グレート・リセットとは?2020年の構想・3つの柱とダボス会議との関係

公開日:2021年5月21日 / 最終更新日:2026年9月8日

サステナブル

グレート・リセット(The Great Reset)は、コロナ禍からの復興を機に、経済や社会の仕組みを公平性・持続可能性の観点から見直そうとする構想です。世界経済フォーラム(WEF)が2020年6月に発表し、創設者のクラウス・シュワブ氏らが提唱しました。

この記事では、構想が示された当時の背景、提案の3つの柱、ステークホルダー資本主義や日本の「三方よし」との関係を整理します。2020〜2021年の提案と、その後の会議の開催状況を分けて読むことがポイントです。

出典:WEF:The Great Resetの発表(2020年6月)

グレート・リセットとは何か

「リセット」という表現は、社会を文字どおり白紙に戻すという意味ではなく、復興の際に従来の仕組みを見直すという提案を表しています。気候変動、格差、技術の変化などを経済活動と切り離さずに考えることが、構想の中心にあります。

ただし、グレート・リセット自体は法律や条約の名称ではありません。国際会議で取り上げられたことと、各国で政策が決定・実施されたことは別です。「世界がすでに同じ制度に移行した」「すべての人に実行が義務づけられた」という意味ではありません。

コロナ禍で提唱された背景

the great resetについて

2020年6月のシュワブ氏の寄稿は、当時の感染拡大と景気悪化への懸念を出発点に、復興を通じて格差や環境問題にも取り組む必要性を論じたものです。現在の経済情勢を予測した記事ではないため、当時の失業や景気対策の説明を、そのまま2026年の現状として読むことはできません。

この構想を理解する際は、①暮らしや働く機会の不平等、②経済活動と環境への影響、③技術の変化が人や社会にもたらす利益、という三つの問いに整理すると分かりやすくなります。ここで紹介するのは、それらへの一つの提案です。社会課題の解決方法がこの構想だけに限られるわけではありません。

提案に含まれる3つの柱

シュワブ氏が2020年6月3日の寄稿で示した主な論点は、次の三つです。

1.市場の仕組みを公平性の観点から見直す

税制、規制、財政や貿易のルールなどを通じて、経済の成果がより公平に届く仕組みを目指すという提案です。各国が具体的にどの政策を採るかは、それぞれの制度や政策決定によります。

2.投資を持続可能性や公平性につなげる

当時の復興支出や民間投資を、長期的な環境・社会の改善に役立てるという考え方です。2020年に言及された復興基金を、現在も同じ条件で使える制度や、個人向けの金融商品と読み替えることはできません。

3.技術革新を公共の利益に役立てる

第四次産業革命の技術と分野を超えた協力を、医療や社会課題に生かすという提案です。技術の導入自体を目的にせず、誰にどのような利益が届くかを考える視点といえます。

出典:クラウス・シュワブ氏の寄稿:Now is the time for a great reset(2020年6月3日)

ステークホルダー資本主義との関係

関連する考え方が「ステークホルダー資本主義」です。企業の判断で、株主に加え、従業員、顧客、取引先、地域社会などの利害や、環境への長期的な影響も考慮することを重視します。

WEFに掲載されたシュワブ氏らの2021年の解説は、この考え方を支持する立場から書かれています。「従来の企業はすべて短期利益しか考えていない」という事実認定ではなく、企業や経済をどの方向へ変えていくべきかという主張として理解しましょう。

出典:WEF掲載:ステークホルダー資本主義などの比較(2021年1月)

日本の「三方よし」はどう紹介された?

ステイクホールダー資本主義

2020年1月にWEFへ掲載された江田麻季子氏の寄稿は、売り手、買い手、社会にとっての良さを考える「三方よし」と、ステークホルダー資本主義の共通点を取り上げています。

同じ寄稿では、働き手の多様性や女性の参加、スキルの不足など、日本が改善すべき課題にも触れています。日本のすべての企業がすでに理想を実現している、という評価ではありません。伝統的な理念と、現在の企業の行動・成果は分けて確かめる必要があります。

出典:江田麻季子氏の寄稿:日本とステークホルダー資本主義(2020年1月20日)

ダボス会議との関係と2026年の状況

グレート・リセットは、2020年の発表で翌年の会合につながる取り組みとして紹介されました。2021年にはシンガポールで予定された対面会合が中止されましたが、1月25〜29日のオンライン会合「ダボス・アジェンダ」は開催されています。

中止の経緯や2022年の対面開催については、2021年ダボス会議の中止とその後をまとめた記事をご覧ください。

出典:WEF:2021年特別年次総会の中止発表

出典:UNFCCC:2021年ダボス・アジェンダ

2026年のダボス年次総会は1月19〜23日、テーマは「A Spirit of Dialogue(対話の力)」でした。2020年の構想を、2026年の会議の公式テーマとして紹介するのは適切ではありません。

出典:WEF:2026年ダボス会議のテーマ・日程

私たちが情報や企業の取り組みを見るときのポイント

大きな構想を日常の判断につなげるには、名前の印象だけでなく、具体的な内容を確かめることが大切です。たとえば企業の環境・社会への取り組みを見るときは、次の点を確認してみましょう。

  • 発表した人・組織と、情報の発表年が分かるか。
  • 将来の目標と、すでに実施したことが分けて説明されているか。
  • 対象となる商品・事業・地域や、成果を測った期間が明示されているか。
  • 関係する人々への影響や、残る課題も説明されているか。

グレート・リセットは、コロナ禍を背景に示された社会・経済の見直しの構想です。提唱者の意見、実際の制度、取り組みの成果を区別することで、過去の議論を現在の環境や社会を考える材料として生かせます。

               
ライター:Ethical Choice編集部
Ethical Choice編集部です。エシカルな生活を送る知恵、サスティナビリティに関する取り組み、環境問題に対するソリューションを発信いたします。

【免責事項】

※本記事に掲載の情報は、公的機関の情報に基づき可能な限り正確な情報を掲載しておりますが、情報の更新等により最新情報と異なる場合があります。

※本記事はエシカルな情報提供を目的としており、本記事内で紹介されている商品・サービス等の契約締結における代理や媒介、斡旋をするものではありません。また、商品・サービス等の成果を保証するものでもございません
クリップボードにコピーしました。