倉敷から持続可能なサーキュラーモデルを。land down underの名に込めたメッセージとは

持続可能性や倫理性に注目が集まる近年、アパレルの廃棄問題が大きなトピックの1つになっています。

また、その文脈の中では、製品になる以前の、各生産現場での繊維廃棄も問題の1つ。

そんな現状に対し、カウンターカルチャーとして台頭したのが、サーキュラーアパレルブランド「land down under」です。

今回は、代表の池上 慶行さんに、地球の真裏を意味する単語をブランド名にした意図と、作り上げたい循環型ファッションの展望に迫りました。

インタビューイー
池上 慶行
land down under代表
1993年生まれ。東京都出身。
新卒でアパレル企業を経て、2019年に倉敷市児島に移住。カフェやゲストハウスの立ち上げや、学生向け産地研修プログラム、アウトドア体験の企画・運営などに携わる。2020年末に「land down under」を設立。国内の繊維工場と連携し、サーキュラーエコノミーを生み出すアパレルブランドの実現に挑戦する。

イギリスから見たオーストラリアに見立てて

──land down underとはどういったブランドなのでしょうか?

land down underは、サーキュラーエコノミーをテーマに掲げたブランドです。

これまでの「作っては捨てる」のリニア経済ではなく、資源を回収して循環させていく取り組みを行うことを目指しています。
──珍しい名前だと感じたのですが、どのような意味が込められていますか?

land down underは元々、英語でオーストラリアを指す言葉です。

元々、オーストラリアはイギリスの植民地で、イギリス本国から見れば地球の真裏にある土地だったことから、そのように呼ばれています。

私はこれを比喩的にブランド名として使おうと思いました。

今のアパレル産業をイギリスに見立てた時に、主流とは違うところでブランドをやっていく。そのような想いを込めて、名前を付けました。

生地が眠ってしまうのはもったいない

ランドダウンアンダーサーキュラーモデル

──かっこいいですね!そもそもなぜ、サーキュラー型のジーンズを始めようと思ったのか?

きっかけは今の繊維産地の中で無駄が生じていて、それをどうにかしたいと思ったためです。

例えば、アパレルの工場では、生地を人の目で検品する際に、傷がついているものをB反やC反とカテゴライズし、その生地は倉庫で眠り、捨てられてしまう慣習があります。

私は、工場で2年半の間、工場の中を見せてもらったり、経営者の方々とコミュニケーションをとったりを重ねてきた中で、この仕組みって変じゃない?と感じていました。

B反やC反の基準は、一定距離の間に傷が何個あるかなのですが、それを見せてもらうと、素人ではとてもわからないレベルの微細な傷なんです。

消費者として、気付けないような傷で生地が倉庫で眠ってしまうのはどうも変だなと。

しかも、その傷は個人的にはあった方が、味があって面白いと思えるもので、むしろプラスのものではないかと感じていたんです。

一連のことを知る中で、同じ手間で作られている生地なのに、検品の数字で欠点だとされてしまうことに違和感を感じたことが1番のきっかけです。
──B反やC反の話は、正直知らないことばかりでした。実際にどれくらいがB反やC反になってしまうものなのでしょうか?

私が提携している工場では、旧式シャトル織機で織られるセルビッチデニムだけで毎月400メートル分とのことでした。

ジーンズ1本作るのに必要な生地は2.5メートル程だと言われているので、月間約160本分が無駄になっている計算になります。

Made in Japanのジーンズですと、2~3万円程度が相場ですので、それだけの価値あるものが捨てられるのはどうも心苦しいと思っていました。

根底にあるのは、大量生産・大量消費・大量廃棄

──もったいないと感じてしまいますね(汗) でも、なぜそのようなシステムになっているのでしょうか?

これは深堀りをしていくと、大量生産のために作られたモデルだということが根底にあります。

要は、不良部分を取り除く人件費を払うなら、捨てた方がコスト的に良いよね。と考えられているということです。

今の経済のあり方で無駄が生じていて、しかも職人さんの想いも、ふいになっている現状があったんです。

それをどうにかしたいと考えて、land down underのプロジェクトを始めました。

国内デニム技術の結晶

国内デニム技術の結晶

──素晴らしい取り組みだと思います。とはいえ、ファッションである以上、その質にこだわる必要があると思うのですが、ジーンズとしての特長を教えていただけますか?

長く穿いていただくことが一番良いと考えていて、そのための特長としては大きく2つあります。

1つ目が生地に対するこだわりです。

land down underは、国内のデニム技術の結晶のようなジーンズだと自負しています。

デニム生地は、伝統的なデニム工場である広島県福山の篠原テキスタイルから購入し、児島の縫製工場でジーンズにしてもらっています。

セルビッチデニムというのですが、生地は50~60年前旧式シャトル(力)織機で織られていて、その古い機械でしか作れない生地の風合い、色落ちした時の独特なカッコよさが、大きな魅力だと考えています。

旧型の機械ですので、正直、作業効率はよくなく、スピードは新型の1/6。

しかし、古い機械で織られたデニムにしか出せない生地の表情や、ムラ感が絶妙なんです。

2つ目は、リサイクルしやすい構造になっていることです。

通常のジーンズを思い浮かべていただければわかると思うのですが、リベットという金属の金具がついています。

リサイクルする際に、異素材だと手間になるので、あえて外して、糸で補強するようにしています。

より小さい循環ほど、環境負荷が低いモデル

Land Down Underのサーキュラーモデル

──輪が小さいほど環境負荷が低い循環モデルがすごく興味深いのですが、なぜこのような循環モデルにされたのでしょうか?

既に存在する技術を組み立てることで、資源を最大活用できるブランド運営ができるのでは?という、ある意味での提案なんです。

大前提、今のアパレル業界でこのようなサーキュラーのモデルを採っているブランドはあまりないと思うのですが、1つ1つの取り組みを見てみると、別に何ら新しいことではありません。

逆に言うと誰でも実現できるんです。

ただ、この循環モデルを成立させるにはいろんなハードルがあるのは事実。なので、私はブランドが小さくても、このモデルと経済が、実際に回ること実証できればと考えています。

自分のブランドが大きくなるというよりも、このサーキュラーモデルを他のブランドや、地域(産地)で実現させていきたいという思いがあります。

「ホンモノ」探しの旅

LANDDOWNUNDERと本物探しの旅

──非常にメッセージ性がある活動だと思いました。取り組みを通じて世の中に伝えたいことはなんでしょうか?

ブランドコンセプトは”「ホンモノ」探しの旅”です。

「本物として考えられていることを疑ってみない」という1つの提案でもあります。

例えば、今だったら大量生産・大量消費そして大量廃棄が1つのスタンダードじゃないですか。

それ以外にもやり方ってあるよね?という考え方に触れてもらえればと考えています。

私が提供するのは服なので、服のブランド体験できっかけ作りができれば嬉しいですね。

そうしたら、いろんな暮らしのあらゆる面で、考えてもらうことができると思いますので。
──服を通じて現状を疑うことを提案するわけですね。すごく面白いと感じました。

ありがとうございます!

ただ、消費者の皆さんには、そんなに構えて利用していただかずに、楽しんでもらえれば良いなと思います。

サーキュラーモデルもそうですが、長く使えるジーンズを提供しているので、気持ちよく穿いてもらえると嬉しいです。

環境に良いことをやろうと言うと、ちょっと身構えるじゃないですか。

なので、そんなに構えなくても、こちらで仕組みを用意して、循環させるので、気持ち良く穿いてもらえれば良いなと思っています。
──実際にジーンズを穿いた方の反応はいかがでしたか?

今回、クラウドファンディングを実施するに当たって、事前に男女問わずいろんな年代の方に、試着会として穿いていただいたのですが、「ストーリーも含めて気持ちよく捌ける。」という声を多くいただきました。

プロジェクトの背景もセットで伝えながら試着会を回っていたのもあると思いますが、もの単体としてよりも、そのように仰っていただくのは嬉しい限りです。

また、ジーンズは重くなって穿いてなかったけど、これなら穿けるという声もいただきました。

おしりと腰がゆったりしているワイドテーパードで、しゃがんだり座ったりするのがしやすい形になっているためだと思います。

そのようなシルエットなので、カジュアルにも綺麗目にもはいていただけます。

服にとことんこだわり、サーキュラーモデルの礎として

LAND DOWN UNDERは本物を探し求める

──最後に、将来の展望を教えていただけますか?

land down underだけで巨大なブランドを作っていこうとは思っていないのですが、作る服にはとことんこだわるブランドでありたいなと思います。

今の取り組みは本当に第一歩目でしかないですし、リサイクルに取り組むのもこれからです。

そもそもの製造過程における環境負荷を下げること、服自体の環境負荷を下げること、原料のリサイクル率を上げることにまずはチャレンジして、自分の服作りはより良くしていければと思います。

また、それとは別で、今構想している循環モデルが出来上がれば、他企業にビジネスモデルの提案などもできればと思っています。

そのためにも、まずは倉敷の中でサーキュラーエコノミーのモデルを確立していきたいです!

編集後記
今回は、主要のファッション業界に対してのカウンターとして構えるland down underを紹介してきましたがいかがでしたか。

個人的には、新しいことは1つもしていないけど、それがちゃんと循環することを自分のブランドで証明したいと話していたことが印象的でした。

環境負荷のことを考えて、少しでも資源の使用を減らす取り組みが増える、そんな起爆剤の役割になっていくことを応援しています。

それでは、最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

また、サスティナブルファッションに関しては、こちらの記事で紹介しておりますので、興味がある方はぜひご一読ください。
サスティナブルファッション|話題の持続可能なアパレルブランド7つをご紹介

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https://www.instagram.com/ldu.japan/

               
ライター:Sohshi Yoshitaka
Ethical Choiceの初代編集長。2030年までに地球が持続可能になる土台を、ビジネスを通して作ることがミッション。

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※本記事はエシカルな情報提供を目的としており、本記事内で紹介されている商品・サービス等の契約締結における代理や媒介、斡旋をするものではありません。また、商品・サービス等の成果を保証するものでもございません
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