カーボンニュートラル、カーボンネガティブとは?企業の取り組みも含めて紹介

気候変動

地球温暖化の原因となる温室効果ガスの1つ、二酸化炭素(CO2)。 この二酸化炭素の排出量を減らすことが、今世界で至上命題となっています。

その中で注目されているのが「カーボンニュートラル」という概念です。炭素中立を意味するカーボンニュートラルですが、一体どういう意味で、如何にして、地球温暖化の抑止に寄与するのでしょうか?本記事では関連する概念である「カーボンネガティブ」も含めて解説していきます。

 

カーボンニュートラルとは?

カーボンニュートラル(炭素中立)とは、商品やサービスのライフサイクル全体で見た際に、二酸化炭素の排出量と、吸収量が一致することを意味する単語です。 全体でプラスマイナスゼロになるので、ネットゼロ(正味ゼロ)と呼ばれることもあります。

要は、空気中の二酸化炭素の量が変化していないので、地球温暖化に影響していないことになり、環境にダメージを与えていないということです。

 

2つのカーボンニュートラル

カーボンニュートラルには、2つの考え方があります。

1つ目は、植物由来のバイオマスエネルギーなどは、育つまでに光合成などで二酸化炭素を吸収していて、どれだけ使ってもカーボンニュートラルだいう考え方。

2つ目は、商品のライフサイクルにおいて二酸化炭素は排出されるものなので、それを植樹などの活動で吸収分と排出分をイコールにして、カーボンニュートラルを目指すという考え方です。

*バイオマスエネルギーを使うことがカーボンニュートラルであるという主張に対しては、意見が分かれることが多く、議論の余地があるトピックではあります。当記事は、真実の追求ではなく、概念を紹介することで、環境問題や人権問題に興味を持ってもらうことを目的としているので、そういう考え方があるということを理解いただければと思います。

 

カーボンポジティブとカーボンネガティブ

中立の状態をカーボンニュートラルと呼びますが、これを超えて、二酸化炭素の吸収量の方が多いことを「カーボンポジティブ」もしくは「カーボンネガティブ」と呼びます。互いに反対の意味を持ちそうですが、カーボンポジティブとカーボンネガティブは同じ意味で使われます。

呼び方は企業によって異なり、パタゴニア社(Patagonia)はカーボンポジティブと呼んでいますし、マイクロソフト社(Microsoft)はカーボンネガティブと呼んでいます。

 

なぜ、カーボンニュートラルが必要なのか。きっかけはSDGsとパリ協定から

それでは、近年盛んに聞かれるようになったカーボンニュートラルという言葉ですが、一体なぜ今になって重要視されているのでしょうか。 もちろん地球温暖化をはじめとする気候変動が理由にあることは間違いありませんが、ここでは、世の中の流れという文脈で解説できればと思います。

世の中の流れでも特に重要なのが、SDGsとパリ協定。 SDGsでは13番目の目標に『気候変動に具体的な対策を』があります。要は、地球温暖化を進める二酸化炭素の排出量を減らすことを目的としており、カーボンニュートラルはその1つの手段なので、重要だと言うことです。

また、パリ協定は地球温暖化に対する長期目標として、温度上昇を2℃以内に抑え、可能な限り1.5℃に抑える努力を追求することを目的としています。 パリ協定においても、二酸化炭素の排出量は1つの鍵になるので、カーボンニュートラルが重要になってきています。

 

カーボンニュートラルに取り組む企業の事例

企業のカーボンニュートラルへの取り組み ここまでカーボンニュートラルとは何か、そしてその重要性を見てきました。では、実際にどのような企業が取り組んでいるのか、国単位での取り組みも紹介いたします。

企業レベルだと、アメリカの巨大IT企業の取り組みが有名ではないでしょうか? グーグル(Google)は2007年からカーボンニュートラルを継続。 アップル(Apple)は当初の予定より20年前倒しし、事業全体を2030年までにカーボンニュートラルにすることを約束しました。

アマゾン(Amazon)は、2040年までのカーボンニュートラル達成に向けて、配送用自動車のエネルギーを100%再生可能エネルギーで賄うことを表明しています。

 

カーボンネガティブとは?

次に「カーボンネガティブ」について解説します。カーボンネガティブとは、人間の活動の中で排出する温室効果ガス(主に二酸化炭素)の量よりも、吸収する温室効果ガスの量の方が多い状態を指す言葉です。

具体的にカーボンネガティブになるには、再生可能エネルギーへの切り替え、森林保護や植林などによって、温室効果ガスの排出量よりも吸収量が大きくすることが重要です。 マイクロソフトが2030年までにカーボンネガティブになることを目指すと公表してから、注目を浴びる概念の1つになりました。

 

カーボンポジティブとは何が違う?

カーボンネガティブに似た言葉に「カーボンポジティブ」があります。 両者は反対のことを意味するように見えますが、実は同じ意味で使われています。英語表現の問題にも関連すると思いますが、カーボンポジティブというと二酸化炭素に対して賛同を示すようにも見えるため、カーボンネガティブという表現をする企業もあるのだと推察します。

 

カーボンネガティブはなぜ重要?

カーボンマイナスの重要性 カーボンネガティブの意味はわかったかと思いますが、なぜカーボンネガティブが重要なのでしょうか? それは、まさしく地球温暖化です。 最新の研究では、このままのペースで地球温暖化が進めば、2100年には4℃の温度上昇があると言われています。 そうなると、異常気象や海面上昇などによって、地球は人間が住める場所ではなくなると考えられています。

繰り返しになりますが、地球温暖化による温度上昇を食い止めるためにも、SDGsやパリ協定のような国際目標があり、その中で、気候変動に具体的な対策を行うことを求めていたり、温度上昇を2℃以内に抑えることを目指しているのです。

地球温暖化の原因は人類が排出しすぎている温室効果ガスなので、大気中の二酸化炭素量を少しでも減らすために、カーボンネガティブに取り組むのが大事だと言うことです。

 

カーボンネガティブに取り組む企業の事例

それでは、今後はカーボンネガティブについて、具体的に企業がどのような取り組みをしているのか見てみましょう。

マイクロソフト(Microsoft)
マイクロソフトでは、2030年にカーボンネガティブ、そして2050年には、創業以来より排出した二酸化炭素を除去し、環境への影響をゼロにすることを宣言しています。 そのための施策の一部が下記です。

  • 2025 年までに再生可能エネルギーに完全にシフト
  • 2030年までに、世界のキャンパスにおける車両を電気自動車化

マイクロソフトのような巨大IT企業が、カーボンネガティブに向けて、実際に行う施策を公開したことは、多くの称賛を集めました。

 

パタゴニア(Patagonia)

パタゴニアでは、2025年までにサプライチェーンを含むビジネス全体でのカーボンネガティブ(カーボンポジティブ)を目指しています。 Patagoniaによると、同社におけるカーボンの排出量の97%を占めるのはサプライチェーン。その中の86%が原材料の調達に起因しているとのことです。 そのためPatagoniaでは、下記のことを行うと宣言しています。

  • 2020年までに、直営店、配送センター、各地域および全世界のオフィスと本社で再生可能資源による電力のみを使用
  • 2025年までに、製品には再生可能あるいはリサイクルした素材だけを使用
  • 森林再生のような、他の世界中の炭素回収プロジェクトに投資
  • 炭素を土壌隔離するために、環境再生型有機農業に投資

環境問題の深刻さが叫ばれるより遥か以前より、環境と社会に対して責任ある企業であり続けたPatagoniaの動きは、他の企業のお手本となるでしょう。

 

ブリュードッグ(BrewDog)

最後に紹介するのは、スコットランドのクラフトビールメーカー、ブリュードッグ。

直営のバーには、再生可能エネルギーを利用するなど、徹底して環境に配慮したビジネスを営んだ結果、ブリュードッグは2020年の8月23日にカーボンネガティブを達成。 ただ、それだけではなく、スコットランドに2050エーカーの土地を買い、100万本以上の木を植えることを目指しています。

 

国家レベルでのカーボンニュートラルの動き

カーボンニュートラルに向かうには、企業や個人レベルの活動のみならず、国を挙げた取り組みが重要ですが、世界各国で取り組みが見られます。

その中でも有名なのが、ノルウェーの事例です。

ノルウェーは2030年までに、国家レベルでのカーボンニュートラルを達成することを宣言しています。

また、日本においても、菅首相が政権当時、2050年までのカーボンニュートラルを目指すために、所信表明演説の中で、以下のように表明しました。

菅政権では、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力してまいります。わが国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします

このように、SDGsやパリ協定の達成、及び環境保全に向けて、企業や国が世界中でカーボンニュートラルに向けて動いているのです。

 

最後に。私たちにできることを考えよう

当記事では、カーボンニュートラル、カーボンネガティブに関して解説し、なぜ重要か、そして企業や国単位でどのように取り組んでいるのかを紹介してきました。

水素や風力などのエネルギーにおける技術革新や新たな省エネ技術のイノベーションも待たれるところですが、私たちにもできることは多々あります。 例えば、再生可能エネルギーを利用する電力会社に変えることで減らせるCO2排出量は、他のどの選択肢よりも多く、私たちができる1番のSDGsだとも言われています。

それでは最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

               
ライター:Sohshi Yoshitaka
Ethical Choiceの初代編集長。2030年までに地球が持続可能になる土台を、ビジネスを通して作ることがミッション。

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