海洋汚染の現状とは?プラスチックから海を守るための取り組みを解説

公開日:2021年6月17日 / 最終更新日:2026年9月8日

プラスチックフリー

by Brian Yurasits

海洋汚染は、プラスチックごみ、十分に処理されない排水、油や化学物質の流出などによって、海の環境が損なわれる問題です。海岸で見えるごみだけでなく、川や排水を通じて陸から海へ運ばれる物質にも目を向ける必要があります。

この記事では、海洋汚染の原因と影響、国内外の対策、私たちにできる行動を紹介します。サンゴ礁の状況や国際交渉については、2026年に公表された情報も反映しています。

海洋汚染の現状とは?

国連環境計画(UNEP)は、毎年約1,900万~2,300万トンのプラスチックが水域の生態系に流入すると説明しています。これは湖・河川・海などを含む推計で、海だけへの流入量ではありません。

海洋汚染には、プラスチック以外の原因もあります。ごみの量、水質、生き物への影響は異なる指標で調べられるため、ひとつの数字だけで海の状態全体を表すことはできません。

出典:UNEP「Plastic Pollution and Marine Litter」

海を汚す原因と、海の環境を悪化させる要因

海がプラスチックで汚染される

プラスチックごみとマイクロプラスチック

海へ流れ込んだごみは、生き物が誤って食べたり、体に絡まったりする原因になります。プラスチックが細かく砕けても、すぐに自然へ戻るとは限りません。

NOAAは、長さ5mm未満の小さなプラスチック片をマイクロプラスチックと説明しています。大きな製品の破片のほか、製造時から小さな粒や、衣類から出る合成繊維なども問題になります。量は調査場所や採取方法によって変わるため、日本の海全体を「常に世界平均の27倍」とするような読み方はできません。

出典:NOAA「マイクロプラスチックとは」

生活排水

家庭から出る排水には、トイレの排水だけでなく、台所や風呂、洗濯の排水も含まれます。処理施設の整備や適切な運転・管理が不十分だと、川や海の水質に影響します。

UN-Waterの2025年公表資料では、2024年に世界で安全に処理された家庭排水は約56%と推計されています。「世界の生活排水の90%が未処理」という旧来の説明とは異なります。また、この割合は工業排水を含めたすべての排水の数字ではありません。

日本でも、油や食べ残しを排水口に流さないことが大切です。油を薄めて流すのではなく、自治体の回収・廃棄方法に従って処理しましょう。

出典:UN-Water「家庭排水の安全な処理に関する進捗」(2025年公表・2024年データ)

船舶事故などによる油の流出

船の座礁

2020年7月、モーリシャス沖でばら積み貨物船Wakashioが座礁し、船の燃料油が流出しました。IMOは国際的な事故対応に参加しています。

油の流出は生態系だけでなく、漁業や観光など地域の暮らしにも関わる問題です。事故予防と流出への対応、環境の調査・回復を組み合わせる必要があります。2020年の被害を、そのまま2026年の復旧状況として扱うことはできません。

出典:国際海事機関(IMO)「Wakashioの油流出への対応」

工場などからの排水

工場排水に含まれる物質や量は業種・工程によって異なります。適切に処理されないまま川へ流れると、下流や沿岸に影響するおそれがあります。

対策には、汚染物質の排出を減らす工程の見直し、排水処理、測定・監視が必要です。特定の国の工場が一律に未処理排水を流していると捉えるのではなく、施設ごとの管理状況や公的な調査結果を確認することが大切です。

出典:UN-Water「水質と排水」

海水温の上昇など、気候変動による負荷

海の生態系は、ごみや排水だけでなく、海水温の上昇などの影響も受けます。汚染物質の流入と気候変動は仕組みが異なりますが、複数の負荷が同じ生態系に重なることがあります。

例えばサンゴ礁では、強い高水温のストレスが大規模な白化につながります。ごみを回収する取り組みとともに、温室効果ガスの排出を減らす取り組みも必要です。

サンゴ礁の状況:2026年の公表情報

サンゴ礁

NOAAは2026年6月2日、世界で4回目となる大規模なサンゴ白化について、2025年半ばに終息した可能性が高いと発表しました。2023年初めから2025年半ばにかけ、世界のサンゴ礁面積の約84%が白化を引き起こし得る高水温のストレスにさらされたとしています。

この約84%は熱ストレスを受けた範囲であり、サンゴ礁の84%が死滅したという意味ではありません。また、大規模な現象の終息は、サンゴがすべて回復したことや、今後の白化リスクがなくなったことを意味しません。

出典:NOAA「第4次の世界的サンゴ白化は2025年に終息した可能性」(2026年6月2日)

サンゴ礁を守る理由

サンゴ礁は、多くの海洋生物の生息場所となり、波や嵐から海岸を守る役割も担います。漁業や観光を支える地域にとっても重要な存在です。

保全には、沿岸の水質改善、ごみや物理的な損傷の削減、気候変動対策など、複数の取り組みが求められます。

出典:NOAA「サンゴ礁が重要な理由」

人の健康への影響は、物質と曝露を分けて考える

汚染された水や食品に関わる健康影響は、含まれる物質や病原体、取り込む量・経路によって異なります。マイクロプラスチックそのものと、添加剤などの化学物質も同じものではありません。

WHOの2022年の評価では、ナノ・マイクロプラスチックへの曝露と人の健康影響について、研究の不足や不確実性を埋める必要があるとされています。「魚を食べると必ずホルモンの働きが阻害される」といった断定はできません。公的機関による食品・水質の案内を確認し、海洋汚染の説明から一律の食事制限を導かないようにしましょう。

出典:WHO「ナノ・マイクロプラスチックへの曝露と健康影響の評価」(2022年)

世界ではどのような対策が進んでいる?

世界の対策

by Tim Mossholder

特定の使い捨て製品を減らす取り組み

EUでは2021年から、使い捨てのプラスチック製カトラリー、皿、ストローなど、指定された製品の市場投入を禁止しています。ただし、対象品目や例外があり、あらゆるプラスチックの使用が全面的に禁止されたわけではありません。

国・自治体ごとに制度の内容が異なるため、旅行や事業で製品を扱う際には、対象地域の公式案内を確認することが必要です。

出典:EU「使い捨てプラスチック製品のルール」

プラスチック汚染に関する国際的な交渉

UNEPの下では、プラスチックの生産・設計・廃棄までを対象とする国際的な法的文書の策定に向けた取り組みが進められています。

2025年8月の会合は条文への合意に至らず閉会しました。2026年2月7日のINC-5.3は議長選出などの運営上の事項を扱う会合で、実質的な条文交渉は行われていません。会合の開催を、条約の成立・発効と混同しないよう注意が必要です。

出典:UNEP「INC-5.2」(2025年8月)

出典:UNEP「INC-5.3」(2026年2月)

日本の海洋ごみ・プラスチック対策

日本では2019年に「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」が策定されました。ごみの回収・適正処理、ポイ捨て防止、海洋ごみの回収、国際協力、実態把握や研究などを組み合わせる方針です。

さらに、2022年4月にはプラスチック資源循環法が施行され、製品の設計から使用、回収・再資源化までの取り組みが進められています。自治体によって回収方法が違うため、プラスチック製品をすべて同じ区分で捨てられるとは限りません。

出典:環境省「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」(2019年)

出典:環境省「プラスチック資源循環法の施行期日等」

また、「生分解性」と表示されていても、どの環境でもすぐに分解するわけではありません。素材や試験条件を確認し、自然の中へ捨てずに適切に処理することが基本です。

出典:環境省「海洋生分解性プラマークの基準」

私たちにできる9つのこと

私たちができること

by Mathilde Langevin

  1. ポイ捨てをせず、屋外のごみが風で飛ばされないよう管理する。
  2. 地域の分別・回収ルールを確認する。
  3. 海岸や河川の清掃活動に、安全に配慮して参加する。
  4. 手持ちのボトルや容器を、衛生的に繰り返し使う。
  5. 不要な使い捨て製品を減らす。
  6. 洗剤・シャンプーなどは表示された適量を使う。
  7. 洗濯機のフィルターや繊維流出を減らす製品は説明書に従って使い、集めた繊維を排水口へ流さない。
  8. 調理油は自治体の回収や廃棄方法に従い、排水口へ流さない。
  9. 食べ残しや皿の油汚れを取り除いてから洗う。

洗濯用の袋やフィルターは、すべての微小な繊維を取り除けるわけではありません。また、節水のために必要な手洗いや衛生管理を控える必要はありません。無理なく続けられる方法を選びましょう。

海洋汚染を減らすために、陸の暮らしから見直そう

海を守る取り組みは、海岸だけで行うものではありません。家庭や事業所で出るごみと排水を減らし、適切に処理することが、川や海の保全につながります。最新の公的情報を確かめながら、できる行動を続けていきましょう。

海との関わりを考える国際デーについては、世界海洋デーの記事もご覧ください。

               
ライター:Ethical Choice編集部
Ethical Choice編集部です。エシカルな生活を送る知恵、サスティナビリティに関する取り組み、環境問題に対するソリューションを発信いたします。

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