世界の脱プラスチックの取り組みを紹介!私たちにできることとは?
2020年7月に日本でもレジ袋が有料化となり、世間でも少しずつ広がりつつある脱プラスチックの動き。
プラスチックは燃やすと有害物質が出たり、海にはプラスチックゴミが多いなどの問題は知っていても、なぜそれほど脱プラスチックが必要なのかは、いまいち理解できていない方も多いかと思います。
そこで当記事では、プラスチックがもたらす本当の問題を、環境や健康問題、また世界の流れなどの観点から包括的に解説。最後には明日からできるアクションプランを紹介いたします。
脱プラスチックと言っても、どこから始めればいいかわからないという方は、ぜひ参考にしていただければと思います。
また、当記事は明日からプラスチックを全てやめようといった極論を述べる記事ではなく、あくまで検証可能な事実をベースに論じております。
脱プラスチックに向かう背景とは?
2016年の世界経済フォーラム、ダボス会議で衝撃的な予測が発表されました。
「2050年には、海にいる魚の重量よりも、プラスチックの重量が上回る。」と。
WWFによれば、世界の海洋プラスチックの量は約1億5000万トン。 そして、毎年800万トンものプラスチックゴミが海に流れてると言われています。
800万トンと言うと、イメージがつきにくいかもしれませんが、 ジャンボジェット機5万機分といえば、その途方もない量が、少しは想像しやすいのではないでしょうか。
これほどの海洋プラスチックによって、海の生態系へのダメージ、地球環境に対する影響、そして回り回って我々人間の健康被害も懸念されています。
このままでは地球はサスティナブル(持続可能)な環境ではなくなってしまう。そのような背景から、世界は脱プラスチックに向かっているのです。
1本のストローの動画から爆発的に広がった脱プラスチック
このような、海洋プラスチックによる被害を、世界に知らしめた一本の動画があります。
南米コスタリカ沖で、研究者のチームがウミガメの鼻に突き刺さったプラスチックストローを引き抜く、8分あまりの動画です。
鼻から血を出し、苦悶の表情を浮かべるウミガメの姿が多くの人の心を動かし、世界の脱プラスチック動きを加速させました。
脱プラスチックに賛同したのは、環境NGOや一般の人だけではありません。例えば、スターバックスはプラスチックストローを廃止することを発表するなど、その動きはグローバル企業にも広まりつつあります。
脱プラスチックとSDGs
脱プラスチックの動きは、今話題のSDGsにも関連した動きと言えます。
SDGsは、17のゴールと169のターゲットから成り、持続可能な世界を目指す国際目標です。
SDGsには、ウェディングケーキと呼ばれる概念があり、要は環境が全ての土台となりその上に社会があって、環境と社会によって経済を支えられていることを表現した概念です。
脱プラスチックの問題は、まさに自然環境に関わるところで、 以下の4つのゴールに大きく関わってきます。
6.安全な水とトイレを世界中に
13.気候変動
14.海の豊さを守ろう
15.陸の豊さも守ろう
またこれの環境におけるゴールを支えるのが、12番の『つくる責任つかう責任』です。
これまではよく、 環境と経済はトレードオフの関係にあるように考えられてきましたが、 これからは環境があってこその社会であり、経済活動という認識を持つ必要があるのではないでしょうか。
プラスチックの問題点とは?環境への影響を考える
このように、世界では脱プラスチックに向かっていますが、そもそもなぜプラスチックが問題なのでしょうか。
プラスチックの良さは、安価で耐久性に優れており、加工しやすくかつ大量生産できること。しかし、このプラスチックが持つ耐久性の良さが、同時に問題となっております。
要は、どれだけ時間が経っても、分解されず、地球上に残り続けるということです。
実際に、製造されたプラスチックは、そのほぼ全てが地球上に何らかの形で残っていると言われています。 そしてそのプラスチックは生態系や環境、人間の健康に悪影響を及ぼしています。
耐久性に優れているというその特徴は、別の視点から見ればプラスチックの最大の問題なのです。
マイクロプラスチックとは?
マイクロプラスチックとは、直径5mm以下のプラスチックのこと。
マイクロプラスチックには、歯磨き粉や洗顔料などで使われるスクラブ剤や、ペットボトルやプラスチックハンガー、歯ブラシなどのプラスチック製品が劣化や破損してマイクロサイズになったものが挙げられます。
本来、自然界には存在しないマイクロプラスチックが、海に中に入っていくと何が起こるでしょうか。
プラスチックは海の生態系に影響を与えている
プラスチックは品質を向上させるために、様々な化学物質を混ぜている場合もあり、 その中には有害なものもあります。
そんなマイクロプラスチックを海鳥や魚などがエサと間違えて食べてしまう。そして、栄養失調で命を落としてしまう。
そんなケースが世界中で報告されています。命を落としたやつ海鳥の胃を開いてみると、200以上ものマイクロプラスチックや、プラスチック製品の欠片が発見されることも珍しくありません。
このようにプラスチックの問題は、 海の生態系に大きな影響を及ぼしています。
人間もマイクロプラスチックの影響を受けている
魚を食べる人間にとっても、マイクロプラスチックの問題は他人ごとではありません。
プランクトンと間違えてそれを食べてしまう小魚。小魚を食べる大きな魚。その大きな魚を食べる人間という食物連鎖の中で、人間はマイクロプラスチックによる有害物質を取り込んでいるのです。
また食物連鎖の文脈以外でも、ペットボトルの中にある飲料水から、塩から、空気からも人間はマイクロプラスチックを摂取しています。
実際に、オーストラリアのニューカッスル大学が行った研究によると、我々人間は毎週クレジットカード一枚分のマイクロプラスチックを摂取しているとのことです。
このように、人間も含む生態系に影響を及ぼしてるプラスチックですが、それだけではありません。実は環境に対しても大きな影響を及ぼしていると言われています。
環境への影響:地球温暖化を促進している
プラスチックの原料は石油であり、その製造と廃棄の過程で大量の二酸化炭素を排出します。二酸化炭素は温室効果ガスとして知られており、地球温暖化の最大の原因とも言われています。
また、2018年にハワイ大学の海洋研究チームは、プラスチックは太陽光や水に晒されるとメタンガスやエチレンガスを出すことを突き止めたという発表を出しました。
メタンガスは、二酸化炭素の25倍もの温室効果を持つと言われています。
論文によれば、プラスチックから出るメタンガスが、どれほど地球温暖化を進めているかはわからないとのことですが、年間800万トンものプラスチックが海中にゴミとして排出されることを考えると、その影響は少なくはないと考えられます。
リサイクルされていれば大丈夫なのか?
このように様々な問題を引き起こすプラスチックですが、よく日本はプラスチックのリサイクル率が高いから、海や環境への影響は少ないといった論調を聞きます。
本当にそうなのでしょうか。
確かに日本はプラスチックの約84%がリサイクルされていると言われ、その数字は世界トップクラスに高いものです。 しかしながら、リサイクルされたプラスチックは約57%が燃やされています。つまり温室効果ガスを排出してるのです。
リサイクルしているのに、燃やされて温室効果ガスを排出している。なんだか、リサイクルのイメージとは違いますが、一体どういうことなのでしょうか。
あまり知られていない、3つのリサイクル方法
一般的にリサイクルと言われている、 再資源化と言われる活動ですが、細かく分けると3つのリサイクルに分けられます。
それは、 マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルの3つです。
マテリアルリサイクルとは、ペットボトルが別のペットボトルに生まれ変わったり、他のプラスチック製品に変わること。皆さんがイメージするリサイクルはこのマテリアルリサイクルが近いかと思います。
またケミカルリサイクルは、プラスチックを一度分子に戻してから別の製品にするリサイクルの工程です。ケミカルリサイクルは 画期的に聞こえますが、 大掛かりな設備が必要だったりと、費用やエネルギーがかかります。
マテリアルリサイクルは、リサイクルの全体の約23%、ケミカルリサイクルは全体の4%。残りの57%は、サーマルリサイクル。つまり、燃やされて火力発電などのエネルギーになるリサイクル方法です。
リサイクル率が高いと思っていた日本においても、結局は燃やすことで二酸化炭素を発生させ、地球温暖化を促進しています。このことからもわかるように、本質的な問題解決には、リサイクルではなく、そもそもの量を減らすことなのではないでしょうか。
脱プラスチックにも問題点はあるのか
これまで論じてきた、プラスチックによって起こる様々な影響から、脱プラスチックへと向かうのが世界の流れですが、やみくもな脱プラスチックが、必ずしも良い影響を与えるわけではないと指摘する声もあります。
その主張は、以下のようなものです。
例えばプラスチックをガラス瓶に変えた場合、その重さにより輸送の環境コスト(環境にかかる負担)が余計にかかる。プラスチックバッグを紙袋に変えた場合、炭素排出量が多くなるし、そもそも再利用しにくい。
その内容が本当かどうかは、当記事では論じませんが、 脱プラスチック自体が目的となっている場合、 環境問題など本当に解決したい問題を見失ってる可能性があるのは事実です。
紙へ移行すればいいわけではない
近頃はよく、プラスチックのストローから紙のストローへ転換する動きがあります。それ自体はプラスチック自体の使用を減らしているため、賞賛されるべき動きなのですが、 それだけで全ての問題が解決するわけではありません。
プラスチックから紙へ移行する場合は、紙の原料となる木を使用する必要があり、それは森林伐採、砂漠化、地球温暖化につながるという指摘もあります。
重要なのはただ「紙に移行すればいいんでしょ?」と考えるのではなく、「環境問題という根本的な問題解決に取り組むには何が最適か」という思考を忘れないことだと思います。
世界の脱プラスチックに対する取り組み
プラスチックが持つ上記のような問題から、世界では多くの国と地域で脱プラスチックの動きを見せています。
ここでは、世界で最もプラスチック消費量の多いアメリカ、環境問題では常に一歩先を行く EU、そして日本の取り組みをご紹介したいと思います。
プラスチック大国アメリカもついに動き出した
アメリカは、 150年前にプラスチックを世界で初めて生産した国で、一人当たりのプラスチック廃棄量は世界一です。
そんなアメリカでも、脱プラスチックの流れが来ています。
2019年から、ニューヨークでは使い捨ての発泡スチロール容器を全面的に禁止し、2020年3月1日からは使い捨てレジ袋も全面禁止としています。
ニューヨークは世界経済の中心です。これまでは、経済活動と環境保護は両立しないという考え方が中心だったことを考えると、経済の中心であるニューヨークが、脱プラスチックの動きを率先して見せていることに、驚きを感じる人もいるのではないでしょうか。
環境問題に敏感なEUは一歩先を行っている
環境問題といえば、先進的なのはやはりEU。
EUでは、2021年からストローや食器などの使い捨てプラスチックの使用は禁止となりました。
EU の中でも先を行くフランスではすでに、2016年から使い捨てのレジ袋が禁止となっています。 加えて、フランス政府は独自に、2025年までに全てのプラスチックをリサイクルするという目標を掲げています。
その中で日本の取り組みとは?
日本でも、2020年の7月よりプラスチックレジ袋の有料化が始まったりと、少しずつ規制し始めています。
他にも、プラスチック資源循環戦略を打ち出し、2030年までに使い捨てプラスチックを25%削減、 容器包装の6割をリサイクル、 2035年までにプラスチックを100%リサイクルを目指しています。
ただ、このように目標は定めているものの、 EUの全面禁止に比べれば非常に緩く、また期間も2030年までと、約10年も遅れていて、施策の本気度としては足りない印象です。
1人ひとりが取り組めることからはじめよう!
この記事では、脱プラスチックに向かう背景、プラスチックの環境や健康面における問題点、そして脱プラスチックに取り組む世界の動きを解説してきました。
これだけ見ると、問題が深刻で気が遠くなる方もいるでしょう。しかし、 脱プラスチックにおいて、本当に重要なのは1人ひとりの行動です。
脱プラスチックにおいて、よく解決策として言われるのはリデュース、リユース、リサイクルの3R。要は、そもそものプラスチック使用量を減らし、できるだけ再利用し、最後にリサイクルに出すということです。
最近ではプラスチックを使わない生活のことをプラスチックフリー生活と呼んだりもしますが、 プラスチックフリーを生活の一部に取り入れることから始めるのもいいかもしれません。
それでは最後まで読んで頂き、ありがとうございました。この記事が少しでも、あなたの役に立てたなら幸いです。
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