な形式でデータベース化することが鍵となります。

―――現在の研究で直面している課題は何でしょうか?

現在の研究課題は、研究の方向性によって様々ありますが、例えば、検索に関する研究では、不動産ポータルサイトの運営会社から大学の博士課程に社会人ドクターとして受け入れた方と共同で、住まい探しの際の感性や雰囲気に基づく検索システムの開発に取り組んでいるんです。

通常、部屋を探す際には多くの時間を費やして検索を行いますが、地域の住みやすさや雰囲気、周辺環境といった自然言語による検索から、より目的に合致した検索結果を提供できるようにすることを目指しています。

現在、実際に研究を進めており、良い結果が出てきているので、近いうちに論文にまとめられると思います。
住宅検索以外にも、様々なカテゴリに応用できる可能性があるでしょう。

また、ロボットと人間の位置関係に関する研究では、超音波センサーを用いて数センチレベルの高精度な3次元測位データを取得することに取り組んでいます。 測位の精度を上げたり、センサーの数を増やしたり、移動中でもデータを取得できるようにするには、様々な工夫が必要であり、そこが現在の研究課題です。

車に関する研究では、車両の接近に対する振動の評価やカーナビゲーションの振動による情報提示などを個別に行ってきましたが、複数の要素を複合的に組み合わせた場合の評価はまだ十分ではありません。そのため、現在はその点に取り組んでいるところです。

感性のデータ化という大きなテーマの下、住宅検索、ロボットと人間の位置関係、車内での情報提示など、様々な分野で研究を進めています。

それぞれの課題に適した手法を用いて、より人間の感性に寄り添ったシステムの実現を目指しているところです。

感性は100%数値化できない!?人間の多様性が生み出す面白さと難しさ


岩手県立大学 取材イメージ画像
―――感性的なデータ収集の研究において、グミや柔軟剤、コーヒーなどを対象としていますが、このような分野では企業からのニーズが今後高まっていくのでしょうか?例えば、食品メーカーなどからの需要はあるのでしょうか?

感性的なデータを産業に応用するには、基本的に企業の協力が不可欠です。

ただし、単一の企業だけでは難しく、業界団体全体からのバックアップが必要だと考えています。特に海外のグミなどを扱う場合、一社だけでは限界があるでしょう。

重要なのは、例えばコーヒーの場合、『Kaldi』などの店舗で提示される苦味や酸味の値が、その会社やお店の基準に基づいているという点です。

グミについても、「プレッツェルのようなグミ」や「ガチガチのグミ」といった表現がありますが、それが全てのグミに当てはまるわけではありません。多くの場合、企業内での相対的な比較に基づいて情報が提供されているのです。

しかし、感性検索の面白さは、そうした枠を超えて、より広い視点でデータを分析することにあります。
企業の垣根を超えて分析できれば、より正確な感性検索が期待できます。

したがって、感性的なデータ収集においては、個別の企業ではなく、業界全体の協力を得ることが重要だと言えます。
そうすることで、より客観的なデータを収集し、感性検索の精度を高めることができるのです。

―――感性というのは、一般的には感覚的なものに近いと思われがちですが、先生の研究では感性を数値化し、見える化することが可能だと思います。感性を数値化する上での難しさや面白さといったものは、どのような点にあるのでしょうか?

先ほども少し触れましたが、感性は人によって感じ方が様々であるという点が重要です。

地域、性別、年齢などの違いによって、言語の使い方や、ある言語から想像するものが微妙に変化してきます。

そのため、感性を100%数値化することは基本的に無理だと言えるでしょう。

ただし、現段階では、多くの人が共通して感じていると思われる枠組みを捉えることはできます。

感性検索では、100%の確信を持って1つの結果のみを推薦するのではなく、「一番こういうふうに思われています」「2番目はこういうふうに思われています」といった順位付けの形で提示することで人による違いがあっても検索結果に満足できるようにしています。

また、データを収集する際には、男女比や年齢比などの影響を考慮する必要があり、幅広い年齢層からデータを集めなければならないという難しさがあります。

車の振動に関する研究でも同様の問題があるんです。
高齢者や体格の異なる人、性別による差異、座り方や路面状態の変化などによって、結果は変わってくるでしょう。

しかし、そうした差異を踏まえた上で、大多数の人にとって適切な範囲を見出すことが重要なのです。

感性を数値化する上での面白さと難しさは、こうした人間の多様性を考慮しつつ、最大公約数的な解を見つけ出すことにあると言えます。

100%の精度は望めないかもしれませんが、多くの人にとって役立つ感性検索システムを構築することが、この研究の目的です。

―――車の研究に関して、感性と運転には密接な関係があると思われます。近年、自動運転技術が注目される中で、先生の感性を考慮した研究は自動運転技術にどのような影響を与える可能性があるのでしょうか?また、既に実装されている部分はあるのでしょうか?

現時点では、感性研究の成果が自動運転技術に直接実装されているわけではありませんが、様々な企業に話をしに行ったりしています。

完全自動運転の状況になり、運転手が不要になれば、この研究の意義はあまりないかもしれません。
しかし、現段階では、事故が起きた際の責任の所在という問題があります。

完全自動運転になる前の段階では、法律的にも倫理的にも、運転手や責任者が乗車していなければならないでしょう。
責任者は、機械に問題が発生した際に、すぐに手動運転に切り替える必要があるからです。

つまり、実際に運転はしていなくても、何かあった時にすぐに運転を引き継げる状態でいなければいけません。

そのような時代になれば、視覚や触覚以外の感覚からも情報にアクセスすることが非常に重要になってくると考えています。

なぜなら、機械の判断に委ねる部分が増えるほど、機械が何を考え、どのような情報を基に判断しているのか、そしてどこにエラーがあるのかを人間が把握する必要があるからです。

コンピューター技術の進歩に伴い、カーナビやミラーの警告灯、車線逸脱警報など、ドライバーが処理すべき情報量は増加の一途をたどっています。これらの情報を適切に処理するには、目と耳だけでは不十分でしょう。

完全自動運転の際に、例えば右左折や右左カーブの手前で、事前に振動などで通知することで、本を読んだりスマホを操作したりしている乗員に適切に伝えることができるかもしれません。

これは、私としても今後研究を進めていくべき分野だと考えています。

―――食感や感覚情報が可視化されることで、将来的に消費者の日常生活や選択がどのように変化していくのか、どのように予想していますか?

食感や感覚情報の可視化によって、様々な効果が現れると思います。

例えば、ローカルフードの検索に関して、自治体の視点から見ると、地元の人にとっては当たり前だと思っていたことが、実は他の地域の人には当たり前ではないということに気づく可能性があります。

そうなると、それを町おこしのためのアピールポイントとして活用できるかもしれません。

盛岡の例を挙げると、ニューヨーク・タイムズで取り上げられるなどして、盛岡の魅力が広く知られるようになりました。

それ以前は、盛岡の名物といえば、わんこそばや冷麺ぐらいしか思い浮かばなかったかもしれません。

しかし、『福田パン』というコッペパンがあることをテレビで取り上げられ、全国の人々がその存在を初めて知ったのと同時に、盛岡の人々も「これはどこでも売っているものではないのか」と気づいたのです。

また、じゃじゃ麺の食べ方として、最後にちーたんというスープが出てくることも、他の地域の人には知られていないことでした。

このように、地元の人々にとっては当たり前だと思っていたことが、意外と知られていないということが明らかになり、それが町おこしのヒントになる可能性があります。

また、感覚情報の可視化によって、商品選びの際のミスマッチが減るということも考えられるでしょう。

現在は、何かを買う前に必ず調べるのが一般的ですが、食感などは実際に食べてみないとわからないことがあります。

例えば、カチカチのグミを探していたのに、買ってみたら意外と柔らかかったといったことがあるでしょう。

感覚情報が可視化されれば、試食せずとも、あるいは現地に行かずとも、商品の特徴を把握できるようになるかもしれません。

これは、ネット通販の発展にも寄与すると考えられます。

AI時代の生き残り術 – 人間らしさが未来を切り拓く!


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―――感性がデータ化されていく中で、AIと人間の感性が交わることによって、50年後の未来にはどのような世界が広がっているのでしょうか?先生の目線で、新しい技術や世界観について見解を教えてください。

今回の研究の話題とは少し外れるかもしれませんが、多くの人がAIに仕事を奪われるのではないかと危惧しています。実際にそうなる可能性もあるでしょう。 しかし、私は人間の個性的な感性がとても大切だと考えています。

みんなが同じことを考えるのであれば、それはAIでも代替できるかもしれません。
集合知の中心を捉えることはできるでしょう。しかし、人によって感性や考え方は異なります。

そうした多様性こそが、新しいアイディアを生み出す源泉なのです。みんなが思いつかないようなことを考えられるのは、人間ならではの強みだと思います。

AIが発展しても、人間の独自の発想を完全に再現することは難しいでしょう。
感性検索システムがどのように進化していくかという点に関しては、現時点では明確な答えを出すことは難しいですが、人間にしかできないこと、つまり一人一人が持つオリジナリティを発揮していくことが重要になってくると考えています。

一方で、あまり深く考える必要のない作業に関しては、AIに任せても良いのではないでしょうか。
例えば、多くの人が思い浮かべるような検索結果を、労力をかけずに見つけられるようになったり、適当に絵を描いてほしいと言えば、的確に描いてくれるようになったりするかもしれません。

つまり、将来的には、AIと人間がそれぞれの長所を活かし、協力し合える世界が実現するのではないかと思います。
AIには単純作業や一般的なニーズへの対応を任せ、人間は独自の感性や創造性を発揮することで、より豊かな社会を築いていけるのではないでしょうか。

―――感性のデータ化は、これからの時代において新しいビジネスやマーケティングの可能性を開いていくと思われます。感性のデータ化に対する需要は、今後も伸びていき、進化発展していくのでしょうか?

80点や70点レベルのものを大量に作る部分に関しては、感性のデータ化によって進歩していくと思います。人が満足するレベルのものを自動的に生成する時代は、もう既に到来しているでしょう。

ただし、例えばピカソのキュビズムを知らなかった時代のAIに、いきなりキュビズム風の作品を作らせることは難しいかもしれません。

既存の様式を与えれば、AIは似たような作品を作ることができますが、人間が知らなかったことを発見し、新しい様式を生み出すのは、天才や独創的な人間の役割だと思います。

AIがそこまでできるようになるには、もう少し時間がかかるのではないでしょうか。

AIが出力する回答は、ある種、既に存在するデータに基づいているため、現状では80点から70点レベルのものは作れますが、それを人の手で磨き上げ、より良いものにしていくことに関しては、AIにはまだ限界があると思います。

ホームページ作成を例に取ると、「こんな感じで良いよね」というような一般的なデザインは誰でも作れる時代になったかもしれません。 しかし、普通であることが良いとされる分野では、プロフェッショナルとしての人間の感性やエッセンスが重要になってくるでしょう。

物を買ったり、文章を書いたり、音楽を作ったり、論文を書いたりする際には、人によって表現方法や書き方に違いがあります。
そうした中で、「この表現はこの人だけのものだ」と認識できるのは、人間の特別な能力だと言えるでしょう。

例えば、宮沢賢治の文章には独特の雰囲気があり、「宮沢賢治っぽい」と表現されることがあります。
もちろん、後から宮沢賢治風の文章を作ることはできるかもしれませんが、それとは異なる点があります。
人間は、作家やアーティスト、あるいは政治家など、様々な分野の人物の個性を認識することができるのです。

しかし、AIにとっては、既存のデータを基に新しいものを生成することはできても、革新的な芸術家のように全く新しいスタイルを生み出すことは難しいのかもしれません。

つまり、感性のデータ化が進んでも、人間ならではの創造性や独創性には、まだAIが及ばない部分があると言えます。

教育の現場にいる立場から言えば、やはり個人の感性や表現力の違いを理解し、新しい価値を生み出していくことは、人間の重要な役割であり続けるでしょう。 AIの発展を活用しつつ、人間の創造性を育むことが、これからの社会において求められるのではないでしょうか。

―――感性がデータ化されていく社会において、将来的に最も期待していることや楽しみにしていることは何でしょうか?

世の中は既に十分便利になっていると感じることがありますが、より便利なものが出てくると、やはりそちらの方が良いと思ってしまうものです。
そのため、常により便利なものを見つけていかなければならない状況にあります。

感性のデータ化に関して言えば、将来的には、人間とロボットやAIを搭載した車などとの距離がより近くなり、人間に近い振る舞いができるようになると思います。
一緒に生活していても違和感を感じないようになるでしょう。

今までは、ロボットと人間には距離感があり、人間が近寄らなければならなかったのですが、そういった気遣いをしなくて済むようになります。
例えば検索する際にも、言い方を変えて検索しないと目的の結果が出てこないといったことがなくなるでしょう。
運転する際も、一生懸命頭を使って整理する必要がなくなります。

つまり、機械が人間により近くなることで、人間は気づかないうちに便利な生活を送れるようになる時代が来ると思います。
そのために、様々なアプローチが試みられているんです。
例えば、見た目で違和感なくコミュニケーションできるようにする取り組みをしている研究者もいます。

既に実現している例としては、会議の議事録を音声認識で自動的に文字化するシステムなどがあるんです。
また、日本語を英語に翻訳するソフトでも、以前は主語を正しく入力しないと適切な翻訳ができませんでしたが、そういった制約が少なくなってきています。

今後は、カメラを多数設置しなければならないといった制約も、様々な意味でなくなっていくのではないでしょうか。
人間とロボットやAIとの垣根がより低くなり、シームレスな協働が実現する未来には期待を持っています。

感性×テクノロジーが創る未来 – 研究者たちの挑戦と未来への期待


岩手県立大学 取材イメージ画像
―――将来的に挑戦していきたいことや、研究を通して実現していきたいことについてお聞かせください。

現在取り組んでいる研究は、もちろん継続して進めていきます。

それに加え、先ほどお話しした住宅検索に関する研究以外では、害獣駆除をロボットで行う研究にも取り組んでいるんです。

この研究では、人間以外の生物に対してもロボットの意図が伝わるようにすることを目指しています。

具体的には、害獣を逃がしたり、威嚇して攻撃したりするところに着目し、ロボットがどのようにすれば動物を怖がらせることができるかを考えているんです。

岩手県は農業が盛んな地域であり、ブドウ園やアワビの養殖場などでは、イノシシ、ハクビシン、鹿などの害獣が問題になっています。
そこで、ロボットを用いて害獣を追い払い、近づかせないようにする方法を検討しているんです。

従来の害獣対策には、電気柵や臭いによる忌避などがありますが、動物が慣れてしまうという課題があります。

重要なのは、動物が慣れないようにすることです。動物が恐怖を感じる要因としては、見たことがないものや、よくわからないもの、恐ろしいと感じる振る舞いなどがあると考えられるでしょう。

そこで、ロボットの動きや音、光などを組み合わせ、ランダムに変化させることで、害獣が継続的に怖がるような仕組みを作ろうとしています。

特にアワビの養殖では、1個あたりの単価が高いため、少しでも被害を防ぐことができれば大きな効果が期待できます。ロボットの価格が多少高くても、それに見合うだけの効果が得られそうです。
ロボットの位置を測定する際には、用途によって適したセンサーを使い分けています。人間とのコミュニケーションを目的としたロボットでは、数センチレベルの高精度が必要なため、超音波センサーを用いています。

一方、害獣駆除のように屋外で使用する場合は、GPSやLiDAR(赤外線や画像による距離測定センサー)を活用しているんです。

センサーの選択は、何を計測するのか、どのような環境で使用するのか、求められる精度や時間的な制約などによって異なります。

リアルタイムに位置情報が必要な場合もあれば、そうでない場合もあるでしょう。

今後も、様々な分野でロボットや感性のデータ化に関する研究を進め、人間や動物とのコミュニケーションをより円滑にするための技術開発に取り組んでいきたいと考えています。

技術の進歩により、私たちの生活はより快適で効率的なものになっていくでしょう。

私たち研究者も、人々の生活をより豊かにするための技術開発に尽力していきます。
皆さんと一緒に、より良い未来を楽しみにしていきましょう!

新井那知
ライター
So-gúd編集部
新井 那知
埼玉県・熊谷市出身。渋谷の某ITベンチャーに就職後、2016年にフリーランスライターとして独立。独立後は、アパレル、音楽媒体、求人媒体、専門誌での取材やコラム作成を担当する。海外で実績を積むために訪れたニューヨークで、なぜかカレー屋を開店することに—-帰国後は、クライアントワークを通してライターとして日々取材や編集、執筆を担当する。料理と犬、最近目覚めたカポエイラが好き(足技の特訓中)。
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