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2018.06.01

カスタマージャーニーとCRO(コンバージョンレート最適化)

先日参加したDIGITAL GROWTH UNLEASHED(旧コンバージョン・カンファレンス)イベント参加後のレポートとして、特に印象に残った“カスタマージャーニーを意識したコンテンツ全体の最適化”というテーマについて、詳しく紹介したいと思います。
※DIGITAL GROWTH UNLEASHED(旧コンバージョン・カンファレンス)全体のレポートはこちらをご覧ください。

カンファレンス全体のテーマはCRO(コンバージョンレート最適化)でしたが、このCRO実現のためにはコンテンツ全体を見直し、

個々のカスタマーの状態(=カスタマージャーニー上のステップやフェーズ)に合わせ、最適なコンテンツを提供することがCROに効果的

ということが複数のセッションで強調されていました。

CROというとアクションボタンのA/BテストなどCall-To-Action部分の最適化に目が行きがちだったのですが、言われてみれば確かに各カスタマーの状態に合った魅力的なコンテンツ(物語)を提示することが、コンバージョンレート向上の鍵ともなりそう。

ここではDIGITAL GROWTH UNLEASHED(旧コンバージョン・カンファレンス)で行われたセッション内容とともに、カスタマージャーニーとCRO(コンバージョンレート最適化)について紹介していきます。

そもそもカスタマージャーニーとは?

カスタマージャーニーとは、カスタマーが契約・購入などのアクション(意思決定)に至るまでの過程・プロセスを指します。説明する人によって、ステップ・フェーズの数が若干異なりますが、今回のイベントでは下記の5つのステップ・フェーズで説明するセッションが多かったです。

カスタマー
ジャーニー
ステップ・フェーズ 定義
#1 Awareness (認知) カスタマーがニーズや課題を認識した段階
#2 Consideration(検討) ニーズを満たす/課題を解決する手法を知り、自分の生活に取り入れることを検討し始めた状態
#3 Preference(選択・比較) 具体的な製品やサービスの候補が現れ、それらを比較している段階
#4 Decision/Purchase(意思決定) 候補となる製品・サービスの中から1つを選択し、契約・購入などのアクションを実行する段階
#5 Loyality/Share(ファン) 実際に製品・サービスを利用して満足し、さらにどの製品・サービスを好きになったり、他人にそのことを伝えている状態

このカスタマージャーニー自体の考え方は目新しいものではありませんが、

・モバイルデバイスの浸透により、この5つのステップ・フェーズが非常に短期間で実現されるようになった
・技術進化により、Googleは検索ユーザーの“コンテクスト”を(極端に言えば、カスタマージャーニーのどこにいるか?も)理解し始めた

といった点が最近の特徴と言われており、この点を理解しながらWEBサイトのコンテンツを作成していくことが必要そうです。

カスタマージャーニーを意識したCRO(コンバージョンレート最適化)

こちらはDIGITAL GROWTH UNLEASHED(旧コンバージョン・カンファレンス)1日目夕方に行われた、Distilled社のRob Ousby氏のKeynoteの内容です。

CRO(コンバージョンレート最適化)を意識してマーケティングに取り組もうとすると、コンバージョンレートの高い集客チャネル(Where)にのみ注目し、そのチャネルへの投資集中により全体のコンバージョンを高めるという戦略をとる会社・組織が多いとのこと。

ただし氏の講演によると、コンバージョンを大きく伸ばすためには「Who(どんなカスタマーに)」「When(いつ)」「What(何を伝えるか)」も含め、カスタマーとのコミュニケーション設計やコンテンツ全体の設計を戦略的に行う必要があるという内容でした。

特にカスタマージャーニーを意識した「When(いつ)」が重要だと言う点が印象に残っています。

それでは、講演内容を抜粋して紹介します。

Whoの定義~どんなカスタマーと接点を持ちたいのか?~

・求めるカスタマー像(=ペルソナ)の設定は重要

・複数のペルソナの中での優先順位付けも(本当に欲しいカスタマーは?)

・ただし最も重要なのは、ペルソナ作成前にまずカスタマーについてよく調べること(各種調査や、社内にコールセンターがあればどんなカスタマーが何に困って問い合わせをしてきているのか確認するのも良い方法)

・自社サイト上の行動データなどの分析も重要だが、TwitterなどのSNS上で自社の製品・サービス(あるいは競合の製品・サービス)がどのように口コミ・レビューされているかの確認も重要

→どんなカスタマーと繋がりたいのか、できるだけ具体的にペルソナを設定する

Whenの重要性~カスタマージャーニー上のどこにいるのか?~

・ペルソナ上は同じタイプでも、カスタマーの感情状態は時と場合によって異なる
(同じペルソナでも今この瞬間、機嫌の良いカスタマーもいれば、悪いカスタマーもいる)

・同様に、カスタマージャーニー上のどのステップ・フェーズにいるかも異なる
ニーズを認識した段階なのか?あるいはすでに一定期間比較・検討をしている状態か?

・ペルソナで定義したカスタマーが、カスタマージャーニー上のどこにいるのか、あるいはカスタマーがどの状態の時にアプローチすることが効果的なのかを考え、最適なコンテンツを用意することが有効

・また、カスタマーの動きやデータから”コンテクスト”を理解する努力も重要
(Googleは検索クエリからコンテクストを理解し始めている)

(例)あるユーザーのGoogle上の検索クエリから見えるコンテクスト

・このクエリの流れ(=コンテクスト)から、このユーザーが今どんな状態で、次に何が必要かを理解して、実際に提供することは可能だろうか?
・そもそも1つ目の検索クエリ(「レストラン ロマンチック シアトル」)で、このコンテクスト(レストランでのプロポーズ?→結婚)を理解することは不可能だろうか?

段階 検索クエリ (訳)
最初のクエリ “most romantic restaurant in seattle” レストラン ロマンチック シアトル
“how to choose a diamond ring” ダイヤモンド 指輪 選び方
“wedding venues” 結婚式場
“photographers in seattle” シアトル カメラマン
“types of wedding cake” ウェディング ケーキ 種類
“how to write a grooms speech” 結婚式 スピーチ 書き方
直近のクエリ “fun honeymoon destinations” 新婚旅行 行き先
→Awareness(課題・ニーズを認知したばかり)フェーズのカスタマーにアプローチするのか、Consideration(検討)フェーズのカスタマーにアプローチするのかでコミュニケーションは異なるはず
→より“意思決定”に近いフェーズにいるカスタマーに十分アプローチできているか?

What=コンテンツ~WhoとWhenを意識したメッセージ~

slide image

・ペルソナ(Who)やコンテクスト、カスタマージャーニー(When)を意識した時、各Who・Whenの組み合わせに対して最適なメッセージは?
・”認知→具体的な検討”、”比較→意思決定”など、カスタマーをカスタマージャーニーの次のステップに動かすためにはどんなメッセージが必要か?

→これらWho・When・Whatを戦略的に捉え直すと、Where(どの集客チャネルを使うか)の効果的な判断ができる。
(ペルソナAのユーザーが比較・検討する際、どのメディアを利用するだろうか?など)

このKeynoteの最後のスライドは「Start with the Audience」、”オーディエンス(=Who)から始めよう”というものでした。

実際のところ、ペルソナやカスタマージャーニーについて知識としては理解できているものの、“カスタマーを動かすコンテンツやメッセージ”(=What)はどのように創るのが効果的なのでしょうか?

関連するセッションがありましたので続けて共有します。

ストーリー(=物語)の重要性

“カスタマーの心を動かすには「ストーリー(=物語)」が重要”というテーマで行われたのが、Marketing Strategy Hub社のArmida Markarova氏によるセッション「How To Apply Storytelling To Your Customer Journey」(カスタマージャーニーに“物語”の考え方を持ち込むには?)でした。

前提として、私たちが世の中に提供する製品・サービスには価値があり、それはカスタマーの何らかの問題を解決しているはずです。

そして、製品・サービスがどのように問題を解決するかを「ドラマチックなストーリー」として伝えることが、

・各カスタマーを、カスタマージャーニーの次のステップへと動かし
・カスタマーを購買(意思決定)に向かって突き動かす

強力な力となる、というのが氏のセッションの内容でした。

モバイルデバイスやSNSの進化・浸透に伴い、Fast(短時間で理解できて)、あるいはFun(楽しい、期待以上の驚き)のあるコンテンツでなければ、カスタマーの心を動かせなくなってきています。

また、シリコンバレーの多くの企業がいま、詩人や小説家のような存在を求めていると言われています。それは短い言葉で(Fast)、印象的な顧客体験(Fun)を生み出さなければならないからです。

これに有効なのが「Storytelling(物語を語る)」という考え方です。

“Story Spine”(物語の骨組み)というフレームワーク

誰でも簡単に詩人や小説家にすぐになれるという訳ではありません。ただ、”Story Spine”(物語の骨組み)のフレームワークを利用すると、自分の製品・サービスがいかにカスタマーの問題を解決するかを“物語”として語りやすくなります。

“Story Spine”(物語の骨組み)

1. Once upon a time there was ___. (昔々あるところに~)
2. Every day, ___. (毎日~をしていました)
3. One day ___. (ある日のことです)
4. Because of that, ___. (だから、~するようになったのです)
5. Because of that, ___. (だから、~になったのです)
6. Until finally ___. (そして、ついに~)

日本の典型的な「昔話」も上記のような流れの作品が多いかと思いますが、ディズニー映画の多くも実はこの”Story Spine”にしたがって制作されているそうです。

ビジネスに当てはめる場合は、以下のように捉えるように補足説明がありました。

1.2.で、カスタマーの日常をまず描写し
3.で、ある日、カスタマーに生じる問題・課題や欲求を定義します。
4.5.では、問題や課題が引き起こす不満や、欲求が満たされない不満などを例示します。
そして、最後に(6.)あなたの製品・サービスが登場し、すべての問題・課題を解決し、欲求を満たし、カスタマーの生活を変革するものと伝えるのです。つカスタマーにとってあなたの製品・サービスはヒーローです。そして、そのように伝えなければカスタマーの心は動かせません。

頭では理解できるものの、実際にコンテンツとして書くのはなかなか難しそうですね(笑)

ただ、このフレームワークを念頭に置いて、カスタマーを”認知から具体的な検討“に進めるためのコンテンツや、”比較から意思決定“を促すためのコンテンツなどを考えていくと、よりコンバージョンに寄与できる(CROに効果的な)コンテンツの作成ができそうです。

最後に、このセッションの中で引用された一節を紹介します。

“The world is shaped by two things – stories told and the memories they leave behind.”
世界は2つの物で形作られている-1つは誰かによって語られた物語で、1つは人々に残された物語の記憶である。

物語として多くのユーザーの記憶に残るようなWEBコンテンツを、EXIDEAとしても数多く世の中に創り出していければと思います。

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