ジャーナリストに学ぶコンテンツの書き方

ユーザーに支持されるコンテンツ、つまりターゲットとするオーディエンス・顧客を集め、最終目的である成果・売上の最大化に貢献するようなコンテンツは、どのような方法・書き方で作成すれば良いのでしょうか?

いまアメリカでは、トラディショナルな手法(新聞・雑誌などのジャーナリストや、映画・小説におけるストーリーテリングの手法など)からあらためて学びを得て、WEBコンテンツの作成やコンテンツマーケティングに活用しようという動きが活発化しています。

今後、WEBページやブログ記事、動画などの作成や書き方で求められるのは「TRUTH(信頼感)」や「TENSION(テンション・緊張感)」です。

質が高いコンテンツとは、「読み手から信頼される」、「読み手のテンションを上げ、ドキドキ、ワクワクさせる」と定義されそうです。

では、どのような方法・書き方で文章を作成すれば、そのような内容になるのでしょうか?このページでは、コンテンツ作成方法や書き方に関連するトピックスのほか、新聞や雑誌などのジャーナリストのテクニック・手法をご紹介します。

コンテンツ作成の準備や手順~WEBページやブログ投稿記事の場合

コンテンツ作成やマーケティング施策の企画などでも重要な「5W1H」の考え方は、以下になります。

5W1Hの考え方
  1. Who:誰に
  2. What:何を
  3. When:いつ
  4. Where:どこで
  5. Why:なぜ
  6. How:どのように

このフレームワークの中でもWEBページやブログへの投稿記事などのコンテンツ作成で欠かせないのが「Who」「What」「How」の3つ設計。この3つの構成に加えて、WEBページやブログ投稿記事を読み終えた後の「読後感」を文章を書く前の準備段階で設定することが、良い記事を作成し、コンテンツマーケティングを成功させる上で欠かせない準備であり、必要な手順。

また、この設計や手順は、BtoCのメディア・WEBサイトのコンテンツ作成の場合に限らず、BtoBビジネスの会社ホームページやブログ投稿記事の書き方を考える上でも共通の考え方。その手順を1つずつ紹介していきます。

Who:ターゲットオーディエンス(ペルソナ)の設定が必要

WEBページやブログ記事に限らず動画や広告などのコンテンツ作成でもまず必要となるのが、誰にその情報を届けるのか、ターゲットオーディエンス・ペルソナの設定。

一般にペルソナとは、性別・年齢や住んでいる地域、学歴・収入などのデモグラフィック属性や、価値観・性格・趣味・志向などのサイコグラフィック属性などから設定するもので、詳細にコンテンツの読み手(≒顧客・ユーザー)をイメージするために作成するもの。

一方、もしBtoBビジネスのコンテンツ(読み手が一般の消費者というよりも同業他社やクライアント・顧客)の場合、読み手が勤務する業界や会社規模、売上規模や事業の展開エリアなどファーモグラフィック属性を基にしたペルソナ設定が必要です。

このペルソナ設定が曖昧なままでは、どんな書き方が良いのか判断がつかない上、作成したコンテンツの評価も難しくなります。逆に言えば、精緻に設計されたペルソナがあって初めて「ペルソナに役立つコンテンツを作成できているか」という点で評価が可能になるのです。

カスタマージャーニーマップの“どこ”かも良いコンテンツ作成のポイント

ペルソナ設定に加えてポイントとなるのが、カスタマージャーニーマップという考え方。カスタマージャーニーとは、顧客やユーザーが契約・購入などの意思決定に至るまでの過程・プロセスを指す言葉で、「(ニーズや課題の)認知」や「検討」「選択・比較」「意思決定」などのステップ・フェーズがあります。

同じペルソナ(属性)の読み手でも、ある製品・サービスを検討し始めたばかりなのか、十分な比較検討を経て契約・購入直前なのかなど、カスタマージャーニーマップ上のどこのフェーズかで、読み手であるユーザーのニーズが変わるため、作成すべき記事・情報の内容や書き方が変わるのです。

例えば、訪日外国人向けに「東京の観光ガイド」ページや記事を作成する場合を考えると、コンテンツのターゲットユーザーを、

A「東京に興味はあるものの、まだ旅行に行くかは決めていない」オーディエンス(カスタマージャーニーの「認知」フェーズ)
とするのか、

B「東京に旅行することは決まっていて、おすすめのホテルやレストラン情報を得たい」オーディエンス(カスタマージャーニー上の「選択・比較」や「意思決定」フェーズ)
とするのかで、作成する観光ガイドのページの記事内容や書き方が違うと思いませんか?

実際のコンテンツ作成では「ペルソナとカスタマージャーニーのステップの組み合わせ」で、制作するページや記事内容のターゲットが誰なのか(Who)を設定する必要があります。

What:解消すべき課題の特定と提示する解決方法(コンテンツの内容・テーマ)

一般的にコンテンツ作成は、設定したターゲット(ペルソナ)が抱えるニーズや欲求、課題の解消が目的。もし作成した記事の情報・内容で、ターゲットのニーズや欲求、課題を解消できなければ、制作したWEBページやブログ記事の価値は低いことになります。

つまりコンテンツの書き方以前に、まず正しくユーザーのニーズや欲求、解決すべき課題を特定することが必要です。ペルソナで設定した読み手は「何を知りたいのか?」「どんな課題があるのか?」「それを本当に解決したいのか?」を丁寧に、時間をかけて自問自答することが良質なコンテンツ・記事作成の第一歩です。

他サイトには無い自分なりの解決方法を考えることが必要

さらに読み手であるユーザーが求めるのは、他の会社のホームページやWEBサイトにあるのと似たような解決方法ではないはず。何をテーマとして、どんな内容・書き方で伝えれば、読み手は「この課題解決方法は良い!」と感じるのかを、コンテンツや記事の作成前に整理しておくことも必要です。

一例が「2秒でシャツを畳む方法」。ターゲットの課題を一気に解決するアイデアを斬新な手法で提示できれば、多数のオーディエンスを集めることに成功できる事例です(動画再生回数は1,800万回以上!)。ここまで斬新な解決方法でなくても、何か自分なりの方法・オリジナリティ考え、記事内容に盛り込むことが効果を生むのです。

SEOを意識、コンテンツのキーワード選定も検索エンジン対策に重要

作成したコンテンツをターゲットカスタマーに届け、アクセスを集めるには、当然Googleなどの検索エンジンでの上位表示(SEO対策)も重要な要素

例えば、コンテンツのテーマとなるキーワードを1つ選定、もしそれが非常に検索回数の多いビッグワードの場合、他社の制作ページも多く、キーワード検索結果での上位表示を目指す検索エンジン対策(SEO)の難易度は上がります。

選定したキーワードを類義語や少し言い換えを行い、検索回数が比較的少ないロングテールのキーワードをテーマに選定すれば、競合企業も少なく、検索エンジン対策(SEO)の難易度も比較的低いため、早期にコンテンツ作成の効果を実感できそうです。

作成したページ・記事内容を掲載するWEBサイトやメディアの規模などにもよりますが、まずはロングテールのキーワードを選定、検索エンジン対策(SEO)も意識したコンテンツの作成・書き方がおすすめです。

How:ユーザーにどう伝えるか、伝え方・書き方の設計

冒頭で触れた通り、今後のコンテンツマーケティングで重視されるのは「TRUTH(信頼感)」や「TENSION(テンション・緊張感)」。作成した記事の内容が読み手であるユーザーに信頼されたり、あるいはユーザーをドキドキ・ワクワクさせてテンションが高まる文章を作成するには、どう伝えるか、伝え方・書き方の設計にも工夫が必要です。

いまアメリカでは、このコンテンツに信頼感を持たせる書き方として新聞や雑誌のジャーナリストの記事や文章の書き方から学ぼうとする動きであったり、読み手をコンテンツに惹き込むための「ストーリーテリング」という手法が注目されています。

マーケティングに重要な、制作するコンテンツの「読後感」の設定

最後に、読み手となるターゲットオーディエンスに、記事内容を読んだ後にどうなって欲しいのか、読後感を制作前に設定することも重要なコンテンツ手順の1つであり、マーケティングで重要な要素です。

読み終えた後のユーザーの状態
  • このWEBページや記事を読み終えた後、読み手は何を手に入れている状態か?
  • この文章を読み終えた後、読み手はどう感じている状態か?
  • このコンテンツを読んだ後の読み手の毎日・日々の生活はどう変化するか?

良いコンテンツとは、事前に設定した読後感(=マーケティング上の目的)まで読み手の多くを到達させるコンテンツ。あるいは読み手自身が目的とするゴール(課題が解決されたり、知的好奇心が満たされた状態)まで辿り着けるWEBページやブログ記事こそ、良いコンテンツと言えそうです。

読み手に信頼されるコンテンツの書き方~ジャーナリストの基本に学ぶ

WEB上の情報量が増え続ける一方、昨今では社会問題にもなりつつあるフェークニュースなど信頼できない・偽物の情報が増えてきているのも残念ながら事実です。

このような環境で、多くのインターネットユーザーは信頼できる記事や情報を探し始めていたり、また社会的にもWEBメディアに従来のメディア(新聞・雑誌・テレビなど)と同程度の信頼性を求める風潮が生まれ始めています。

今後のWEBコンテンツの作成やコンテンツマーケティングでは、これまで以上に読み手に信頼される情報提供や書き方が必要となります。

では、これまで新聞や雑誌などは信頼される情報機関として、記事の作成・書き方の点でどんな工夫をしてきたのでしょうか?以下のような点が、ジャーナリストの基本的なテクニックから学ぶことのできるWEBページやブログ記事の書き方・手法と言えそうです。

具体的な数字・数値を内容に盛り込みコンテンツを作成するのがコツ

読み手の信頼を獲得するための書き方・コツの1つに、できるだけ数字・数値をコンテンツに盛り込む方法があります。例えば、

いつ(何年に?何年間で?)
どれくらい(何件?何人?何社?いくら?)

といった内容を制作するページ・記事の要素に盛り込むことがおすすめの書き方の1つ。

形容詞は、可能な限り数字に置き換える」という書き方は、文章に具体的な数字・数値を意識的に盛り込むためのコツです。

×(悪い書き方の例):長年この事業に取り組んでいます
○(良い書き方の例):当社は30年間、この事業に取り組んでいます
×(悪い書き方の例):非常に好評の商品・サービスです
○(良い書き方の例):延べ3,000人以上のお客様に利用いただきました
×(悪い書き方の例):売上が凄い勢いで伸びています
○(良い書き方の例):売上が対前年比150%のペースで伸びています

同じ数値だが、他のホームページには無い視点で作成している事例

この数字・数値も、他社ホームページの既存コンテンツと同じものを扱っていたのでは、オーディエンスにとって価値の高い情報とは言いづらいもの。同じ数値でも違った視点でコンテンツを作成すると、説得力が増し、独自性のある内容になる事例をご紹介します。

蚊が媒介する感染症「マラリア」ですが、2013年の統計によると世界で60万人以上が死亡しているとのこと(出典:厚生労働省検疫所)。このためワクチン接種を促す記事内容は多数あるのですが、これを他コンテンツと違う視点で伝えているのが、事例として取り上げたインフォグラフィックス。

着目する事実やテーマ、数値は同じですが、切り口をマラリアという病気ではなく「世界で最も危険な動物」という書き方で伝えています。これによって最も恐ろしい動物は、「毒蛇や毒蜘蛛ではなく(人間と)蚊」であることを伝え、マラリアのワクチン接種を促しているのです。

同じマラリアの危険度やワクチン接種を促すコンテンツを、同じように数字で語る場合でも、書き方や切り口、表現方法を変えることでコンテンツにオリジナリティを持たせることが可能です。

信頼できる情報ソースを基に書く~徹底的なファクトチェックが必要

新聞・雑誌のジャーナリストが大事にしているのは「ネタ元」、つまり情報のソース。仮に信頼できない情報を基に作成した記事が出回り、後から情報に誤りが発覚した場合、作成したコンテンツは価値を失うばかりか、掲載した会社・メディアも信頼を失う可能性があります。つまり、徹底したファクトチェックがWEBページやブログ記事、会社ホームページの作成でも必要なのです。

誤った事実を含むページや記事を作成することが無いよう、必要な情報は例えば大学などの教育機関が発表している文献や調査結果、第三者機関の調査データから情報収集して記事を書くべき、というのがジャーナリストの基本な考え方であり、書き方。また、コンテンツ内でその情報のソース・出所を明示すれば読み手の信頼感も高まり、良質なコンテンツになりそうです。

自分で収集した一次情報でなくても、信頼できる機関(大学や業界団体など)が集めた二次情報を基にしたコンテンツであれば、読み手の信頼も得られそうです。一方、自分と同様に二次情報を基に作成されたサイトや記事を情報ソースにしたコンテンツ作成は誤情報の恐れもあるため危険です。

ジャーナリストに必要なのは「自分は無知であるという自覚」と言う人も。謙虚に、時間をかけて丁寧に事実情報を調べながら文章を書き、コンテンツを作成するという方法・書き方が必要です。

独自アンケートは競合会社のサイトコンテンツには無い情報・武器

競合会社のホームページなどで、すでにサイト上のコンテンツとして発信されている内容や見解と同じ情報では、独自性が無く、作成するページや記事の価値も低くなります。できれば独自に実施したアンケートの結果を盛り込むなど、一次情報の要素を含められればコンテンツの独自性が増し、作成するページ・記事の価値が上がります。

一方、そのような独自アンケート調査が難しくても、実際に自分で製品やサービスを利用・体験して、その結果、自分が感じた情報を盛り込むという書き方でも、コンテンツにオリジナリティを持たせることが可能です。

エキスパートやインフルエンサーによる口コミの引用・紹介は効果的

書き手の1人称で書くだけよりも、第三者の声を引用し、文章を追加することはコンテンツの信頼性獲得に効果的な書き方。

例えば、いかに人気の製品・サービスであるかを、売上推移や利用者数推移などの数値やグラフで表現することも重要ですが、それだけでは「なぜその製品・サービスが人気なのか?」、その理由や原因は伝わりにくいもの。グラフや数値だけでなく、実際に利用した人がコンテンツの話者となることで真実味や信頼感が増すのです。

もちろん一般のユーザー・消費者の声も重要ですが、コンテンツの信頼性獲得という点ではその分野のエキスパート・インフルエンサーの声や意見をコンテンツに盛り込むことが効果的です。

誰にでも分かりやすい文章・書き方で作成する

コンテンツを書く上で「自分は中学生・高校生レベルの文章しか書けないのにどうしよう…」と不安を感じる方もいるかも知れません。しかし、アメリカの作家・ヘミングウェイの代表作「老人と海」は小学校4年生程度の読解力があれば読める文章・語彙とされています。つまり良質なコンテンツやストーリーを作成するのに、高等な文章力は必要ないのです。

むしろ、それ以上に簡単な書き方でなければ、広くターゲットオーディエンスに理解される文章にはならない可能性もあります。例えばアメリカにおける成人の読解力レベルは、平均すると中学生レベル。つまり高校レベルの文章の書き方では、そのコンテンツの意味が正しく理解されない可能性もあるのです。「中学生でも理解できるレベルの分かりやすい文章」がコンテンツの書き方に求められると言えます。

以上、WEBページやブログ記事のコンテンツ作成・書き方で重要なポイントを、ジャーナリストから学ぶことのできる考え方や書き方なども含め、ご紹介しました。