化石賞とは?日本の受賞理由とCOP30・2026年版評価を解説

公開日:2020年12月11日 / 最終更新日:2026年9月8日

気候変動

「化石賞」は、国際的な気候変動NGOネットワークが、気候変動対策や交渉に後ろ向きだと判断した国などへ、批判と改善への期待を込めて贈る賞です。国連が授与する公式の賞や、各国の環境政策を総合的に判定するランキングではありません。

この記事では、賞の仕組みと日本の受賞例を解説します。2026年9月に確認できた資料に基づき、2025年のCOP30での受賞理由、日本政府の削減目標、2026年版の気候変動対策評価を紹介します。

化石賞とは?誰が、何を評価しているのか

化石賞は英語で「Fossil of the Day」と呼ばれ、Climate Action Network(CAN、気候行動ネットワーク)のメンバーが、気候変動交渉の進展などを妨げたと判断する国へ投票して選びます。1999年、ドイツのボンでの気候変動交渉で始まりました。

COPなどの会期中にNGOが発表するもので、COPの正式な議決や制裁ではありません。受賞した国の国民全体を評価しているわけでもなく、受賞しなければ気候変動対策が十分だと保証されるものでもありません。

出典:CAN:化石賞の選定方法・由来

宝石賞との違い

CANは、交渉で希望につながる行動を示した国に「宝石賞(Ray of the Day)」を贈ることもあります。どちらも、特定の時点の行動や交渉姿勢に対するNGOの評価として読むことが大切です。

出典:CAN-Japan:化石賞・宝石賞について

日本はなぜ化石賞を受賞したのか

石炭火力発電のイメージ

以下は主催団体が公表した受賞理由の例です。個々の技術や政策への評価はCAN側の見解であり、記事としては、その見解と政府が公表する政策・目標を区別して紹介します。

COP27(2022年):化石燃料事業への公的支援

日本は2022年11月9日に受賞しました。CAN-Japanは、当時の調査で日本の化石燃料事業への公的支援が大きいことや、石炭火力でのアンモニア混焼を海外へ広げる方針などを理由として説明しています。

これは2022年の発表であり、その際に引用された過去の資金データを、2026年の実績として扱うことはできません。

出典:CAN-Japan:COP27での日本の受賞(2022年11月10日発表)

COP28(2023年):水素・アンモニア混焼への評価

2023年12月3日には、日本が「本日の化石賞」の第2位を受賞しました。CANは、政府が推進する火力発電への水素・アンモニア混焼について、化石燃料の利用を長期化させるおそれがあると批判しました。これは受賞例の一つであり、その年の全受賞を網羅した一覧ではありません。

出典:CAN-Japan:COP28での受賞(2023年12月3日)

COP30(2025年):技術、ガス開発、公正な移行をめぐる指摘

2025年11月13日(現地時間)、ブラジルのベレンで行われたCOP30でも日本は受賞しました。CAN-Japanが示した理由は、主に次の3点です。

  • CCS(二酸化炭素回収・貯留)や水素・アンモニア混焼の推進が、化石燃料の利用継続につながるという批判。
  • オーストラリアのガス開発への投資について、先住民の土地・水・文化への影響を問題視したこと。
  • 「公正な移行」の交渉で、公平性や地域社会の声を反映する制度づくりへの日本の姿勢を問題視したこと。

このように、受賞理由は石炭だけに限らず、資金の流れや地域社会への配慮、交渉での対応にも関係しています。「日本は削減目標を持っていないから受賞した」という説明では正確に伝わりません。

出典:CAN-Japan:COP30での受賞と理由(2025年11月13日)

日本政府の目標とNGOの評価を分けて読む

日本政府は2025年2月18日に新しいNDC(国が決定する貢献)を国連へ提出しました。温室効果ガスの削減目標は、2013年度比で2035年度60%、2040年度73%です。2030年度には46%削減を目指し、50%の高みに向けて挑戦を続ける方針も掲げています。

政府は、2035・2040年度の目標を世界の1.5℃目標と整合的なものとして説明しています。一方、NGO側には目標の水準や実現の道筋が不十分だとする評価があります。目標が存在すること、その十分性について評価が分かれること、実際に削減が進むかということは、別々に確認する必要があります。

出典:環境省:日本のNDC・2030/2035/2040年度の目標

「中国は未受賞」「スウェーデンが世界トップ」は正しい?

中国にも受賞記録がある

「中国は脱炭素に前向きなので化石賞を受賞していない」という説明は誤りです。CANの2012年年次報告には、同年のボン会合で中国が初めて化石賞を受賞したことが記載されています。特定の国の受賞歴を確認せず、国の姿勢を一括りに説明することは避けましょう。

出典:CAN:2012年年次報告(本文16ページ)

CCPIは化石賞とは別の評価

環境先進国であるスウェーデンの例

photo by Linus Mimietz on unsplash

気候変動パフォーマンス指数(CCPI)は、温室効果ガス排出、再生可能エネルギー、エネルギー使用、気候政策などから評価する別の指標です。2026年版ではスウェーデンが総合13位、日本が57位とされています。スウェーデンを現在の総合トップとする旧稿の説明は、最新の順位と一致しません。

また、CCPIの総合順位は1~3位が空位です。主催者は、すべての分野で最上位の評価に達する国がないためと説明しています。順位だけでなく、年度と評価方法、分野別の長所・課題も確認しましょう。

出典:CCPI 2026:スウェーデンの評価

出典:CCPI 2026:日本の評価

出典:CCPI:総合順位と空位の説明

なぜ化石燃料からの転換が議論されるのか

石炭・石油・天然ガスを燃やすと二酸化炭素が排出され、気候変動の原因となります。COP28では、エネルギーシステムにおいて化石燃料から転換していくことなどが呼びかけられました。

ただし、この合意を「すべての国の石炭火力を同じ年までに一律廃止することがパリ協定で決まった」と説明することはできません。国際合意、各国の政策、NGOが求める水準を分けて読む必要があります。

出典:UNFCCC:COP28で合意された内容

地域や働く人を含めた「公正な移行」

エネルギーの転換を考えるときは、排出量だけでなく、地域住民や働く人への影響も確認したい点です。新しい設備や燃料の導入を評価する際には、原料の製造・輸送を含めた排出量、費用、地域への説明や合意形成などを見ていく必要があります。

特定の国や企業の事業を一括りにせず、事業名、時期、影響を受ける人の意見、事業者の説明、調査結果を確認することが大切です。

私たちにできること

  • 無駄なエネルギー使用を減らす:安全や快適さを保ちながら、照明や家電の使い方、住まいの断熱などを見直す。
  • 電力や商品の説明を確認する:「再エネ」「CO2ゼロ」という言葉だけでなく、対象範囲、電源構成、証書の利用などを確認する。
  • 企業の計画と実績を読む:将来の削減目標と、実際に減った排出量を区別する。
  • 一次情報をたどる:受賞の見出しだけで判断せず、主催団体の発表、政府の説明、統計を読み比べる。

化石賞は、気候変動対策の課題を知るきっかけの一つです。受賞の有無だけをゴールにするのではなく、排出量の削減や地域社会への配慮が実際に進んでいるかを見ていきましょう。

関連:地球温暖化の原因と対策/暮らしでできる環境への取り組み

               
ライター:Ethical Choice編集部
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