FacebookやInstagram、Twitterなど、世界中の企業がマーケティングで有効活用したいと考えるソーシャルメディア。一方、ソーシャルメディアマーケティングはFacebookをはじめプラットフォーム側の変化も速く、最新動向を把握していないと期待するマーケティング効果を得ることが難しい側面もあります。
この記事ではイベントの参加レポートの形でFacebookやInstagramなど各ソーシャルメディアの最新動向や、ソーシャルメディアマーケティングの成功に欠かせないノウハウなどを紹介します。
アメリカの人気ソーシャルメディアマーケティング関連イベントから最新情報をお届け!
ソーシャルメディアマーケティングに限らず、「マーケティング施策のより効果的な実施には何が必要?」「今後のデジタル・WEBマーケティングはどんな方向性で進化する?」など、マーケティングの最新動向や成功事例の把握するには、アメリカで開催されるイベントに参加して短期間で一気に最新情報を収集するのもおすすめの方法です。
今回はソーシャルメディア関連の最新動向をみなさまにお届けするため、ソーシャルメディアマーケティング関連で最大級規模の人気イベント「Social Media Marketing World 2019」に参加しました。
Social Media Marketing World 2019の概要
今回、当社EXIDEAを代表してアメリカ支社長の青木が参加したのが、Social Media Marketing World 2019(ソーシャル・メディア・マーケティング・ワールド)。今年2019年は3/20~3/22の3日間、アメリカ・カリフォルニア州のサンディエゴで開催され、世界中からソーシャルメディアマーケティングのエキスパートなど延べ6,000名以上が参加しました。ソーシャルメディアマーケティング関連では世界的にも最大規模のイベントです。
イベント1日目はソーシャルメディアマーケティングをはじめ、動画マーケティングやコンテンツマーケティング全般のワークショップが中心で、イベントの2日目・3日目にキーノート(基調講演)や各テーマに分かれてのセッション・セミナーが開催されました。
ソーシャルメディアマーケティングワールドの主なセッション・セミナー内容
参加したSocial Media Marketing World 2019(ソーシャルメディアマーケティングワールド)では、イベント2日目・3日目の朝夕に行われた4つのキーノートに加え、延べ95の個別セッション・セミナーが開催され、ソーシャルメディアマーケティングの最新情報を幅広く収集できました。
延べ95の個別セッション・セミナーをテーマごとに集計すると下記の内訳になります。
ソーシャルメディアマーケティングワールドで行われた 個別セミナーのテーマ |
延べセッション数 |
---|---|
Facebook関連(フェイスブック広告やオーガニックでの活用方法など) | 14 |
Instagram関連(インスタグラムのストーリー機能の活用方法や広告マーケティングの事例など) | 7 |
Youtube関連(ビジネス・マーケティングにおけるYoutubeの活用事例など) | 5 |
動画制作方法やライブ動画関連 | 15 |
他のソーシャルメディア(LinkedIn・Twitter・Piterest・Snapchat) | 16 |
メッセンジャーボット(Facebookのメッセンジャーアプリを活用したマーケティング方法など) | 8 |
コンテンツマーケティングやソーシャルメディアマーケティングの全般・戦略構築 | 11 |
コーポレートブランド・ローカルビジネス・ブログマーケティングなど | 14 |
その他 | 3 |
ソーシャルメディアマーケティングの定義はもはや動画マーケティングと同義
今回のイベントに参加して最も印象に残ったのが、動画関連のセッション・セミナーの数の多さ。上記の個別セミナーのテーマの通り、効果の出る動画制作方法やFacebookやYoutubeのライブ動画機能の活用がソーシャルメディアマーケティングの重要テーマで、またFacebook広告やInstagramでの広告マーケティングにも動画コンテンツが重要なため、ソーシャルメディア向け広告=動画広告。
もはやソーシャルメディアマーケティングの定義は「いかに良質の動画コンテンツを制作し、いかにソーシャルメディア上で拡散させていくか」と、限りなく動画マーケティングの定義と同義になりつつあるという印象です。
メッセンジャーアプリを利用したボット化サービスも注目
また新しいテーマとして注目が、メッセンジャーアプリのボット化。Facebookメッセンジャー上でのユーザーとのコミュニケーションを自動化するサービスが出てきており、Facebook広告を活用中の場合、メッセンジャーアプリを使用したコミュニケーションをマーケティング施策に組み込むことでさらに成果を伸ばせそうです。
具体的には、Facebook広告からユーザーをランディングページに誘導、問い合わせを喚起するような施策に対し、広告からメッセンジャーアプリを起動、ユーザーにメッセージを1通送信してもらう、かつその返信をボット化(自動化)してユーザーの行動に対応するような施策が増えており、従来の方法よりも高いマーケティング成果を出す企業の事例も増えています。
ソーシャルメディアからWEBサイトのランディングページに誘導して問い合わせを促すよりも、ソーシャルメディア上で行動を完結させることでコンバージョン率が上がる上、メールでのコミュニケーションと同様、ユーザーとはFacebookメッセージで問い合わせに対するコミュニケーションが可能で、またこのメッセンジャーアプリ上のコミュニケーションをコーディング不要でボット化できるツールやサービスもアメリカでは増えています。
BtoBのリード獲得を目的としたソーシャルメディア活用方法も
またアメリカでは、これらのソーシャルメディアマーケティング施策はBtoCビジネスに限らず、BtoBビジネスでのリード(見込み客・問い合わせ)獲得にも積極活用する事例も。例えば、企業(BtoB)向けにホワイトぺーパーや動画コンテンツを制作してFacebook広告で告知、WEB上のダウンロードページや動画視聴ページのURLを入手するには電話番号やメールアドレスの登録を必須にしてリードの連絡先を獲得する手法など、BtoBビジネスにおけるソーシャルメディアマーケティングの成功事例や方法も多数紹介されました。
キーノートから分かった!ソーシャルメディアマーケティングの最新ノウハウ
ここからはSocial Media Marketing World 2019(ソーシャルメディアマーケティングワールド)のキーノート(基調講演)の内容から、ソーシャルメディアマーケティングの最新動向やノウハウを紹介します。FacebookやInstagramマーケティングの継続的かつ効果的な運用には、各プラットフォームが今後どのようなユーザー価値を提供したいと考えているか最新動向の把握も必要です。この理解無しでは、各ソーシャルメディアの変化に対して後手を踏み、マーケティング施策の効果的な運用が難しくなるからです。
-Social Media Marketing in 2019: What the Newest Research Reveals(Michael Stelzner氏)
-Facebook Marketing In a Changing World: Your Road Map for The Future(Mari Smith氏)
ここ数年でのFacebookサービスの変化や動向
アメリカでソーシャルメディアマーケティングを語る上で欠かせないのがFacebookやInstagramの動向。ユーザー動向にももちろん左右されますが、FacebookやInstagram自体のアルゴリズムや広告仕様の変化にマーケティング施策が大きく影響されるため、最新情報からこれらソーシャルメディアが今後どの方向に進化・発展するかを想定することが重要です。
そのためにもソーシャルメディアマーケティングワールドのキーノート内容から、Facebookサービスのここ数年の変化をおさらいします。
外部に開かれたコンテンツプラットホームから閉じたコミュニティへ
5年前の2014年1月、FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は「検索エンジンとしてGoogleに追いつきたい」と公式に表明。FacebookはソーシャルメディアでありつつもGoogle以上のコンテンツプラットフォームを目指し、一時期は検索エンジン経由のWEBサイトトラフィックよりもソーシャルメディア経由のトラフィックが上回る時期もありました。この時点でマーケッターの関心はソーシャルメディア上でのシェアにより、いかにWEBサイトのコンテンツへのトラフィックを集めるかでした。
しかし、その後Facebookビデオやインスタント記事など独自のコンテンツサービスを展開する中、次第に外部コンテンツよりもFacebook内で制作されたコンテンツを優遇するアルゴリズムへと変化していきます。さらに2018年1月、マーク・ザッカーバーグ氏は「コンテンツを発見する場から、人と人が有益に繋がるための場」へと方向性をシフトすることを明らかにし、それまでの目的であったコンテンツプラットフォームの優先度が下げられました。
また2019年には「安全で、非公開なコミュニケーションのためのプラットフォーム・コミュニティ構築」を志向することを宣言、外部に開かれたサービスから、閉じたコミュニティサービスへとFacebookは変化しています。
2018年1月以降、企業アカウントの投稿は表示が減り、広告なしでは効果が出づらい
こうした流れの中、特にソーシャルメディアマーケティングに影響があったのが2018年1月のアルゴリズム変更。Facebookのニュースフィードにおいて、企業やブランドアカウントの投稿よりも、友達や家族の投稿を優先表示されるようになり、その結果、以前までと比較して企業アカウントによる投稿の表示回数が減少、FacebookからWEBサイトへのトラフィックを獲得する施策の効果も低下しました。
コメントやシェアが多いポストはアルゴリズム上の表示優先度は高くなりますが、そのようなコメント・シェアを獲得するのにも企業はFacebook広告などの有料施策を活用しなければマーケティング効果を出しづらくなったのが最新の状況です。
ユーザーエンゲージメントが高いポストの種類は「WEBページのリンクや写真」から「動画」へ
同時にユーザーからエンゲージメントを獲得できるポストの種類も、「WEBページのリンクや写真のシェア」から「動画(Video)コンテンツの投稿」へと急速に変化しています。ソーシャルマーケティングツールを提供するBuzzsumoの最新調査によると、最もユーザーエンゲージメントを獲得できるポストの種類は動画で、WEBページのリンクや写真だけのポストと比較して2倍から3倍の効果があるとされています。
バズなど数や量の獲得目的からコミュニティに有益な情報提供=質へ
マーク・ザッカーバーグ氏の発言などから、今後のFacebookは人と人との繋がり(グループやコミュニティ)を重視する場へ変化するというのが、アメリカのソーシャルメディア業界のマーケターに共通の見立て。
つまり、従来の「バズらせる」など数や量の獲得が目的のマーケティング施策は難しくなり、Facebook上の各グループ・コミュニティへ有益な情報を個別に提供、ユーザーから商品・サービスへの深いエンゲージメントを獲得するような質を高める目的のマーケティングが有効。Facebookの思想とも合致し、施策の効果も高まりそうです。
このため単なる動画でなく、Facebookライブなど時間をも共有するような体験が効果的で、Facebookも利用を推奨しています。
Facebookの広告・マーケティングで効果的な30秒以内の動画の活用
ソーシャルメディアマーケティングワールド2019のキーノートで、イベントを主催するSocial Media Examinerの創設者・CEOであるMichael Stelzner氏が、非常に興味深い実験結果を共有しました。同じ8分間の動画をFacebookとYoutubeに投稿、ユーザーの視聴動向を比較した結果、Youtubeでの平均再生時間が4分以上に対し、Facebookではわずか11秒間など下記のような大きな違いがあったとのこと。
動画投稿先 | 総再生回数 | 平均視聴時間 | 8分間の動画の最後まで再生された回数・割合(%) |
---|---|---|---|
20,961 | 11秒 | 19(0.09%) | |
Youtube | 2,509 | 4分36秒 | 657(26.2%) |
同様の事例が他にもあり、隙間時間に利用されることの多いFacebookなどのソーシャルメディアでは再生時間の長い動画(Long Form Video)は広告に不向きで、再生時間が30秒~1分以内の動画(Short Form Video)でのマーケティングが効果的との考え方がアメリカでは一般的です。
動画を活用したFacebookマーケティングのノウハウ・成功事例
同じく、ソーシャルメディアマーケティングワールド2019のキーノートに登壇、ソーシャルメディアマーケティングで数々の賞を受賞しているエキスパート・Mari Smith氏は、Facebook上の動画マーケティングの成功ノウハウ・条件として以下の5点を挙げました。
- 共感できる、感情に訴えかけるコンテンツ内容
- ストーリーテリングの要素を動画に含める
- 30秒以内の長さ
- 字幕付きで音声が無くても視聴できる(ある調査によると、Facebookユーザーの85%がマナーモードまたは音の出せない環境で視聴)
- スクエアフォーマット(縦向きでも横向きでもスマホでの見え方が同じ)
またMari Smith氏が上記の要素がすべて含まれたFacebookでの動画マーケティングの成功事例と紹介したのが下記のセントジュード小児研究病院です。
●動画を活用したソーシャルメディアマーケティングの成功事例
アメリカのテネシー州メンフィスにあるセントジュード小児研究病院は、小児がんなど小児の難病治療・研究で世界的に有名な病院。事例はこの病院のFacebookページにポストされた30秒の動画ですが、この病院の存在価値や意義を見事に伝える内容。この病院は同様の動画コンテンツをソーシャルメディアに多数掲載、アメリカの小児がん病院ランキングで常に上位に評価されています。
Instagramでのマーケティングキャンペーンの舞台は「ストーリー」へ
一方、今後のソーシャルメディアマーケティングで欠かせないInstagram(インスタグラム)マーケティング。最新情報では、全世界のInstagramユーザー数が10億人を超え、日本国内でも月間アクティブアカウント数が2900万以上と2018年に公表されており、企業によるビジネスアカウント開設も増加しています。
中でも注目がInstagramで人気のストーリー機能。2019年の最新情報では、Instagramストーリー機能の1日あたりのユーザー数は全世界で5億人、2年前と比較して3倍以上に利用ユーザーが急増しています。Facebook CEOのマーク・ザッカーバーグ氏も「Stories are the future.(ストーリーは新しい体験共有の形だ)」と述べるなど、ますます注目の機能です。
ストーリーのマーケティング成功事例~メリット・特徴は高い費用対効果
こうした中、Instagramのストーリーを使ったマーケティング手法や効果的なコンテンツの作り方、成功事例などがソーシャルメディアマーケティングワールド2019のセミナーでも多数共有されました。あるスマホ向けアプリのインストールを促すキャンペーンの事例では、他のFacebookやInstagramのフィード型広告と比較してInstagramストーリーを使った広告は約半分のCPI(1インプレッション当たりの広告費用)で済んだとの報告もありました。現時点で、Instagramのストーリーのメリットであり特徴の1つが、こうした高い費用対効果と言われています。
長時間の動画を発信、シェアによる拡散を狙うならYoutubeの利用が必要
FacebookやInstagramでは再生時間の短い動画によるマーケティングが有効なのと比較して、Youtubeは比較的長時間の動画でもユーザーに視聴される点が特徴のソーシャルメディア。
Youtubeも日々規模が拡大しており、2019年時点で月間視聴者数は全世界で19億人以上、1日当たりの送視聴時間は10億時間以上。特徴的なのは、モバイルでの1セッション当たりの視聴時間が40分以上と長時間である点です。再生時間が数分以上の動画を発信し、ユーザーのシェアによる拡散を狙う場合、最適なソーシャルメディアプラットホームはYoutubeと考えられます。
Youtubeの特徴は“動画の検索エンジン”、つまりSEO対策が必要
Youtubeは世界NO.1の検索エンジン・Googleのサービス。またユーザーによる動画のキーワード検索も多数行われており、WEBページと同様、Youtube掲載動画のSEO対策が視聴回数に多く影響する点も特徴の1つ。Youtubeでの視聴回数を増やすには、どんなキーワードで検索中のユーザーにコンテンツを届けたいのかを考え、適した動画コンテンツのメタデータ(タイトル・説明文・タグなど)の設定がマーケティング上のポイント。
またテキストコンテンツのSEO対策で被リンクやページ滞在時間などが重要なシグナルであるように、動画コンテンツのSEO対策でもシェア回数や評価、平均視聴時間などが重視されるため、当然ながらユーザー価値の高い動画コンテンツの制作がマーケティングの成功に必要です。
以上、ソーシャルメディアマーケティングに関連する最新のトピックスを、2019年3月に開催された「Social Media Marketing World 2019(ソーシャル・メディア・マーケティング・ワールド)」の内容の中から紹介しました。
個別のソーシャルメディアマーケティング施策のポイントやノウハウは別記事でも紹介していますので、あわせてご覧ください。