ジェントリフィケーションとは?世界・日本の事例とメリット・デメリット
街の富裕化、高級化現象の意味を持つ「ジェントリフィケーション」。
こちらの記事はそんなジェントリフィケーションのについてもっと知りたいという方向けに、概要をはじめ、事例、その問題点や歓迎すべき点についてもご紹介してまいります。
地域を美しく整える、災害・治安悪化対策になるというイメージもある「ジェントリフィケーション」ですが実はその課題について議論・研究対象となることもしばしば。
何故、そのようなことが起こるのか、分かりやすく解説いたします。
ジェントリフィケーションの意味とは
ジェントリフィケーション(英語表記:Gentrification)とは、政府や企業が主にインナーシティといわれる低所得地域を再開発し、高級化・上位化をすることにより地域全体の価値が高まる現象のことです。
「都市の富裕化現象」や「都市の高級化」とも呼ばれます。
ロンドンで行われたのが世界でも初めてといわれているジェントリフィケーションは、1964年にルース・グラスによって名づけられました。
元々は倉庫街やどちらかと言えば低所得者向けの住宅街だった地域が、再開発を経て高級住宅やホテル等の立ち並ぶ高所得者向けの土地へと変わるのがジェントリフィケーションの一例といわれています。
他にも、もともとは特に何にも活用されていなかった地域(空き地や工場跡地など)を再開発する「新築のジェントリフィケーション」や、住宅地向けの地域を商業地域にする「商業のジェントリフィケーション」、また観光地を対象にした「観光のジェントリフィケーション」といったものもあります。
ジェントリフィケーションが起こる主な原因とは
直接的なジェントリフィケーションの原因になるといわれているのは、建造物の建て替えや土地の再開発などでしょう。
建物は雨風にさらされると、自然と老朽化していくため、ある一定の年数がたった後は建て替え等が必要になります。
建て替えた結果として高級化され、多くの富裕層の人間が集まると、ジェントリフィケーションという現象になります。
また、建物だけに限らず、政府や企業による地区全体の開発・再開発もその原因といわれています。
他にも、元々は低所得者向けの地域に高所得者向けの施設(商業施設や大会社、高額の学費を要する学校)が発現することで、自然と高所得者が増加するというパターンもあるでしょう。
いずれにしても、土地や建物に対する再開発や新規建築がジェントリフィケーションの主な起因であると考えられます。
世界・日本における代表的なジェントリフィケーション例
続いては、ジェントリフィケーションの代表例をアメリカ、イギリス、日本と地域別にご紹介します。
実際に行われた三国におけるジェントリフィケーションには、どういった実例があり、どんな結果になったのでしょうか。
アメリカにおけるジェントリフィケーション事例
多数の移民も暮らすアメリカからは、サンフランシスコとニューヨークの例をご紹介します。
まずは、アメリカ西海岸にあるサンフランシスコで起こったジェントリフィケーションの事例です。
サンフランシスコは、IT企業のエンジニアが多く住むシリコンバレーを有し、その周りには高級マンションが次々に建設されました。
その結果、もともとサンフランシスコに住んでいた低所得者たちは家を追われることとなりました。
また、現在は高級ブティック等が並び、セレブからも愛されるニューヨークのソーホーでもジェントリフィケーションが起きています。
ソーホーは、かつて奴隷から解放された黒人たちに与えられた農地でもありましたが、1960年代ごろに賃貸が安いことに目を付けた若者たちに注目され、多くのお金のない若者(主に画家・音楽家などのアーティスト)たちが移住。
アートの創作に適した建物が多数あったこともあり、「芸術家の街」として愛されていました。
ですが、再びジェントリフィケーションが行われ、芸術家たちは散り散りに。
現在は高級ショッピングスポットとなっています。
こうして、街全体の様相が二転三転とすることもジェントリフィケーションでは起こりうります。
おおむね、最後には高級ブティックやマンション等が入り高級化するというのが多いようです。
イギリスにおけるジェントリフィケーション事例
イギリスでは、治安悪化が懸念されていたロンドンのドックランズ地区をジェントリフィケーション。
現在は高級マンションやオフィスが立ち並んでいます。
人口はかつての20倍となり交通網も進化し、地理も分かりやすくなりました。
また、周囲の街にも交通が伸び便利になったことから、観光利益も増大。
地区全体が底上げをされるという結果になりました。
日本におけるジェントリフィケーション事例
大阪市西成区にて日雇い労働者が多く暮らす街・釜ケ崎では再開発が行われています。
日雇い労働者の求人場所でもあった複合施設「あいりん総合センター」が閉鎖となった際には多くの労働者や支援者が抵抗。
新施設は2025年頃の完成が予定されていますが、どういった形になるかはまだ未定です。
また、東京渋谷にある宮下公園近隣もジェントリフィケーションが行われた代表的な土地といえるでしょう。
かつては野宿者(ホームレス)も多くいた宮下公園でしたが、2010年ごろから再開発を開始。
公園が封鎖された際には、多くの抗議者が現れました。
現在は商業施設「MIYASHITA PARK」として高級ブランドなどが多数入ったスポットとなっています。
他にも、京都府西陣地区や石川県金沢市などもジェントリフィケーションが行われた街として有名です。
どちらの地域も歴史的に価値のある街ですが、古き良き街並みがある一方でジェントリフィケーション前は人口減が課題だったといわれています。
ジェントリフィケーションによって新たな居住者や店舗の参入が増えたという研究報告もあり、人口減対策として効果的という見方もあります。
ジェントリフィケーションの問題点
1970年代ごろの世界では地域の活性化や犯罪率の低下、さらに経済効果もあるとして、ジェントリフィケーションは高く評価されていました。
しかし、ジェントリフィケーションが活発化すると同時に、その問題点も明らかになっていきます。現在も懸念されているジェントリフィケーションの問題点は、主に2点です。
1.元々の住民との経済格差が起こる
ジェントリフィケーションには、街全体の資産価値が上がり、家賃はもちろん、日用品・食料品の価格も高くなるという結果がたいてい起こります。
そうなると、もともとそこに住んでいた低・中所得住民にはその家賃を払うことや日々の買い物をすることすら困難となります。
その結果、もともとの住民たちと新しく入ってくる住民たちの間で経済的な格差が生まれることはもちろん、もともとの住民が高級化したかつての故郷には別れを告げ、別の街へ引っ越さざるをえないという問題も起こります。
2.街の個性が失われる
もう1つ、その街がもともと持っていた特性や個性を消し去ってしまうという側面があるという問題も指摘されています。
例えば前述の宮下公園は、かつてはさまざまな文化が芽生えた場所。
そういったものをなくして単純に高級化するということは、街全体の特色を失わせることになるのではと考える人も多いようです。
再開発の際にはもともとの街の特色を消さないように、と考える業者も多数いますがもともとの住民の理解を完全に得るのは難しく、はっきりとした問題の解決策が出ないというのも現状です。
実際に、「サブカルチャーの街」や「若者の街」としても知られる下北沢では再開発を巡り裁判が行われたこともあります。(現在は和解されています)
良い側面や期待できることも
問題をはらむ一方で、ジェントリフィケーションが進むと、多くの人の暮らしを快適になるというメリットもあります。
例えば、老朽化した建物や狭い道は地震や火災のときには非常に危険なもの。
再開発にて耐震・耐火設備などが充実した建物や街にすることで、万一の時にも安心した暮らしができるでしょう。
さらに、街全体がバリアフリーとなれば誰もが住みやすくなるほか、治安が良くなることなども期待できます。
人口が増えて地域活性化につながる、経済が活発化するといったことも期待できるため、ジェントリフィケーションは有意義な結果であると考える人々も多くいます。
最後に。誰もが幸せに暮らせる未来のために
メリット、デメリットの両方を有するジェントリフィケーションの概要や実例等をご紹介してまいりました。
美しく居心地の良い街は住みやすく、また人気が出るものですが、やはりその地理の特性や住んでいる人たちへの愛は忘れないでいきたいもの。
誰もが安心して、心地よく過ごせる街を目指して。これからも街の変化や取り組みに、注目していければと思います。
それでは、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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