パーム油が使われている食品は?危険性と森林破壊との関係について
公開日:2021年2月5日 / 最終更新日:2026年9月8日
パーム油は、菓子や即席めんなどの食品から、洗剤・化粧品の原料まで、幅広く使われる植物油です。一方で、農園の開発方法によっては、森林や泥炭地、生き物、地域の人々に大きな影響を及ぼします。
この記事では、パーム油が使われる理由と環境・社会上の課題、健康面での考え方、RSPOの仕組みを紹介します。企業事例は、2025~2026年の公表情報を含めて見直しています。
パーム油とは?
パーム油は、アブラヤシの果実から採れる油です。同じ果実の種子から採るパーム核油とは、性質や用途が異なります。主な生産地域にはインドネシアやマレーシアがあります。
アブラヤシは土地面積に対する油の収量が高い作物です。食品の食感や保存性、製造時の使いやすさなどから、さまざまな製品の原料として利用されています。
「植物油脂」「グリセリン」は、必ずパーム油という意味ではない
食品の表示では「植物油脂」などの名称が使われる場合があります。ただし、これはパーム油だけを指す名称ではなく、表示だけで原料の植物を特定できないことがあります。
マーガリンやショートニングは油脂を加工した製品の名称です。また、グリセリンや界面活性剤にも複数の原料があります。これらをすべてパーム油の別名と考えるのは誤りです。由来を知りたい場合は、メーカーの商品説明や原料調達方針を確認しましょう。
パーム油が使われる食品・日用品

- 食品:即席めん、菓子、パン、アイスクリーム類などの油脂として使われることがあります。
- 日用品:石けん、洗剤、化粧品などで、パーム油・パーム核油やそれらの誘導体が原料になることがあります。
同じ種類の食品や日用品でも、すべてがパーム油を使っているわけではありません。配合は商品や販売地域、改良時期によって変わります。
多くの製品に使われる理由

パーム油は加工によって性質を調整しやすく、固さや口どけ、安定性などが求められる製品に使われます。また、アブラヤシは面積当たりの収量が高いため、限られた土地で油を生産できる利点があります。
ただし、価格は市場条件によって変動します。「常に最も安い油」とは限りません。また、燃料に利用できることだけで、その生産から使用までの環境負荷が低いと判断することもできません。
環境や社会への影響は、生産方法によって変わる
森林の減少と生物多様性

森林を切り開いて農園を広げることは、野生生物の生息場所を失わせる原因になります。アブラヤシの栽培は森林減少に関わる要因のひとつですが、ある国の森林減少のすべてをパーム油だけが引き起こしているわけではありません。
どこで、どのような土地を転換したのか、森林や生き物を守るルールが実行されているかを確認することが重要です。
泥炭地の開発や火災
泥炭地は多くの炭素を蓄えています。排水によって乾燥させたり、火災が起きたりすると、蓄えられた炭素が温室効果ガスとして放出されることがあります。農園開発では、森林だけでなく泥炭地の保全も重要です。
地域住民・労働者の権利
土地の利用を巡る合意、先住民や地域住民の権利、働く人の安全や待遇も課題です。小規模農家が適切な生産方法や認証に取り組めるよう、知識・資金・市場へのアクセスを支えることも求められます。
パーム油は健康に危険?食事全体のバランスで考える
パーム油は飽和脂肪酸を比較的多く含む油です。ただし、「パーム油入りの食品を食べると必ず病気になる」という意味ではありません。健康への影響は、食事全体の内容や摂取量、置き換える食品によって変わります。
WHOは健康的な食事の案内で、飽和脂肪酸から取るエネルギーを総摂取エネルギーの10%以下にし、不飽和脂肪酸などに置き換えることを勧めています。これはパーム油だけに適用する基準ではなく、肉の脂やバターなどを含む食事全体についての考え方です。
環境に関する認証は、その食品をいくら食べてもよいという健康上の保証ではありません。食品の栄養成分表示も確かめ、特定の油だけを悪者にしないことが大切です。
出典:WHO「飽和脂肪酸・トランス脂肪酸の摂取ガイドライン」(2023年)
別の植物油に替えれば解決する?

IUCNは、パーム油をほかの油に一律に置き換えると、必要な農地が増え、生物多様性への影響が別の地域へ移る可能性を指摘しています。アブラヤシは収量が高いためです。
だからといって、どの農園の生産方法でもよいわけではありません。不要な消費を減らすことに加え、森林や地域の権利に配慮した原料調達を進める必要があります。
RSPOとは?団体と認証の仕組み
RSPOは「Roundtable on Sustainable Palm Oil」の略で、日本語では「持続可能なパーム油のための円卓会議」と呼ばれます。生産者、加工・製造・販売に関わる企業、環境・社会分野の団体などが参加する組織です。
RSPOは生産や流通に関する基準を設けています。生産段階の原則と基準(P&C)と、認証原料を流通・加工段階で扱うためのサプライチェーン認証は役割が異なります。基準は改定されており、旧記事の8項目をそのまま現行基準の全文として扱うことはできません。
出典:RSPO「Our standards」:2024年版P&Cなどの現行文書
認証原料の調達と、クレジットによる支援を区別する
RSPOには主に次の4つのサプライチェーンモデルがあります。
| モデル | 概要 |
|---|---|
| Identity Preserved(IP) | 特定の認証供給源の油を、ほかの油と分けて管理する。 |
| Segregated(SG) | 複数の認証供給源の油を扱えるが、非認証油とは分けて管理する。 |
| Mass Balance(MB) | 認証油と非認証油を混合しながら、認証量を管理する。 |
| RSPO Credits/Book & Claim | 認証生産者などのクレジットを購入し、認証油の生産を支援する。 |
クレジットの購入は、その商品の中に認証農園由来の油が物理的に入っていることを示すものではありません。企業の「100%」という説明を読むときも、対象原料・商品・調達方式を確認しましょう。
パーム油の調達を見直す企業3社
LUSH:パーム油と誘導体の使用を減らす

LUSHは、パーム油を使わない石けんベースの開発など、原料の見直しを説明しています。一方、公式のパーム油に関する案内では、一部の合成原料にパーム油由来の誘導体が含まれることも明記しています。
ブランド全体を「すべてパーム油・誘導体不使用」と判断せず、対象商品と成分の説明を確認しましょう。掲載した出典はニュージーランド向けの公式案内であり、日本の商品については国内の商品表示を確認する必要があります。
出典:LUSH「Does Lush use palm oil?」
WELEDA:パーム油の使用と調達方針を公表

WELEDAの2026年3月25日の公式説明では、石けんにパーム油を使い、多くの製品でパーム油由来成分を使用していることを明記しています。「ピュアパーム油をどの製品にも使用していない」という旧記事の説明は訂正します。
同社はブラジルからのフェアトレードのパーム油調達や、ボルネオでの保全支援を紹介しています。これらは企業が説明する取り組みであり、すべての商品が同じ原料・調達方式という意味ではありません。
出典:WELEDA「Why do we use palm oil?」(2026年3月25日)
SARAYA:対象商品と認証方式を分けて報告

サラヤの「持続可能性レポート2025」では、コンシューマー商品は認証率100%を維持し、企業向け商品は顧客の要望に応じてクレジットを購入すると説明しています。2030年に向け、ブックアンドクレーム方式も含めて再び100%を目指し、SG・MBなどの認証原料の購入割合も高める方針です。
したがって、「国内販売の全製品で物理的な認証原料を100%使用」とは言い換えられません。小規模農家のクレジット購入など、生産者を支える方法も報告されています。
出典:サラヤ「持続可能性レポート2025」パーム油の調達方針
日々の買い物で確認したいこと
- 食品は原材料だけでなく、栄養成分と食事全体のバランスも見る。
- 企業が原料の由来、調達方針、対象範囲を公開しているか確認する。
- RSPOなどの表示は、マークや文言が意味する範囲を確かめる。
- 将来目標と達成済みの実績を区別する。
- 買いすぎや使い残しを減らし、必要な量を使う。
パーム油が含まれるかだけで、商品全体の良し悪しが決まるわけではありません。何に使われ、どのように生産・調達されているかを確かめることが、日常の便利さと環境・社会への配慮を両立する手がかりになります。
【免責事項】
※本記事に掲載の情報は、公的機関の情報に基づき可能な限り正確な情報を掲載しておりますが、情報の更新等により最新情報と異なる場合があります。※本記事はエシカルな情報提供を目的としており、本記事内で紹介されている商品・サービス等の契約締結における代理や媒介、斡旋をするものではありません。また、商品・サービス等の成果を保証するものでもございません