私たちEXIDEAは【世界に革新を与えるグロースハッカー集団】を目指している会社です。アメリカではすでに「グロースハック」や「グロースハッカー」という言葉が広く流通していますが、日本ではまだ「グロースハックとは何か?」、言葉の定義や意味が浸透していない印象もあります。
実際、2010年にアメリカで生まれた言葉「グロースハック」には明確な定義が無く、その意味合いは語る人によってさまざまな表現をされるのが現状。ただし、数多くのグロースハックの成功事例を確認すると、その仕事を一言で言えば「最短時間で圧倒的な売上を創出する」こと。つまり、グロースハッカーとは最短時間で圧倒的な事業成長を会社にもたらす人との意味合いで使われることが多い様子。
目次
2010年にショーン・エリス氏が生み出した言葉「グロースハック」
「グロースハック」という言葉が初めて世の中に出たのは2010年、ショーン・エリス氏のブログ記事「Find a Growth Hacker for Your Startup」で使われたのが始まりです。(意訳すると“スタートアップ会社には必ずグロースハッカーが必要”といった内容の記事)
このショーン・エリス氏自身も有名なグロースハッカーで、アメリカでは“グロースハックの生みの親”として知られています。オンラインストレージサービス「Dropbox」のマーケティング責任者を務めた後、アメリカのスタートアップ企業でマーケティングに携わる中で、自分と同様にグロースハックを実践できる人材が必要となりました。ところが、なかなかそのようなグロースハック人材を採用できなかったそうです。
エリス氏が定義する従来のWEBマーケティング人材とグロースハッカーの違い
優秀な従来型のWEBマーケティング人材が持つ「広告マーケティング戦略の立案」や「マーケティングチームの構築」「外部ベンダーのマネジメント」という能力は、特に立ち上げ初期のスタートアップ会社の「成長」(=グロース)には直接役立たないとショーン・エリス氏は考えます。
むしろ成長にのみこだわり、自分の担う仕事のすべてを会社・事業の持続的で(sustainable)拡大可能な(scalable)成長に結び付けられるような人材、すなわち「グロースハッカー」がスタートアップ企業に必要と考えました。
従来のWEBマーケティング人材 | ショーン・エリス氏の定義するグロースハック人材 |
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マーケティングにかかわる幅広い知識やスキル ・優れた広告マーケティング戦略を立案できる ・マーケティングチームを構築・マネジメントできる ・外部のベンダーと良好な関係を構築できる |
成長にこだわるスタンス・能力 ・会社や事業の成長・成功に深くコミットできる ・成長のためのデータ分析や、いくつもの改善アイデアを創造できる ・仮説を検証する手法や具現化する方法に精通している |
会社や事業が軌道に乗って規模が拡大すれば広告予算も増え、優秀な従来型のWEBマーケティング人材や有料の広告宣伝も必要となりますが、スタートアップ企業ではまずそのフェーズに至ることが必要。それには従来型の広告マーケティングに頼らない「グロースハック」という考え方が重要と初めて語ったのが、グロースハックの第一人者、ショーン・エリス氏なのです。
アメリカの有名・著名なグロースハッカー
ショーン・エリス氏をはじめ、アメリカには有名・著名なグロースハッカーが多数います。みなさんもよくご存知のFacebookやTwitter、Airbnb、Uberなど、短期間で圧倒的な急成長を実現している会社やサービスには、必ずグロースハックと呼ぶべき仕事や成果があると言われています。
ショーン・エリス(Sean Ellis)
元Dropboxのマーケティング責任者、マーケティングツールを提供するQualarooのCEOを経て、現在はグロースハックの方法論や事例などを紹介、グロースハッカーズ・カンファレンスなどのイベントを主宰する「GrowthHackers.com」のCEO。
Dropboxに「友人・知人を招待するとストレージを◯GBプレゼント」といった紹介マーケティングの手法やインセンティブ機能を導入、同社のユーザー新規獲得をグロースハックし、会員基盤を急成長させたことで有名。
著書「Hacking Growth(ハッキング・グロース)」もおすすめの本
ショーン・エリス氏と、Facebookのプロダクトマネジャーであるモーガン・ブラウン氏が共同で執筆した「Hacking Growth(ハッキング・グロース)」は、グロースハックとは何かを知る上でおすすめの本。基本的な考え方から成功事例、グロースハックチームの立ち上げ方法など、グロースハックに関連するテーマが幅広く取り上げられています。
ライアン・ホリデー(Ryan Holiday)
アメリカン・アパレルのマーケティング責任者を務めた後、自身が立ち上げた会社でティム・フェリスやタッカー・マックスなどアメリカの著名な作家のマーケティング活動・メディア戦略立案に従事。そのWEBマーケティング戦略は、TwitterやYoutube、Googleでケーススタディとして取り上げられるほど優れたものと評価されています。
著書「Growth Hacker Marketing」(邦題:グロースハッカー)もグロースハックの入門本としてもおすすめです。
アーロン・ジーン(Aaron Ginn)
2012年のアメリカ大統領選挙で共和党のミット・ロムニー陣営が採用したグロースハッカー。ABテストやWEBサイトのデザイン変更・改善により、大統領候補のWEBサイトを通して1億8000万ドルもの献金の獲得に成功したことがニュースになり、グロースハッカーの存在が世の中でよく知られるきっかけにもなりました。
アンドリュー・チェン(Andrew Chen)
Uberのライダー・乗客グロースチーム(ユーザーの新規獲得をミッションとした組織)の元責任者で、現在はシリコンバレーでスタートアップ企業の投資家・アドバイザー。
ブロガーとしても有名で、「Growth Hacker is the new VP Marketing」(グロースハッカーは新しい形のマーケティング担当副社長である)という記事はグロースハッカーの定義を語る上で欠かせない、おすすめのブログ記事。
グロースハックとは「最短時間での圧倒的な会社・事業の成長」
「グロースハックとは何か?」の定義にはいろいろな表現がありますが、上記で紹介した有名グロースハッカーの言葉を借りると以下の重要な2点に集約できそうです。
- 最短時間で会社・事業の成長(=売上・利益の最大化)を確実に実現すること。
- かつ、その成長は一時的なものではなく持続可能かつ拡大可能な“仕組み”で実現されていること。
グロースハックとは予算や人員の限られたスタートアップでも実行可能な手法ですから、膨大な予算をつぎ込む従来型の広告マーケティングの方法とは異なり、最小コスト(人・モノ・カネ)で最大売上を実現するアイデア・仕組み(≒ハック)を創り出す、ことがグロースハックの前提条件です。
グロースハックとは「マーケティングの進化形」という考え方
“グロースハックは既存のマーケティングに反するものではない”というのはショーン・エリス氏の言葉。むしろグロースハッカーも、認知向上やブランディングなど従来のWEBマーケティング手法も理解しておく必要があります。ただし従来のマーケティング領域に限らず、短時間で成長を実現できるドライバーがあれば積極的に(それが製品開発だろうと営業戦略だろうと)関与・利用するのがグロースハックの考え方。
グロースハックとは「マーケティング領域の定義・解釈を拡大した進化形」という考え方もできそうです。
グロースハックの実践に必要なのはデータと創造力と探究心
アーロン・ジーン氏はグロースハックについての記事の中で、グロースハック施策の実践に必要なのは“データと想像力と探究心”だと述べています。
This mindset of data, creativity, and curiosity allows a growth hacker to accomplish the feet of growing a user base into the millions.
(https://techcrunch.com/2012/09/02/defining-a-growth-hacker-three-common-characteristics/より引用)
グロースハック施策の実践には科学的なアプローチが必要で、数字で検証・分析可能な手法を用いてこそ短時間で確実な成長を実現できると氏は言っています。つまりグロースハックの成功にはデータ(data)の検証や分析能力が重要です。
一方、成長につながる新たな仕組みや改善方法を考え付くには、ひらめきに似た想像力(Creativity)も必要。「持続的で拡大可能な成長アイデア」は初めから思いつくものではなく、いくつもの成長仮説を出し、1つ1つ丁寧に定量的な仮説検証を重ねることで初めて見えてくるもの。このような改善の積み重ねこそグロースハックの仕事であり、グロースハッカーは右脳も左脳もフルに使わなければならないと氏は伝えています。
最後に必要なのが探究心(Curiosity)。「なぜユーザーは自分のプロダクト・サービスを選んでくれたのか?」「なぜあのサービス・WEBサイトは急成長しているのか?」など、常に探究心・好奇心をもって“なぜ?”を繰り返し、絶えず次の改善や成長を追い求めるのがグロースハック成功のポイントです。
グロースハックとは効果を検証・追跡可能で、拡大可能
従来の広告マーケティングにありがちな「ブランディング」や「マインドシェアの拡大」などの漠然とした目的や効果ではなく、数字で置き換え可能な(ユーザー数やリピート率などの)明確な効果指標を猛然と追いかけ続けるのがグロースハックの仕事とライアン・ホリデー氏は言っています。
さらにグロースハックによる成果は拡大可能(scarable)で、バイラルにその商品やサービスが広がっていく状態、つまり勝手に、自己増殖的に成長が持続される状態が理想。アーロン・ジーン氏の言葉を借りれば“グロースハックの最終成果は、サービスそのものが何百万人ものユーザーを獲得し続ける半永久的なマーケティングマシンを創り出すこと”。そして、このスケーラビリティやバイラリティは偶然起きるものではなく、きちんと設計することで自ら創り出せるものだとライアン・ホリデー氏は言っています。
FacebookやDropbox、Twitter、Airbnbなどの会社は、従来のマーケティング手法でありがちなプレスリリースやPR会社を使った広告宣伝などをほとんど行わずに成長を実現しました。その裏側にはこのようなグロースハックの考え方や実践があったのです。
グロースハッカーとはマーケターとコーダー(エンジニア)のハイブリッド
この定義はアンドリュー・チェン氏の言葉で、「どうやって“現状の”プロダクト・サービスに顧客やユーザーを集めるか」というマーケティング的視点と、「プロダクト・サービスを少し変えたら、もっと顧客・ユーザーが集まるかも知れない」というプロダクト・サービスそのものの改善・改良を考える視点(コーディングやエンジニアリング的な視点)の両方がグロースハッカーには必要、と氏は述べています。(英語の原文はこちら)
つまり、グロースハッカーに求められる資質とはマーケッターとしてのスキルとエンジニアとしてのスキルの両方です。
オンラインサービスの内容やWEBサイトのデザインは常に変更可能
製品・サービスなどのプロダクトを短期間で変更できないことを前提にした従来型の広告マーケティング的発想と比較して、オンラインサービスやWEBサイトはABテストやランディングページの最適化(LPO)、コンバージョン最適化(CRO)、検索エンジン最適化(SEO)などにより、サービス内容や画面デザインの変更・改善が常に実施可能です。
このためグロースハックに必要なのはエンジニア志向のマーケターであり、マーケティング志向のエンジニアでもあり、マーケティングとエンジニアリングの両方の素養を兼ね備えたグロースハッカーなのです。両方の視点から高速でサービスを改善できるからこそ、最短時間での事業成長(=グロースハック)が可能になるということをチェン氏は伝えています。
グロースハック施策(WEBサイト改善やユーザー獲得)の成功事例
最後に「グロースハックとは何か?」について、さらに理解が深まるよう、運用するWEBサイト・サービスの改善や顧客・ユーザーの新規獲得など、アメリカでのグロースハック施策の成功事例を紹介します。
紹介マーケティングの手法によるグロースハック成功事例(Dropbox)
オンラインストレージサービス「Dropbox」は、いまや年間売上10億ドル、ユーザー数5億人以上の巨大サービス。Dropboxのサービス開始は2008年、およそ10年で急成長を実現した背景にあるのが、紹介マーケティングの手法を利用したグロースハックの成功事例です。
2008年9月、サービス開始直後の会員数は10万人。それがわずか15ヶ月後の2009年12月には40倍の400万人にDropboxの会員数は拡大しました。この急成長に大きく貢献したグロースハック施策の1つが紹介・インセンティブプログラム。「友人・知人をDropboxに招待すると追加ストレージ2GBを無料でプレゼント」という招待プログラムはバイラルに拡散し、従来型の広告宣伝に膨大な予算をかけること無く、数百万人の会員ユーザーの新規獲得に成功したというグロースハック事例です。
アメリカ大統領選挙でのABテストツールを活用したグロースハック事例
2012年のアメリカ大統領選挙では共和党陣営にグロースハッカーであるアーロン・ジーン氏がかかわっていましたが、2008年の選挙で当選したオバマ元大統領の陣営でもABテストツールを活用したグロースハック施策が実践されていたことが知られています。
アメリカ大統領選挙では、候補者が自身の考えをメールで配信するニュースレターの購読者を増やしたり、自身に献金してくれる人を多数集めることが重要で、このプロセスでもWEBサイトが最大限活用されています。また大統領候補陣営は献金獲得などの効果を短期間で改善・最大化するため、多数のグロースハッカーを採用しています。
2008年の大統領選挙におけるオバマ氏のキャンペーンではメールアドレスの登録率を改善するために24パターンのABテストが実施され、オリジナルのデザインに対して登録率が40%改善するパターンが見つかりました。その結果、寄付金額に換算すると6,000万ドル相当(60億円以上)の改善効果が実現されたというグロースハックの成功事例もあります。
重要なのはデータの分析・解析スキルと、質の高い仮説・テストの設計
この大統領選挙におけるグロースハック事例は、グロースハックツールを活用して検証可能なデータを取得・分析、改善テスト・ABテストを繰り返し実施することで、短期間で圧倒的な成長を実現したグロースハックの成功事例ですが、何より重要なポイントはデータの分析・検証スキル。
十分なデータの取得や分析・検証が行えなければ、WEBサイトやサービス改善のための質の高い仮説設定や、有効なABテストの設計はできず、どれだけ優秀なABテストツールがあってもグロースハックの実現は難しくなります。高いデータ分析・検証スキルがあって初めてユーザーのインサイトを理解でき、グロースハックを期待できるABテストのシナリオが設計できるのです。
プラットフォームサービスを利用したグロースハック事例
特にスタートアップ企業や新規のサービスにとって、ユーザーや顧客をどう獲得するか、自社サービスの認知を高めるにはどうしたら良いかという点は、常に共通の課題であり、重要なポイント。この課題に対して、既存のプラットフォームサービスを利用する方法でグロースハックを実現した会社があります。
その1つ、現在では世界中で利用されているオンライン決済サービス・Paypalですが、当然Paypalもサービス開始直後は認知度も低く、ユーザーアカウントも少ない状態でした。このPaypalを急成長させたグロースハック施策の1つが、同じく当時急成長だったアメリカのECモール・eBayへのサービス統合。オンラインショッピングサイトとしてユーザー数を増やつつあったeBayのオンライン決済手法の1つにPaypalが加わることで、瞬く間にeBayユーザーの間にPaypalの認知度が高まったという事例です。
いかがでしたでしょうか?
この記事がグロースハックとは何か?という定義の理解に、少しでも役に立っていれば幸いです。
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