他人を思う人が幸せである世の中を。ヴィーガンレシピ投稿サイトブイクックを運営する工藤柊さんが実現したい世界とは?
他人を思う人が幸せである世の中を。ヴィーガンレシピ投稿サイトブイクックを運営する工藤柊さんが実現したい世界とは?
動物性のものを一切口にしないヴィーガン。
日本では、レストランでもコンビニなどでもヴィーガン選択肢が少なく、ヴィーガンを実践しようとすると中々大変なものです。
そんなヴィーガンのために、ヴィーガンレシピ投稿サイトのブイクック(vcook)を運営しているのが今回お話をお伺いする工藤柊さん。
ご自身もヴィーガンであり、ヴィーガンレシピ投稿サイトを運営していますが、その目的は決してヴィーガンを普及させることだけではないと言います。
では、工藤柊さん本当に実現したいこと、思い描く世界は何なのでしょうか?
ヴィーガンに特化した事業のブイクック
────まずは、工藤さんが何をされているのか、教えていただけますか?
工藤さん
私は、株式会社ブイクックで、主に3つの事業を行っています。
1つが、ヴィーガンレシピ投稿サイトであるブイクックの運営。ブイクックは現在(2021年2月)、月間で9から10万人の方にご利用いただいてます。
2つ目がヴィーガンに特化したマーケティング支援です。食品メーカーがベジタリアンやヴィーガンの商品開発にあたり、セミナー研修やアンケートなどの調査分析を行っています。
3つ目は現在準備中なのですが、ブイクックデリ(ヴィーガンの冷凍宅配事業)です。こちらは、料理をする時間がない人が、気軽にヴィーガンを実践できるようにするために行っています。
※編集部注:2023年9月現在、サービスを既に提供しています。
────ヴィーガンに特化した事業を進めているということですね。ではなぜ、ヴィーガン事業を展開しようと思われたのでしょうか?
ヴィーガンは制限が多くても楽しめるもの
工藤さん
ヴィーガンが手軽に楽しめることを皆さんにお伝えしたかったんです。
私自身4年前からヴィーガンを始めたのですが、ヴィーガンが住みにくい世の中だなと、実践し始めてから感じました。
私がヴィーガンになったのは動物倫理と環境問題が理由でしたが、始めた当初は知識がなすぎて、食べるものといえばおにぎりと水炊きしか無いと思っていました。
今では笑い話です(笑)
ただ、最初はヴィーガンはそんなものかと思って諦めていたんです。
そんな中、ある日ヴィーガンイベントに参加してみると、そこには卵っぽいけど、卵を使っていない料理だったり、肉を使っていないハンバーガーが並んでいるのを目にしました。
本当に美味しそうで、その時にヴィーガンって楽しくできるものなんだって気づいたんです。
当時の自分がそういうレシピを知らないし、知らないからレシピを調べようともしなかったのですが、自分と同じように知らないからヴィーガンを楽しめない人はたくさんいることを後に知りました。
なので、美味しく作れるヴィーガンレシピをユーザーに伝えることで、ヴィーガンという選択肢を気軽に取れる人が増えればと思って、ブイクックを始めたのです。
孤独を感じやすいヴィーガンをつなげるために。
────それでは、話をレシピサイトのブイクックに移していきたいのですが、ブイクックがどんなレシピサイトか教えていただけますか?
工藤さん
ブイクックは、ヴィーガンのレシピサイトであり、ユーザーを繋ぐSNSです。
なので特徴としては、ユーザーがレシピを投稿できて、レシピの検索ができて、投稿されたレシピが保存できる。そして、気になるユーザーをフォローできるし、ユーザーが投稿したレシピに対してコメントもできる。
そんなプラットフォームです。
────レシピサイトなのはわかりますが、SNSであるというのはどういうことでしょうか?
工藤さん
孤独を感じやすいヴィーガンの人たちを繋げる場でもありたいと思い、SNSの要素を入れています。
例えば、新着レシピが上部に表示されていたり、ユーザー名とアイコンを大きく出していたり、コメントをし合えたり。
ヴィーガンの中には友人や家族に理解されないこともあり、中々続けるのが難しいのですが、それでも一人じゃなくて、みんながいるから続けられる環境を提供しています。
実際に会ったことがなくても、ブイクック上ならコミュニケーションを取れますし、ヴィーガン料理を一緒に作っている気持ちになれます。一人だと中々続けにくいヴィーガンですが、みんながいるから頑張れる、そんな助け合える場でもあれたらと思っています。
ヴィーガンはあくまで選択肢の1つ
────なるほど、だからレシピサイトであり、SNSなんですね。質問なのですが、ブイクックにはヴィーガンレシピだけが投稿されているのでしょうか?ヴィーガンの人以外も利用できるものなのでしょうか?
工藤さん
レシピ自体はヴィーガンのものだけです。
ただ、ユーザー自体はヴィーガンである必要はないと思っています。
────どういうことでしょう?
工藤さん
良く聞かれるのですが、ヴィーガンじゃないからヴィーガン料理を食べちゃダメってことはないと思うんです。
ヴィーガンのレシピが中心にあるのですが、ユーザーはベジタリアンの人でも、フレキシタリアンの人でも、むしろいつもは一般的な食事をされている方でも良いんです。
ヴィーガン料理っていうと、どうしても敷居が高いと感じられていますが、食の選択肢の1つでしかないと思っています。
だからヴィーガンの人だけに使ってもらうというよりは、週に1回でも、月に1回でも肉を減らしたり、よりエシカルな選択をしたりするためのきっかけになればそれで良いんです。
なので、完全にヴィーガンであることよりも、「動物性のものを使っていないけど、美味しそうだから取り入れてみよう」と多くの人に思ってもらう方が重要だと考えています。
ヴィーガン=動物愛護だけでは無い
────最近では、ヴィーガンは動物倫理だけではなく、様々な理由で注目がされているようですが、ヴィーガンが環境や社会に与える影響を教えていただけますでしょうか?
工藤さん
ヴィーガンが社会に与える影響は大きく4つあります。
- 動物倫理
- 環境問題
- 健康
- 食糧危機
健康については、専門としていないので、私の方からは割愛しますが、それぞれ解説できればと思います。
まずは、動物倫理から。
まずは動物の扱いについての問題があると思います。専門用語で種差別と呼んだりもしますが、要は人間は殴ったりしたらダメだけど、他の動物はいいのか?という考え方です。
人間においても人種差別の問題が昔からありましたが、この人種は優れていているから主人、この人種は劣っているから奴隷として扱われる時代もありましたが、間違っているとして今では根絶に向かっています。
動物においても同じように考えるのが「動物倫理」です。。
次に環境問題。
良く言われるのは工業型畜産が、温室効果ガスを発生させている主要な原因だということとです。特に牛の場合はゲップやおならで温室効果ガスを排出しています。
また、家畜が食べるための飼料のために、森林伐採が行われて、二酸化炭素を吸収することができなくなり、地球温暖化に拍車がかかっている側面もあります。
さらに、輸送の環境コストも大きいものです。
例え日本産の牛であっても、飼料は輸入に頼っているので、バーチャルウォーターが多くなりますし、その量はハンバーガー1つのパテを作るのに、2500リットルとも言われているほど。
最後に食糧危機に関して。
2050年には人口が100億人に達そうとしている中で、動物由来のタンパク源が不足しています。その代わり、植物性のタンパク源が注目されています。
以上の3点が、ヴィーガンが環境や社会に与える影響だと考えています。
────根深い問題があるということですね!ヴィーガンは選択肢の1つだという意味がわかってきました。ただ、ヴィーガンを実践するには、まだいくつかハードルがあるように思います。動物由来の食事を摂らない場合、栄養価が足りないイメージがあるのですが、その心配はないですか?
工藤さん
それは非常に良く聞かれる質問なのですが、結論から言いますと、ヴィーガンでも栄養素は足ります。
ただ、事実として肉で摂っていたタンパク質や、鉄分は取りにくくなってしまいますが、大豆や野菜から摂るようにすれば大丈夫です。
また、ビタミンB12だけはどうしても不足してしまうのですが、これもヴィーガンだから足りないわけではなく、どんな食事をしても不足しがちな栄養で、サプリからとる人が多いです。
集団を一括りにするのは差別だということ。
────そうだったんですね。あと1つだけお伺いしたいのですが、ヴィーガンというと、どうしても排他的なイメージがあり、選択肢の一つとして考えづらい側面があります。ご自身もヴィーガンである工藤さんの意見をお伺いしたいです。
工藤さん
やはり一部の印象が全体のイメージを左右することはあると思います。なので、そのようなイメージを持つのも無理はないかと思います。
ただ、私から言えることは、そんな人も一部いますが、みんなが排他的なわけでは無いということです。
例えば、フランスで肉屋を襲撃したヴィーガンのグループがニュースになりましたが、それは過激ですし、人や建物を襲撃している以上大きな問題だと思います。
ただ、イメージの話に戻しますと、そういう人がいるからそのグループは全員過激だと考えて態度を変えるのは差別だと思いますし、それ自体も問題です。
それは、ある宗教の中で、一部の集団が過激だからといって、全員がそうだと認識されるのはおかしいですし、もっと身近な例で言いますと、関西出身の芸人は面白いから関西人は全員面白いのかといったら、そうではないのと同じだと思います。
なので伝えたいことは、そういう過激な人たちが他人を攻撃するのは問題だということ。
そして、そのような過激な人たちのイメージを集団全体に当てはめて差別するのにも問題だということです。
────なるほど。確かに宗教の話と同じで、一括りにしてはいけないなと思いました(汗)
工藤さん
そうですね。僕もこんな風に言いましたが、自分が無意識に差別している可能性もあります。なので、自分も差別をしていたら、その意識を変えたいです。
明日から始められるヴィーガン
────ここまでヴィーガンに関していろいろ聞かせていただきましたが、明日からヴィーガンを試してみたいという方もいるかと思います。その場合は何から始めたらいいでしょうか?
工藤さん
自宅で簡単にできることは、お肉を大豆ミートに変えたり、牛乳を豆乳に変えたりといったことだと思います。
調理の際には、ブイクックのレシピを参考にしていただければと思います。
また、つくる時間がない方は、ヴィーガンレストランや今はチェーン店でもヴィーガンメニュがあるので、そういうメニューを試してみるのもおすすめです。
また、今準備しているブイクックデリも時間が無い方の選択肢の1つになればと思います。
優しい心を持っている人が損しない世の中を。
────新たな選択肢としてのデリは楽しみにしております。では最後に、将来の展望をお聞かせいただけますか?
工藤さん
世界を良くしたいと思って行動をする人が歩ける道を整備したいと思っております。
社会課題に対しての行動がしやすい環境を整備するということです。
そのために現在はブイクックでレシピを提供しているのですが、1つの手段です。
ブイクックでは、『「Hello Vegan!」な社会を食卓から』を ミッションに、料理やレシピを通してヴィーガンが気軽に選択できるように、ハードルを下げる活動を行ってきました。
これは出発点に過ぎず、今後はレシピ以外にも必要なことはどんどん行う予定です。
どんな料理を作ればいいかわからない人はブイクック、作り時間がない人にはブイクックデリを用意しているのですが、このようにヴィーガンを始めたいと思っている人が苦労するポイントを潰したいと思っています。
そういう他者に対して思いやりを持っている人が損をしないように、そんな世の中を作れればいいなと思います。
編集後記
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、ヴィーガンが社会や環境に与える影響や、少しセンシティブな話題に関しても取り上げましたが、いかがでしたか?
自身は高校時代からヴィーガンを実践し、ヴィーガン事業を展開されている立場にありながら、ヴィーガンじゃない人に対しても思慮が深く話されているのが印象的でした。
ヴィーガンに関する詳細はこちら
▶︎ヴィーガンとは?
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