「ドローンが私たちの未来をつくる。」 テクノロジーの可能性を追求する2人の起業家が「ドローン開発事業」にかける想い
「ドローン」といえば、今年2021年7月に開催された 「東京2020オリンピック」の開会式を思い描く方が多いだろう。ドローン1,824台を使い、オリンピックのエンブレムから様々な形へと飛び回る美しいパフォーマンスは、世界中の人々に感動を与えた。
このように、ドローンはプロモーション活用や、空撮利用のイメージが強いかもしれない。しかし、実際には農業や医療現場での活用事例も出てきている。ドローン事業の市場規模は、今後5年間で現在の約2倍となる4.75兆円、現在の約2倍に成長する予測だ。
市場成長から見てもドローンへの期待を感じるが、「飛行時間が短い」という課題があることをご存知だろうか?実は一般的なドローンの飛行時間は10分ほどで、大型のドローンでも最大30分程度しか飛ぶことができない。
このような課題に挑み、ドローン開発事業に未来を懸ける2人の起業家であり開発者がいる。株式会社リバースN51 CEO兼会長の中川 孝一氏と、アローサル・テクノロジー株式会社 代表取締役CEO 佐藤 拓哉氏だ。
今回は、お2人が挑むドローン開発事業について、きっかけから開発状況、未来のドローン活用方法や可能性についてお話を伺った。
株式会社IFPC(イフペック)会長
帰国後から現在にいたる約44年以上、起業家として多くの課題解決事業を推進している。
初めて起業した事業では、企画会社を設立。「ファミリーレストランで使用していた白紙のペーパーランチョンマットに広告を載せる」新たな手法のPR戦略を打ち出し、ムーブメントを起こした。
その後も別会社の起業を行ったのち、現在の「株式会社リバースN51(エヌゴーイチ)」を2005年に起業。
「太陽光パネル自動洗浄システム」などのハードウェア事業をメインに展開し、多くの開発特許を持つ。国内だけでなく、ドバイなど海外でのニーズも高くグローバルにサービスを展開している。
株式会社IFPC(イフペック)IT事業部統括顧問
2013年9月に「アローサル・テクノロジー株式会社」を創業。オフショア開発から始まり、2015年頃からAI事業を開始。
2020年にはバングラディシュに進出し、グローバル展開も推進している。また国内では、東京タワーと「メタバース」の開発をするなど、最先端テクノロジーの研究開発も行っている。
「ソフトウェアとハードウェア」異なる分野の2人が新たなビジネスをはじめたワケ
────では早速ですが、お2人がどのようなことをされているのか、ご自身のメイン事業について教えていただけますでしょうか?
中川 孝一 氏 (以下 中川):
「私は、『株式会社リバースN51』の会長兼、代表を務めています。一言で言えば、依頼に対して解決策を提案する “ 企画ソリューション事業 ” ですね。
具体的なサービス内容としては、『太陽光パネルの自動洗浄システム・雨水回収装置・雨水自動循環散水装置』がメイン事業です。このシステムをつくったことで、豪雨による太陽光発電所の崩壊や、砂漠地での砂による電力効率の低下など、さまざまな課題解決に貢献しています。」
佐藤 拓哉 氏(以下 佐藤):
「私は中川さんとは反対に、ソフトウェアの開発事業をメインとした『アローサル・テクノロジー株式会社』の代表を務めています。当社は『AI事業』を展開し、AIの導入サポートから開発まで行っています。
現在は、東京タワーと一緒に『バーチャル東京タワー』という企画を通じて、『メタバース』の開発や、地方自治体とのAI活用なども初めているところですね。一方で、オフショア開発にも注力していて、昨年2020年にバングラディシュに進出しました。」
────全く異なる事業をされているお2人ですが、出会いのきっかけは何だったのでしょうか?
中川:
「実は、昨年の4月頃に新しく六本木にバーを作ったんですよ。コロナ禍で多くの飲食店が営業できない状況で、会社の周りに集まる場所がなくなってしまったんです。そこで、『皆が集まれる場所を作ろう』と思いバーをはじめて、そこにお客として来ていたのが佐藤くんでした。」
佐藤:
「中川さんの飲みっぷりのかっこよさに、男として惚れてしまいましたね(笑)。
中川さんは人としての魅力にも溢れた方ですし、40年以上事業をされている起業家の大先輩としても、勉強になることばかりでした。」
中川:
「彼がソフトウェアの開発事業をやっていると知って、この時からドローンについて少し話をはじめていたんです。彼はソフトウェアが専門分野だから、ドローンのプログラムについて聞いたりね。」
佐藤:
「ある日、中川さんに『ソフトウェアだけで存在しているサービスってある?』と聞かれたんですよ。私はソフトウェア開発事業をずっとやってきたので、この質問ではっとさせられましたね。『すべてハードウェアを通してソフトウェアは届いている』そんな基本的なことに改めて気付かされたんです。」
中川:
「この質問をした理由は、『ハードウェアがわかっていなければ、最適なソフトウェアをつくることはできない』ということを彼に伝えるためでした。『Google(グーグル)』や『Apple(アップル)』を見てください。彼らは皆、ソフトウェアだけじゃなくハードウェアも作っていますよね。要は、彼にソフトウェアだけじゃなくてハードウェアも勉強して、両方の技術を身につけるべきだと言いたかったんです。」
佐藤:
「私は、祖父が工務店をしていたこともありモノづくりを近くで見ていたので、ハードウェアにも興味はありました。それに、いまの日本にソフトウェアとハードウェア両方できる人ってほぼいないなと気づいて、両方できたらかっこいいと思ったんですよね。それから毎週『中川さんDAY』をつくって(笑)
中川さんにハードウェアについて、教えていただくようになりました。」
────確かに言われてみればその通りですね。では、そもそも「ドローン開発事業」をビジネスとして立ち上げようと思われたのはなぜでしょうか?
中川:
「ドローンには絶対ニーズがあると思っていました。なぜなら、人間は『歩く・走る・泳ぐ・話す』なんでもできますが、空は飛べないからです。それに、いま空の空間を活かしたモビリティは、飛行機とドローンしかありません。だからこそ、ドローン事業はもっと成長していくだろうと確信していました。
ドローンについて調べてみると、映画での空撮利用など、私たちの生活に関係ないところで使用されている機会の方が多いと気づいたんですよ。だから皆さんドローンは知っているけど、『ドローンって何ができるの?』と聞かれると、ほとんどの人は多くの答えをしりません。だからこそ『ドローンで何ができるのか』を明確に提案し、情報発信していけば間違いなくニーズがあるだろうと思ったんです。」
佐藤:
「私は、はじめに中川さんからドローン開発の構想を聞いた時、正直ハードウェアで収益を上げるイメージができなかったんですよ。でも調べてみると、ドローンは時速100キロ以上出すことができ、空間移動を効率的かつスピーディにできることも知りました。海外では医療現場で臓器移植時の運搬に使われている実例もあり、ニーズの高さや興味が湧いてきたんです。
それと、私が中川さんとビジネスを一緒にやろうと決めた理由は、もう1つあります。『サトタク(佐藤氏)にハードウェアの開発技術とビジネスのノウハウを教えて、私は引退する』と言われたからなんですよ……
この中川さんの想いを受け取ったからこそ、全てを学ばせてもらいながら、一緒にドローン開発事業をやろうと決断しました。」
中川:
「私は、起業家として40年以上事業をやってきましたが、もう70歳を超えました。そろそろ、自分の培ってきた全てのノウハウを次世代に引き継いで、引退したいと思っているんです。私にとってこのドローン開発事業は、最後の事業だと考えているんですよ。」
長時間飛行できるドローンは作れる?
────そんな想いがあったんですね…最後の事業に選ぶほど「ドローン開発」には、面白さや可能性があるということでしょうか?
中川:
「そうですね、海外では『ワクチン輸送・白バイ(UAEドバイ)・地雷除去・臓器運搬・宇宙ドローン』など、ドローンを活用したさまざまな実例が上がっています。しかし、本格的な実用化がされるのは、まだまだこれからでしょう。
ドローンの実用化が進まない大きな理由の1つが、『飛行時間の短さ』です。現状、一般的なドローンは10分程度、農業の散布用のドローンなどでも30分程度の飛行しかできません。この課題を解決出来た時、さらにサービスの幅は広がると考えています。
ドローンの長時間飛行ができるようになれば、私たちが想像する以上のニーズが生まれるかもしれない────。
これがドローンに秘められている大きな可能性です。例えるなら、固定電話ができたばかりで、スマートフォンが想像できないのと同じ。(笑)
ドローンもまだ基礎ができたところです。だからこそ、これから今私たちが想像できる範囲以上に、未来のドローン活用には大きな可能性があると思っています。」
────今のお話を聞いて、私もワクワクしました!もしドローンの長時間飛行が可能になった時、どのような実用化できる活用法があるのでしょうか?
佐藤:
「実用化できる活用サービスは、3つあります。1つ目は『離島への配達』、2つ目が『新聞配達』、3つ目が『田植え』です。これらのドローン活用は、これからの高齢化社会や地方の過疎化問題に対して、いち早く対応していける施策だと思っています。
ドローンの長時間飛行が可能になれば、新規事業の活用だけでなく、各種『農業・配達・点検』事業の実用化を加速させていくことになるでしょうね。」
中川:
「あとは、災害時の『情報収集』できる無人カメラとしての活用も広がっていくと思います。今はヘリコプターが飛びますが、ドローンの方が危険地帯に早く安全に行けますからね。このように、ドローンの飛行時間が長くなれば、社会貢献への活用も広がっていくのではないでしょうか?」
────では現在、事業の「構想」から「開発」フェーズに入られていると思いますが、ドローン開発の進捗はいかがでしょうか?
中川:
「ドローン開発の進捗は、完全に事業化できるプロダクトが100だとすれば、20%ほどでしょうか。実は、長時間の飛行を実現するための、自家発電の仕組みはほとんど出来上がっているんです。なので理論上は、今の100倍以上の飛行時間にできる。ドローンの羽が回ることで発電し、その電気を本体に充電、その充電した電気で羽を回すという仕組みです。」
────そこまで出来ているんですか!?(驚)
中川:
「そうなんです。他社では長時間飛ばそうとするとガソリンを使ったりするんですが、ガゾリンを積めば火災のリスクも大きくなります。それに、今後はクルマもガゾリンが使えなくなる時代に、現実的ではありません。なので私たちは、安心安全にドローンを飛ばすため『磁石』を利用して発電しているんです。」
────ちなみに、この『磁石』を使った発電の仕組みは、どれくらいの期間で思いつかれたのでしょうか?
中川:
「『長時間飛ぶドローンを作ろう』と思ってから、だいたい1日ほどでしょうか。」
────1日ですか!?(驚)
中川:
「実は、この『磁石』で自家発電させる仕組みは、以前のプロジェクトで使った経験があったんです。それで、『この仕組みは、ドローンにも活用できるな』と思って────。
ここから羽を回すため、電圧を4倍ほどにする必要がありましたが、改良も重ねこの仕組み自体はほとんど完成しています。電力が維持できたら、次は『飛ぶ』フェーズです。ドローンを飛ばすには、特殊な『ブラッシュレスモーター』が必要でした。この見本が、ちょうど今日できたところなんですよ。」
佐藤:
「それは、私も今聞いた最新情報ですね(笑)!」
中川:
「今は部品が届かず半導体が作れないので、ここから1~2カ月は必要になりそうですが……
しかし着手から理論値、実装まで進めていく中で、新しいドローンの完成が見えているのも事実です。」
未来に求められるドローンの安全性
────すごい…全ての展開が早くて驚きました…
佐藤:
「そうなんですよ。私たちのドローン開発事業は、『株式会社IFPC(イフペック)』として今年2021年7月に法人化して、現在まだ5カ月ほどです。中川さんのスピード感に、私自身も驚きましたね……
会社を立ち上げて1週間後には、名刺も事務所もできてましたから(笑)。」
────法人化のお話がでましたが、会社名の「イフペック」とはどのような意味が込められているのでしょうか?
中川:
「『イフペック』とは、『Ideal Future Planning Company』の頭文字IFPCを取り、名付けた商標です。『理想的な未来を企画する会社』という意味を込めました。実は、中川も私も代表取締役ではなくて、弊社代表は高橋 佑貴が務めています。高橋も、実はバーで知り合った1人なんですよ(笑)」
────なるほど、3名で運営されているんですね。
中川:
「高橋は、今までビジネスとは無縁の世界にいました。医療従事者として、病院や施設で行政の仕事をしていたんです。バーで彼女に、ドローンが医療現場で実証実験されている話をした時、彼女はドローンが社会貢献できるプロダクトだとわかり興味をもったんですよ。そこで『一緒に会社をやらないか』と誘ったところ、彼女はふたつ返事で仕事を辞めドローン事業をやることに承諾しました。この潔い行動力を見て、高橋に代表取締役を務めてもらうことを決めたんです。」
佐藤:
「高橋には、代表の他に広報も兼任してもらい、現在は開発と平行で広報活動もはじまっています。PRプラットフォームの『イプロスものづくり』でドローンを掲載しているんですが、つい先日、掲載されている15万点以上のプロダクトのうち、20位以内に弊社のドローンがランクインしたんですよ(驚)!」
────まだ完成していないのに、すでに注目を集めているということですね!それほどまでにドローンへの期待値が高いということでしょうか?
中川:
「私たちの開発するドローン『Infinite 51(インフィニット ゴーイチ)』を掲載して、まだ2~3週間ですが、すでにサービスが5,500名以上に閲覧されています。やはり、ドローンへの興味とニーズの高さが伺えますね。」
────なるほど、これだけ期待値も高いと『Infinite 51』が完成したら、この仕組みを使った新しいドローンも増えていきそうですね。
中川:
「そのとおりです。長時間飛べる仕組みさえできれば、おのずとドローンの種類は増えていくでしょう。例えば、ドローンの大きさによって多数の人も運べるようになったり、ドローンタクシーなんかも実用化されるかもしれません。そうなると、次は『安全性』のあるドローンを考えるフェーズになっていきます。空中での衝突、墜落を防ぐ必要がありますからね。」
────それでは、今後ドローンに求められる「安全性」を高めるための施策はございますか?
中川:
「やはりドローンは、羽が遅くなったり止まったりすれば当たり前に墜落してしまいます。この墜落時に、人的被害や物流被害がでないよう、ドローンにパラシュートを搭載することを考えています。非常時にこのパラシュートを開かせ、警告音が鳴るシステムにすれば被害も最小限にとどめ、ドローン自体も守れる仕組みです。」
佐藤:
「そもそもドローンが墜落する多くの原因は、『操縦者のスキル不足・メンテナンス不足・悪天候・電波障害』なんです。私たちは、このようなドローンが墜落する根本原因から解消していきたいと考えています。」
中川:
「実は今、『電波障害』を解消する仕組みを大手通信企業と開発を進めているところなんですよ。セルラー(多数の基地局を配置した無線通信方式)を繋ぎ、飛行途中でコントロールが効かなくなることを防ぎ、安定した長時間飛行を可能にする仕組みです。あまり詳しいことは言えませんが、彼らはドローンをIoTデバイスのようにインターネット通信を介して情報発信するシステムを持っています。このシステムを活用できないか考えているところですね。」
『イフペック』が目指すドローン事業のビジョンとは
────着実に今までの概念を変えるドローンの完成が近づいていますね!
では最後に、今後お2人が目指していくビジョンをお伺いできますでしょうか?
佐藤:
「『イフペック』としては、ドローンの開発やドローンを活用した新規事業の企画・提案だけでなく、ドローン事業者の育成までしっかり行っていきたいと考えています。ドローンパイロットの育成や、ビジネスパートナーを結び『イフペック』をチームとして広げていきたいですね。」
中川:
「私は、今までも多くの課題を解決するためのプロダクトをつくってきました。私自身の最後のビジネスとして、今度は『ドローン』をつうじて社会課題を解決するニーズに答えていきたいですね。個人的な想いとしては、このドローン事業を通じて高橋・佐藤この2人に全てを伝え、早く引退したい(笑)。
彼らのような次世代に、ハードウェア開発のノウハウやビジネスの思考プロセスなど、私が40年以上起業家として培ってきた全てを、しっかり引き継いでいきたいと思います。」
佐藤:
「私自身もさまざまなサービスをつくってきましたが、今回はじめて中川さんと一緒にビジネスをしてみると、驚くことばかりでした。以前、中川さんは『今まで1度も自分から営業したことはない』とおっしゃっていて、正直、営業なしでなぜ多くの利益を出し続けてきたのか理解できなかったんです。
しかし実際、勝手に問い合わせが舞い込んでくる事実を目の当たりにして、とても驚きました。中川さんは、良いプロダクトをつくるだけではなく、潜在ニーズがあるところで事業を起こし、そのニーズに答えるプロダクト開発の技術を持っている。これはもう最強じゃないですか(笑)
この短期間でも多くのことを学ばせていただいているので、今後もしっかりビジネスのノウハウ、ハードウェア開発のすべてを中川さんから受け継ぎ自分のモノにしていきたいですね。」
中川:
「私たちの『Infinite 51』が完成した時、ドローンが今後、安心安全に長時間飛行する仕組みができあがります。『このドローンの技術を活用して、こんなことをやりたい!』という新たな構想を考えていくのは、皆さんです。私たちが想像もできない便利な未来がやってくるかもしれませんね。これが、私にとっての社会貢献の仕方なんですよ。」
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この取材が終わったとき、ドローンにとりわけ興味がなかった私が、ドローンの可能性にワクワクしていた。まだまだ開発途中ではあるが、長時間飛行の仕組みが完成すれば、未来にはドローンを活用した多くのベンチャービジネスが生まれるのではないだろうか。
そして、中川氏に魅了されたと話す佐藤氏の気持ちもすぐに理解できた。彼の話す言葉は、すべて綺麗事がなく、優しさと余裕を感じさせる。彼になぜ起業家になったのか質問するとこう答えた。
「私はお金を儲けるためにビジネスをしています。利益が出れば、結果的に必ず社会貢献に繋がりますから。」
そう言い切る彼の言葉には、全てを納得させる実績がある。彼の事業は今年で44年を迎える。帝国データバンク調べで40年以上、事業を続けている企業は全体の0.01%しかいないのだ。長年にわたって起業家として実績を出し続けた経験に基づく「ビジネス理論」は、聞き入ってしまう。
実際、世界的に誰もが知る名だたる経営者たちが、自ら彼と契約を結びにくるのだ。そんな彼が、次世代にすべてを受け継ぐために最後に選んだ『ドローン開発事業』。彼らのドローンが完成する日が待ち遠しい。
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