ゼロエミッションとは?資源循環・脱炭素の違いと日本企業の取り組み

公開日:2021年6月1日 / 最終更新日:2026年9月8日

気候変動

「ゼロエミッション」は、廃棄物や温室効果ガスなどの排出を減らす取り組みで使われる言葉です。ただし、何をゼロにするかは文脈や事業者によって異なります。

この記事では、資源循環と脱炭素の違い、企業の事例、取り組みを見る際の注意点を紹介します。2026年9月に公式情報を確認しました。

ゼロエミッションの意味と対象

ゼロ(zero)は零、エミッション(emission)は排出を意味します。資源循環の分野では、ある工程から出る副産物や廃棄物を別の工程で利用するなど、最終的な処分を減らす考え方として使われてきました。

ただし、各社が定める「達成」の範囲は同一ではありません。TOTOは、工場から出る一般廃棄物・産業廃棄物の埋め立てと単純焼却を限りなくゼロに近づけ、再利用率99%以上を目指すものとして定義しています。

出典:TOTO「資源循環」(ゼロエミッションの定義を含む)

リサイクル率100%とCO₂排出ゼロは違う

廃棄物を再資源化できても、その処理や輸送にエネルギーを使い、温室効果ガスを排出することがあります。「リサイクル率100%」から、工場や企業全体のCO₂排出がゼロだと判断することはできません。

脱炭素の文脈では、排出を直接ゼロにすることと、残る排出量を吸収・除去などと釣り合わせる「ネットゼロ/実質ゼロ」も区別する必要があります。対象ガス、拠点、サプライチェーンの範囲、目標年を確認しましょう。

資源循環と脱炭素を両立するには

 ゼロエミッションとは何かを簡単に解説

まず廃棄物の発生を抑え、再使用、再生利用などにつなげることが基本です。最終処分場の残余年数は、その時点の残余容量や埋立量をもとにした指標であり、特定の年に全国の処分場が一斉に満杯になるという予告ではありません。

再生利用の際も、回収・選別・加工・輸送による負荷と、天然資源の使用を減らす効果を合わせて考える必要があります。廃棄物の削減率と温室効果ガスの削減率を、別々に確認することが大切です。

出典:環境省「リユースの推進」

日本企業の取り組み5例

ゼロエミッションの具体例

以下は各社・関係機関が公表する取り組みです。各社の全事業で排出がゼロになったことを意味するものではありません。

積水ハウス:建設現場の資源循環

積水ハウスは、建設現場で分別した廃棄物を資源循環センターでさらに分別し、再資源化する仕組みを運用しています。公式の2025年度データでは、新築の廃棄物リサイクル率を100%と報告しています。対象区分は新築で、アフターサービス・リフォームなどとは分けて示されています。

出典:積水ハウス「サーキュラーエコノミーに向けた取り組み」

キリン:排水から得るバイオガスの利用

ビール工場の有機性排水を処理する過程で得られるバイオガスを、発電や熱供給に利用する取り組みです。兵庫県は、キリンビール神戸工場で得た電力・蒸気を工場内の製造工程などに使う事例を紹介しています。「排水を浄化すると、そのまま蒸気が出る」という仕組みではありません。

出典:兵庫県「キリンビール神戸工場のバイオガス利用」

TOTO:工場の廃棄物と再利用

TOTOは、商品の設計から使用後の廃棄まで、資源の投入・廃棄を減らす取り組みを紹介しています。工場の廃棄物に対する再利用率と、商品使用時を含むCO₂削減の目標は別の指標です。同社の基準と対象範囲を確認して評価しましょう。

出典:TOTO「資源循環」

ローソン:食品ロス削減と再生利用

ローソンは、発注の改善や値引きなどで食品ロスを減らし、発生した食品廃棄物の飼料化・肥料化・メタン化などに取り組んでいます。公式情報では、食品リサイクルは2026年3月末時点でグループ計2,336店舗で実施。全店舗の食品廃棄物が同じ方法で再生利用されているわけではありません。

出典:ローソン「廃棄物削減」(2026年3月末時点の実施店舗数)

味の素:発酵生産の副生物を農業へ

味の素グループは、アミノ酸の製造工程で生まれる副生物を肥料や飼料などに活用する「バイオサイクル」を紹介しています。原料作物、生産、副生物の活用をつなぐ資源循環の事例です。

出典:味の素グループ「バイオサイクルってなに?」

東京ゼロエミポイントは現在どうなっている?

東京都が2026年2月に案内した令和8年度事業は、対象となる省エネ性能の高い家電等への買い替えなどにポイントを付与し、店舗で直接値引きする仕組みです。以前のLED割引券などの案内とは利用方法が異なります。

対象者、対象製品、登録店舗、申請条件、予算・実施期間を最新の公式案内で確認してください。名前に「ゼロエミ」があっても、購入した家電の製造・使用に伴う排出がすべてゼロになる意味ではありません。

出典:東京都「令和8年度東京ゼロエミポイント事業」(2026年2月18日)

水素・アンモニアの説明でも範囲を確認する

水素やアンモニアは、利用時のCO₂だけでなく、原料採取、製造、輸送などを含めた排出量で評価する必要があります。化石燃料を使って製造する場合などは、製造段階で排出が生じます。「燃やすとCO₂を出さない」という説明を、そのまま製品のライフサイクル全体の排出ゼロと読み替えないことが重要です。

出典:資源エネルギー庁「アンモニアが燃料になる?(後編)」

取り組みを見極める5つの確認点

  1. 対象は廃棄物、CO₂、温室効果ガスのどれか
  2. 工場・店舗・全社・サプライチェーンのどこまで含むか
  3. 目標か、達成済みの実績か
  4. リサイクルや再利用の定義に何が含まれるか
  5. 再資源化の工程で生じる環境負荷も評価しているか

私たちも、不要な購入を減らす、ものを長く使う、指定された回収ルートを利用するなどの行動ができます。企業の発信では、合言葉だけでなく、対象と実績が具体的に示されているかを確認しましょう。

               
ライター:Ethical Choice編集部
Ethical Choice編集部です。エシカルな生活を送る知恵、サスティナビリティに関する取り組み、環境問題に対するソリューションを発信いたします。

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