バイオ燃料|持続可能な次世代エネルギーの特徴とメリットを簡単にご紹介
私たちの豊かな暮らしを支えるエネルギーである石油の寿命は約50年、また天然ガスも約50年の寿命と言われています(*)。
* Souce:東京ガスネットワーク
https://www.tokyo-gas.co.jp/network/kids/genzai/g1_3.html
このまま、従来のエネルギー源に頼ることが難しくなっている現代において、バイオ燃料という再生可能エネルギーが注目を集めています。
バイオ燃料とは、地球に負荷を与えずにエネルギーを生み出すことができる、再生可能エネルギーです。
当記事では、次世代エネルギーとして期待が高まるバイオ燃料をわかりやすく解説し、注目される背景や、導入事例までご紹介します。
バイオ燃料(バイオマス燃料)とは?
まず、バイオ燃料(バイオマス燃料)とは、生物資源であるバイオマスを原料とする燃料。簡単に言うと、動物や植物を原料として使っている燃料のことを指します。
バイオ燃料が生み出されるサイクル全体を捉えた時に、排出されるCO2量がプラスマイナスゼロとなる、カーボンニュートラルという状態が実現するため、環境に優しい燃料です。
そして、バイオ燃料を使用したエネルギーは、再生可能エネルギーであることも特徴の1つ。そんなバイオ燃料には、大きく分けて、下記の4種類あります。
- バイオエタノール
- バイオディーゼル
- バイオジェット
- バイオガス
これら4種類の違いは、それぞれの原料と使用法にあります。それでは、ひとつずつ確認していきましょう。
バイオエタノール
- 原料|サトウキビ・トウモロコシ
- 製造法|バイオマスを発酵・蒸留
- 活用法|交通機関の燃料
資源作物であるサトウキビやトウモロコシからつくられるバイオエタノールは、ガソリンと混ぜることで、車や電車、飛行機などの燃料として使われます。
バイオディーゼル
- 原料|菜種油・ひまわり油・大豆油・コーン油
- 活用法|軽油車などのディーゼルエンジン用の燃料
ドイツで19世紀には発明されていたバイオディーゼル。EU諸国でガソリン車よりも、バイオディーゼルを使用したディーゼル車が主流であるのは、この歴史的背景があるのが1つの理由です。
バイオジェット
- 原料|一般的に食用廃油や生ごみ、タバコ、藻類、木材などの有機物
- 活用法|航空機用の燃料
航空機用の燃料であるバイオジェット燃料。廃油や生ごみ、廃材などの処分されてしまうはずの素材を使用した燃料です。JAL(日本航空)は、2030年以降、バイオジェット燃料に切り替えることを発表しています。
バイオガス
- 原料|家畜の排せつ物と生ごみ
- 製造法|有機性廃棄物を発酵
- 使用法|発電や熱供給
家畜の排せつ物や生ごみなど、捨てるはずの廃棄物がバイオガスとして生まれ変わります。バイオガス発電として、電力供給に使われる期待のエネルギーです。
バイオ燃料4種類に共通して、使われている原料はバイオマスというもの。バイオマスとはどのような原料なのか、ご説明します。
バイオマスとは?
バイオマスとは、動植物由来の再利用可能な資源のことで、大きく3つに分けられます。
- 廃業物系バイオマス
- 未利用バイオマス
- 資源作物
これらバイオマスの最大の特徴は、化石燃料が有限であることに対し、生成することができる生物であるため再生可能である点です。
廃業物系バイオマス
- 廃棄物がバイオマスとして活用
- 家畜排せつ物、生ごみ、パルプ廃液、建築廃材など
すでに何かの用途で使用され、廃棄物となった資源を廃業物系バイオマスです。再利用するという観点で、3Rのリユース(再利用)という概念に当てはまります。
未利用バイオマス
- 1度も活用されずに残ってしまった廃棄物をバイオマスとして活用
- 残ってしまった木材、麦わら、もみ殻など
資源であるが、利用されずに廃棄されてしまった木材などを活用したバイオマスが、未利用バイオマスです。
資源作物
- 資源として活用することを前提に栽培されたバイオマス
- さとうきび、とうもろこし、菜種、大豆など
サトウキビやトウモロコシなど、バイオマスとして使うために栽培された資源作物。
栽培している段階で、CO2を吸収していることから、燃料となる際のCO2排出量をプラスマイナスゼロにする、カーボンニュートラルという考えが当てはまります。
このように、環境にやさしい資源でつくられるバイオ燃料ですが、解決すべき課題があるのが現状です。
バイオ燃料の課題
バイオ燃料について議論される内容は、食料資源とのトレードオフについてと、要してしまうコストについてです。
食糧資源とのトレードオフ問題
食料不足に苦しむ人々がいる中で、サトウキビやトウモロコシ、大豆などの食料資源をエネルギー創出に使用することは倫理的であるのか、という点が課題の1つです。
世界の飢餓人口は、約6億9000万人。
いまだに、世界中の11人に1人は十分な食料を手に入れられていない状況で、食料であるサトウキビやトウモロコシやそれらを栽培する土地をエネルギー源のためではなく、食料資源のために使うべきたという声があるのが事実。
食料資源にもなる資源作物によるバイオ燃料ではなく、廃棄物などからつくるバイオ燃料を発展させることが求められています。
エネルギー創出コストの問題
バイオ燃料を一般的なエネルギーにするためには、バイオ燃料からエネルギーをつくる際に必要とされるコストを、既存のガソリンなどのエネルギーにかかるコストよる下げる必要があります。
バイオ燃料を生み出す過程も複雑で、高度な技術が使われているため、いかに簡略化しコストを下げながらバイオ燃料を創出するシステムをつくるかが鍵です。
バイオ燃料にはいくつかの課題がありますが、それでもバイオ燃料には注目されるほどの魅力があります。
バイオ燃料が注目される理由
バイオ燃料は、地球温暖化の進行を食い止め、循環型社会を実現させる可能性がある燃料であると注目されています。
地球温暖化の進行を食い止める
バイオ燃料が、地球温暖化の進行を食い止めると言われているのは、カーボンニュートラルという側面を持っているからです。
バイオ燃料には、バイオマスを燃焼する際にでるCO2排出量をカウントしないという特徴があります。これは、原料となる植物由来のバイオマスが、成長過程の光合成においてCO2を吸収していたため、プラスマイナスゼロであるという考えがベースにあります。
ガソリンや軽油など、既存のエネルギーには当てはまらない概念で、バイオマス燃料ならでは。
バイオマス燃料を生み出しても、CO2排出量増加にはならない(※)ので、地球温暖化の進行に影響しないという点が注目される1つの理由です。
※注:大気中の全体のCO2増加を抑制できるという意味ではありません。2023/06/12追記
無駄を生まない循環型の仕組み
資源を無駄にせず、循環させていく新しい経済モデルであるサーキュラーエコノミーを実現させるバイオ燃料。
本来は廃棄物になるはずである資源を活用し、エネルギーを生み出しているため、無駄になってしまう廃棄物が少ない、環境に優しいサイクルです。
これらの観点から、バイオ燃料を普及させていくこと自体が環境問題に対する取り組みになるであろうと、注目を集めています。
バイオ燃料はどのように導入されているか
EU諸国は、再生可能エネルギーであり、環境負荷が少ないことから期待されるバイオ燃料をいち早く導入したバイオ燃料先進地域。そんなEUに続いて、日本もバイオ燃料先進国を目指して、バイオ燃料の導入を始めています。
EUはバイオ燃料先進地域
EU諸国は、2009年に「再生可能エネルギー指令」を設定しました。この指令は、地球温暖化対策としてつくられ、2020年までに、輸送用燃料に混合するバイオ燃料の割合を10%以上にするという義務的目標です。
EU内では特にバイオ燃料導入に力を入れているのは、ドイツとフランス。例えば、ドイツ国内では、ガソリンよりディーゼル燃料の消費量が若干多く、バイオディーゼル燃料の割合も順調に高くなってきています。
また、フランスでは農業水産省が中心となって、農業生産物を積極的にバイオマス資源に活用する取り組みが行われている現状。その他の国も、バイオ燃料の活用に前向きな姿勢を示しているのがEU諸国です。
バイオ燃料先進国を目指す日本
EU諸国に続いて、日本ではバイオ燃料先進国となることを目指す取り組みが始動しています。「GREEN OIL JAPAN」という名前のプロジェクトには、株式会社ユーグレナを中心として、3市23社1団体がすでに賛同しています。
ユーグレナ社が進める、ミドリムシなどの藻類資源からつくるバイオマス燃料を積極的に活用していこうというこのプロジェクト。また、賛同企業は使用済み食用油の回収やバイオ燃料の導入・普及に協力いただくことが決まっています。
このように、日本でも少しずつバイオ燃料を取り入れる動きが進んでいる状況です。
さいごに。バイオ燃料が脱炭素の鍵を握る
今回は、地球に負荷を与えずにエネルギーを生み出すことができる、バイオ燃料についてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
石油や石炭など、従来のエネルギー資源の枯渇が懸念される今だからこそ、注目される再生可能エネルギーです。
日本でも積極的な導入に向けて活動が始動しているため、今後に期待が高まります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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