水不足が深刻化している?水資源危機の現状と対策について解説します
公開日:2020年12月25日 / 最終更新日:2026年9月8日
水不足には、地域にある水の量が需要に足りない問題と、安全な水を届ける設備・管理が不足する問題があります。この2つは関係しますが、同じ指標ではありません。
WHO・UNICEFの2025年公表の報告によると、2024年時点で約21億人が安全に管理された飲料水サービスを利用できていません。この記事では2026年9月に確認した資料を基に、水不足の現状、原因、影響、対策を整理します。
水不足と水へのアクセスの違い

水資源の不足は、降水量、河川や地下水の量、農業・産業・家庭の需要などに左右されます。一方、水源があっても、水道や浄水・衛生設備の整備、維持管理、費用の問題によって、安全な水を利用できない場合があります。
そのため「水不足」を、飲み水がない状態だけで説明することはできません。乾燥した地域に限らず、人口が集中する都市や、水を多く使う産業のある地域でも課題になります。
世界の飲料水・衛生の現状
WHOとUNICEFの共同監視プログラム(JMP)が2025年に公表した報告の、2024年時点の推計です。
| 項目 | 利用できていない人口など |
|---|---|
| 安全に管理された飲料水サービス | 約21億人 |
| 川・湖などの未処理の地表水を直接利用 | 約1億600万人 |
| 安全に管理された衛生サービス | 約34億人 |
| 屋外排泄をしている人 | 約3億5,400万人 |
| 家庭で基本的な衛生サービスを利用できない人 | 約17億人 |
これらは別々の定義に基づく集計で、人数を足し合わせることはできません。飲料水・衛生サービスの内訳も含むため、すべての人が全く水やトイレを使えないという意味ではありません。
「安全に管理された飲料水サービス」は、改善された水源が敷地内にあり、必要なときに利用でき、汚染されていないなどの条件を満たすものです。飲料水の確保と、排せつ物を適切に処理する衛生サービス、手洗いのための設備は、区別して把握する必要があります。
出典:WHO・家庭の飲料水、衛生、衛生習慣の進捗2000~2024年
水ストレスとは?数値の意味を正しく読む
水ストレスは、水への需要が利用できる水資源に対してどれほど大きいかを示す指標です。定義や計算方法は資料によって異なるため、異なる指標を混ぜて比較しないことが大切です。
WRI(世界資源研究所)のAqueductに関する2023年の公表では、25か国が年間を通じて「極めて高い水ストレス」に直面するとされています。この分類は、利用可能な水供給に対して需要が80%以上となる状態を指します。「国民の80%が水を使えない」という意味ではありません。
国の平均だけでは、国内の地域差や季節差は分かりません。日本でも地域の渇水リスクを確認する必要がありますが、食品を輸入しているという理由だけで、国全体の水ストレス順位を決めることはできません。
水不足が起きる主な要因

気候・降水の変化と水需要
水の供給は雨や雪の量・時期などに影響され、人口増加や農業・産業の需要増加によって需給が厳しくなることがあります。地下水の過剰な利用、インフラや管理の不足なども関係します。原因を地球温暖化だけ、または消費行動だけに限定することはできません。
将来予測には、人口・経済・気候などのシナリオが含まれます。「あと5年で解決しなければ危機になる」といった発表時期を示さない期限や、2050年の状態を確定事項として扱う説明は避ける必要があります。
農業・食品・衣類の生産で使う水
食品の栽培や畜産、衣類の原料栽培・加工などにも水が使われます。生産に関わる水を考える際は、産地や季節、雨水・地下水などの種類、水質への影響も見ることが大切です。
商品1個に必要な水量の推計は、生産条件と計算範囲で変わります。牛肉やTシャツなどの代表値を、すべての商品に当てはまる水道水の使用量と考えてはいけません。買った食品を使いきり、衣類を長く使うことは、不要な生産を減らす工夫にもなります。
水質汚染と設備の不足
家庭や産業からの排水が適切に処理されないと、水源の質に影響します。水がある場所でも、安全に使うためには浄水や排水処理、給水設備の維持管理が必要です。
水の問題が暮らしにもたらす影響

健康・衛生への影響
汚染された水や不十分な衛生環境は、下痢症などの疾病と関係します。水・衛生・手洗いを支える設備は重要ですが、水の不足だけを感染症の原因と断定することはできません。かつての新型コロナ流行時の数値を、現在の状況として記載することも適切ではありません。
出典:WHO・飲料水と健康
教育・仕事・地域社会への影響
水汲みに時間がかかると、学習や仕事などに使える時間が制約されます。WHO・UNICEFの2025年報告は、所得、居住地域、ジェンダーなどによる格差が残ることを指摘しています。水源や設備だけでなく、負担を担う人や利用費用にも目を向ける必要があります。
水をめぐる利害調整では、地域や国をまたぐ協力も重要です。水不足が必ず戦争につながるわけではなく、水資源の共同管理、情報共有、合意形成などが求められます。
国際的な取り組みと技術
SDGs目標6は飲み水だけの目標ではない
SDGs目標6は、水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する目標です。ターゲット6.1は安全で安価な飲料水へのアクセス、6.2は衛生と衛生習慣、屋外排泄の解消を扱います。さらに水質改善、効率的な水利用、水資源管理、生態系保護なども含まれます。
以前の記事は6.2に当たる内容を「ゴール6全文」としていましたが、目標全体ではないため修正しました。
プノンペンの水道改善
JICAが紹介するカンボジア・プノンペンの事例では、1993年に72%だった無収水率を、2008年に7%まで削減した経緯が示されています。これは過去の改善事例です。
無収水には漏水なども関係し、すべてを盗水と呼ぶことはできません。また、一都市の水道整備の成果を、その国のどこでも旅行者がそのまま水道水を飲めるという保証にはできません。
節水技術は実証条件と維持管理が重要
漏水の把握、水量の監視、排水の処理・再利用、節水型設備など、さまざまな技術が対策を支えます。導入後の費用、保守、水質管理、地域の条件も重要です。
以前紹介したLESSコーティングは、2019年にペンシルベニア州立大学が紹介した、便器への付着を減らして節水を目指す研究事例です。現在のあらゆるトイレに塗れば使用水量が半分になると保証するものではありません。
出典:ペンシルベニア州立大学・LESSコーティング研究(2019年)
私たちにできること
- 知る:地域の水源、渇水状況、水道事業の案内を確認する。
- 無駄を減らす:流しっぱなしを避け、漏水を見つけたら修理する。トイレの大小などは用途とメーカーの表示どおりに使う。
- 使いきる:食品ロスや不要な買い足しを減らし、衣類などを長く使う。
- 汚さない:油やごみを排水に流さず、洗剤は表示された適量を使う。
- 支える:水・衛生の改善に取り組む団体や地域活動について、実績を確認して参加を検討する。
衛生を保つために必要な水まで減らすことは勧めません。家庭の工夫と、水道・衛生設備の整備や水資源管理の改善を組み合わせて考えることが大切です。
水を安全に使える社会へ
水の問題を知る際は、「水の量」「水質」「安全に届けるサービス」を区別し、統計の対象年と定義を確認しましょう。日々の無駄を減らしながら、地域や社会の仕組みにも関心を持つことが、安全な水を使える人を増やす取り組みにつながります。
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