地球がひとつの生命体であると考える「ガイア理論」とは?わかりやすく説明
1960年代、イギリスの生態学者ジェームズ・ラブロック氏によって提唱された「ガイア理論」。環境問題や宇宙について調べている中でガイア理論という概念に出会い、その意味を知りたいと思われている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、近年環境問題の文脈で注目されているガイア理論について、なるべくわかりやすく解説します。
ぜひ、ガイア理論の理解を深めて、未来の地球や環境問題について考えるきっかけにしていただければと思います。
ガイア理論とは?わかりやすく解説
ガイア理論とは、地球は自己調節能力を持ったひとつの生命体であると考える説です。1960年代、NASAで働いていたイギリスの生態学者ジェームズ・ラブロック氏によって提唱されました。
ガイア理論では、互いに作用をもたらして今の環境を作り上げているとしており、環境問題が深刻化する今、注目される理論になっています。
当時は批判的な意見が多かったガイア理論ですが、近年は科学誌「Nature」でもガイア理論が評価され賛同者が増えてきました。生態学のひとつとして議論が交わされるガイア理論の特徴について、詳しく解説していきます。
動物や人間も地球生命体の一部分という考え方
ガイア理論の特徴に、人間に細胞があるように、地球の細胞のひとつとして人間や動物が地球の中で生きているという考えがあります。
人間の細胞が、その人の意志と関係なく食べ物を消化したり傷口を修復したりしていることと同じです。
ガイア理論によると、本来であれば人間も動物や植物たちとうまく共存して地球の健康を維持させなければなりません。
しかし、人間は繁栄や豊かな生活を求める一方、環境や他の植物・動物の生命に大きな影響を及ぼしてきました。
地球のホメオスタシスによって地球の気候が変動する
簡単に説明すると、ホメオスタシスとは自己調整機能のことです。たとえば、人間が花粉を異物としてアレルギー反応を起こして排除したり、風邪になったら熱を出したりします。
ガイア理論はにおいては、地球が持つ本来のバランスが崩れているので、自己調節機能が働き、地球の存続を維持するために地球温暖化や自然災害を起こしているのだと考えることができます。
宇宙規模で考えなければならない人間の文明による環境問題
ガイア理論の考えに従うと、地球の存続が危ぶまれることから、人間が生活できる場所ではなくなるように地球の意思によって変化する可能性もあるということです。
ガイア理論が正しいか正しくないかはさておき、ガイア理論によって人間が及ぼす地球環境への影響を考えるきっかけとなることは確かです。
実際に人間の影響によって現在起こっている環境問題を確認していきましょう。
人間の文明発展によって引き起こされた環境問題
気候変動 | 経済活動のなかで温室効果ガスが増え過ぎてしまい、地球全体の気温が上昇している現象のこと。また、地球温暖化によって大雨を引き起こしたり海面上昇による熱波や干ばつも引き起こされている。 |
大気汚染 | 工場の煙や車の排気ガスなどの有害物質によって空気が汚染される現象のこと。大気汚染によって引き起こる光化学スモッグやPM2.5は人間や動物の体に大きな悪影響を及ぼす。 |
水質汚染 | 人間が廃棄したゴミや生活排水、石油などによって海や川の水質が汚染されている問題のこと。海洋生物の生態系バランスが崩れたり、生き物の生命を脅かしたりする原因になっている。近年はマイクロプラスチック問題も課題とされており、世界的にプラスチックゴミを減らす動きが出ている。 |
森林減少 | 水質汚染による土壌汚染や土地開発・商業利用のための森林伐採によって、森林が劣化や縮小する現象のこと。森林減少によって野生動物を絶滅の危機に追い込んでいる。さらに、森林が減少することで空気中の二酸化炭素が吸収されず、地球温暖化に追い討ちをかける。 |
生態系破壊 | まとまった地域で相互依存を保っている地域へ外来種を侵入させたり過剰な捕獲をしたりすることで食物連鎖に異常をきたし、生態系に変化が起きる現象のこと。生態系破壊によって絶滅危惧種とされている生物は、日本だけでも3,732種(1)と言われている。 |
世界で問題とされている環境問題は、それぞれが相互に影響し合っています。例を挙げると、生態系破壊を止めるためには、大気汚染・水質汚染・森林減少のすべてを解決しなければなりません。
国連気候変動枠組み条約や京都議定書、パリ協定を締結をするなど、環境問題へのアプローチは国際的に行われています。
(1)環境省レッドリスト2019の公表について|環境省
ガイア理論を日本語で読める論文・本
さらにガイア理論の理解を深めたいという人のために、日本語で読める論文や本をご紹介します。
地球生命圏―ガイアの科学
- ジェームズ・ラブロック(著)
- 工作舎より1984年10月に出版
ガイア理論の基本概念が書かれています。
原著発売当初、ジェームズ・ラブロックは異端児として扱われていましたが、1990年代に入ると賛同者が増えています。ガイア理論の原点を知りたい人におすすめです。
ガイアの時代―地球生命圏の進化
- ジェームズ・ラブロック(著)
- 工作舎より1989年10月に出版
『地球生命圏―ガイアの科学』から、さらにガイア理論について深い考察が読める内容となっています。
地球の歴史に沿って、ガイア理論の検証がされています。星川淳さんによる後書きも見どころです。
ガイアの思想―地球・人間・社会の未来を拓く
- 田坂広志・秋本勇巳・森山茂・ジェームズ・ラブロック ・龍村仁(著)
- 生産性出版より1998年7月に出版
1997年11月にジェームズ・ラブロックを日本に招いて行われたシンポジウムの内容をまとめた1冊です。
日本の有識者を交えて、それぞれがガイア理論をどのように理解しているのかが分かります。対話を通じて、よりガイア理論の理解が深まるでしょう。
ガイア―地球は生きている
- ジェームズ・ラブロック(著)
- 産調出版より2003年8月に出版
「病んでいる」と評した地球をジェームズ・ラブロックが科学的に診断した図鑑です。
分かりづらい科学の内容も、図解で丁寧に解説されています。多くの学術団体に認められており、英国・アイルランドで環境科学の課題図書に指定されました。
ガイアの復讐
- ジェームズ・ラブロック(著)
- 中央公論新社より2006年7月に出版
人間によって傷つけられた地球がいかにして再生するのか書かれた1冊です。
世界各地で頻発する異常気象の原因は「ガイアの復讐」によるものだとし、人間が行う環境破壊に軽傷を鳴らしています。電子力発電に関しても、ジェームズ・ラブロックの意見が述べられています。
ノヴァセン:〈超知能〉が地球を更新する
- ジェームズ・ラブロック(著)
- NHK出版より2020年4月に出版
ガイア理論の提唱者であるジェームズ・ラブロック氏が100歳の誕生日に合せて刊行されました。
人類の知能を超えるAIが登場した新時代「ノヴァセン」について書かれています。ガイア理論を元に、地球の歴史という壮大な視点から人間の衰退や今後の可能性を考察している1冊です。
さいごに。一人ひとりが地球を思いやることの大切さ
ガイア理論とは、地球は自己調節能力を持ったひとつの生命体であると考える説のことです。歴史のなか人間が地球環境に良くない影響を与えてきたことは事実ですが、私たちは未来を変えることができます。
海洋汚染によって悲鳴を上げる海の生物の声や絶滅危惧に追い込まれた生物の声に耳を傾け、持続可能な地球を作っていくことは今からでも遅くありません。
一人ひとりがエシカルな選択をして、他の生命体と共存できる地球を次世代へ残すことが大切なのではないでしょうか。ガイア理論はそんなことを考えるきっかけをくれる理論だと言えるでしょう。
それでは、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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